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1969年のデビューアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」ですでにプログレッシブ・ロックの最高峰という地位を獲得したキング・クリムゾンです。
さらにその後もクリムゾンならではの質の高い芸術的作品をリリースしていきます。
今回はその中でもデビューアルバムと並ぶ名盤(とされる)「レッド」のご紹介です。
プログレの中でも技巧派、知性派と言われるロバート・フリップ教授率いるキング・クリムゾンは5人編成で1969年に発足しました。
そしていろんな変遷を経て、というか諸説ありますがキング・クリムゾンとはもともとロバート・フリップのアルバム毎のプロジェクトという意味合いが強いバンドですので、出たり戻ったりするメンバーも多いのです。
そしてなんとなく「暗黒の世界」で行き詰まった感も出てきた1974年、ついに3人の名義で「レッド」をリリースしました。
ロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブラフォードの3人です。
全て3人だけで作り上げたわけではありませんが、装飾を削ぎ落とした今までにない世界を見せてくれました。
何しろ前作は「スターレス・アンド・バイブル・ブラック=暗黒の世界」です。ライブとスタジオの音を上手くミックスしたようなアルバムでした。
これまでキング・クリムゾンはクリムゾンならではのは壮大な広がりを持つ世界がありました。
そこにジャズ的、前衛音楽的な技巧を取り入れて斬新な音楽を作り続けてきたクリムゾンです。
ただし乱暴にいってしまえばクリムゾンは進化していきますが、全てファーストアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」で示した曲(世界)のバリエーションの進化かもしれません。
このアルバム「Red」にしてもタイトル曲は「20世紀のスキッツォイドマン」に共通する過激な音像を感じる部分があります。(その昔は「20世紀の精神異常者」でした)
ただしここではぎゅっと押し固めたようなコンパクトで、しかしそこに入りきらないくらいの膨大なエネルギーを押し込めてハードロックとも言えるような音の世界を提示してきました。
なんと言いますか音像が近くなって「20世紀の・・・・者」よりも暴力的な過激さを感じます。
そしてこのアルバムまでが私にとっての抒情派クリムゾンの世界です。
象徴するのは2曲目の「Fallen Angel」とラストの「Starless」です。
ファーストアルバムで提示したこの路線でできることはもはややり切ったと思ったのか、この後フリップ教授は長い充電期間に入りました。
そして7年後の1981年にアルバム「ディシプリン」で復活します。
良くも悪くもそこには「宮殿」の香りは一切しない世界でした。
ロバート・フリップもキング・クリムゾンという名は使いたくなかったそうです。
その後もヌーヴォーメタル・クリムゾンへ発展して、重要作を作り続けることになります。
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実は私が真面目にキング・クリムゾンを聴いていたのは第3期クリムゾンと言われる「レッド」までです。
しかしフリップ教授は1980年代に入ると音楽状況がデジタルなどのテクノロジー含めて劇的に変わっても、柔軟に取り入れながら独自の世界を構築していきます。
そういえば2003年のアルバム「パワー・トゥ・ビリーヴ」の短いアカペラの後に始まる「レベル・ファイヴ」に「レッド」を拡張したようなギターリフが出てきます。
このアルバムタイトル「レッド」の意味するところはレッドゾーンのことです。
ジャケット裏にメーター(VUメーターといって音のレベルを表示するメーター)がレッドゾーンまで振り切っています。
単純に言えば過大入力で爆音となって音は歪み、機材は破壊寸前で人間の耳にも危険な状態です。
フリップはアルバム全体でこういう状況を表現しようと思ったのだと推測します。
1曲目の「Red」が始まると思わずスピーカーから炎が噴き出てるんじゃないかと錯覚しそうなほどの飽和した音がいきなり出てきます。
表面は3人の顔が白黒写真で写っています。
3人編成のプログレッシブ・バンドとなるとカナダのラッシュとELP(エマーソン、レイク&パーマー)が有名です。
少人数編成だとどうしても主張の強い超個性派が限界に挑戦するタイプになってしまうところが面白いところです。
考えてみればキング・クリムゾンのアルバムでポートレイトが出たのは初めてです。
前のアルバムが「暗黒の世界」、その前が「太陽と旋律」というシンプルながら含蓄のある芸術的なジャケットでした。もしかしたら今回は手抜きかと思った人もいるかも知れません。
でもよく見ると陰影の付け方とかかなり凝ったデザインです。
神妙な顔つきのロバート・フリップ教授とジョン・ウェットンですが、ビル・ブラフォードに至っては半笑いで何やら危ない人にしか見えません。
このアルバムのリリース時の売り上げは他のクリムゾンのアルバムと比べてチャートで苦戦しました。
地元イギリスにおいても他のアルバムは軒並み30位以内には入ったのですが、このアルバムは45位止まりでした。
しかしこのアルバムも時間をかけて評価が上がってきた種類の名盤です。
ロバート・フリップが表現したかった怒りや恐怖や運命などがこのアルバムの音だと思います。
この独特なサウンドと世界観により今やクリムゾンを代表する1枚となっています。
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演奏
ロバート・フリップ エレキギター、アコースティックギター、メロトロン、ホーナーピアネット
ジョン・ウエットン ベース、ヴォーカル
ビル・ブラフォード ドラムス、パーカッション
ゲスト・ミュージシャン
デヴィッド・クロス ヴァイオリン(Tr.4)、メロトロン
メル・コリンズ ソプラノサックス(Tr.5)
イアン・マクドナルド アルトサックス(Tr.3,5)
マーク・チャリグ コルネット(Tr.2)
ロビン・ミラー オーボエ(Tr.2)
プロダクション
キング・クリムゾン プロデュース、アレンジメント
ジョージ・キアンツ レコーディングエンジニア
ロッド・シアー レコーディング・アシスタント・エンジニア
クリス・テックス、ハーベイ、ピーター・ウォルムスリー イクイップメント
ジョン・コッシュ カバー
グレッド・マンコウィッツ フォト
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曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Red レッド
(ロバート・フリップ)
インストゥルメンタルの曲です。この曲は最初からVUメーターがレッドゾーンを振り切ったレベルを想像しながら聴いていただきたいと思います。
今のデジタルの時代ではもっとエッジの立った過激な音が作れるかもしれませんが、アナログテープの時代でオーバーレベルの飽和状態を表現しようとしたところはすごいと思います。
今でも過激な暴力性は十分に感じられます。
2, Fallen Angel 堕落天使
(ロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、リチャード・パーマー・ジェームス)
シンセサイザーのブバババババという太い低音で始まるので一瞬1曲目の延長かと思いますが、すぐに静謐な世界に連れて行かれます。
ジョン・ウェットンの声は暗く、重たく、妙に説得力があります。
3, One More Red Nightmare 再び赤い悪夢
(ジョン・ウェットン、ロバート・フリップ)
重たいギターリフがかっこいい曲です。
ドラムが煽ります。ハードロックの世界です。
4, Providence 神の導き
(デヴィッド・クロス、ロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブラフォード)
たぶんロバート・フリップの趣味なんでしょうが、クリムゾンはこういうサウンドギミックが好きなんですね。私的には次の曲への長いイントロだと思っています。
5, Starless スターレス
(デヴィッド・クロス、ロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブラフォード、リチャード・パーマー・ジェームス)
この曲はジョン・ウェットンがコードとメロディを作り、前作「暗黒の世界=Starless and Bible Black」のタイトルトラックにしようとしていた曲だそうですが他の二人に拒否されてしまい、別のインスト曲を作られてしまいました。
しかしアレンジし直した結果「スターレス」としてここに無事収録されました。
いかにもキング・クリムゾンという曲です。綺麗なメロディが随所に出てきて、中間部に1stアルバムのタイトル曲と同じくお約束のサウンドギミックのパートが出てきます。
*キング・クリムゾンに深入りしたいあなたに
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