「現存するロックの生き神様、ニール・ヤングのフォーク時代を象徴する傑作」After The Gold Rush : Neil Young / アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ : ニール・ヤング

 1960年代からアルバムをリリースし続け、一定の人気を保っているミュージシャンはそれほど多くははありません。その中でも別格の存在がニール・ヤングです。

彼のメジャーになった時期としては1960年代のバッファロー・スプリングフィールド時代からだろうと思います。
その後ソロと同時にCSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤング)としてコラボしたり、クレイジー・ホースというバンドを仕切ったりしながらニール・ヤングならではの、彼にしか表現し得ない世界を作り上げてきました。

その初期における象徴的なアルバムが1970年代初期の「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」と「ハーヴェスト」だと思います。

ニール・ヤングは1945年11月12日のカナダ、トロント出身です。
活動歴が長く、1960年代から続けています。さらにまた順調に活動を続けている分、当然の如く多作です。
コンプリート・コレクションとか目指そうものなら大変な枚数になりそうです。

さらに近年はアーカイヴもので昔のライブ音源などもかなりの数を見かけますので、そうなるととんでもないアルバムの数になります。
ニール・ヤングのソロ、クレージー・ホース名義、CSN&Y関連などカタログをざっと数えただけでも80枚を超える数がありました。

さらに音楽のジャンルも一定でないため、好みや評価が時期によって分かれそうです。
というか振れ幅が大きすぎてギター弾き語りからグランジ・ロックとかパンク方面、カントリー方面、ロカビリー方面と多彩に足を踏み入れています。

ちなみにざっと数えてみただけでもこれくらいの枚数をリリースしています。2020年代は怒涛のライブ・アーカイブです。

1960年代 5枚
1970年代 14枚
1980年代 10枚
1990年代 11枚
2000年代 15枚
2010年代 19枚
2020年代 14枚

多分、本物のニール・ヤングのファンはそういうこと全てに魅力を感じるのでしょうが、初心者にはなかなか実態が掴みきれずに何から手を出せばいいのかわからないという貴兄、貴嬢も多いのではないのでしょうか。

そういうニール・ヤング氏ですのでいろいろと趣味嗜好はございますでしょうが、わたくし的にニール・ヤングの一番好きな時代はこの1970年リリースの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」の時代となります。

これと次作の姉妹版的な「ハーベスト」もおすすめです。そちらには「Heart of Gold=孤独の旅路」という人生の糧となるような超絶名曲も収録されています。

ここらあたりが彼にしか出せない、オリジナリティの塊みたいな時代ですし、完成度も高く俯瞰的に見ても彼の音楽活動の中でもピークの一つとなると思われます。



そのアフター・ザ・ゴールド・ラッシュ時代のニールヤングのサウンドについてです。基本的にはアコースティック・ギターやピアノがメインのシンプルな編成です。
そして聞きどころは彼の持って生まれた、ただ発するだけで郷愁を誘い物悲しさを覚えるような独特の声質です。
何はともあれ声質だけでこれほど雄弁にオリジナルな世界を構築できる人はなかなかいません。
歌を歌うことで素晴らしい世界を作れる人はブルーズ、ソウル、ゴスペルの世界にいっぱいいらっしゃいますが、ニール・ヤングみたいに静かに声を発するだけで哀愁を感じ、無常の世界を作れる人はなかなかいません。

演奏面ではというとニールヤングは基本的にギタリストです。
アコースティック・ギターに関してはいいセンスをしていると思います。弾き語りの歌の伴奏としてのギターはなかなかのものです。
で、エレキギターはというとこれがまたなんとも個性的というか、ヘタウマというか爆音ですごい世界を描きます。
アルバムを聴いていても華麗に聞かせるギターを弾こうという気が全くないようです。心の中にある表現したい音があればいいので、流れるような滑らかな音は出てきません。
ただし、その分出てくる音はすごい個性的な世界です。
このアルバム聴いていてもサザン・マンなんかのエレキギターソロはヘタウマの極地だったりします。ある意味1970年代初頭からパンク演ってました。
しかもその姿勢はずっと変わりません。

あとニール・ヤングについて言えるのは隠れ名曲がすごくあります。
なのであまり関連なさそうなジャズとかブリティッシュ系のミュージシャンが何気に取り上げていたりするのです。

彼の曲はフォーク調では良さがわかりやすいのですが、ロック的な名曲もたくさんあります。
わたくし的に最初にカッコいいいと思った曲は「ラスト・ネバー・スリープス」に収録されている「パウダーフィンガー」でした。
思わずこれはシンプルながらもすごくよくできていると、自分でも弾いてみずにはいられないほどの衝撃でした。

そういう意味では本当に計り知れないものを持ったアーティストです。
さらに実は顔の構造も相当に個性的です。(見ればわかりますがな)
いつも荒々しさとハングリーさを忘れていないようなあの顔つき、目つきもただものではない雰囲気に溢れていて曲と同様に魅力的です。


最近はもうボブ・ディランやローリング・ストーンズと同じくロックの生き神様となって感もあります。

曲目、演奏者
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

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1,  TELL ME WHY  テル・ミー・ホワイ
1970年3月12日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ボーカル
ニルス・ロフグレン ギター、ボーカル
ラルフ・モリーナ ボーカル

「自分自身と折り合いをつけるのは難しいかい?」と歌います。アコースティック・ギターのシンプルな演奏で始まります。この曲調にとっても70年代フォークブームを感じます。

2,  AFTER THE GOLD RUSH  アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ
1970年3月12日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ピアノ、ボーカル
ビル・ピーターソン フリューゲルホルン

ピアノの弾き語りです。やはり声が強力な武器となっています。例え普通のメロディでもニール・ヤングが歌うと情感が全く違ってきます。牧歌的なフリューゲルホルンもいい感じです。

3,  ONLY LOVE CAN BREAK YOUR HEART  オンリー・ラヴ
1970年3月15日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
ニルス・ロフグレン ピアノ
グレッグ・リーブス ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル

バックはシンプルながら説得力があります。


4,  SOUTHERN MAN  サザン・マン
1970年3月19日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音。
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ボーカル
ニルス・ロフグレン ピアノ、ボーカル
グレッグ・リーブス ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル
ダニー・ウィッテン ボーカル

エレキギターが登場です。カッティング・リフがかっこいいです。ギターソロも長めでめちゃ癖があって個性的です。これ、例えば日本で新人バンドがレコーディングでこれやったらOKが出るのだろうか?などと思ってしまいます。
カナダ出身のニール・ヤングがアメリカの南部の人を歌うのはさぞ難しいことだろうと思います。ここでも頭から否定したりするのではなく「どれくらい、いつまで」といった表現になっています。


5,  TILL THE MORNING COMES  朝が来るまで
1970年3月19日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ピアノ、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
グレッグ・リーブス ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル
スティーヴン・スティルス ボーカル
ビル・ピーターソン フリューゲルホルン

余興です。コーラスではやっぱりニールの声が一番目立っています。


6,  OH, LONESOME ME  オー・ロンサム・ミー
1969年8月2日、ハリウッドのサンセット・サウンドで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ピアノ、ハーモニカ、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
ビリー・タルボット ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル

浮遊感漂う曲です。内容は人と馴染めずに孤独を感じている人の歌です。


7,  DON’T LET IT BRING YOU DOWN  ブリング・ユー・ダウン
1970年3月17日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤングギター、ボーカル
ニルス・ロフグレン  ピアノ
グレッグ・リーブス  ベース
ラルフ・モリーナ  ドラムス

こういうテンションあるサウンドが出てくるとなんか安心します。歌詞は深いものを感じさせます。


8,  BIRDS  バーズ
1970年6月30日、カリフォルニア州ハリウッドのサウンドシティで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ピアノ、ボーカル
ダニー・ウィッテン ボーカル
ラルフ・モリーナ ボーカル

じっくり聞かせる曲です。内容は人間関係の難しさだと思います。


9,  WHEN YOU DANCE I CAN REALLY LOVE  アイ・キャン・リアリー・ラヴ
1970年4月6日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
ジャック・ニッチェ ピアノ
ビリー・タルボット ベース
ラルフ・モリーナ  ドラムス

“あなたが踊る時、あなたを愛することができる”。という歌詞ですが、踊るあなたが好きということではありません。フォークロック風です。こういうのはお手のものだと思います。最後は盛り上がってフェイドアウトします。


10, I BELIEVE IN YOU  アイ・ビリーヴ・イン・ユー
1969年8月5日、ハリウッドのサンセット・サウンドで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ギター、ピアノ、ヴァイブ、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
ビリー・タルボット ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル

個人的にジョン・レノンを感じる曲調です。


11, CRIPPLED CREEK FERRY  壊れた渡し船
1970年3月17日、カリフォルニア州トパンガのホームスタジオで録音
プロデュース デヴィッド・ブリッグス、ニール・ヤング
ニール・ヤング ピアノ、ボーカル
ダニー・ウィッテン ギター、ボーカル
グレッグ・リーブス ベース
ラルフ・モリーナ ドラム、ボーカル

短い曲ですが早々にフェイドアウトするのは勿体無いほどいい曲だと思ってしまいます。

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