「後のパンク、ニューウェイブにも多大な影響を与え、レゲエを世に知らしめた熱狂のライブ・アルバム」Live! : Bob Marley and the Wailers / ライブ! : ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズ

 レゲエ・ミュージックを一気に世界中に知らしめたのはボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズです。
その中でもどのアルバムが・・と言われれば最初に思い浮かぶのはこのライブアルバムです。

1975年7月にロンドンのライセアム・シアターで行われたコンサートの模様を記録したものです。

前年の1974年にエリック・クラプトンが「アイ・ショット・ザ・シェリフ」を全米No.1ヒットさせており、レゲエ・ミュージックとボブ・マーリーの名はロック、ポップスファンにも広がり始めていた頃でした。

このライブレコーディングはアイランド・レコードのダニー・ホロウェイがローリング・ストーンズ・モバイル・スタジオ(トラックにレコーディング・スタジオがそのまま乗っけてあるヤツね)で行われました。

ちょっと疑問なのが、公(おおやけ)にダニー・ホロウェイが行ったとなっていますが、後述するプロデュースやミキシング、レコーディングエンジニアなどに名前が出てきません。
「enployee=従業員」という表記ですのでアイランド・レコードの管理職クラスでもなさそうです。

もしかしたら外国でよくありがちな、どさくさにまぎれて言ったもん勝ち、とりあえず名前を入れとけ、の世界かもしれません。(個人のいい加減な感想です)

内容は主に7月17日公演のもので、1曲「ライブリー・アップ・ユアセルフ」のみ18日のバージョンとなっています。

音質はロックのマーケティングを考えてか、ロック寄りのサウンドです。

同じく1975年にこれまたキッスを世界的に知らしめたライブ・アルバム「キッス・アライヴ」がリリースされていますが、これに象徴されるような、後でかなりアレンジして作り込んだライブ・アルバムと言えなくもありません。

というのも実は2016年にデラックス・エディションとして7月17日と18日の模様を収めた2枚組CDがリリースされました。
それと比較して聴くとかなり印象が違います。

単純に言えばオリジナルの1975年リリース・バージョンはロックのマーケットを意識したもので、派手で迫力ある音になっており、デラックス・エディションはネイキッドでありプリミティヴな音です。

オリジナル盤のリリースされた1975年について考えると、レゲエを広げるためにこういう戦略をとったものと思われます。
そして狙いは大成功、レゲエ・ミュージック世界中に広がりました。

その影響はその後のロックの主流となるパンク、ニューウェイヴを見ればわかります。
たくさんのミュージシャンが新しい感覚の音楽、レゲエに可能性を感じて自身の音楽に取り入れました。

このように大きくはボブ・マーリーを起点に広がったレゲエですが、1980年代にはすでにジャズやロックと同じように一つのジャンルを築きました。

1977年リリースの「エクスダス」ではさらに音楽的成熟が著しく、ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズの代表的名盤とされています。
アルバムを通してトータル性が感じられ、まさにジャンルを超えた逸品です。
これも別の機会にご紹介したいと思います。

また、1984年リリースのボブ・マーリーのベスト・アルバム「レジェンド」は全世界で7,500万枚以上売り上げることになりました。
これくらいになるとマイケル・ジャクソンの「スリラー」やAC/DCの「バック・イン・ブラック」などと同じく「世界で一番売れたアルバム」と言っても差し支えありません。

私の場合、ボブ・マーリーはアイランド・レコードの初期の頃が好きで、「カヤ」くらいまでは全部持っていました。

2000年代に入ってハイレゾ配信が始まったので「レジェンド」を買ってみたのですが、最初の印象は「なんか低音がない」「音が行儀良すぎる」「よって迫力がない」と思ったものです。
しかし、いろいろとオーディオにこだわってみて、最近聞き直してみたらそれなりにまとまった音に感じました。(オリジナル・アルバムには及びませんけどね)

アルバム「ライブ」についてですが、私の持っている最終音源は2008年版CDのものです。
当然、時代を超えた名盤という評価が出来上がっており、リマスターも丁寧に音圧も高くなっていました。

比べてデラックス・エディションは音圧は小さめです。サウンドもシンプルに感じます。
しかしドラムがタイトで全体的にどっしりした印象になっています。
シンバルのキザミもよくわかります。

こっちを聴くとなるほどオリジナルの方ははかなり音を加工して、ピッチも変えたりもしてるのがわかります。

これはこれで時代の音としていい感じです。

アルバム「ライブ!」のご紹介です。

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演奏
ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズ
ボブ・マーリー  リード・ヴォーカル、リズム・ギター
カールトン・バレット  ドラムス
アストン・“ファミリー・マン”・バレット  ベース
タイロン・ダウニー  キーボード
アル・アンダーソン  リード・ギター
アルヴィン・“シーコ”・パターソン  パーカッション
リタ・マーリー  バックヴォーカル
ジュディ・モワット  バックヴォーカル

プロダクション
ライブサウンド・ミキシング  デイヴ・ハーパー
ライヴモニター・エンジニア  CHIP CHASE(エリック・チップチェイス)
レコーディング・エンジニア  スティーヴ・スミス
ミックス  ベイシング・ストリート・スタジオ
ミキシング・エンジニア  フィル・ブラウン
ミュージック・プロデューサー  ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズ
レコード・プロデューサー  スティーヴ・スミス、クリス・ビラックウェル

曲目(オリジナル版)

*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

デラックス・エディションです。

1,   Trenchtown Rock トレンチタウン・ロック

CDではMCによる「ボブ・マーリー・アンド・ザ・ウェイラーズ、カモン!」で始まります。
世界中の音楽を変えた瞬間です。
トレンチタウンとはジャマイカの首都、キングストンのレゲエ、ロックスタディの発祥の地です。ちなみにロックスタディとはレゲエの一つ前の形態だそうです。
「音楽の良いところは心にヒットした時・・」と歌い始めます。

2,   Burnin’ and Lootin’ バーニン・アンド・ルーティン

アイランド・レーベルでのセカンドアルバム「バーニン」からです。
もの悲しげなキーボードの音で始まり、ベースのフレーズが印象的です。
タイトルは燃やして略奪するという圧政に我慢できなくなって蜂起する様子を謳っています。

3,   Them Belly Full (But We Hungry) ゼム・ベリー・フル

アイランドのサードアルバム「ナッティ・ドレッド」からで「奴らは腹一杯で俺たちは空腹、空腹は怒りに変わる」というこれも政治的な歌です。

4,   Lively Uo Yourself ライブリー・アップ・ユアセルフ

続いてこれもアルバム「ナッティ・ドレッド」からで、アルバムのオープニング・ナンバーでした。ドラッグなしで自分自身を輝かせろという内容です。精神的なことを謳っている歌です。
中間部で、“you rock so you rock so”“  you dip so you dip so”  “you skank so you skank so” などと歌うところがレゲエのアーシーな部分が出ていて好きです。

5,   No Woman, No Cry ノー・ウーマン・ノー・クライ

これも「ナッティ・ドレッド」からで、オリジナルに比べてかなりテンポを落としてバラードに仕上げています。
私も含めてすごくいい感じのバラードだと思って、オリジナルを聞いて愕然とした人をいっぱい知ってます。
タイトルは「女よ、泣かないで」と訳されます。
その昔タワー・レコードのコピーで「No Music, No Life」が「音楽がなければ人生もない」と訳されたた時、「じゃあ、これって『女が居なければ、泣くこともない』だったのか」と思い悩んだことがあります。
文脈で考えればそうはなりませんが、よくよく考えれば深〜いところで繋がってそうですね、と納得してます。(個人の感想です)

6,   I Shot the Sheriff アイ・ショット・ザ・シェリフ

エリック・クラプトンがカバーして一躍有名になりました。アルバム「バーニン」に収録されている曲でシングルカットされました。
内容は保安官のジョン・ブラウンを撃ってしまったという、ヒリヒリするようなハードボイルド物語です。

7,   Get Up. Stand Up ゲット・アップ・スタンド‘アップ

アルバム「バーニン」のオープニングナンバーです。リズムに気合が入っています。
ボブ・マーリーの中でも有名な「起きろ、立ち上がれ、あなたの人生のために」という歌です。
観客と「ヨー、ヨー、ヨー」の大合唱、「あきらめるな」を繰り返して終わります。いつの時代も世界中で通用する歌です。

8,   Kinky Reggae キンキー・レゲエ

ライブならではのメンバー紹介を兼ねた時間です。タイトルの「俺たちゃ変人、ひねくれ者さ」という感じがバンドの一体感を出しています。

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