「クラシック・ロックと言われ、ロックの最初期から存在し、80歳を超えてもなおロックし続けるザ・ローリング・ストーンズ、全人類のオスどもが何かを感じずにはいられない存在です。ミックのプライド、美学が詰まった逸品。」Foreign Tongues : The Rolling Stones / フォーリン・タングス : ザ・ローリング・ストーンズ

 これを書いています2026年7月10日、ザ・ローリング・ストーンズのニュー・アルバムがリリースされました。

前作「ハックニー・ダイヤモンズ」以来3年ぶりです。
スタジオアルバムとしては1964年のデビューアルバムから25作目であり、なんと62年に渡ってバンドを続けていることになります。

この新作は各方面から前作のサウンドを踏襲しているとの評価を耳にしていました。

ただ実際に聴いてみた感想としては、サウンドやコンセプトが若干変わっているように感じています。

適当な思い込みですが、それを解説してみようと思います。

レコーディングは2019年から2026年にかけてと長いスパンで表記があり、レコーディングはハリウッドのヘンソン・スタジオとロンドンのメトロポリス・スタジオとなっております。

実際、今までレコーディングしていてお蔵入りとなっていた曲も使用されているようです。

とはいえ当たり前の話ですが、リミックスなどでなどで全体は統一された今の音になっています。

そういう今回のサウンドは前作「ハックニー・ダイヤモンズ」とはまた違って聞こえます。

なんと言いますか、「ハックニー・ダイアモンド」は過去のストーンズのナンバーを思い出させるものが多く、長い道のりを辿ってきた自分たち、ローリング・ストーンズ自身へのオマージュを感じさせるものでした。

なんでしたら前作の解説をご覧くださいませ。

今回はそれを踏まえた上で、なおかつ今の時代性を踏まえ、自分達の血肉となっているブルーズ、ソウル、R&B、ゴスペルなどへのオマージュに聞こえます。

サウンドも比べればサウンドが幾分シンプルで、昔のように間を感じる音になっています。

そもそも基本的にオーディオの音質というものは、ストーンズが没落したと言われる(本人たちが聞いたら殴られそうです)1980年代以降に劇的に変化しました。

特にデジタル・レコーディングが普通になってからはゲート、コンプレッサー、リミッターなどがミキサーの各チャンネルに装備されるようになり、ミキシング・コンソールの入力、出力ともにほぼ無制限に使用できるようになったのです。

それにより分厚く迫力のある音の壁がたやすくできるようになったわけですが、これもまた不思議なもので、そこに力を入れすぎるとみんな同じに聞こえるという感じになってしまったりするものです。

ローリング・ストーンズも時代に合わせてそういう太く厚い音に変わっていきましたが、そういう音が本当にストーンズらしいかといえばまたちょっと違う気がします。(していました)

ストーンズには昔のR&Bやファンクミュージックにあったシンプル、ラフで間のある、粗い音のグルーブが似合うのです。

さらに言えばそれでも、どんなに頑張ってみたところで所詮本家のブルーズ、ソウル、ファンクには勝てない、という姿勢がまたいいのです。
それさえもカッコ良かったのでした。
(ファンとは屈折しているものです)

なんとなく今回のアルバムはまたそういうところに寄せていっている感じがしたのでした。

しかも今の時代、比較する本家が現存していないため、「勝った」と思わせるほどの説得力があります。

特筆すべきはミック・ジャガーのヴォーカルです。

youtubeで「Foreign Tongues Album Trailer」というのが見れるのですが、そこで見るミック、キース、ロニーのオリジナルメンバーはもう体の動きが完全にお爺さんになっています。

オフステージの彼らは本当に年相応なんです。

1943年7月26日生まれのミック・ジャガーはもうすぐ83歳になろうかという年齢ですが、パワフルな歌声は衰えを知らず、この枯れ方は尋常ではありません。

しかもそれでこのヴォーカル・パフォーマンスを演っているとは、もうなんとも頭が上がりませんですわ。

キースの関節炎などが原因でアルバムリリース後のワールドツアーがキャンセルになってしまいましたが、ステージで一番ハードで過酷であろうヴォーカリストのミックはやろうとしていました。

ミック・ジャガーのプライド、美学がここにあります。

「ストーンズがまだ頑張ってんだから、俺もまだまだ老け込んでいられないぜ」と気合を入れ直す迷惑を顧みないの不埒(ふらち)な老人(?)が世界中に発生していると思われます。
(私もぼちぼち人のことは言えない状況となっております)

これほどまでに長く続けられるザ・ローリング・ストーンズの秘密とは一体何なのでしょうか。

私が昔から勝手に思っているのはこういうことです。

ストーンズはなんと言いますか常に100点満点ではない、何かが足りないと思わせるバンドなのです。

それが音楽的にマイナスなのかというとそんなことはありません。

完璧ではない、まだいける、と思わせる分だけ伸び代(ノビシロ)を感じ飽きがこないのです。

ローリング・ストーンズは長い歴史の中で盛大に失敗したりもしていますが、その度に原点に帰ってまたやり直す、ということを続けてきました。

ビートルズやレッド・ツェッペリンなどは常に100点を感じる存在でしたが、ローリング・ストーンズやボブ・ディランにはいつまでもそういう “パーフェクトではない、未完成な危うさ“ を感じます。

今回のストーンズのアルバムと先月リリースされたポール・マッカートニーの「ダンジョン・レイン」との違いは私にとってはこれでした。

あえて完璧さを排除しラフで適当な感じを残し、聴く側に想像する隙間を残しておくこと、それが長く続けるコツなのかも知れません。

それはジャズを味わう時の感じにちょっと似ています。

心の中のイメージが膨らむ隙があって、それで何度聞いても飽きがこない、新しい発見があると思わせるものです。

ただし私は適当なので完璧を望むか不安定なスリルを望むかは毎日のように変わります。
どちらにしても音楽も素晴らしいものです。
(個人の感想です)

今回もプロデューサーは前回に続いて若き才能、アンドリュー・ワットです。

このアルバム制作に関わっているミュージシャン、スタッフは大人数ですが、曲の紹介前に端折ることなく記載(転記)してあります。

2021年に亡くなったチャーリー・ワッツの参加したナンバーが1曲収録されており、正式メンバーとして記載されています。(泣)

アルバムのカバーはストーンズのメンバーの顔を合成したもので、アメリカの芸術家ナサニエル・メアリー・クインという人の2025年のデザインが使用されています。

絵のタイトルは「トリニティ」だそうです。
トリニティということは現在残っているオリジナルメンバーのミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロニー・ウッドを掛け合わせたものですね。

賛否両論ありそうですが(否寄りです)まあ、こういうのが一つくらいあってもいいかと思います。

クラシック・ロックと言われ、ロックの最初期から存在し、80歳を超えてもなおロックし続けるザ・ローリング・ストーンズ、全人類のオスどもが何かを感じずにはいられない存在です。

アルバム「フォーリン・タングス」のご紹介です。

Amazon.co.jp: フォーリン・タングス (通常盤)(SHM-CD): ミュージック
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演奏

ローリング・ストーンズ

  • ミック・ジャガー
    ボーカル(トラック1~9、11~14)、バックグラウンド・ボーカル(1~12)、エレクトリック・ギター(1、2、4、5、7、8、11、14)、ハーモニカ(1、8、9、11)、アコースティック・ギター(2、5、6、11)、パーカッション(4、5、7、12)
  • キース・リチャーズ
    エレクトリックギター(全曲)、バックグラウンドボーカル(2、4、6、11、12)、アコースティックギター(4、9、10)、ピアノ(8)、ボーカル(10、14)
  • ロニー・ウッド
    エレクトリックギター(1~13)、ベースギター(1、2)、バックコーラス(4、10)
  • チャーリー・ワッツ
    ドラム (8)

ゲスト・ミュージシャン

  • スティーブ・ジョーダン
    ドラム(1~7、9~13)、パーカッション(4、9)
  • アンドリュー・ワット
    エレクトリックギター (1–4、9、11、13)、バックグラウンドボーカル (1、2、5、7、9、10、12)、パーカッション (2、8、11–13)、アコースティックギター (3、12、13)、ピアノ (3、4、9)、シンセサイザー (3、5、7、12)、ベースギター (8)
  • マット・クリフォード
    ピアノ(1、2、11)、オルガン(1)、シンセサイザー(3)、ローズピアノ(9、11)、シンセサイザー(11)
  • ジェームズ・キング
    テナーサックス(1、5、9、13)、アルトサックス(5、13)、バリトンサックス(9)
  • ベン・ウォーターズ
    ピアノ (1)
  • ベンモント・テンチ
    オルガン (2, 10)
  • ダリル・ジョーンズ
    ベースギター(3~7、9、10、12、13)
  • スティーヴ・ウィンウッド
    オルガン(3~6、9、12、13)、ローズピアノ(3、7)、ピアノ(5~7、10、12、13)
  • ナライ・ジェイコブス
    バックコーラス (4)
  • ロバート・スミス
    エレキギター(5)、バックコーラス(7)、シンセサイザー(7)
  • ロン・ブレイク
    トランペット(5、9、13)、フリューゲルホルン(13)
  • ブルーノ・マーズ
    カウベル (7)
  • ポール・マッカートニー– ベースギター (11)
  • チャド・スミス
    コンサートバスドラム(14)

テクニカル

  • アンドリュー・ワット
    プロデュース、エンジニアリング(全トラック)、ミキシング(14曲)
  • ドン・ワズ
     追加制作 (8)
  • ポール・ラマルファ
    エンジニアリング(全トラック)、ミキシング(14)
  • マルコ・ソンツィーニ
    エンジニアリング(1~7、9~13)、追加エンジニアリング(8)
  • マット・クリフォード
    エンジニアリング(8)、プリプロダクション(1~13)
  • クリシュ・シャルマ
    エンジニアリング(8)
  • ジョー・ブライス
    追加エンジニアリング
  • アレックス・カルテジオティス
    追加エンジニアリング(1~13)
  • ラース・フォックス
    追加エンジニアリング(1~13)
  • ジョー・ドハティ
    追加エンジニアリング(1、2、11)
  • ケルシー・ポーター
    追加エンジニアリング(1、2、11)
  • トミー・ターナー
    追加エンジニアリング (1、2、11)
  • Harpaal Sanghera
    追加エンジニアリング (3–7、9、10、12、13)
  • モリー・クラモンド
    追加エンジニアリング(3~7、9、10、12、13)
  • ダニ・ペレス
    追加エンジニアリング(8、11、12)
  • リッチ・エバット
    追加エンジニアリング (11)
  • ローレンス・アダムス
    追加エンジニアリング(13)、スタジオスタッフ(5~12)
  • セルバン・ゲネア–
    ミキシング
  • ブライス・ボルドーネ
    追加ミキシング
  • ランディ・メリル
    マスタリング
  • アンドリュー・ケーニッヒ
    スタジオスタッフ(5~14)
  • Dom Faccini
    スタジオスタッフ (5–14)
  • ローラ・ラムジー
    スタジオスタッフ(5~14)
  • Pia Squillino – スタジオスタッフ (5 ~ 14)
  • ピエール・ド・ボーポール
    スタジオスタッフ (5–14)
  • ライアン・ブリントン – スタジオスタッフ(5~14)
  • タヴィッシュ・ウェストウッド
    スタジオスタッフ(5~14)
  • トニー・ラッセル
    スタジオスタッフ(5~14)
  • アンナ・ドナルスキー
    スタジオスタッフ (5–13)
  • アーティ・スミス
    スタジオスタッフ(5~13)
  • マーク・ヴァン・グール
    スタジオスタッフ (5-13)

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Rough and Twisted ラフ・アンド・ツイステッド

ギターカッティングで始まります。
昔に戻ったようなブルーズテイストです。ローリン・アンド・タンブリンを思い出します。
マディ・ウォーターやミシシッピという歌詞も出てきます。
終わり方はピストルズ風だったりするんですね。

2,   In the Stars イン・ザ・スターズ

このナンバーもブルーズ風味が効いています。
イントロとサビの部分のウー、ウー、ウーというシンプルでパンクなコーラスでノスタルジックな雰囲気も感じさせます。

3,   Jealous Lover ジェラス・ラヴァー

グッと重心を落としたソウルフルなナンバーです。
ミックのファルセット・ヴォイスで1979年代のアルバム「サム・ガールズ」あたりをを思い出します。さすがミック・ジャガー、まだまだいろんな声が出せるようです。

4,   Mr. Charn ミスター・チャーム

ノリのいい曲です。基本は1960年代の雰囲気ですが1980年代ストーンズも感じさせます。

5,   Divine Intervention ディヴァイン・インターヴェンション

お得意のロックンロールです。
この曲の中間部のソロのところではボビー・キーズのサックスが聞こえてくるのが正しいストーンズファンの聴き方というものです。

6,   Ringing Hollow リンギング・ホロウ

ダウンホームなカントリーです。
昔からのファンであるおっさん達はこういうのに弱いのです。

7,   Never Wanna Lose You ネヴァー・ワナ・ルーズ・ユー

これもストーンズお得意の直情型ロックです。
ギターリフはありませんがルーツはキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」あたりです。

8,   Hit Me in the Head ヒット・ミー・イン・ザ・ヘッド

これもお得意の「リップ・ディス・ジョイント」「シャッタード」などと同じく超高速ナンバーです。
ドラムはチャーリー・ワッツです。

9,   You Know I’m No Good ユー・ノウ・アイム・ノー・グッド

2011年に27歳という若さで亡くなったエイミー・ワインハウスの曲です。
思いやりとともに懐の深さを感じさせます。

10,   Some of Us サム・オブ・アス

キースの歌う素晴らしいバラードです。
もう何も言えない世界です。
決してコーラスではないユニゾンのハモリがまたいいのです。
ミックのサポートも光っています。

11,   Covered in You カヴァード・イン・ユー

ミック・ジャガーらしくない声で始まるのでびっくりしました。しかしすぐにサビのメロディで落とす王道スタイルに戻ります。
ベースはポール・マッカートニーです。

12,   Side Effects サイド・エフェクツ

「サイド・エフェクト」とは薬物乱用による後遺症のことだそうです。
元気なサウンドで暗い歌詞というナンバーです。

13,   Back in Your Life バック・イン・ユア・ライフ

ミック・ジャガーが歌い上げます。
このアルバムにはスティーヴ・ウインウッドも結構な割合で参加していますが「バック・イン・ザ・ハイ・ライフ」へのアンサーソングのようだと思ってしまうのでした。
この高速泣きのギターはアンドリュー・ワットでしょうか。凄いやつです。

14,   Beautiful Delilah ビューティフル・デライラ

ロックンロールの始祖、チャック・ベリー様のカバーです。
63年前のデビューシングルもチャック・ベリーのカバー「カム・オン」でした。
デビューアルバムのオープニング曲もチャック・ベリーの「ルート66」です。
チャック・ベリーで終わるのでこれが最後のアルバムとなるのかもしれません。

ギターとヴォーカルだけのカントリー・ブルーズ・アレンジで演ってます。
まるであの偉大なるデルタ・ブルーズマン、サン・ハウスへのリスペクトです。
ストーンズの矜持を感じます。

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