「愛すべき英国のひねくれ者、コンセプトアルバム第一弾 “望郷編”」The Kinks are The Village Green Preservation Society : The Kinks / ヴィレッジ・グリーン : ザ・キンクス

 1968年、英国の誇るロックバンド、ザ ・キンクスは前作サムシング・エルスよりもっとコンセプチュアルなアルバム「The Kinks Are The Village Green Preservation Society」をリリースしました。今度はイギリスの田園風景を歌い込みます。ストーリー性はあまり感じませんがアルバムとして「ヴィレッジ・グリーン」という村を歌うという統一感があります。サウンドはのどかでポップな曲が満載です。詩はとてもシャイな感じです。

レイ・デイヴィスはイギリスの詩人であり作家のディラン・トーマス著「アンダー・ザ・ミルクウッド」を見てイメージを膨らませたそうです。

しかしこの時代、サイケデリックムーヴメントの真っ只中で、本格的ハードロックの誕生前夜です。この私小説的、というよりカルトで時流に乗れないアルバムが「ユー・リアリー・ガット・ミー」でキンクスを知り、ビートルズの「ホワイトアルバム」ストーンズの「ベガーズバンケット」および「Led Zeppelin 1」に盛り上がっているロックファンに売れるわけがありません。ほのぼのとした田舎の歌にロックファンは置き去られました。

でも今から見ると超異端でカルト的であるがゆえ、長い生命力を持つことになります。時代に関係なく愛されるアルバムが出来上がりました。

本当は大好きな「Something Else By The Kinks」から行きたかったのですが、諦めました。サムシンエルスはトータル性はありますが、曲ごとに断片的です。解説しようとしても外国人が日本の文化を語るというような的外れなことになりそうなので諦めました。

ザ ・キンクスはマージービートに始まって、「ユー・リアリー・ガット・ミー」「ウォータールー・サンセット」を経由してよくここまできたものだと感心します。キンクスはその名の通りひねくれ者ですので、一度みんなに受けたからといってもそればかりを続けるバンドではありませんでした。

アルバム「ザ・ヴィレッジ・グリーン・プリザベーション・ソサエティ」のご紹介です。

演奏

レイ・デイヴィス  ヴォーカル、ギター、キーボード
デイヴ・デイヴィス  ギター、ヴォーカル
ミック・エイヴォリー  ドラムス、パーカッション
ピート・クワイフ  ベース


曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,   The Village Green Preservation Society  ヴィレッジ・グリーン・プリザベーション・ソサエティ

このアルバムの雰囲気を決定づけています。今からすればレイ・デイヴィスらしい曲です。ただの狭い共同体賛歌には思えません。新しいもの、価値観ではなく普遍的なものを大切にしょうという意味だと思います。


2,    Do You Remember Walter ?  ウォルターを覚えているかい

少年時代のもの悲しい思い出を感じさせる曲です。レイ・デイヴィスが幼なじみにあったとき、もう共通点がないことを思い知らされて昔を思ってこの曲を描いたそうです。
感傷的な詩です。


3,    Picture Book  絵本

キンクスらしい曲調です。歳をとって昔の写真を見て思い出を振り返るという内容です。


4,    Johnny Thunder  ジョニー・サンダー

勇敢に立ち向かう男のことです。
ニューヨーク・ドールズにジョニー・サンダースというカリスマミュージシャンがいたのですが、由来がこの曲だそうです。定説です。昔から疑問に思っているのですが隠れた影響力があるのです。きっと。


5,    Last of the Steam-Powered Train  蒸気機関車の最後

博物館でSLを見て、昔の力強い反逆者を思った歌です。
曲はまんまハウリン・ウルフの「スモークスタック・ライトニン」です。ルーツを隠さないキンクスなので許せます。


6,    Big Sky  ビッグ・スカイ

空はすべての人を見ている。たまに泣いたりする。がっかりさせないで。という意味でしょうか。
曲調が個人的にジョン・レノンやジミ・ヘンドリクスを感じます。


7,    Sitting by the Riverside  川辺に座って

この後もアルバムごとに度々出てくるお昼寝ソングと言われる情景です。あくせくしてもしょうがない、座っているだけで幸せなんだ。と普通の人と違う世界観を持った詩です。のちの「エイプマン」などに繋がります。


8,    Animal Farm  アニマル・ファーム

明るい曲調で、動物たちと自然の中で暮らしたいという意味なのですが、同名のジョージ・オーウェルの寓話は怖い話だそうです。真意はわかりません。


9,    Village Green  ヴィレッジ・グリーン

名曲です。昔の思い出にふけるノスタルジックな内容です。
最初から聴いたことがあるような気がしていましたが、中学生時に流行った甲斐バンドの「裏切りの街角」に似ています。


10,   Starstruck  スターストラック

あまりそうは感じませんが、モータウンを意識した曲らしいです。コーラスが面白い曲です。そのままの意味だとスターに夢中ということですが。


11,   Phenomenal Cat  フェノメナル・キャット

絵本の世界です。キンクス ならではの世界が広がります。子守唄にも聞こえます。


12,   All of My Friends Were There  友人全員

ミュージカル風な展開です。知人がいっぱいいる前で恥ずかしかったことを歌っています。


13,   Wicked Annabella  いたずらなアナベラ

デイヴ・デイヴィスのヴォーカルです。サイケデリック寄りで声やサウンドの録音に凝っています。
Wicked の意味は「いたずら」「邪悪」「よこしま」「素敵」「すごく良い」と意味が広いのですが、歌詞からすると「邪悪」が合ってそうな気もします。


14,   Monica  モニカ

カリプソっぽいリズムで軽く歌いますが、売春婦の話です。


15,   People Take Pictures of each Other  写しあった写真

写真の思い出について早口で歌います。みんな写真を撮って思い出を残そうとするけど、オレはそういうの恥ずかしいから嫌なんだよなぁ、ということでしょうか。シャイな心情を歌っているのでしょうか。この曲の真意がよくわかりません。

この時代は例はたくさんの曲を作っています。名曲と言われる「デイズ」もそうですし「ワンダーボーイ」や「ポリー」と佳曲が同時期に録音されています。

Bitly

コメント

タイトルとURLをコピーしました