「キーワードはボーダーライン」Get Rhythm : Ry Cooder / ゲット・リズム : ライ・クーダー

 ジャンルを感じさせない音楽職人、ライ・クーダーの1987年11月リリースの11枚目のオリジナルアルバムです。

ライ・クーダーはずっと古い曲を掘り起こして現代風に(とは言えないか、別ジャンルの音楽要素を取り入れたりして)再構築、新しい感覚の音楽として披露してくれていました。

今回は比較的、いやとってもメジャーな、超大物ミュージシャンのジョニー・キャッシュ、チャック・ベリー、エルヴィス・プレスリーなどをカバーしてくれています。

さらに今までのアルバムに比べてエレキギターでのスライド使用率が高く、これもライの独特の音楽感がわかって面白いものです。

こういう姿勢から彼らしい音楽への愛情が感じられ、素直に音楽っていいもんだなあと感じられる次第です。

このアルバムはサウンドトラックはもういいよ、と思っていた時期にリリースされたので、とっても嬉しかったことを覚えています。

ノリの良いジョニー・キャッシュの名曲カバー「ゲット・リズム」から始まり、1980年のアルバム「ボーダーライン」のタイトルとの関連がありそうな「アクロス・ザ・ボーダーライン」があったりと大変充実しています。
「ボーダーライン」は名曲です。この時期 “音楽は国境を越える” という意味でライ・クーダーのキャッチフレーズとなっていました。

ただしこの時期、1987年のアルバムリリース時点では、巷の音楽の主流はガンズ・アンド・ローゼズやヴァン・ヘイレンなどのアリーナクラスのロックとか、プリンスやマイケル・ジャクソンなどの最新ブラックコンテンポラリー とか、「ウイ・アー・ザ ・ワールド」出演のお歴々の大活躍の時代でした。またサウンドはデジタル化(といってもまだCDフォーマット)とシーケンサーを使った打込みリズムが主流の時代です。

しかしライの音楽はそこから大きく外れていました。
なので当然、ヒットチャートとは縁がありません。
サントリーのウイスキー、アーリー タイムス のコマーシャルで世間にも多少の認知度はありましたが、この時期のライ・クーダー は趣味人の聴く音楽でした。

このアルバムの発売の翌年、デヴィッド・リンドレーと来日してくれたので、NHKホールへ見に行ったのを覚えています。大盛況だったので日本でも固定ファンは多いアーティストだと感じました。(もちろん今でも変わっていません)

こういう「我が道を行く」ところも魅力を感じる一因なのです。

この後、唄入りのコラボではない本当の意味でのソロアルバムは18年後の「Chavez Ravine」まで待たなくてはなりません。
しかしながらその間もアフリカのアリ・ファルカ・トーレやキューバのヴエナ・ヴィスタ・ソシアル ・クラブ、そしてアイルランドのチーフタンズなどのワールドミュージックとコラボして聴く人も視野が広がるような活動をしていきます。本当に音楽界にとっては貴重な存在です。

アルバム「ゲット・リズム」のご紹介です。

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演奏
ライ・クーダー  ヴォーカル 、ギター
ジム・ケルトナー  ドラムス
ホルヘ・カルデロン  ベース
ブエル・ネードリンガー  アコースティック・ベース (Tr. 2,6,8)
ヴァン・ダイク・パークス  キーボード
フラーコ・ヒメネス  アコーディオン
スティーヴ・ダグラス  サックス
ミゲル・クルス  パーカッション

コーラス 
ボビー・キング、テリー・エヴァンス、アーノルド・マッカラー、ウィリー・グリーンJr
ラリー・ブラックモン (Tr. 6)
ハリー・ディーン・スタントン (Tr.8)

*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


曲目
1,   Get Rhythm  ゲット・リズム
(作 ジョニー・キャッシュ)

カントリーの重鎮、ジョニー・キャッシュの代表曲をテックス・メックス風味も加えてカバーしています。スライドギター大活躍、屈指のカバーだと思います。


2,    Low Commotion  ロウ・コモーション
(作 ライ・クーダー、ジム・ケルトナー)

インストものです。最初は「何これ」と思いましたが、全体の流れでいけばこれでいいのかも。


3,    Going Back To Okinawa  ゴーイン・バック・トゥ・オキナワ
(作 ライ・クーダー)

沖縄音階も交えて楽しく沖縄というか、恋人と別れてヤケクソというか。


4,    Thirteen Question Method  サーティーン・クエスチョン・メソッド
(作 チャック・ベリー)

アコースティックギターの弾き語りでチャック・ベリーのカバーです。


5,    Woman Will Rule The World  ウーマン・ウィル・ルール・ザ・ワールド
(作 Raymond Quevedo)

カリプソです。タイトルは意味深で皮肉たっぷりなのでしょう。


6,    All Shook Up  オール・シュック・アップ
(作 エルヴィス・プレスリー、オーティス ・ブラックウェル)

歪んだスライドギターでハードなリズムに乗せて渋く歌います。こういうロックな一面もまだ残っていたと嬉しい限りなのです。


7,    I Can Tell By The Way You Smell   アイ・キャン・テル・バイ・ザ・ウェイ・ユー・スメル
(作 ウォルター・ディヴィス)

これも同じくハードに歪んだスライドギターでブルーズピアニスト、ウォルター・デイヴィスのカバーです。オリジナルは1935年の録音です。


8,   Across The Borderline  アクロス・ザ・ボーダーライン
(作 ライ・クーダー、ジム・ディキンソン、ジョン・ハイアット)

この1曲のためだけでもアルバムを手に入れる価値があります。歌、演奏ともにライ・クーダーの最良の音楽の一つです。


9,    Let’s Have A Ball  レッツ・ハヴ・ア・ボール
(作 アレン・バン)

これも1950年代の曲のカバーです。ノスタルジックな不雰囲気とともにこのアルバムの象徴ともいえる歪んだエレクトリック・スライドギターでライ・クーダー らしさが満載です。


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