「愛すべき英国のひねくれ者、コンセプトアルバム第三弾 “経済と芸術編”」Lola Versus Powerman and the Moneygoround, Part 1 : The Kinks / ローラ・ヴァーサス・パワーマン・・:ザ・キンクス

 英国の誇るロックバンド、ザ ・キンクスの1969年リリースの「Lola Versus Powerman And The Moneygoround, Part One」です。邦題は「ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組1回戦」
今までの2つのコンセプトアルバム(アーサーとヴィレッジグリーン)は的確に内容を表していましたが、今回はなんともタイトルの意味がわかりません。パンキッシュなアルバムタイトルです。

ヴィレッジグリーン、アーサー、ローラと来るこの3部作でロックの歴史においてあまり大物とも言われないザ・キンクスはカルト的なファンを獲得しました。
そして50年経った今でも好きな人が現れるという稀有なバンドです。


今までの田舎暮らし、歴史に翻弄された市井の人々を描いてから今度は都会の音楽ビジネスの世界です。
音楽業界の血も涙もない裏側を(割とほのぼのしていますが)レイ・デイヴィスの視点で描きました。出版社、組合、マネージャー、ライブツアーなどです。
そしてLGBTを許容する文化を先取りしている「ローラ」とレイ・デイヴィスならではの皮肉ソング「エイプマン」は久々にヒットしました。

さらにいよいよ1965年からアメリカ音楽連盟により禁止されていたアメリカ内でのコンサート活動とプロモーション活動が解禁となりました。
晴れて活動許可が降りてこのアルバムからのシングルもアメリカでヒットしました。

よかったね。

1970年代はまたまたカルトなアメリカン・ボードビルショー的な構成に向かいますが、70年代後半は英米のパンクロックの洗礼を受けて?、ロック的なアルバムを連発し、再び世界中でブレイクします。

でもそこはキンクス、世渡りがそれほど上手ではありません。音楽界は1980年代から怒涛の如く大規模チャリティイヴェント、ライヴエイドや大物ミュージシャン同士のコラボ企画などが始まりましたが、そういう派手で歴史的なイベントには全く縁がありませんでした。
90年代はまた下降気味となります。

でも長い目で見れば60年代後半のアルバムによるカルト的な人気で生き残り続けました。
年齢に関係なく音楽好きな、ある一定の層には時代を超えてアピールする何かを持っています。
特に10代の頃に知ってしまうと一生ものです。

きっとファンはみんな思っています。「キンクスはわかるやつだけわかればいい」と。

そういうニッチで息の長いバンドです。

アルバム「ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組1回戦」のご紹介です。

演奏

レイ・デイヴィス  ヴォーカル、ギター、キーボード
デイヴ・デイヴィス  ギター、ヴォーカル
ミック・エイヴォリー  ドラムス、パーカッション
ジョン・ダルトン  ベース
ジョン・ゴズリング  キーボード


曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,   The Contenders  競争者

1,2,3,4,カウントからドブロギターで牧歌的に始まり、ハードなロックンロールに変身します。
競争社会から自由になりたい、勝ち残りたいと歌います。


2,    Strangers  見知らぬ人

デイヴ・デイヴィス作、ヴォーカルの社会に合わせられない人への歌です。デイヴのハスキーヴォイスが良い味だしてます。


3,    Denmark Street  デンマーク・ストリート

音楽出版社に売り込む曲です。人がどう思ってようと関係ないというふうに歌ってます。


4,    Get Back in Line  ゲット・バック・イン・ライン

嫌々ながらも組合の指示に従わなければならない状況です。何をやってもうまくいきません。


5,    Lola  ローラ

印象的なドブロギターの音で始まります。ソーホーで女の子に声かけられてついて行ったら男だったという物語です。もうないがなんだかわからないという感じですが、もうどうでも良いという感じで状況を否定していないところがアーティストらしい感覚です。



6,    Top of the Pops  トップ・オブ・ザ・ポップス

イギリスには同名のテレビ番組もあります。リリースしたレコードがヒットチャートを上がってきて有頂天になるという曲です。途中からハードなリフが出てきます。


7,    The Moneygoround  ザ・マネーゴーラウンド

金は天下の回りものという曲です。レイ・デイヴィスらしい展開です。


8,    This Time Tomorrow  ディス・タイム・トゥモウロー

忙しいだけで虚しい生活という曲です。曲の展開が面白く、好きな曲です。


9,    A Long Way from Home  家路はるかに

キンクス ならではのバラードです。ホームからだいぶ離れたところまできてしまったという感じです。


10,   Rats  ラッツ

これもデイヴ作、ヴォーカルのハードな曲です。利己的な人のことを歌ってます。
ハスキーな声が合っています。


11,   Apeman  エイプマン

キンクスお得意のお昼寝ソングで、殺伐とした競争社会に嫌気がさして、オレは違う価値観で生きていくという感じなのです。


12,   Powerman  パワーマン

昔から全てが金と権力だという曲をハードに演奏します。


13,   Got to Be Free  自由に向かって

手遅れになる前に自由になろうと歌います。いつの時代でも当てはまる言葉です。


この後、キンクスはレコード会社、パイを離れ、RCAに移籍します。そして名作「マスウェル・ヒルビリーズ」をリリースします。
その後は70年代後半のパンクムーヴメントに触発されるまでよりロックから離れたようなカルトな世界、ストレートに言えば売れない時代に入ります。

でもその時期も名曲はたくさん残しました。「セルロイドの英雄」とか「スクールデイズ」とか。

Bitly

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