「これがかのパンクでロックでキッチュなフリした才能溢れる策略家の登場でした」My Aim is True : Elvis Costello

 英国のミュージシャン、エルヴィス・コステロは1977年のデビュー以来、さまざまな音楽スタイルに挑戦して多くのアルバムをリリースしてきました。
今や超ビッグネーム、音楽界のレジェンドとなったエルヴィス・コステロですが、そのきっかけとなった1977年リリースのデビューアルバムについてのご紹介です。

実際、このアルバムは売り上げよりも業界内での評判がすごくて、一躍コステロの評価は爆上がりしました。
これを契機にその後数十年にわたって音楽活動を続ける礎となりました。

今聞いても時代を感じるような古臭さはなく、極上のポップなメロディが並んでいます。
時代を反映したパンク、ニューウェイヴも感じられ、伝統的なロックンロールやポップスもうまく共存しています。

このアルバムに初めて触れた時のことはよく覚えています。

その当時はもうクラッシュとかジャムも知っていました。そういったバンドがかっこいいと思っている年頃の高校生だったのです。

友達の家でコステロのアルバムを持っていたのを見つけました。それを見ながら、

「エルヴィスってプレスリーにあやかってんだろ、最後はラスベガスでショーやってたんだし、ロックから離れてしまった人じゃん」

「この昔のロックンロールのバディ・ホリーみたいなメガネ、今どきないよね」

「ジーンズもブラックじゃなく、裾折ってるし、なんか貧乏臭くね」

「フェンダー・ジャズマスターなんて今時誰も使わないよ」

「キング・エルヴィスっていっぱい書いてあるけど、なんかダサいの極致じゃね」

と矢継ぎ早に悪口を連発したものです。

すると

「なに、人様の趣味にふざけたこと言ってくれてんだ。そのうち殺されるぞ」と言いながら

「というかマジな話、アルバムを通して聞くとスゲーいいんだよこれ。ちゃんと聞いてみなって」
と言って聞かせてくれました。

そうして

「す、すげーかっこいいジャケットですね。さすがお目が高い。センスのかたまりじゃないですか」

とA面が終わった時点で見事に手のひらを返したものでした。

実際、当時は新しい音楽の最先端みたいなものでした。初期のコステロはニューウェイヴの旗手としてとんがっていました。
特にこのファーストアルバムはパンキッシュな部分やハングリーさが感じられ若い世代に支持されました。

コステロはデビューアルバム作成時、アイデアとセンスは充分にあったもののやはりお金がなかったそうで、自分のバンドを作れなかったと答えています。

アトラクションズというバンドが結成されるのはこのアルバムが評価されてからになります。

ただしこのファーストアルバムのバックは後の1980年代に映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と共に大ブレイクするヒューイ・ルイス&ザ・ニューズの面々です。
彼らは最初見た時から結構ベテラン・スタジオミュージシャン風だったので、当然演奏能力は確かなものでした。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニューズについては私はあまり知らないのですが、結構本格的ないいバンドと言われていました。
ただし難を言えばこのコステロのデビュー作は「スティッフ・レコード」という弱小レコードレーベルだったせいか、プロデューサーのニック・ロウの狙いかは分かりませんが、スタジオライブみたいなネイキッドな音です。

実際にオーヴァーダビング等は一切無しで、ヴォーカルもエコー処理とかされている気配がありません。サウンドはガリっとした乾いてエッジの際立った音です。

個人的なことですが、サウンドについては昔の貧弱な機材の時は低音のないアルバムだと思っていましたが、最近はちゃんとしたセッティングで聴くと結構グルーヴする低音を感じます。

コステロのエコーなしのヴォーカルはこの後も続きます。パブロック的でいいかと思いますが、これはかなりの実力がないと難しい手法です。

音楽界への影響力も相当あったように思います。Mr.Childrenもパロディ風にコピーしていました。
そして初期のコステロの佇まいは個人的に今年1月に亡くなられた日本のロックの重鎮、鮎川誠さんとかぶってしまいます。真髄が「パンク、ロック、ブルーズ」の人でした。

アルバム「マイ・エイム・イズ・トゥルー」のご紹介です。

上記データは私の「デラックス・エディション」のものです。

演奏
エルビス・コステロ  ヴォーカル、ギター、ピアノ

ジョン・マクフィー  リードギター、ペダルスティールギター、バッキングヴォーカル

ショーン・ホッパー  ピアノ、オルガン、バッキングヴォーカル

ジョニー・シャンボッティ  ベース、バッキングヴォーカル

ミッキー・シャイン  ドラムス

スタン・ショウ  「レス・ザン・ゼロ」オルガン

ニック・ロウ  「ミステリー・ダンス」ピアノ、ドラムスティック、バッキングヴォーカル

アンドリュー・ボドナー  「ワッチング・ザ・ディテクティブ」ベース

スティーヴ・ゴールディング  「ワッチング・ザ・ディテクティブ」ドラムス

スティーヴ・ナイーヴ  「ワッチング・ザ・ディテクティブ」オルガン、ピアノオーバーダビング

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Welcome to the Working Week  ウエルカム・トゥ・ザ・ワーキング・ウィーク

短いながらもつかみはOK、いきなりギザギザのコステロワールドは完璧です。
サラリーマン時代は月曜日になると毎週のように口ずさみながら通勤していました。

2,   Miracle Man  ミラクル・マン

続いてこれもキレがいいサウンドながらも哀愁を感じる名曲です。若い人には刺さります。

3,   No Dancing   ノー・ダンシング

青春のほろ苦さです。この流れも最高です。

4,   Blame It on Cain  ブレイム・イット・オン・ケイン

ノスタルジックな感じもするリズムが気持ちのいい曲です。ネイキッドなサウンドです。

5,   Allison  アリソン

今やスタンダードとも言える名曲です。リンダ・ロンシュタットもカバーしていました。

歌詞にアルバムタイトルが出てきます。

6,   Sneaky Feelings  スニーキー・フィーリングス

コステロ得意のトーク調の早口で歌います。

7,   (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes  (ジ・エンゼルス・ウォンナ・ウェアー・マイ)レッド・シューズ

この曲も1曲目と同じく展開が綺麗にまとまっています。

8,   Less Than Zero  レス・ザン・ゼロ

1980年代にはこの曲に触発されたようなサウンドがいっぱいあったような気がします。それだけ影響力があったのです。

9,   Mystery Dance  ミステリー・ダンス

「監獄ロック」みたいなロックンロールです。パンクも感じます。

10,  Pay It Back  ペイ・イット・バック

ビートの効いたサウンドです。余裕の一曲という感じです。

11,  I’m Not Angry  アイム・ノット・アングリー

こう言う人は大概本当は怒っています。恋人が他の彼氏といることを見てしまった歌です。

12,  Waiting for the End of the World  ウエイティング・フォー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド

ちょっと気だるそうに歌います。デビューアルバムでこの余裕は相当に実力があるのだとわかります。全てが計算されています。

以上がオリジナル・アルバムの収録曲です。

https://amzn.to/3S3AOZn
Bitly
Amazon.co.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました