「1971年の(フォークとロック)/(ソウルとファンク)の邂逅、SSW ✖️ アイズレー・ブラザーズ」Givin’ It Back : The Isley Brothers / ギヴィン・イット・バック : アイズレー・ブラザーズ

 軽音楽の世界は1970年代に入ると多様化が加速されジャンルもクロスオーバーしたものとなります。
顕著なのがジャズの世界で、それまでのアコースティックな楽器で演奏するものではなく、マイルス・デイヴィスを筆頭にジャズのエレクトリック化、ロック化、ファンク化と様々な様相を示してきます。

ロックもジャズやクラシックを取り入れるようになり、多様化していきます。
ハードロックやプログレッシブ・ロック、グラムロックなどのジャンルが登場して来ました。
また、それに反するようにギターやピアノでの弾き語りで歌うシンプルなシンガー・ソングライターというジャンルも支持されるようになります。すぐ思いつくのはジョニ・ミッチェルやジェームス・テイラー、ローラ・ニーロなどです。

そういう中でソウル、ファンクからロックに接近してうまくミックスされたバンドも登場しました。
例えばスライ・アンド・ファミリー・ストーンです。ファンキーなノリとブラック/ホワイト混合バンドで一時代を築き上げました。

同じくソウル、ファンクバンドでロックの曲をカバーしたバンドがありました。それが今回のアイズレー・ブラザーズです。
1971年にアルバム「ギヴィン・イット・バック」がリリースされました。

「それを返してください」というアルバムタイトルは意味深です。
ただしここで、ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンの曲をカバーしてそう言われるとわかりやすくて納得しながらも、でも逆に何か変に感じるところが出てきます。

このアルバムに登場する作曲家、ミュージシャンや次作でカバーされるキャロル・キングあたりはソウル、ゴスペル系のミュージシャンからもカバーされることが多く、なんとなく上部だけではない本当の広さ、深さも感じとれます。
アイズレー・ブラザーズからの感謝のご挨拶といったところもなんとなく感じ取れて、そう思うとタイトルにもますます愛おしさを覚えて、エエ感じです。

初めての全曲カバーで仕上げたというこのアルバムは、リリース当時はそれほどヒットチャートを賑わした存在ではありませんでした。
でも今になって考えるとかなりチャレンジする歴史的にも重要なアルバムでした。
またジャンルを跨いでいるせいもあり、不思議な魅力に溢れ時代を超えた名作となっています。

ここでのアイズレー・ブラザーズの面白いところはジェームス・テイラーやボブ・ディラン、クロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤングなどの弾き語りやフォーク系の一見ブラック・フィーリングのファンキーとは対極にあるような楽曲をファンキーにアレンジして演奏したところです。
その辺にチャレンジ精神も伺えてまた嬉しいのです。
ただそれだけではなく内容も本当に素晴らしいもので、ピアノやギターでの弾き語りだった曲にリズムをつけてじわっとくるようなファンキー・ミュージックに変えた手腕は恐れ入るほど見事な出来栄えです。

アイズレー・ブラザーズは本作の後に姉妹版となるような「ブラザー、ブラザー、ブラザー」をリリースします。ここではキャロル・キングを中心にジャッキー・デシャノンなどをカバーしました。このアルバムもなかなか聞き応えのある名作です。

2作ほど白人のシンガー・ソングライター系のカバーに挑戦したの後、音楽の神様が降りて来たかのごとく「3+3」を筆頭に70年代を席巻します。

このアルバムを聴いて、最初の曲で感じられるのはなんともシンプルで音数少なめ、もちろんアイズレーの基本通りホーンセクションは無しです。リズムもゆったりしています。ここにごっついファンクネスを感じます。しかも力技で押さえつけるようなコテコテ感もありません。(それはそれで好きですが)
このシンプルこの上なく、滲み出るような、それでいて黒さを失わないファンキーさというのは一度気に入ると常習化します。(個人の見解です)

アイズレー・ブラザーズのアルバムは全てに言えることですが、作りが丁寧でここもやっぱりプロダクションの意識の高さを感じます。

アイズレー・ブラザーズは1964年に自身のレーベル「T-Neck Record」を設立しました。当初はなかなかうまくいかなくて、チャート・インすることもなかったようですが1969年、「イッツ・ユア・シング」がヒットして上昇していきます。
そのあとはサウンドも変わって賑やかなファンクからシンプルな音数のファンクに変わっていき、「ギヴィン・イット・バック」「ブラザー、ブラザー、ブラザー」あたりからトップ40ヒットも生まれ始め、何かを掴んだアイズレー・ブラザーズは「3+3」でメガヒットを記録して怒涛の1970年代の名作群をリリースしていくのでした。

演奏

ロナルド・アイズレー  リードヴォーカル、バックグラウンドヴォーカル
ルドルフ・アイズレー  バックグラウンド・ヴォーカル
オケリー・アイスレー・ジュニア  バックグラウンドヴォーカル
アーニー・アイズレー  リードギター、リズムギター、ドラム
マーヴィン・アイズレー  ベースギター
クリス・ジャスパー  ピアノ

チェスター・ウッダード  リードギター、リズムギター
ビル・ウィザーズ  リードギター(Tr.6)
ミルトン・ウェストリー  オルガン
ジョン・モズレー  フルート
ジョージ・モアランド  ドラムス、パーッカッション
ゲイリー・ジョーンズ  コンガ(T r.1-6)
バック・クラーク  コンガ(Tr.)


プロデュース  ロナルド・アイズレー、ルドルフ・アイズレー
フォト  ハル・ウィルソン
アレンジ  ジョージ・パターソン、アイズレー・ブラザーズ

曲目
(参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。オリジナルは各曲ごとにどうぞ)

Bitly
Bitly



1,  Ohio / Machine Gun オハイオ / マシーンガン

(作 ニール・ヤング / ジミ・ヘンドリクス)

「オハイオ」はCSN&Yのリリースした曲で、ニール・ヤング作の曲です。1970年5月4日にケント州立大学で発生した銃乱射事件を歌っています。オハイオ州兵によって4人が殺ガウされ、非武装の大学生9人が負傷しました。「なぜ彼らは死ななければならなかったのか」という当時のニクソン政権を非難する内容です。
続けてのジミ・ヘンドリクすの「マシーン・ガン」はベトナム戦争についての反戦歌で「マシンガンが家族を切り離す」という歌詞です。
内容は社会性のあるものですが、サウンドはドラムで始まるこのゆったりしたグルーヴが最高です。


2,  Fire And Rain ファイアー・アンド・レイン

(作 ジェームス・テイラー)

ジェームス・テイラーの1970年のアルバム「スウィート・ベイビー・ジェイムス」に収録されている曲で、薬物療養時に友達の死と宗教観について歌った歌だそうです。
アイズレーはソウルバンドらしく重たい感じで感じで、ゴスペルフィーリングも入れて展開していきます。


3,  Lay Lady Lay レイ・レディ・レイ
(作 ボブ・ディラン)

ボブ・ディランが1969年にカントリーに声まで変えてリリースしたカントリー・アルバム「ナッシュビル・スカイライン」に収録されている曲です。愛する女性の最期を看取っている男の歌に聞こえます。
アコースティックギター中心のため、歌い方はもちろん違いますがオリジナルに近い雰囲気も感じます。


4,  Spill The Wine スピル・ザ・ワイン
(作 チャールズ・ミラー、ハワード・E・スコット、BB・ディッカーソン、ロニー・ジョーダン、ハロルド・レイ・ブラウン、トーマス・ディー・アレン、リー・オスカー)

1970年のエリック・バードン・アンド・ウォーによるヒット曲です。タイトルはキーボードプレイヤーのロニー・ジョーダンがミキサーにワインをこぼした事故から来ているそうです。本編の内容はワインをこぼして真珠を拾えという危険な賭けに出てチャンスを・・・みたいなことなので、直接関係はありません。
アイズレーにしては珍しいアレンジですが、アコースティックギター中心ながらファンキーないい感じです。


5,  Nothing To Do But Today ナッシング・トゥ.ドゥ・バット・トゥデイ

(作 スティーヴン・スティルス)

1971年リリースのスティーヴン・スティルスの2ndアルバムに収録されている曲です。今日を生きる以外やることはないというタイトルです。オリジナルに近い感じがします。


6,  Cold Bologna コールド・ボローニャ
(作 ビル・ウィザーズ)

作者のビル・ウィザースは1938年生まれのアメリカのシンガー・ソングライターです。本人もギターで参加しています。5歳の息子の視点で母を見ている歌です。



7,  Love The One You’re With ラヴ・ザ・ワン・ユア・ウィズ
(作 スティーヴン・スティルス)

1970年にステーヴン・スティルスによって書かれた曲です。一緒にいる人を愛してください
ミーターズ、ルーサー・ヴァンドロス、ボブ・シーガーなどもカバーしています。

本作を締めくくるのに相応しい名曲です。70年代の雰囲気を満喫できます。

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