「ジョン・レノン版アフター・ザ・ビートルズの挑戦」Plastic Ono Band : John Lennon / ジョンの魂 : ジョン・レノン

 「John Lennon / Plastic Ono Band 」というジョン・レノンの初ソロアルバムです。
邦題は「ジョンの魂」、きっとヨーコさんがいるので、日本語のタイトルは本人も了承していたのでしょうが大きく出たものです。“俺の本音を聴いてくれ” という感じですね。

古くからファンの間では「じょんたま」と呼ばれています。

これを聴きながらふと、考えました。
偉大な音楽家、というか芸術家は大きく分けて2種類存在していると思います。

乱暴にいうと周囲への「依存型」と「利用型」です。

これはけっして悪い意味で言っているのではありません。もっといえば人間というものもすべからくこれに当てはまるのかも、などとも考えられます。
基本、共通しているのは「自分本位」=「オレって最高」ということです。

ただし、突出した表現力がなければ依存型はただの「ダメ人間」、利用型は「ずるい」としかいわれません。両者ともただならぬ才能があれば音楽などの分野を超えた「芸術家:アーティスト」と呼ばれます。

依存型の代表格はジョン・レノンとジョン・コルトレーンです。
二人とも何かに完全に依存している時に、安心して自分をさらけ出し、集中的に創作活動に専念します。そしてすごい才能を発揮、歴史に残る仕事をします。
そういう時には必ずと言っていいほど「技術」とか「宗教」とか、はたまた「女性」などの絶対的価値があり、万人が否定しがたいものに強く依存しています。

利用型はボブ・ディランとマイルス・デイヴィスです。二人とも上手に「ブルーズ 」や「伝統音楽」や、はたまた「映画」や「他の芸術作品」まで上手に咀嚼して、一見すると完全にオリジナルで、今までになかったような歴史に残る作品を発表しています。(なんか悪口になってますが、そうではないのです。私なりの愛情表現です)

まぁ当然創造力も表現力も無い「依存型」で「利用型」という人もいるわけですが・・・ただの救いようのない人ということになってしまいます。・・・あっ、やばい、自己紹介か!

そこで「じょんたま」です。
10代で最初聞いた時には、なんでこうまで赤裸々にぶちまけられるんだろう。とにかく重く、暗すぎて体調の良い時にしか聞けないぞこれは。とずっと思っていました。
表現力としてはとにかくすごいの一言です。突き刺さるような歌詞は無視できるものではありません。

でも冷静に考えると、ビートルズという共同体がなくなり、とっても不安定だったジョンにオノ・ヨーコという完全に依存し安心できる人ができて、常に一緒にいられるようになった。そうして安心してさらけ出せる環境になって始めて作れた作品なのです。

この時期には心理学者の著書に興味を持って、精神治療を受けていました。
どん底の真っ只中ではなく、余裕ができたので過去と現実に向き合えたのでしょう。そしてミュージシャンらしく音楽で表現してみました。

というロックンローラー、ジョン・レノンによる1970年、ビートルズ解散直後のソロアルバムです。
ということまでわかると純粋に音楽として楽しめます。

リンゴ・スターによるとレコーディング中は泣いたりしていたそうですけど、これは役に入り込んでいたとも取れます。演じることができるのはもう余裕がある状態です。
ほんとに歌詞の内容のような全てがどん底の状態なら、音楽を創ったり演ったりしている場合ではありません。
立ち直ってポジティブに創作活動を始めたジョンの作品と思います。

アルバム「ジョンの魂」のご紹介です。

演奏

ヴォーカル、ギター、ピアノ、オルガン ジョン・レノン
ベース クラウス・フォアマン
ドラムス リンゴ・スター
ピアノ ビリー・プレストン (ゴッド)
ピアノ フィル・スペクター (ラヴ)


曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。トラックには動画もリンクさせていただきます。


1,    Mother マザー

昔ビートルズに詳しい先輩に「鐘の音はトライアングルの音をテープ速度を落として再生しているんだ」と教えてもらった記憶があります。
歳をとったせいか10代の頃よりは冷静に聞けます。こういってはなんですが、いきなり人に進めるのはためらいます。




2,    Hold On しっかりジョン

偉大と言われるミュージシャンはみんなナルシストです。


3,    I Found Out 悟り

前に進むために今までの自分を否定しています。


4,    Working Class Hero 労働者階級の英雄

タイトルだけを見れば勇ましい感じですが、ジョンは自分のことを皮肉って歌います。
ボブ・ディランの影響丸出しです。




5,    Isolation 孤独

孤独ではなく孤立、世間との絶縁のことを歌っています。


6,    Remember 思い出すんだ

誰でもそうですが、過去にとらわれている歌です。


7, Love ラヴ

これ以上ないくらいシンプルなタイトルとシンプルなメロディです。ナルシストでないと無理です。




8,    Well, Well, Well ウェル・ウェル・ウェル

唯一、激しいリズムの曲です。実はたいして激しくもないのですが。


9, Look At Me 僕を見て

やっぱり、ナルシストです。


10, God ゴッド

これも自己否定の曲です。なぜか好きです。ジョン・レノンにしか書けません。


11, My Mummy’s Dead 母の死

トラウマから決別しようとしています。


以上がオリジナルアルバムの内容です。CDではボーナストラックとしてモノによって「Power To The People」、「Give Peace A Chance」、「Cold Turkey」、「Instant Karma」などが入ってきますので、印象が変わってくると思います。

プロデュースはフィル・スペクターですがウォール・オブ・サウンドと呼ばれるフィル・スペクター臭さは感じません。最近のリマスター盤は音がリアルになって、アナログレコードの頃のもやっとした雰囲気は無くなりました。好みで言えばリアルな音が好きですので大歓迎。

Bitly



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