「これはニューオリンズとロックの化学反応です。タワー・オブ・パワーの最強ホーンセクションも入った1977年の極上ライヴ」Waiting for Columbus : Little Feat / ウェイティング・フォー・コロンブス : リトル・フィート

 これはロックの名ライブ盤、オールマン・ブラザーズの「フィルモア・イースト」などと並んで歴史的傑作とされる、1978年リリースのリトル・フィートの「ウェイティング・フォー・コロンブス」です。

リトル・フィートのアルバムの中でも最高位と言われるくらいの「名盤」となっています。
しかもまた嬉しいのが、このライブはロックとの相性の良さにめっちゃ定評ある “タワー・オブ・パワーのホーンセクション付き”という贅沢ライブです。

いろんなジャンルのミュージシャンがリリースするアルバムは色々な形態がありますが、大きく分ければスタジオ録音とライブ(実況録音)に分かれます。
スタジオ録音はじっくりと時間をかけて色々なことに磨きをかけて最終到達したものをリリースすることができます。
もちろんこの場合は契約上の問題とかスタジオ使用時間の制限とか費用の問題とかでミュージシャンにとって不本意な形でのリリースもままあるのですが、そういうことは省いての話です。

ライブ録音の良さは場所と時間を共有した感じになれるとか、ミュージシャンの実力、演奏能力が現れて面白いとか、真の姿が観れるなどの効力、良さがあります。

リトル・フィートは最近になって再び1974年のライブもリリースされました。これがまた音質良好で聞いていて非常に気持ちよく至福の時間を味わえます。後ほど併せてご紹介します。


音、音質にこだわる人、作品として完璧な最終形態を望む人はもちろんスタジオ録音盤が基準になることだろうと思います。音質的に一発勝負のライブ録音は圧倒的に不利です。

しかし1960年代くらいまではライブ録音を良質な音で記録するというのは技術的に難しかったのですが、技術の向上によりライブでもマルチ録音が可能になってからは、高音質なライブ盤も出てきました。

そして「ライブの名盤」と言われるものも登場します。

名盤という以上は音質もある程度は上質でないと話になりません。
考えてみればジャズの録音は1960年代くらいまではほぼスタジオライブみたいなものだったのですしね。

そういえばクロスオーバー華やかなりし1970年代後半、リー・リトナーさんなどがLP片面を直録音する “ダイレクト・カッティング” という高音質録音をして話題になっていました。
逆に中にはマジック・サムの「アン・アーバー・ブルースフェスのライブ」という音は最悪だけどそれを差し引いても中身は最高と言われる例外もあります。全てにおいて両極です。

そしてこのリトル・フィートのアルバムについての話となります。
なんと言いますか私としては時間が経つにつれ、年齢を重ねるにつれ、音質にこだわるようになるにつれ、ギターを引き込んでみるにつれ、次第に良さが解るようになるスルメ盤です。

リトル・フィートというバンドには視覚的にかっこいいいわゆるロックスターみたいな人は見当たりません。どちらかといえばアメリカの田舎の大学生がそのまま音楽を続けているような風貌です。
この辺はCCRと似ています。メンバー全員西海岸出身でアメリカ南部の文化を取り入れた音楽を演って入りことも同じです。

ロックバンドの花形といえば目立ってフロントに立つヴォーカリストかギタリスト、ベーシストです。
フィートの場合、ヴォーカル兼ギターのローウェル・ジョージからしてオーバーオールの似合う太り気味で髭面のおっさんです。他のメンバーにしても若ハゲ・・・いや、やめておきます。

俺も今から楽器を始めてバンドを作って頂点に立ち、一夜明けたら大スターというアメリカン・ドリームを手に入れよう、と夢見る若い人が目指すバンドとは思えません。

ただ、CCRの方は音楽的にはポップスやロック、ソウル意識を出した直線的でわかりやすく、受け入れられやすかったため世界中で評価され売れ続けました。
リトル・フィートはそれに比べるとなんというか、より太い曲がりくねったリズムが特徴です。
最初はなんともわかりづらいのですが、いろんな音楽を聴くにつれ、“この人らはとんでもなくすごい” と思わせてくれるバンドです。

イケメンもカリスマもいないバンドなので、良かったことはレコード会社が変に欲を出してヒット重視の商売戦力にハマり消耗品で終わる、ということになりませんでした。
おかげで自分たちの音楽を追求していけたのです。
(以上は褒めてます。ディスっているのではありません)

1970年代から変わらずブルーズをベースに音楽を続けてきたボニー・レイットは「リトル・フィートは一度患ってしまうと虜になって、最悪なことに一生離れられなくなる」みたいなことを言っていました。

ほんとその通りの魅力を持ったバンドです。

Bitly
Bitly

演奏

ローウェル・ジョージ  ヴォーカル、ギター 

ポール・バレアー  ギター、ヴォーカル 

ケニー・グラッドニー  ベース 

ビル・ペイン  キーボード 

リッチー・ヘイワード  ドラムス 

サム・クレイトン  パーカッション、ヴォーカル 

*参考として最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。

曲目

  1. ジョイン・ザ・バンド Join the Band (Traditional) – 1:54
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., August 10, 1977

    ドゥーワップみたいなコーラスが始まります。粋な始まりです。期待が高まります。
    曲の詳細は分かりませんがトラディショナルということになっています。
    フィートは2008年にこのタイトルのアルバムをリリースしています。多彩なゲストを迎えてセルフカバーをしています。

  2. ファット・マン・イン・ザ・バスタブ Fat Man in the Bathtub (George) – 4:53
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., August 8, 1977

    カウベルに始まりドラムの音が聞こえると「おお、これぞというリトル・フィート」という世界です。
    なんか有無を言わさず首根っこを掴んで持っていかれそうな超発展系ボ・ディドレー・ビートなんです。
    キーボードも含めてうねるようなグルーヴが最高です。

  3. オール・ザッツ・ユー・ドリーム All That You Dream (Barrère, Payne) – 4:29
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., August 8, 1977

    イントロでエアロスミスの「ウォーク・ディス・ウエイ」を思い出すのは私だけ?。ただその後の展開は全く違いますけど。これは正統派ロックといった感じです。

  4. オー・アトランタ Oh Atlanta (Payne) – 4:20
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., August 8, 1977

    リトル・フィート流ロックンロールです。出だしのピアノがいい感じなので欲を言えばソロももっと長くとってほしかった。

  5. オールド・フォークス・ブギ Old Folks’ Boogie (Barrère, G. Barrère) – 4:26
     – The Rainbow Theatre, London England, August 4, 1977

    スローなブギでたたみかけます。このライブはピアノの音響感が最高です。ホーンセクションも盛り上げてくれます。ラストのスライドギターの引っ張り具合がえぐいです。

  6. ディキシー・チキン Dixie Chicken (George, Kibbee) – 8:53
    – The Rainbow Theatre, London England, August 3 & 4, 1977

    かなりみんなでフリーに演って始まりますが、ディキシーっぽいホーンも雰囲気たっぷりです。スタジオバージョンよりスローで粘っこい演奏です。
    ビル・ペインのピアノが最高です。

  7. トリップ・フェイス・ブギ Tripe Face Boogie (Hayward, Payne) – 7:09
    – The Rainbow Theatre, London England, August 2 & 3, 1977

    またまたフィート流ロックンロールが炸裂です。時折ローリング・ストーンズを感じさせます。
    途中ブレイクしてシセサイザーソロになり別の世界に行きかけますが、そこからロックンロールに戻るところが妙に味わい深いのです。

  8. ロケット・イン・マイ・ポケット Rocket in My Pocket (George) – 3:57
     – The Rainbow Theatre, London England, August 2, 1977

    この曲もフィートならではです。「コールド、コールド、コールド」に近い曲調です。

  9. タイム・ラヴズ・ア・ヒーロー Time Loves a Hero (Barrère, Gradney, Payne) – 4:19
    – The Rainbow Theatre, London England, August 4, 1977

    ミディアムテンポのタイトなリズムで歌い上げる曲です。スライドギターがいい感じを出しています。

  10. デイ・オワ・ナイト Day or Night (Payne, F. Tate) – 5:30
     – The Rainbow Theatre, London England, August 4, 1977

    ビル・ペインらしく一筋縄では行かない曲です。サイドギターがこれまたいい感じです。短めのドラムソロも聞けます。終わり方が独特。

  11. マーセナリー・テリトリー Mercenary Territory (George, E. George, Hayward) – 4:36
    – The Rainbow Theatre, London England, August 2, 1977

    フィートらしくないといえばそうですが、ホーンセクションが入って盛り上げて普通にいい曲です。

  12. スパニッシュ・ムーン Spanish Moon (George) – 5:36
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., August 8, 1977

    異国情緒を感じるリズムで始まります。ソウルフルな曲です。これもホーンアレンジが冴えてます。
    最後はアンコールの拍手が聞こえます。

  13. ウィリン Willin’ (George) – 4:42
     – Lisner Auditorium, Washington D.C. 08/08/1977

    名曲です。ただしこの曲だけは「セイリン・シューズ」のスタジオバージョンを超えるのは難しいと思っています。今回は別の景色も見せてくれてます。テンポを落として、途中のピアノソロもいい感じです。

  14. ドント・ボガート・ザッツ・ジョイント Don’t Bogart That Joint (E.Ingber, L. Wagner) – 1:01
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 08/08/1977

    ノスタルジックなカントリーっぽい曲です。

  15. ア・ポリティカル・ブルーズ A Apolitical Blues (George) – 3:51
    – The Rainbow Theatre, London England, 03/08/1977

    リトル・フィート流ブルーズです。ギターソロがハマっています。

  16. セイリン・シューズ Sailin’ Shoes (George) – 6:23
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 10/08/1977

    これもスタジオバージョンよりテンポを落として粘っこく演奏しています。いい感じです。
    フィードバックを活かしたスライドソロが聴かれます。

  17. フィーツ・ドント・フェイル・ミー・ナウ Feats Don’t Fail Me Now (Barrère, George, Kibbee) – 5:35
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., 09/08/1977

    軽快なノリのナンバーです。途中からドラムとベースになり、さらにアカペラとなります。そこから本来のノリを戻していくところが快感です。

  18. ワン・ラヴ・スタンド One Love Stand (Barrère, Gradney, Payne) – 4:27
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 09/08/1977

    シンプルなリズムですがこの間がとてもいいんです。

  19. ロックンロール・ドクター Rock and Roll Doctor (George, Kibbee) – 4:17
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., 09/08/1977

    間髪入れずに始まります。スタジオバージョンと同じくスローで重い感じがかっこよく、いいアレンジです。

  20. スキン・イット・バック Skin It Back (Barrère) – 5:40
    – The Rainbow Theatre, London England, 02/08/1977

    ワウギターと共にホーンセクションも入ってきてファンキーに始まります。これもいいアレンジです。

  21. オン・ユア・ウェイ・ダウン On Your Way Down (Allen Toussaint) – 6:25
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 10/08/1977

    ニューオリンズの盟主、アラン・トゥーサンの曲です。ブルーズです。タメがいいです。

  22. ウォーキン・オール・ナイト Walkin’ All Night (Barrère, Payne) – 4:12
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., 08/08/1977

    アレンジしてシングルカットするとヒットしそうないい曲です。

  23. コールド、コールド、コールド Cold, Cold, Cold (George) – 5:18
    – The Rainbow Theatre, London England, 04/08/1977

    リトル・フィートを代表する1曲です。ホーンセクションがいいアクセントになっています。

  24. デイ・アット・ザ・ドッグ・レース Day at the Dog Races (Barrère, Clayton, Gradney, Hayward, Payne) – 12:12
     – Lisner Auditorium Washington D.C. 09/08/1977

    インスト曲です。なぜかオールマン・ブラザーズを思い出します。ベースソロもあります。

  25. スキン・イット・バック Skin It Back (Barrère) – 4:40
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 08/08/1977

    ロンドン公演に続いて2回目です。

  26. レッド・ストリームライナー Red Streamliner (Payne, F. Tate) – 4:59
    – Lisner Auditorium, Washington D.C., 08/08/1977

    リトル・フィートらしくはないのですがAORとしていい曲です。

  27. ティーンエイジ・ナーヴァス・ブレイクダウン Teenage Nervous Breakdown (George) – 4:12
     – Lisner Auditorium, Washington D.C., 09/08/1977

    ロックンロールです。これもローリング・ストーンズっぽい感じです。ビル・ペインのノリがすごいです。

はい、ごちそうさまでした。充分堪能できました。
このライブもいろんなバージョンがあるのですが、これはCD2枚組のバージョンです。

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