「唯一無二のテキサス稲妻ブルーズ」Mojo Hand Complete Session : Lightnin’ Hopkins / モジョ・ハンド・コンプリート・セッション : ライトニン・ホプキンス

 テキサス・ブルーズ の巨人ライトニン・ホプキンスです。
この人ほどブルーズ のイメージを具現化した人はいないような気がします。
テキサスブルーズ 、ギャンブラー、酒好き、女好き、日々刹那的、のイメージを見事に体現しています。“ライトニンに駄作なし” と言われます。
まあ、地でやってますから。まるっきり自然体で、作りや飾りがありませんからね。と妙に納得してしまいます。

このアルバム「モジョ・ハンド」はベース、ドラムス付きの一応バンドスタイルで、アコースティック ギターをプレイしていますが、他のアルバムではアコースティック やエレキの弾き語りも結構あります。

でもライトニンが演ればみな同じ世界です。

「モジョ・ハンド」はFire (ファイア)レーベルから1960年にリリースされました。このレーベルはニューヨーク ハーレム にありました。
プロデュースはレーベルオーナーのボビー ・ロビンソンです。
この人のプロデュースは他にエルモア’ジェイムスのファイア/エンジョイ セッションとかリー・ドーシーとか歴史的に貴重で有名な録音がいっぱいあります。

1990年代初頭にニューヨークに行った時、現地の観光ツアーでハーレム ・ゴスペルツアーなるものがあってアポロ劇場の近くでボビー ・ロビンソンに会うことができました。
とても気さくなかたで、経営するCDショップでいくつか買わせていただきました。
2011年1月7日に訃報を聞いたときはFire, Fury, Enjoyレーベルの音楽をずっと聞いていました。

ライトニンの場合、というより戦前(第二次世界大戦)からのカントリーブルースマン全般に言えることですが、ギターの5弦=A=440Hzという大前提を守る意識は希薄で、体調によってチューニンングを変えたりとか平気でやってそうです。
カントリーブルーズの場合、(そもそもブルーズで使われるブルーノート音階というのが物議を醸し出すほど論理的ではないのですが)弾き語り的なものが多い、歌いやすいようにその日の調子に合わせて音程を変える、フィールドレコーディングをする、レコーダーの回転が狂っている、SP盤の収録できる時間に合わせる。などなどの要因が重なり正規の西洋音階の音程ではなくなっている場合が見られます。
そのせいで西洋音楽に習熟し、絶対音感を持つ人に聞かせると「なにこれ、気持ち悪い」と言われたりします。
また、ブルーズをたくさん聞いていると「ギターは上手いけど歌唱力にやや難あり」と思われる人もゴリ押しで歌を入れたりしますので、かなり忍耐が必要な場合も出てきます。

でもその点、ライトニンは全て「地」ですのでいつでも歌や演奏のクオリティに問題はありません。そして何をやっても違和感を感じません。
演奏も残されているアルバムはほとんどスタジオ ライブみたいなものです。
時には演奏途中でダルくなったり、外しそうになったりしますが、そういう時はドスの効いた声で「デ へへ」と笑います。
それで聴いている方はいきなりマックスハイテンションとなってしまうのです。なんとも得な個性というか「地」でいっている強みというか。

ライトニン・ホプキンスは根っからのテキサス・ブルーズマンで、テキサスから離れて暮らすことはありませんでした。
シカゴブルーズの巨人マディ・ウォーターズと同じような時代を生きて1982年1月30日にご逝去されました。

アルバム「モジョ・ハンド」のご紹介です。

演奏

ライトニン・ホプキンス  ギター、ヴォーカル
Unknown musician(不明)  ベース
Delmar Donnell  ドラムス


曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,    Mojo Hand  モジョ・ハンド

いきなりライトニン節全開です。ブルーズの体現者です。ギターソロのツッコミがすごいです。


2,    Coffee for Mama  コーヒー・フォー・ママ

エコーに埋もれてヴォーカルが聞こえてきます。途中カチャカチャとノイズが入りますがライトニンには問題とはなりません。意外とギターフレーズの引き出しも多いのです。


3,    Awful Dreams  オウフル・ドリームス

エグいスローブルーズです。説得力が違います。


4,    Black Mare Trot  ブラック・メア・トロット

インストルメンタルです。軽快にスライドギターを決めています。途中、どう展開しようかと考えているように感じるところがあります。文句は言えません。


5,    Have You Ever Loved a Woman  ハヴ・ユー・エバー・ラヴド・ア・ウーマン

エリック・クラプトンで有名なブルーズスタンダードです。ピアノを弾いていますがギターと一緒です。


6,    Glory Be  グローリー・ビー

感情を込めて歌います。演奏はわりとタイトでオーソドックスです。特徴ある終わり方です。


7,    Sometimes She Will  サムタイムス・シー・ウィル

最初の曲と同じく、得意なスタイルです。途中で崩しにかかるところがかっこいいのです。


8,    Shine On Moon  シャイン・オン・ムーン

ライトニンならではのディープなブルーズです。


9,    Santa  サンタ

タイトルに反してヘヴィーなクリスマスソングです。


10,   How Long Has That Train Been Gone  ハウ・ロング・ハズ・ザット・トレイン・ビーン・ゴーン

スィート・ホーム・シカゴ系のシャッフルナンバーです。


11,   Bring Me My Shotgun  ブリング・ミー・マイ・ショットガン

物騒なタイトルのディープなブルーズです。


12,   Shake That Thing     シェイク・ザッツ・シング

無伴奏の歌から軽快にギターが入ってきます。最後は「One More Time」とギターソロを3度繰り返してこれぞまさにライトニンの世界。


13,   Last Night  ラスト・ナイト

音数の少ないスローブルーズで妙に迫力があります。普通ではありません。


14,   Walk a Long Time  ウォーク・ア・ロング・タイム

「ファーザー ・オン・アップ・ザ・ロード」みたいな曲調で始まります。途中語りみたいなヴォーカル を挟みますが、ほぼインストルメンタルです。


15,   I’m Leaving With You Now  アイム・リービング・ウィズ・ユー・ナウ

あれ、ヴォーカルが違います。で、終わり方も唐突です。これはオマケという感じです。


16,   Houston Bound  ヒューストン・バウンド

これぞライトニンの世界です。エグくてディープなブルーズです。


17,   Just Pickin’   ジャスト・ピッキン

これは肩慣らしといった感じでしょうか。


18,   Baby I Don’t Care  ベイビー・アイ・ドント・ケア

安定のライトニン・ホプキンス節です。

コンプリート版ですが、やはりLPレコードのオリジナルの「Santa」までの9曲が特に素晴らしいと感じます。

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