「人呼んで“テキサス・ブルーズの父”、“ロックンロールの始祖”をぜひ味わってください」The Rough Guide to Blind Lemon Jefferson : ザ・ラフ・ガイド・トゥ・ブラインド・レモン・ジェファーソン

 ブラインド・レモン・ジェファーソンは1920年代のブルーズ発祥時に君臨した巨人です。
その影響力はブルーズ、R&B、ロックンロール、ロックと続いていきます。
ミシシッピデルタブルーズと肩を並べるテキサスブルーズの創始者です。テキサスブルーズの父とも言われます。

テキサスブルーズの系譜はブラインド・レモン・ジェファーソンに始まり、Tボーン・ウォーカーやライトニン・ホプキンスを経てジョニー・ウインター、スティーヴィー・レイ・ヴォーンへと進化していきます。

テキサスブルーズとして思い浮かぶ人といえば

・戦前カントリーブルーズの重鎮、ブルーズの創始者 ブラインド・レモン・ジェファーソン

・モダンブルーズの父と言われる革新の人 Tボーン・ウォーカー

・テキサス・ロウダウン・カントリーブルーズといえばこの人 ライトニン・ホプキンス

・テキサス・ギター・スリンガー、白人ロッキンブルーズマン ジョニー・ウインター

うーん、こういう先達の系譜に一聴してわかるような繋がりを感じるかといえば、あまりありません。

これがビッグ・カントリー・テキサスの懐の広いところというものでしょうか。

ロックンロール・リズムの元祖、ブギウギもテキサス発祥と言われています。
ブラインド・レモン・ジェファーソンの演奏を聴いていると確かにそう感じますし、一説によるとブラインド・レモンが最初に「ブーガ・ルーガ」という曲を歌ったり、ギターでソロを初めて披露したとも言われています。

そういうダンスチューンなどの “ブギ” と言われるノリに “引き継がれるテキサスブルーズの共通点” を感じるところはあります。

そういう意味でも何重にも重要な人物、ブラインド・レモン・ジェファーソンです。

音楽好きは聞いておくべき、知っておくべきキーパーソンです。

しかし注意が必要です。最初はとっつきづらい面があります。

声が割と甲高いので、例えばレコードをヴィンテージオーディオセットで聞くのであればぞれなりに味があっていいものなんですが、デジタルコンバートされたCDをテキトーな再生装置で聴くと、妙に甲高い声が飽和して耳に痛い、嫌な音に感じるのです。

これは何も考えずにただただアナログ音源のCD化を急いだ弊害ともいえます。
でも近年、ここ10年くらいのCDはスクラッチノイズや歪みなどをかなり落としてS/Nが良くなり、よりリアルな音になっているようなので、製作年が新しい音源がおすすめです。

私の持っている1980年代に購入した「King of the Blues 」に比べるとここ数年でダウンロードした「ラフ・ガイド・シリーズ」は音質、S/Nの面で相当な改善が見られます。
多分、同じタイトルのCDでも製作時期が新しい方がいいと思われます。

また、ブラインド・レモン・ジェファーソンはこの時代のブルーズメンにあるように写真は一枚しか残っていません。
丸刈りで眼鏡をかけた容姿はなんとなく昭和の日本も感じます。巨人の星に登場する左門豊作の世界です。(と言って誰がわかるのでしょうか)その辺にもなんとなく親近感を感じます。

盲目だったと言われています。ではなぜ眼鏡をかけているのでしょうか。
諸説がありまして、ジェファーソンの経歴にはプロレスラーをしていた時期があったとされています。

盲目で格闘ができるものでしょうか。

素直には信じられませんが、無理やり考えれば “世紀の大ハンディキャップ・マッチ” などとうたったイベントだったのかもしれません。(テキトーに想像しています)

さらに辻で演奏しているとき、投げ銭入れの空缶に一番安い1ペニーのお金を入れられると「舐めてんじゃねーぞ」と怒って投げ返したそうです。
コインの音で判断していたとも言われますが、空き缶に投げる音は当たり具合で音も変わり、そっと置いたら音は出ないかもしれません。ここでも盲目の疑惑は深まります。
歌う歌詞にも色や風景など視力があることが前提な歌詞が出てきます。(研究者によると200くらいあるそうです)

でもTボーン・ウォーカーは手を取って案内していた時期があるようですし、明らかに目が見えていたと証言する人はいませんでした。
もしかしたら全盲ではなかったのかもしれません。

ちなみに関連は確認されていませんが町内の近くの辻ではブラインド・ウィリー・ジョンソンが歌っていたこともあるそうです。

来歴

本名はレモン・ヘンリー・ジェファーソンといい1893年9月24日、テキサス近郊のカッチマンというところで生まれました。生まれつき盲目で7人か8人兄弟の末っ子でした。ただし、この辺は曖昧で諸説あります。

10代前半にギターを覚えて人前で披露していました。1910年代の初頭にはダラスで同じくブルーズの巨人、レッドベリーと一緒に演奏活動もしたようです。

1925年にシカゴでレコーディングしました。
その後も1926年から1929年にかけて100曲ほど録音し、これが最初のギターとヴォーカルによるブルーズ(音楽的にはゴスペルも含む)の商業的大成功となります。
当時としては画期的で数十万枚は売れたと言われており、運転手つきの自家用車も持っていたそうです。
(この辺が兄弟が多くて生涯貧乏だった左門豊作とは違うところです)

順風満帆な音楽人生かと思われましたが1929年12月19日にシカゴで亡くなりました。まだ36歳でした。

死亡診断書には「おそらく急性心筋炎」と書かれており、吹雪の中で意識を失ってしまったというのがもっともな説です。他にも嫉妬深い恋人に毒を守られたとか、野犬に襲われたとか諸説あります。

遺体はテキサス州フリーストーン群ワーサムにある黒人墓地に埋葬されていましたが状態がよくなかったため1997年に新しく花崗岩の墓碑が建てられ、碑文に彼の有名な歌の1節が刻まれています。

「主よ、一つお願いがあります。私の墓が綺麗に保たれていることをご確認ください」

アルバム「ザ・ラフ・ガイド・トゥ・ブラインド・レモン・ジェファーソン」のご紹介です。

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曲目
*同じ内容ではありませんが参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

01,   One Dime Blues

リズミカルなギターソロで始まり、途中でギターソロもあります。終盤にトレモロ奏法も登場します。

タイトルは10セント硬貨のことで、一文にもならない、取るに足らないという意味です。

02,   Easy Rider Blues

素材の関係でしょうがスクラッチノイズが結構残っているサウンドです。ブルーズの定型化が感じられます。

03,   Jack O’diamonds (Take2)

いきなり強烈なシャウトで始まります。トラディショナルソングですがブラインド・レモンで有名になりました。当時でも12人のブルーズマンが録音しているそうです。ギターのフレーズに合わせて歌っている感じです。

04,   Match Box Blues

この曲のイメージを元にカール・パーキンスの「マッチボックス」となり、ビートルズもカバーすることになります。ロックンロールのフレーズも登場します。ロックンロールの芽生えです。

05,   Beggin’ Back

信仰に基づく歌ですが、そんなに堅苦しい内容ではありません。くだけた歌い方です。この時代のこういう曲には珍しく途中、トーキング(語り)も入ります。

06,   Bad Luck Blues

これもロックンロールのフレーズが入っております。ギャンブルにハマって着て帰る服がなくなったという歌です。

07,   He Arose from the Dead

明るく死者が生き返るということをテンポよく歌っています。ワークソング的な曲だと思います。

08,   Rambler Blues

放浪者の歌です。同じタイトルの曲がカントリー、ブルーグラスにもあります。アメリカの伝統的な?生活スタイルでもあったんですね。

09,   See That My Grave Is Kept Clean

低音で歌い始めます。ブラインド・レモン・ジェファーソンを代表する曲の一つです。こういう曲には珍しく終盤でギターの低音を出してブレイクします。サン・ハウスは「ミシシッピ・カウンティ・ファーム・ブルーズ」として録音しています。ボブ・ディランもファーストアルバムでカバーしました。
ブラインド・レモンの墓碑にはこの曲の歌詞が刻まれました。

10,   That Crawlin’ Baby Blues

華麗なギターテクニックが聴けます。軽快ですが歌詞は意味深です。

11,   Hot Dogs

ロバート・ジョンソンのレッド・ホットと同じくノベルティ・ソングです。

12,   All I Want Is Pure Religion

ゴスペルです。

13,   Corina Blues (Take2)

See See rider で始まることからレッドベリーとも繋がりを感じます。カントリーブルーズ特有の哀感があります。
しかも盲目の人が作る歌詞ではないですね。

14,   Black Snake Moan

これも代表曲です。隠喩です。

15,   Where Shall I Be

トラディショナルで信仰の歌です。軽快な曲になっています。

16,   Mosquito Moan

タイトル通り蚊に悩む歌です。何かの比喩なのでしょう。これは伝統的なブルーズ形式の曲です。

17,   Black Horse Blues

女性のことを歌っています。サウンドはラグタイム風です。華麗なギターソロがあります。

18,   Wartime Blues

彼らがあなたの男を戦場に送ったらどうしますか。という歌詞ですので女性から見た歌かと思います。

19,   Rabbit Foot Blues

ミンストレル・ショウを歌ったものだと思います。ザ・バンドのレヴォン・ヘルムがラビット・フット・ミンストレルズと言っていたことを思い出します。ソロも含めてギターがフリーキーで素晴らしい演奏です。

20,   Rising High Water Blues

ブルーズでよく取り上げられる洪水の歌です。珍しくバックがピアノです。

21,   Prison Cell Blues

信仰の歌ですが悲惨な環境を激しい感情を込めて歌います。迫力たっぷりです。

22,   I Want to Be Like Jesus in My Heart

聖書に基づいた信仰の歌です。

23,   Dry Southern Blues

タイトルから想像できるように、モテない男の歌のようです。

24,   Blind Lemon’s Penitentiary Blues

ブルーズでよく取り上げられる刑務所についての歌です。いろんなバリエーションがありますが、これは素直に反省してかなり後悔している歌です。

25,   Broke and Hungry

お金もなくてボロボロでお腹も空いていて、身寄りもいないという究極的に困窮している状況を歌っています。

以降はブラインド・レモン・ジェファーソン作曲のカバーバージョンとなります。

26,   Long Tall Mama

ビッグ・ビル・ブルーンジー様です。
ラグタイムの洗練されたスタイルです。ギターも素晴らしい演奏です。

27,   He’s In the Jailhouse Now 

ブラインド・ブレイク様です。
カントリーでもこのタイトルは見かけます。

28,   Hard Time Killing Floor

スキップ・ジェイムス様です。
ハウリン・ウルフやジミ・ヘンドリクスに引き継がれます。

29,   Mother’s Children Have a Hard Time

ブラインド・ウィリー・ジョンソン様です。
同郷の同年代で活動したギター・エヴァンジェリスト、ゴスペル・ブルーズです。

30,   Cool Drink of Water Blues

トミー・ジョンソン様です。
カントリーの始祖、ジミー・ロジャースにつながるヨーデル唱法がかんじられます。

31,   I Got Mine

フランク・ストークス様です。
年齢的にはブラインド・レモンの兄貴分です。メンフィス・ギター・スタイルの父と言われています。
この曲はライ・クーダーもカバーしていました。

32,   That’s No Way to Get Along

ロバート・ウィルキンス様です。
ブラインド・レモンと同年代です。軽い歌い方も味があります。

33,  Southern Can is Mine

ブラインド・ウィリー・マクテル様です。
ちょっと鼻にかかったような声で12弦ギターを弾きながら歌うカントリーブルーズの巨人です。

34,   District Attorney Blues

ブッカ・ホワイト様です。
ミシシッピ・デルタ・ブルーズです。

35,   You Can Go Home

レヴァーランド・ゲイリー・デイヴィス様です。
フィンガーピッキングは後世のギタリストに影響を与えました。

36,   Future Blues

ウィリー・ブラウン様です。
チャーリー・パットン、サン・ハウスらと共にデルタ・ブルーズの創始者です。

37,   Nobody’s Dirty Business

ミシシッピ・ジョン・ハート様です。
この人はフォークに近いブルーズマンであり、独特の世界に癒されます。

38,   Falling Down Blues

ファリー・ルイス様です。
メンフィス・ブルーズの人でサン・ハウス同様、再発見されて1960年代も活躍しました。

39,   Lawdy Lawdy Worried  Blues

テディ・ダービー様です。
セントルイス出身で20代で緑内障により視力を失い、ブラインド・ダービーとも言われます。

40,   County Farm blues

サン・ハウス様です。
ミシシッピ・デルタ・ブルーズの巨人です。

41,   The World Is Going Wrong

ミシシッピ・シークスご一行様です。
ギターとフィドルのグループです。

42,   Blind Lemon Jefferson (My Friend Blind Lemon)

レッドベリー様です。
音楽の幅が広く、いろんな楽器を演奏しました。スタンダードもいっぱいあります。

43,   Stered Gal

ミシシッピ・ブレイシー様です。
本名はコールドウェル・ブレイシーと言います。初期のデルタ・ブルーズマンです。

44,   Preachin’ Blues

ロバート・ジョンソン様です。

45,   Some of These Days I’ll Be Gone (Take2)

チャーリー・パットン様です。

46,   Atlanta Moan

バーベキュー・ボブ様です。
ピードモント・スタイルとも言われます。コックをしていたのでこう呼ばれました。

47,   On the Road Again

ミシシッピ・ジャグ・バンドご一行様です。
大所帯でカズーやウオッシュボード、ジャグ、ハーモニカ、ギターなどを使ってブルーズからノベルティ・ソング、ダンス曲などを演奏していました。

48,   Weary Woman’s Blues

メンフィス・ミニー様です。
一聴すると女性かどうか判断がつかない声質です。ブルーズウーマンの第一人者です。

49,   My Road Is Rough and Rocky

サム・コリンズ様です。
初期のブルーズマンでミシシッピですがデルタブルーズの範疇ではなくサウス.ミシシッピと呼ばれているようです。

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