ブルーズ界の3大キングと呼ばれる御三方がいらっしゃいます。
B.B.キング様、フレディ・キング様、そしてこのアルバート・キング様です。
今回はロックにも多大なる影響を与えたアルバート・キングの代表作「悪い星の下に」を紹介いたします。
ロックに与えた影響はものすごく、ブルーズ界ではアルバート.コリンズやオーティス ・ラッシュ。ロック界ではジミ・ヘンドリックス、ミック・テイラー、デレク ・トラックス 、マイク・ブルームフィールドなど相当です。
特にエリック・クラプトンとスティーヴィー ・レイ・ヴォーンはことあるごとに影響を受けたと言っています。
アルバート・キングは巨漢で身長は2.01m、体重は100kgを超えていました。サングラスをかけて、愛用のギターはギブソン、フライング Vです。右利き用のギターをそのまま左に抱えて演奏します。
体が大きいのでギターが小さく見えます。
粘りのあるドラマチックなギターフレーズとそんなにハスキーではない滑らかな声が特徴です。
またレコードレーベルが南部ソウルの代表である「STAX」で、当然バックバンドが「Booker T & The MG’s」だったりしますので、当時としては都会的かつファンキーです。
伝統的なブルーズの構成を持ちながらもミシシッピ生まれの割にご当地デルタ・ブルーズのような泥臭さ、エグさはありません。
60年代、70年代のロックを聴いている人にはすんなり入ってくるでしょう。ちょっとロック、ソウル寄りのサウンドです。
来歴
本名はアルバート・ネルソンといい、1923年4月25日、ミシシッピ州、インディアノーラのプランテーションに生まれました。
出生地はB.B.キングと一緒です。兄弟が 13人も居たそうです。ただしここらあたりの真偽がわからず、アルバートはB.B.キングに憧れて、似せるためにそう言っていたという説もあります。
1942年に社会保障カードを申請したときは出生地をミシシッピ州、アバディーンと書いたそうです。
最初に手にした楽器は「ディドリー・ボウ」で次に「シガーボックス・ギター」を自作したそうです。なんだかんだと当時はギターは高価だったため、昔のブルーズマンによくある話ではあります。こういう逸話ももしかしたらアルバート が起源かもしれません。
シガーボックス・ギターといえば最近では新進気鋭のブルーズウーマン、サマンサ・フィッシュが(といってももうベテランですが)4弦のシガーボックスタイプのエレキギターを使用しています。
ご参考までにシガーボックスギターのデモ動画をリンクさせていただきます。
アルバートはブルドーザーの運転などをしながら、早い時期から音楽活動は始めていました。1953年にサイドマンとして録音を始めます。リーダーアルバムをリリースしてデビューしたのは1962年でした。そして2枚目のリーダー作はこの「悪い星の下に」になります。アルバムと言ってもこの時代特有の、というかまだトータル性を重視した長時間収録できるアルバムが一般的ではない時代なので、シングルの寄せ集めです。ですが、各曲の内容の素晴らしさと影響力の強さで、ずっと名盤として語り継がれています。
ロックギタリストに多大な影響を与えたアルバート・キングは、スティーヴ・レイ・ヴォーンが活躍した1980年代まで活動を続けました。
一緒のセッションも記録されています。最後部に動画をリンクさせていただきます。
1991年12月21日、メンフィスの自宅で心臓発作で亡くなりました。
アルバム「悪い星の下に」のご紹介です。
1967年にサザン・ソウルのレーベル「スタックス」よりリリースされました。ジャケットはタイトルにあやかって、13日の金曜日とか黒猫とかスペードのエースとかアンラッキーなものが描いてあります。
演奏
アルバート・キング ギター、ヴォーカル
スティーヴ・クロッパー ギター
ドナルド “ダック” ダン ベース
アル・ジャクソン・ジュニア ドラムス
ブッカー ・T・ジョーンズ キーボード、オルガン、ピアノ
アイザック・ヘイズ キーボード、ピアノ
ウェイン・ジャクソン トランペット
アンドリュー・ラブ テナーサックス
ジョー・アーノルド バリトンサックス、フルート
曲目
*参考までにyoutube音源等をリンクさせていただきます。
1, Born Under a Bad Sign ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン
(作 ウィリアム・ベル、ブッカー ・T・ジョーンズ)
エリック・クラプトンのクリームやポール・バターフィールド・ブルーズ・バンドでも有名なアルバート・キングの代表曲です。シンプルなリフですがやみつきになります。
2, Crosscut Saw クロスカット・ソウ
(作 RG・フォード)
ちょっとハイダウェイみたいなイントロで始まります。これも代表曲です。タイトルは木目に対して直角に切るのこぎりのことだそうです。
3, Kansas City カンサス・シティ
(作 ジェリー・リーバー、マイク・ストーラー)
ロックンロール風の軽快なナンバーです。
4, Oh, Pretty Woman オー・プリティ・ウーマン
(作 AC・ウィリアムズ)
これもリフが独特でかっこいい曲です。ロイ・オービソンも同じタイトルがありました。ソロでモロにクラプトンと同じフレーズが出てきます。(もちろんこっちが元ネタです)
5, Down Don’t Bother Me ダウン・ドント・バザー・ミー
(作 アルバート・キング)
ホーンで始まるミドルテンポのナンバーです。ダック・ダンのベースがいいです。
6, The Hunter ザ・ハンター
(作 カール・ウェルズ、ブッカーT & MG’s)
ポール・ロジャースのフリーでもカバーしていました。狙った獲物は逃さないというラヴソングです。
7, I Almost Lost My Mind アイ・オールモスト・ロスト・マイ・マインド
(作 アイボリー・ジョー・ハンター)
懐メロ、ムード歌謡みたいな曲です。アイボリー・ジョー・ハンターという古いR&Bのピアニスト の曲です。
8, Personal Manager パーソナル・マネージャー
(作 アルバート・キング、デヴィッド・ポーター)
スタックスらしいリズムに戻りました。スローブルーズをホーンを伴ってじっくりと歌います。ギターソロが良いです。
9, Laundromat Blues ランドロマット・ブルーズ
(作 サンディ・ジョーンズ)
これもシンプルなバックでブルーズを堪能できます。コインランドリーブルーズ です。
10, As the Years Go Passing By アズ・ザ・イヤーズ・ゴー・パッシング・バイ
(作 デッドリック・マローン)
スローなブルーズが続きます。いきなりフェイドアウトしていく感じですが。
11, The Very Thought of You ザ・ベリー・ソート・オブ・ユー
(作 レイ・ノーブル)
前の曲から続いているような曲調です。作曲はイギリスのビッグバンドのリーダー、レイ・ノーブルです。
アルバートは右利き用ギターを左に抱えて演奏するので、高音弦が上にきます。そういう物理的にも普通のギター奏法と違うため、完全にニュアンスまでコピーするのは難しいと思います。「普通のギターで右手で弦を抑えないと無理だと思った」とエリック・クラプトンも言ってます。
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