「ブリティッシュ・ロック界の至宝」、または愛を込めて「イギリスのひねくれ者」、と言われるザ・キンクスです。
祝・結成60周年ということで2年に渡ってのキャンペーンが始まることとなりました。いや、ともかくめでたいことです。
しかもファンとなってしまった悲しいサガで、一体どれくらい買い直しをさせるんだ!と思いながらもリマスター となると買わずにはいられないのです。
でもすごいもんですね、キンクスってそんな売れてましたっけ。需要があるのでしょうか。
きっと固定ファンは相当数いるのでしょう。
今回で目立つのは初期パイ・レコード時代と次のRCA時代の曲が一緒に並んでいます。
今までの正規盤ではそんなことはありませんでした。「ウォータールー・サンセット」と「セルロイドの英雄」が一緒です。「ユー・リアリー・ガット・ミー」と「スクールデイズ」が同じ盤で聴けます。これがどんなに凄いことかというとこれからガッツリ時間をかけて・・・まぁいいか。
でも今回はまだ「ローラ」も「デヴィッド・ワッツ」も「エイプマン」も「20世紀の人」も入っていません。アリスタ時代の音源もなし。なので当然これで終わりは許されないはずです。引き続き厳しい目、じゃなかった暖かい目で見守っていきたいと思います。
聴いてみて分かったこと
*流石に聴いたことのないレアな選曲もあります。
*音質は向上していると感じます。より自然な感じがします。
*初期はモノラルミックスが多い(ヴィレッジ・グリーンあたりまで)
*同じアルバムからでもモノとステレオがある。
以上は今までのオリジナルアルバムとコンピものとしては「キンクス・クロニクルズ」と比較した結果です。
ちなみに私は96kHz/24bitで聴きたかったので、ハイレゾダウンロードです。なのでライナーノーツなどはありません。よってかなり勝手な解釈となっています。多分。
公式には次の4つのパートに分けています。
トラック1 – 12
男になること、冒険の探求、アイデンティティと女の子を見つけることについての歌
トラック13 – 20
達成された野心の歌、成功の苦い味、友人の喪失、過去が戻ってきて、裏側であなたを噛みます
トラック21 – 28
失われた魂の昼と夜、後悔の歌、そして幸せな時代の反映
トラック29 – 36
新しいスタート、新しい愛ですが、あなたは本当に変わりましたか?まだクエストと女の子に悩まされています
なんかあまり意味を見出せませんが、こういうキャンペーンでもなんでもいいのでキンクスの音源がリマスターされ、再発されることは非常に嬉しいことです。
もし、ちょっとでもキンクスに興味をお持ちなら「ウォータールー・サンセット」、「デイズ」、「スクールデイズ」、「セルロイドの英雄」だけは聴いてみていただきたい。それでも「コンナモノドコガイイノカサッパリワカラン」とおっしゃるならキンクス、いやブリティッシュロックとは縁がなかったということでしょう。
演奏(このアルバムに関して)
レイ・デイヴィス ギター、ヴォーカル
デイヴ・デイヴィス ギター、ヴォーカル
ミック・エイヴォリー ドラムス
ピート・クェイフ ベース、コーラス
ジョン・ダルトン ベース、コーラス
ジョン・ゴズリング ピアノ、キーボード、コーラス
曲目
*参考までにtoutube音源をリンクさせていただきます。
1, You Realy Got Me ユー・リアリー・ガット・ミー
(1964年 アルバム 「ザ・キンクス」 モノラル)
ギターエフェクター のファズやディストーションが無かった時代です。ギターアンプのスピーカーが破けていたのをそのまま使ったらビリツキ具合が良かったのでそのまま録音したという有名なエピソードがあります。今回の音はいかにも破けたスピーカーから出ているような音です。音程と関係ないビリビリ音が聞こえます。初めてファズを使ったローリング・ストーンズの「サティスファクション」がリリースされる約半年前のことです。
このシンプルな歌詞をたたみかけるように歌っていくところは野蛮とも言えるパワーがあります。当時のティーンエイジャーは「おお、まさにこれだ!」と思って支持したのです。
2, All Day And All Of The Night オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト
(1964年 シングルA面 モノラル)
これもある意味、「ユー・リアリー・ガット・ミー」と一緒です。起承転結を何も考えていないようなギターソロが時代的に言っても「よくこれでOKが出たなあ」と思うくらいすごいです。
3, It’s All Right イッツ・オーライ
(1964年 シングル 「ユー・リアリー・ガット・ミー」 B面 モノラル)
なかなかレアな選曲です。曲としてはこの頃のイギリスっぽいのですがキンクス らしさは出ていません。ドラムのフィルは強引で面白いですけど。
4, Who’ll Be The Next In Line フール・ビー・ザ・ネクスト・イン・ライン
(1965年 シングル 「エヴリバディズ・ゴナ・ビー・ハッピー」 B面 モノラル)
これもレアな選曲です。でも普通。
5, Tired Of Waiting For You タイアド・ウェイティング・フォー・ユー
(1965年 アルバム 「カインダ・キンクス」 及びシングルカット モノラル
セカンドアルバムとなって今までよりひねってきています。ベストアルバムにも必ずと言っていいほど登場するヒット曲です。
6, Dandy ダンディ
(1966年 アルバム 「フェイス・トゥ・フェイス」 モノラル)
イギリスっぽいです。だんだんキンクスならではとなってきます。この頃になると初期のキンキーサウンドは聞かれません。
7, She’s Got Everything シーズ・ゴット・エブリシング
(1968年 シングル 「デイズ」 B面 モノラル)
よくありそうでなかなかない曲調です。
8, Just Can’t Go To Sleep ジャスト・キャント・ゴー・トゥ・スリープ
(1964年 アルバム 「ザ・キンクス」 モノラル)
マージービート感が漂います。
9, Stop Your Sobbing ストップ・ユア・ソビン
(1964年 アルバム 「ザ・キンクス」 モノラル)
プリテンダーズがデビューアルバムでカバーしました。レイ・デイヴィスのメロディメイカーぶりが現れてきてます。
10, Wait Till The Summer Comes Along ウェイト・ティル・ザ・サマー・カムズ・アロング
(1965年 EP 「クワイト・キンクス」 モノラル)
レア曲です。カントリーに寄せているような曲です。まだデイヴ・デイヴィスっぽくもないのですが。
11, So Long ソー・ロング
(1965年 アルバム 「カインダ・キンクス」 モノラル)
初期ヒット曲群とは違う方向を探しています。
12, I’m Not Like Everybody Else アイム・ノット・ライク・エニバディ・エルス
(1966年 シングル 「サニー・アフタヌーン」 B面 モノラル)
キンクス らしさが出てきています。私は他のみんなと同じじゃないと歌います。
13, Dead End Street デッド・エンド・ストリート
(1966年 シングルA面 モノラル)
これぞキンクスです。お金がなくてて夢も希望も持てない、何のために生きているんだという歌です。イントロのフレーズはクラッシュの「ロンドン・コーリング」につながります。個人的にはなぜかコンバットマーチも思い出します。
14, Wonderboy ワンダーボーイ
(1968年 シングルA面 モノラル)
ジョン・レノンのお気に入りだそうです。こういう曲が書きたかったとのこと。子供を思う気持ちはボブ・ディランの「フォーエバー・ヤング」と同じです。
15, Schooldays スクールデイズ
(1975年 アルバム 「不良少年のメロディ」 ステレオ)
この曲を聴くと世界中のほとんどの人が学生時代の初恋や友達を思い出すと断言できます。YouTubeにこの曲に合わせた秀逸なアニメがありますので「思い出のスクールデイズ/キンクス : 投稿者supesupesupe さま」で確認してみてください。
16, The Hard Way ザ・ハード・ウェイ
(1975年 アルバム 「不良少年のメロディ」 ステレオ)
先生が不良の子を叱る歌です。このアルバムはデイヴ・デイヴィスがモデルと言われています。デイヴはかなりの不良だったようで学校を退学になっています。
17, Mindness Child Of Motherhood マインドネス・チャイルド・オブ・マザーフッド
(1969年 シングル 「ドライヴィン」 B面 モノラル)
ヴォーカルがデイヴ・デイヴィスのかっこいい曲です。歌詞はデイヴのトラウマか。
18, Supersonic Rocket Ship スーパーソニック・ロケット・シップ
(1972年 シングルA面 ステレオ)
平等とか自由について歌っています。曲は可愛らしい感じです。
19, I’m In Disgrace アイム・イン・ディスグレイス
(1975年 アルバム 「不良少年のメロディ」 ステレオ)
少年、少女の成長過程における過ちです。取り返しのつかないことをしてしまったという歌です。
20, Do You Remember Walter? ウォルターを覚えているかい
(1968年 アルバム 「ヴィレッジ・グリーン」 モノラル)
レイ・デイヴィスならではの視点で成長して変わっていくことを歌っています。
21, Too Much On My Mind トゥー・マッチ・オン・マイ・マインド
(1966年 アルバム 「フェイス・トゥ・フェイス」 モノラル)
誰でも身に覚えがある、「考えなければいけないことが多すぎる」という状況を歌っています。
22, Nothin’ In The World Can Stop Me Worryin’ ‘Bout That Girl ナッシン・イン・ザ・ワールド・キャン・ストップ・ミー・ウォーリン・バウト・ザット・ガール
(1965年 アルバム 「カインダ・キンクス 」 モノラル)
キンクスにはあまり似合わないと思うのですが、フォークブルース調です。
23, Days デイズ
(1968年 シングルA面 モノラル)
日々、感謝と共に生きるという世界共通の理想型です。でもキンクスなので歌詞を見るとそう単純でもないような。
24 Last Of The Steam-Powered Trains ラスト・オブ・ザ・スティーム・パワード・トレイン
(1968年 アルバム 「ヴィレッジ・グリーン」 モノラル)
「ヴィレッジ・グリーン・プリザベーション・ソサエティ」のレビューでも書きましたが、まんまハウリン・ウルフなのです。
25, Where Have All The Good Times Gone ホエア・ハヴ・オール・ザ・グッド・タイムス・ゴーン
(1965年 シングル 「ティル ・ジ ・エンド・オブ・ザ ・デイ」 B面 モノラル)
ヴァン・ヘイレンもカバーしていました。楽しいことなんて何もないというやけくそな歌詞が好きです。
26, Strangers ストレンジャーズ
(1970年 アルバム 「ローラ・ヴァーサス・パワーマン」 ステレオ)
デイヴの歌です。渋い感じでいい曲です。移民のやるせなさを歌っています。時代を超えていますね。
27, It’s Too Late イッツ・トゥ・レイト
(1965年 アルバム 「キンク・コントラバーシー」 モノラル)
償うには遅すぎる、もう手遅れだから謝らないで。という歌詞です。
28, Sitting In The Midday Sun シッテング・イン・ザ・ミディ・サン
(1973年 アルバム 「プリザベーション・アクト1 」 ステレオ)
お得意のお昼寝ソングです。「エイプマン」もそうですが、いつものように冷めた視点で世の中を見つめています。曲調はポール・ウェラーも影響を受けてそうです。
29, Waterloo Sunset ウォータールー・サンセット
(1967年 アルバム 「サムシング・エルス・バイ・ザ ・キンクス」 モノラル)
これぞイギリスです。キンクスです。名曲です。
30, Australia オーストラリア
(1969年 アルバム 「アーサー」 ステレオ)
展開が面白い曲です。でもなんでこのアルバムのここで出てきたか、と。
31, No More Looking Back ノー・モア・ルッキング・バック
(1975年 アルバム 「不良少年のメロディ」 ステレオ)
これも展開が面白く、いい曲です。
32, Death Of A Clown 道化師の死
(1967年 アルバム 「サムシング・エルス・バイ・ザ ・キンクス」 モノラル)
デイヴ・デイヴィスの味のある声です。キンクスらしい名曲です。
33, Celluloid Heroes セルロイドの英雄
(1972年 アルバム 「エブリバディズ・イン・ショウビズ」 ステレオ)
私は初めて聴いた時、グレタ・ガルボもルドルフ・ヴァレンティーノも知らないけれどこの歌の世界はわかると思いました。レイ・デイヴィスにしか描けない優しさと思いやりの世界です。
34, Act Nice And Gentle アクト・ナイス・アンド・ジェントル
(1967年 アルバム 「サムシング・エルス・バイ・ザ ・キンクス」 モノラル)
一転して皮肉なレイ・デイヴィスの世界です。
35, This Is Where I Belong ディス・イズ・ホエア・アイ・ビロング
(1966年 アルバム 「フェイス・トゥ・フェイス」の頃にレコーディング モノラル)
ここが私の居場所という歌詞です。なんとなく無欲な歌です。
36, Shangri-La シャングリラ
(1969年 アルバム 「アーサー」 ステレオ)
あなたのパラダイスはこんなモノだったのかと歌いますが、優しさも感じます。きっとささやかな幸せをわかっているのです。メロディアスな曲で終わります。
今年末にパート2がリリースされる予定とのことです。
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