「最高水準サザン・ロックの記録」 The Allman Brothers Band : At Fillmore East / オールマン・ブラザーズ・バンド : アット・フィルモア・イースト

 サザンロックといえばアメリカン・ロックの1形態です。長髪、髭、ジーンズ、革ジャン、サングラス、それにハーレーダビットソンです。(ただの偏見です)
その代表格がオールマン・ブラザーズバンドです。もうバンドの名前からして「男の世界」ですね。
その彼らの代表作が1971年にリリースされたご紹介する「アット・フィルモア・イースト」、当時のレコードで言えば2枚組ライブという大作ですが、現在に至るまでサザン・ロックを代表する名演、名盤として語り継がれています。

聞いてみるとライブなのに演奏は緻密で隙がなく、長尺曲もだれることなく完璧に新しい世界を構築しています。

グレイトフル・デッドやザ・バンド、リトル・フィートと同じく、ロックの歴史の中では必ずといっていいほどライブの名作として紹介されます。

オールマン・ブラザーズ・バンドは1969年フロリダ州ジャクソンビルでデュエイン(デュアンとも言われます)とグレッグのオールマン兄弟を中心に結成されました。程なくジョージア州メイコンに拠点を移します。デビューアルバム「オールマン・ブラザーズ・バンド」とセカンドアルバム「アイドルワイルド・サウス」をキャプリコーン・レコードからリリースしましたが、内容が良いにも関わらずさほどの評判とはなりませんでした。
しかし3枚目のこの「アット・フィルモア・イースト」の2枚組ライブアルバムでブレイクします。

時代も良かったのでしょうが大都会ニューヨークのクラブ「フィルモア・イースト」でこういう風体の南部の田舎風味丸出しファッションの人たちが受けたのはホント素晴らしいことです。
きっとそういうのが当時のヒップだったのでしょう。
ちなみにサンフランシスコに「フィルモア・ウエスト」「フィルモア・オーディトリアム」がありました。
フィルモアはロックのブランドとしてオールマン以外にもイーストではジミ・ヘンドリクス、フランク・ザッパ、マイルス・デイヴィス等々、数々の著名なミュージシャンのライブアルバムも録音されました。1968年にザ・フーがライブをやって唯一ギターを破壊しなかったことでも有名だそうです。?
フィルモアはすべて1972年くらいまでに閉館となっています。

オールマン・ブラザーズ・バンドの特徴はブルーズやソウルを基にしたオリジナルやカバー曲をギター二人、オルガン、ベース、そしてロックでは珍しくドラムス二人という構成で演奏します。ドラムスが二人でもポリリズムみたいな複雑なリズムにはなりません。お互いに相手を支え合うような感じです。ロックっぽいブッチとソウルっぽいジェイモーなどとも言われていますが、きっと仲がいいのだと思います。

アルバムではコンパクトに曲をまとめているのですが、ライヴではジャムバンド的な展開で曲がアドリブによりオリジナルよりかなり長くなったりします。クラプトンの在籍したクリームを筆頭にこの時代はそういうバンドが多く、支持されました。
ただし、このアルバムの企画段階での話として、レコード会社の上層部は長いジャムセッションみたいな曲で2枚組にするのは如何なものか?となかなか同意を得られなかったようです。


バンドの中心人物、ギタリストのデュエイン・オールマンはサザン・ソウルの聖地とも言えるマッスルショールズのFAMEスタジオで1968年からスタジオミュージシャンとして活動していました。
レコーディングに参加したアーティストはウィルソン・ピケット、アレサ・フランクリン、クラレンス・カーター、パーシー・スレッジ、キング・カーティスなどソウルミュージックファンにはたまらない面々が揃っています。
彼の業績紹介アルバムともいうべき「Duanne Allmann : An Anthorogy 1,2」というアルバムがあります。これも名盤です。

もう一つ、デュエインはスライドギター奏法が有名です。「スカイ・ドッグ : 天翔る犬」の異名を持ちエリック・クラプトンの名作「レイラ」にも客演し、重要な貢献をしています。

スライドギターはフレットを指で押さずにガラス製や金属製のスライドバーと言われるものを指にはめて演奏するのですが、デュエインはコリシディンという風邪薬の錠剤のガラス製容器を使用していました。
今ではデザインが変わってもう当時と同じもの生産されていないのですが、マニアックな人向けに「1970年のレプリカ・コリシディン・ボトル」というものもあります。(DA’ddario製)
影響力の大きさがわかります。

18歳からスライドギターを始めたとのことで、活動期間は実質3年程度なのですが今でも「ローリング・ストーン誌の選ぶ100人のギタリスト」などでは必ず上位10人には入ってます。

惜しむらくは1971年のフィルモア・イーストでのライブの後、オートバイ事故(きっとハーレーダビットソンです)で亡くなられてしまいました。
長髪、髭面のなんかセイウチみたいな風貌で見た目おじさん風ですが、まだ24歳でした。
さらに翌年にはベーシストのベリー・オークリーも同じくオートバイ事故で亡くなられています。(きっとこれもハーレーです)残念です。

バイク関連でちょっと脱線します。
1970年に映画「イージー・ライダー」が公開され大変な話題となっていました。
あらすじは
ロサンゼルスに住む通称キャプテン・アメリカとビリーは麻薬の密輸で大金を手に入れます。
それから二人はニューオリンズのマルディ・グラを見ようと改造したハーレーで気ままな旅に出ました。
出発するときに黙って腕時計を外して捨てるところが印象的です。
いろんな体験をしながら旅を続けますが、衝撃的なラストを迎えます。
アメリカ南部の田舎町で走行中、ビリーが長髪が気に入らないとトラック運転手から揶揄われ、しまいにはライフルで打たれてしまいます。
キャプテン・アメリカはその理不尽さに怒り、そのままトラックに体当たりしていきます。
そして壊れたハーレーが映されて、カメラは引いていきます。END
自由、バイク、ロックは親和性が高く、怒れる若者の象徴となっていた時代です。

アルバム「The Allman Brothers Band at Fillmore East」のご紹介です。


演奏

グレッグ‥オールマン  オルガン、ピアノ、ヴォーカル
デュエイン・オールマン ギター
ディッキー・ベッツ  ギター
ベリー・オークリー  ベース
ジェイ・“ジェイモー”・ジョハンソン  ドラムス、コンガ、ティンパレス
ブッチ・トラックス  ドラムス、ティンパニ

曲目
*参考までにyoutube音源(デラックス・エディション版)と動画をリンクさせていただきます。


1,   Statesboro Blues  ステイツボロ・ブルーズ (作 ブラインド・ウィリー・マクテル)

歓声に続きダ・ダダダダと始まって天を翔けるスライドギターが出てきます。すごいドライヴ感です。オリジナルのブラインド・ウィリー・マクテルさんのバージョンとはかなり違いますので、きっとオリジナルと言っても通ると思いますが、そこは先達に敬意を表しているのだと思います。

2,   Done Somebody Wrong  誰かが悪かったのさ (作 エルモア・ジェイムス、クラレンス・ルイス、ボビー・ロビンソン)

エルモア師匠の超絶スライドを真似るような弾き方です。ブルーズハープのソロの後にディッキー・ベッツの歌うような滑らかなソロと続きます。

3,   Stormy Monday     ストーミー・マンデイ (作 Tボーン・ウォーカー)

これで一躍「ストーミー・マンデイ」はロックに広がり浸透しました。Tボーン・ウォーカーを誰もが知ることとなり、その功績は大きいと思います。

4,   You Don’t Love Me  ユー・ドント・ノウ・ミー (作 ウィリー・コブス)

得意のジャムセッション風の曲です。長尺な曲ですが全員に上手さと安定感があ流ので、安心して聞いていられます。

5,   Hot Lanta  アトランタの暑い日 (作 オールマン・ブラザーズ・バンド)

インストルメンタルです。テーマがはっきりしており、雄大に流れていきます。ドラムソロも聞かれます。

6,   In Memory of Elizabeth Reed  エリザベス・リードの追憶の (作 ディッキー・ベッツ)

もう一人のギタリスト、ディッキー・ベッツの曲です。ほぼジャズです。墓碑銘から取ったタイトルだそうです。こういう曲があるのでオールマンは荒くれ者の集団ではなく、アスリートの集団だったのではないかと思えてきます。私のちょっと上の世代ではこの曲が大好評でした。

7,   Whipping Post  ウィッピング・ポスト (作 グレッグ‥オールマン)

鞭打ちポストです。フランク・ザッパもカバーしています。1stアルバムでは5分程度のトラックですが、ここでは20分以上にわたってジャムセッションが繰り広げられます。

以上がオリジナルアルバム収録曲です。最近はデラックス・エディションの方がおすすめです。

ほかのおすすめアルバムも合わせてどうぞ。

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なんとオフィシャルのライブ映像がありました。

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