「時が経つほどに評価が上がっていったアルバム、今やストーンズの代表作と言われるまでになりました。」Exile On Main St. : The Rolling Stones / メインストリートのならず者 : ザ・ローリング・ストーンズ

 ロック、ジャズのアルバムにはリリースした時よりも数年、数十年たってから次第に評価が上がってくるアルバムがあります。
ロックでいえば有名なところではビートルズの通称「ホワイトアルバム」、レッド・ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」、そしてこのローリング・ストーンズの「メインストリートのならず者」がその代表です。
当然、そうなるにはそのミュージシャン、バンドが時代を超えて支持され、評価されていることが絶対条件です。
すぐに廃盤となってミュージシャンごと忘れさらえるような存在では話になりません。
なので大物ストーンズ、ビートルズ、ツェッペリンならではと言えるかも知れません。
ここにあげた3枚のアルバムの共通点として、

・LPレコードにして2枚組である。
・トータル性がない(寄せ集め的)
・発売当初はバンドの過渡期の作品とされた。(こういう言い方は評価が低かったと言うことです)

と言う感じでしょうか。

そしてもう一つ大切なこと、実はこれらは最初に聞くべきアルバムではなく、一通り有名なアルバムは抑えておいて、それから聞くとより奥深さが増して愛聴盤となり得るという特徴があります。
自分ではよく聞くけど、人に真っ先に勧めるのはためらう、というか好きになって見つけて欲しいアルバムでもあります。(はいもう自己矛盾の塊です)

ビートルズの「ホワイトアルバム」とツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」は以前にご紹介済みです。下記リンクしておきます。

「フォークからハードロック、ヨーロッパからアジアまで、味わい深い2枚組大作」Physical Graffiti : Led Zeppelin / フィジカル•グラフィティ : レッド・ツェッペリン
今やクラシックハードロックの王者となったレッド・ツェッペリンが1975年にリリースしたLPレコードで2枚組の大作です。 前作「聖なる館」はアルバムに統一感があ離ましたが、今回はとにかくいろんなことを詰め込んでみましたという感じです。
「最初に見た時、“サーフィンからアヴァンギャルドまで、ビートルズ音楽の錬金術”。という名コピーがレコードの帯にありました。」The Beatles White Album / ザ・ビートルズ
 アルバムタイトル「The BEATLES」通称「ホワイト・アルバム」はビートルズの1968年11月22日にアップル・レコードからリリースされた九枚目のアルバムです。当然のごとく全世界でヒットしましたが、内...

そしていよいよローリング・ストーンズの「メインストリートのならず者」登場です。
1972年5月26日リリースの10枚目のスタジオアルバムです。ストーンズ初の2枚組LPでリリースされました。
一般的にはミック・テイラー期と言われており、初期のブライアン・ジョーンズ在籍期、現在も続くロン・ウッド以降期とはまた違ったアーシーな魅力があります。この時期のストーンズに思い入れがある人も多いようです。

前作は起承転結のはっきりした名作「スティッキー・フィンガーズ」でした。
そして今回は他の2枚組の例に漏れず力作の後ですから肩の力を抜いてやりたいことをやってみた感じです。

これが許されるのは、もちろん実績がある偉大なるクリエイターだからです。
ビートルズの場合は優秀なコンポーザーが3人もいたため、いろんな方向へ触手を伸ばした感じでしたが、ストーンズはツェッペリンと同じくバンドの中心となるリーダーがはっきりしています。
ストーンズはのちに「ザ・グリマー・トゥインズ」と名乗るようになるミック・ジャガーとキース・リチャーズのコンビで曲を制作し、方向性を決めていました。
(グリマー・トゥインズの名称が使われるようになったのは1974年の「イッツ・オンリー・ロックンロール」からです)
二人の音楽的な嗜好はブルーズ、ロックンロール、R&B、ソウル、ファンク、ゴスペル、カントリーなどです。

そういえばちょうどこの時期、アレサ・フランクリンのゴスペルアルバム「アメイジング・グレイス」のライブ映画が撮影されていて、ようやく最近になって50年ぶりに公開されました。
そこでライブ会場だったロサンゼルスの教会に来ているミックとチャーリーが映っているのが確認されます。(トリビアな話です)
このアルバムではゴージャスなサウンドから弾き語り的なものまで、いろんな方法でそう言うルーツ音楽を取り込んでいます。

リリース当初は散漫でトータル性が見えないと評価する人も少なかったようですが、(そう言う時代でした)1,990年代に入ったくらいから徐々に評価されるようになり、最近ではローリング・ストーンズの代表作とまで言われるようになりました。
逆に評価を落としていったのが「イッツ・オンリー・ロックンロール」です。
あれもいいアルバムなんですけどね。
「メインストリート・・・」は今となってみればシンプルな音でも今までにない高低差と幅を感じ、飽きのこないアルバムとなっています。
と言うより1980年あたりからのストーンズはサウンドが太くリッチで、これが悪いとは言いませんが、どれも同じに聞こえてしまう感が生まれてしまいます。
昔の音がスッカスカながらも切れ味とセンスで勝負している音が好きと言う貴兄も多いのではと思われます。(はい、私です)

例えばこの後の「山羊の頭のスープ」や「イッツ・オンリー・ロックンロール」に見える音の風景はアルバムごとに同じバンドとは思えないほど違います。
そして「ブラック・アンド・ブルー」も入れたりしたらまたこれも全く違うのです。
こんなふうに1970年台のストーンズはアルバム毎にイメージは広がり、ものすごいスケールを感じさせます。
ここがローリング・ストーンズの魅力だと言いたいところです。

そしてこのアルバムの特徴として感じるのは「サティスファクション」や「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のようなギターリフ中心の曲がありません。
今までのストーンズは必ず数曲はそう言う曲を入れていました。
またミック・テイラーがいながら弾きまくりギターソロが少ないのも珍しいことです。

逆説的にこのアルバムはそれがないので統一感が保たれている感じもします。(個人の感想です)

「メインストリートのならず者」のサウンドについて思うことがあります。実はその昔、LPレコードを買った時は他のストーンズのアルバムに比べても音が悪いような気がしていました。なんとなく音がこもっているように感じたのです。でも最近のバージョンを聞いてみるとそれほど気になりません。というか過度なエフェクト処理がなく、飾らない音に感じます。
ただし「I Just Want To See His Face : 彼に会いたい」を除きます。というか、あの曲のイメージが強すぎたからか。

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演奏

ミック・ジャガー  ヴォーカル、ハーモニカ(Tr.3,6,8,11,16)、エレキギター(Tr.5,16)

キース・リチャーズ  ギター、バッキングヴォーカル、ベース(Tr.4,10,18)、エレクトリックピアノ(Tr.13)

ミック・テイラー  ギター(除くTr.7,10)、ベースギター(T r .5,7,13,17)、バッキングヴォーカル(Tr.6)

ビル・ワイマン  ベースギター(Tr.1,3,6,8,9,12,14,16)

チャーリー・ワッツ  ドラムス  (除くTr.10,17)

イアン・ステュアート  ピアノ(Tr.3,6,16)

ゲストミュージシャン
ニッキー・ホプキンス  ピアノ
ボビー・キーズ  サックス、タンバリン(Tr.10)
ジム・プライス  トランペット・トロンボーン、オルガン(Tr.7)
ジミー・ミラー  パーカッション(Tr.8,9,13,15)、ドラム(Tr.5,10,17)
ビル・プラマー  コントラバス(Tr.2,11,13,15)
ビリー・プレストン  ピアノ、オルガン(Tr.17)
アル・パーキンス  ペダルスティールギター(Tr.7)
リチャード・「ディディマス」・ワシントン  マリンバ(Tr.8)
ヴァネッタ・フィールズ、クライディー・キング  バッキングヴォーカル(Tr.5,13,14,17)
ジョー・グリーン  バッキングヴォーカル(Tr.13,15)
ジェリー・カークランド  バッキングヴォーカル(Tr.13)
シャーリー・グッドマン、タミー・リン、マック・レヴェナック  バッキングヴォーカル(Tr.14)
キャシー・マクドナルド  バッキングヴォーカル(Tr.15)

制作
グリン・ジョーンズ  エンジニア
アンディ・ジョーンズ  エンジニア
ジョー・ザガリーノ  エンジニア
ジェレミー・ジー  エンジニア
ダグ・サックス  マスタリング
ロバート・フランク  フォト、コンセプト
ジョン・ヴァン・ハマーズフェルト  レイアウトデザイン
ノーマン・シーフ  レイアウトデザイン

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Rocks Off ロックス・オフ

ダルでルーズなロックンロールで始まります。こういう演奏でかっこいいと思わせることがができるストーンズというのはさすがです。

2,   Rip This Joint リップ・ディス・ジョイント

こういうはっちゃけた曲ができるのもストーンズならでは。昔から密かに他にはないすごい曲だと思っていました。

3,   Shake Your Hips シェイク・ユア・ヒップス

ルイジアナのブルーズマン、スリム・ハーポの曲です。レコーディングの合間、休憩中に演ってみましたという感じです。それでも聞かせます。

4,   Casino Boogie カジノ・ブギ

これもリラックス、脱力系セッション風ながら決まっています。

5,   Tumbling Dice ダイスをころがせ

名曲です。バックは普通のポップスと変わらないような構成ですが、ストーンズならではの太いノリが他では真似ができません。ノリとタメがバッチリです。

6,   Sweet Virginia スウィート・ヴァージニア

カントリータッチの渋い曲です。何も足さずに何も引かなくていいと思ってしまうような、これも名曲です。

7,   Torn And Frayed トーン・アンド・フレイド

前曲に続いてシンプルにいきます。いい感じです。

8,   Sweet Black Angel 黒いエンジェル

個人的にはブリティッシュ・フォークとかアイリッシュ・トラッドを連想させます。

9,   Loving Cup ラヴィング・カップ

この曲は前のアルバム「スティッキー・フィンガーズ」と同じ肌触りです。と思ったら「レット・イット・ブリード」の時にすでにベースはできていたようです。

10,  Happy ハッピー

キースの独断場です。これを否定したらストーンズ流ロックは成り立ちません。下手という人もいるかも知れませんが、センスの塊です。ヘタウマというのはただの上手い以上の味わいがあります。
以降、ライブでも頻繁にプレイしています。

11,  Turd On The Run タード・オン・ザ・ラン

変則ボ・ディドレービートです。頭で考えるのではなく適当に演ったら面白いものができた感が素晴らしいと思います。

12,  Ventilator Blues ヴェンチレイター・ブルーズ

ブルーズに愛情と敬意を込めて、といった感じの安定のストーンズ流ブルーズです。

13,  I Just Want To See His Face 彼に会いたい

曲というよりキースとチャーリーが新しいフレーズを模索しているときにミックがアドリブを入れてきたって感じです。エレキピアノはウーリッツァーでボビー・ホイットロックが引いているという説もあります。

14,  Let It Loose レット・イット・ルーズ

「愚か者の涙」につながっていくようなソウルバラードです。

15,  All Down The Line オール・ダウン・ザ・ライン

安定のストーンズ流ロックンロールが炸裂です。軽く流しているのに真似できません。

16,  Stop Breaking Down ストップ・ブレイキング・ダウン

ミシシッピ・デルタ・ブルーズの巨匠、ロバート・ジョンソンのカバーです。思いリズムに変えています。
ミック・テイラーのギターが最高です。

17,  Shine A Light ライトを照らせ

隠れた名曲です。ミック・ジャガーがブライアン・ジョーンズのことを思って作ったそうです。
サウンドが素晴らしく、バンドをリードしていく “歌うドラム” がいいなあと思ったらチャーリーではなくジミー・ミラーでした。

18,  Soul Survivor ソウル・サヴァイヴァー

このアルバムではちょっと変わった雰囲気の曲です。イッツ・オンリー・ロックンロールの時期に出てきそうな曲調です。

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