「初めて聴いても懐かしさを感じるポップなメロディと深い詩の世界、ポップス、ロック、歌謡曲に影響力大なのになぜかあまり評価されなかったスーパートランプの出世作です」Crime of the Century : Supertramp / クライム・オブ・ザ・センチュリー : スーパートランプ

 「クライム・オブ・ザ・センチュリー」は1974年にリリースされた英国のロックバンド、スーパートランプの3枚目のアルバムです。

イギリス、カナダ、ドイツでトップ5に入るヒットとなり、アメリカでもチャートインを果たしました。

面白いことにこのアルバムからシングルカットされた「ドリーマー(B面はブラッディ・ウエル・ライト)」はイギリスでは当然A面「ドリーマー」の人気が高く、アメリカではB面「ブラッディ・ウエル・ライト」のほうがリクエストが多く人気があったそうです。

ファンにとっても非常に評価の高いアルバムとなっています。
最終的にはアメリカでゴールドディスクとなり、ローリング・ストーン誌の「史上最高のプログレッシブロック・アルバム50選」に選ばれることになりました。

1990年にリリースされたスーパートランプのベスト盤「ベリー・ベスト・オブ・スーパートランプ」はジャケットがこの「クライム・オブ・ザ・センチュリー」と「ブレックファスト・イン・アメリカ」をミックスしたデザインになっています。

内容もまたこの二枚から選出されたものがほとんどです。
逆説的にこの2枚を聞けばスーパートランプのエッセンスはほぼわかると思います。

「クライム・オブ・ザ・センチュリー」の献辞には「サムへ」と書かれています。サムとはスタンリー・オーガスト・ミーゼーガスという人物の愛称です。

1969年から1972年、セカンドアルバムリリースまでスーパートランプを財政的に支援した人で、投資した総額は60,000ポンド(1ポンド210円換算で12,600,000円)だそうです。

裏を返せばこの「クライム・オブ・ザ・センチュリー」まではバンド活動を維持できるほど売れていなかったようです。

評価も高く、売り上げも良かったものの、日本ではまだ“いわゆる“通語のみのバンド™という立ち位置だったと記憶しています。

前にも書きましたがイギリスの詩人、作家で生涯のほとんどをアメリカを放浪して過ごしたウイリアム・ヘンリー・デイヴィスの自伝「スーパートランプ(素晴らしき放浪者)の自伝」に由来しているというバンド名からして変わっています。

実はかくいう私も1979年の「ブレックファスト・イン・アメリカ」で大ブレイクした後に知ったものでした。

初めて手にした時「Crime of the Century =世紀の犯罪」というタイトルもなんか想像力を掻き立てたものです。
(ほとんど厨二病というやつですな)

1980年くらいでしたが聴いてみた印象は「なんか聞いたことがあるようなフレーズやメロディばかりで割と馴染みやすい、というかここまでいくと、もしかしてすごいのかも」といった感想でした。

前曲メロディが良くて今聞いてもポップスや歌謡曲、ロックで定番となっているようなフレーズ、メロディで敷き詰められています。

こういうフレーズや手法はスーパートランプが最初に編み出したものではないにしても、スーパートランプに意識的、無意識的に影響されて楽曲を作っている人はなんかとっても多そうです。

ではなぜ、そういうスーパートランプは当時も今もロックの歴史においてそんなに有名なロック・レジェンドになっていないのでしょうか。

そこを考えてみたいと思います。

まず大きく二つの要因を感じます。

一つはロック的、ロック特有の激しいリズムや歌詞である方向へ振り切ったような演奏スタイルではないことが挙げられます。

別に激しいだけがロック的ではありませんがスーパートランプの作りだすメロディはポップです。

しかもいろんなジャンルをうまくミックスしているように思われます。

プログレッシブ・ロックの範疇のバンドと言われることもありました。

確かに単純なラブソングなどはなく、曲の展開が複雑だったり、歌詞が意味深だったりしますのでプログレッシブ・ロックの要素は多分にあります。
メンバー各自、キング・クリムゾンやイエス、ピンク・フロイドなどと交流があったようです。

歌詞の内容も内省的なものが多く、ひねくれ具合も相当なものです。しかし耳に優しい曲揃いでしかもメロディアスであるがゆえ、いわゆるあの魔境に住む変人たち・・じゃなかった真摯なプログレ・ファンが好むとは思われません。

またロックの王道であるギターサウンドが中心でないため、同様にレッド・ツェッペリンやヴァン・ヘイレンのようなハードなのをお好みの方向けでもありません。

かといって常にロックを牽引して変革していくビートルズやボブ・ディランのような革新的音楽でもありませんでした。

そういうジャンルを感じさせない音楽は逆に個性的でいい部分もあるのですが、コアなロックファン以外にはいまひとつウケなかった理由かもしれません。

もう一つの要因として、

では見た目がカッコ良く女の子や女性ににアピールする要素があったかというと・・・申し訳ありませんが、彼ら全員見た目がお世辞にもロックスターで魅力的とは言えませんでした。

(Wikipediaより引用です)

それなりに身だしなみを整えたダンディな男たちだったら良かったのですが、まだ20代にも関わらず髪の毛も髭も伸ばし放題なその風貌です。
それに首を絞められながら歌っているような声では、ただでさえまだ少なかった女性ロックファンにアピールできるものではありませんでした。
(ロジャー・ホジソン様、誠に失礼で申し訳ございません)

というかそれはまたロックンローラーを目指す平均的な男の子が憧れるかっこよさも持っていませんでした。

大体においてファースト、セカンドともにジャケットデザインが最悪です。
もうちょっと購買意欲をそそるようなデザインだったらなあと思わせてくれます。

これですもの。

そういえば1980年代になると「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」などで一世を風靡するクリストファー・クロスという見た目はさておき、音楽性と楽曲の素晴らしさだけで売れるというアーティストが出てきます。

彼の場合は一応清潔感があってこざっぱりしており、その個性的なルックスとのギャップさえも武器となっているようでした。
しかし黎明期の1970年代はまだそうではなかったのかもしれません。

スーパートランプに至ってはジャケットデザイン、メンバーのルックスからしてあえてそれを狙ってブレイクするのを避けていたようにしか感じません。

思うに、たとえばですね。1970年代にロックアイドルとして女子に大人気だったベイ・シティ・ローラーズというバンドがいました。

そのローラーズがこのアルバム「クライム・オブ・ザ・センチュリー」を発表していたら、と思うと考えるのも怖くなるくらいファンが多くなって、ロックの歴史も変わっているような気さえします。

そういういまひとつ時流に乗れず、見た目も残念な(私も人のことは言えません)スーパートランプでしたが、音楽的には今聴いても普遍的なものを感じるすごいものを持っています。

素直にこのバンドはもっと評価されてしかるべきでは、と思わせるのです。

いやもしかしたら今の時代だからこそ、今の世代が聴いて、感じて、ブレイクするバンドかもしれません。

アルバム「クライム・オブ・ザ・センチュリー」のご紹介です。

Amazon.co.jp: CRIME OF THE CENTURY: ミュージック
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演奏

スーパートランプ

  • リック・デイヴィス
    ボーカル、キーボード、ハーモニカ
  • ロジャー・ホジソン
    ボーカル、ギター、ピアノ
  • ジョン・アンソニー・ヘリウェル
    サックス、クラリネット、バックコーラス
  • ダギー・トムソン
    ベースギター
  • ボブ・シーベンバーグ(ボブ・C・ベンバーグ名義)
    ドラム、パーカッション

ゲストミュージシャン

  • クリスティン・ヘリウェル
    バックコーラス (Tr.3)
  • ヴィッキー・シーベンバーグ
    バックコーラス (Tr.3)
  • 匿名のストリートミュージシャン
    ミュージカルソー(Tr.3) 
  • ケン・スコット
    ウォーターゴング Tr.8)

プロダクション

  • ケン・スコット
    プロデューサー、エンジニア
  • スーパートランプ
    プロデューサー
  • ジョン・ジャンセン
    エンジニア
  • レイ・スタッフ
    オリジナル・ヴァイナル・マスタリング
  • リチャード・ヒューソン
    弦楽器編曲
  • ポール・ウェイクフィールド
    カバーデザインと写真
  • ファビオ・ニコリ
    アートディレクション

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   School スクール
 (ロジャー・ホジソン、リック・デイヴィス)

ハーモニカに始まって1:45あたりまで怪しげな雰囲気が続きますが、ドラムが加わって一気にロックな展開になります。
後半のピアノ中心の展開からハードなアレンジになっていくところも見事です。
学校に向かう子どもに対して、「画一的な教育に押しつぶされるな」と歌いますが同時に「あなたはまだ未熟で何もわかっていない」というふうなことも歌っています。

ライブ映像です。

2,   Bloody Well Right ブラッディ・ウエル・ライト
 (リック・デイヴィス)

ホンキートンクなピアノに始まってロックな展開を迎えます。
珍しくギターがメインで展開していき、サックスも登場します。アメリカでウケたのもわかる感じです。
あなたの言ってることは全くの正論なんだけどさ・・・、という内容です。

ライブ映像です。

3,   Hide in Your Shell 貝殻のひとりごと
 (ロジャー・ホジソン)

邦題は「貝殻の独り言」というロマンチックなタイトルですが、ひきこもりさんへの歌です。
もし私があなたを助けられるなら、連絡してください、と優しく語りかけています。
サビのメロディが秀逸で、一度聴いたら耳から離れない感じです。

4,   Asylum アサイラム
 (リック・デイヴィス、ロジャー・ホジソン)

歌詞を見るとイジメについて歌っているようです。“落ち込んでいるときこそ僕は道化師になり、愚か者を演じる”、なんて歌詞も出てきます。
サウンドも重苦しい感じです。

5,   Dreamer ドリーマー
 (ロジャー・ホジソン、リック・デイヴィス)

ピアノに導かれるように小刻みに展開していきます。
夢想家について歌っています。夢ばかり語る人に現実を知っているのかとも言っています。
肯定と否定のどちらでも取れるような内容に感じます。

ライブ映像です。

6,   Rudy ルーディ
 (リック・デイヴィス、ロジャー・ホジソン)

これもピアノ中心で展開していくお得意のパターンです。後半はハードになっていきます。内容がまた深くて、

人生を通して
長年に渡り
誰も愛してくれなかった。
誰も気にかけなかった。
だから光を弱めて、君の恐怖は暗い
どれだけ頑張っても涙を抑えられない。
どうやって生きていけるの?
愛がなければ公平じゃない
誰かが与えろと言った
だけど僕には勇気がなかった

どんな良いアドバイスを待っているの?
聞くのは良いことだけど、彼らにとってそれが全て

聞くのは良いこと

(ここでのHearing=聞く、ということは「受け入れる」ということでしょうか)

7,    If Everyone Was Listening ピエロになるのは誰
 (ロジャー・ホジソン)

囁くような歌い方で始まります。作者のロジャー・ホジソンは「人生は全て、単なる劇」という人生哲学でシェークスピアの「お気に召すまま」をモチーフとしているそうです。

8,   Crime of the Century クライム・オブ・ザ・センチュリー
 (リック・デイヴィス)

前の曲が静かに終わると、この曲が静かに始まります。

“今、彼らは世紀の犯罪を計画している
一体どんな犯罪だろう?
彼らの企みや冒険についてすべて読んでみよう
料金を払う価値は十分にある。
さあ、見てみよう。
彼らがどのように宇宙を強姦し、
どのように悪からさらに悪へと堕ちていったのか
欲望、貪欲、そして栄光に満ちたこれらの男たちは一体誰なのか?
仮面を剥ぎ取って見てみよう。
しかし、それは正しくない。ああ、一体どういう話なんだ?
君と僕がいる。
そんなはずはない!”

歌が終わるとピアノ、ベース、ドラムを中心に進んでいきます。オーケストラが加わり、サックスが加わりドラマチックに終演を迎えるのでした。

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