「我が道を行く、ヴァン、男だね」Moondance : Van Morrison / ムーンダンス : ヴァン・モリソン

 もちろん会ったことなどありませんが、ヴァン・モリソンは偏屈者で有名です。彼と一緒に仕事をした人はみんな「もう2度とやりたくない」と言うそうです。
しかるに非常に性格的に問題ある人かもしれません。それでもみんなして彼の音楽に対する姿勢、才能には高評価を与えます。

ただの偏屈者なら次第に人も離れて行って、本人も忘れ去られることになるでしょう。でも1960年代のブリティッシュ・ロック・グループ「ゼム」でデビューし、ソロになり、今までコンスタントにアルバムをリリースして、安定したミュージシャン活動をしています。
きっと「筋の通った偏屈者」なのでしょう。
「ゼム」とは誰のネーミングかは知りませんが、また偏屈な名前ですよね。
一緒に生活するとか、仕事で組むとかになるとストレスがたまる人かもしれません。
でも作品に触れるだけなら芸術家なんですから、偏屈だろうがなんだろうが関係ありません。作品の質が高ければOKです。

とはいえ、日本では知名度もイマイチでまだ来日したこともありません。
本人も「日本人に俺の音楽がわかるか!」くらいに思ってそうです。しかもグラミー賞とかにも無縁です・・・と思ってたら、割と候補には上がっています。一応1993年にはロックの殿堂入りをしています。

来歴

ヴァン・モリソンは北アイルランドのベルファストで1945年8月31日に生まれました。正式名はサー・ジョージ・アイヴァン・モリソンです。
12歳の時からスキッフルバンドなどで音楽活動を開始して、いろんなバンドを渡り歩き1964年に「ゼム」としてデッカと契約します。「グロリア」などの大ヒット曲も出ましたが1966年には解散し、1967年以降はソロとして活動を続けています。


初めて知ったのは18歳の学生の時でした。池袋の映画館でザ・バンドの解散コンサート映画「ラスト・ワルツ」をみた時です。
当時はまだビデオも普及しておらず、当然YOU TUBEはもとよりまだMTVとかもありません。動くミュージシャンを見ること自体が非常に貴重な時代でした。
コンサートにはゲストミュージシャンとして日本では見ることもないような貴重な人たちもたくさん出演しています。
その時代は映画館も入替などないので、目をさらにして1日で2回見るのを2日間繰り返した記憶があります。

ニール・ヤングの顎についている白いものはなんだろうとか、(最近の映像ではコカインだったので映像修正して取ってあります)エリック・クラプトンのギターストラップが外れた、フォローしてすかさずソロをとるロビー・ロバートソンがかっこいい、同じストラトキャスター なのにロビーの音はペラペラだ。でもそこがまたいい。マディ・ウォーターズとステイプル ・シンガーズはやっぱり説得力が違う。などと時間を忘れて感動しながら見たものです。

映画の終盤に後頭部の禿げ始めたチビでデブで腹のでたおじさんが出てきました。七三分けの髪型で「キャラヴァン」と言う曲を歌い、サッカーボールを蹴るような仕草でエンディングを引っ張ります。・・・正直、18歳の少年にはとてもとてもかっこいいミュージシャンには見えませんでした。一瞬この人は作品全体の質を落としているんじゃないかとさえ思ったくらいです。
でもなぜか声は心に響いてきました。“ラーラーララ、ララッラ”と言うコーラスが頭を離れません。
2回目を見終わった時には「なんかすごいものを見てしまった。ヴァン・モリソン、あのインパクトは只者ではない」と感じたものです。

ヴァン・モリソンが終わって退場する時に、ザ ・バンドのロビー・ロバートソンが「Van The Man!」と紹介します。字幕で「ヴァン、男だね!」となっていました。

しばらくしても頭を離れないので「キャラヴァン」の入っているアルバム「ムーンダンス」を購入しました。

誰もが納得する名盤です。そこで私も「そして、ああ、なんてかっこいい男なんだろう」と思った次第です。(単純なのです)

以後40年以上経ちましたがヴァン・モリソンは何も変わりません。

*ラスト・ワルツのキャラヴァンを歌うシーンの動画をリンクさせていただきます。

彼のアルバムは全部で50枚近くリリースされています。最近になって改めて手持ちの分を数えてみたら、27枚ほど持っていました。とても全ては無理そうです。
それでも自信を持って言えることは、ヴァン・モリソンは全部同じです。変わらないです。
彼のスタイルと技術だけ研究したいのであれば3枚くらいあれば十分かもしれません。でも新しいアルバムがリリースされると世界中に買う人が待っています。それが凄いところですよね。

ヴァン・モリソンにはアイルランドを感じます。
そして遙かな昔に、アイルランド民謡からスコットランド民謡、そこからアメリカのアパラチア山脈へ、アメリカーナ、ヒルビリー 、ブルーグラス 、カントリー へ、などと続く壮大な音楽の系譜を想像して、ブルースと同じように胸に染み入ります。

アルバム「ムーンダンス」のご紹介です。

演奏

ヴァン・モリソン ヴォーカル、ギター
ジョン・ブラタニア  リードギター
ジョン・ブリンバーグ  ベース
ゲイリー・マラバーン  ドラムス 、ヴィブラフォン
ジェフ・レイベス  ピアノ、ハモンドオルガン、クラビネット
ガイ・マッソン  パーカッション
ジャック・シュローアー サキソフォン
コリン・ティルトン  フルート、サキソフォン
(バッキング ヴォーカル Tr3, Tr8 )
エミリー・ヒューストン、ジュディ・クレイ、ジャッキー ・ヴァーデル  

私が知らないだけかもしれませんが、そんなに有名なミュージシャンはいないようにも思えます。でも実力は確かです。


曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,    And It Stoned Me ストーンド・ミー

いきなり歌い出します。渋い曲です。引き込まれます。


2,    Moondance  ムーンダンス

ウォーキングベースに乗ってメロディアスな曲です。


3,    Crazy Love クレイジー・ラヴ

囁くように歌い始めます。割と有名な曲です。アイリッシュ・ソウルです。


4,    Caravan キャラヴァン

映画「ラスト・ワルツ」で有名です。エリック・クラプトンをして「ヴァンとマディがショーを全て持っていった」と言わしめました。


5,    Into The Mystic イントゥ・ザ・ミスティック

喋っているようでも全てが音楽になっています。そこがすごいところです。


6, Come Running カム・ランニング

ヴァン・モリソンにしてはアップテンポでノリノいい曲です。ベースラインが印象的です。


7, These Dreams Of You ジーズ・ドリームス・オブ・ユー

アレンジが懐かしい感じのロックンロール長です。余裕で楽しんでいるようです。


8, Brand New Day ブラン・ニュー・デイ

リラックスした歌い方ですが、説得力を感じます。この人ならではの声です。


9, Everyone エヴリワン

クラヴィネットとフルートで他のロックでは味わえない雰囲気があります。


10, Grad Things 嬉しい便り

これも変わった雰囲気を持つ曲です。メロディはポップなので違和感はありません。

以上、10曲。しみじみといいアルバムです。

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