「この名称だけで充分です。“Mr.ファンキー・ジャズギター”」Feelin’ The Spirit : Grant Green / フィーリン・ザ・スピリット : グラント・グリーン

 音楽を聴いているとあっと思うようなマイ・フェイバリットなミュージシャンに出会う事があります。

それは音楽史において偉人、天才と言われたり、時代を牽引して華麗な実績を残す、というような人ではないかもしれません。
でもただただ音楽が素敵で、波長が合うというか、これこそが本当に自分に合っている音楽だと思わせてくれる人たちです。

グラント.グリーンとはそういう種類のミュージシャンです。
ファンキーでブルージーなギターを奏でるジャズミュージシャンです。
でも演奏はちょっと他のジャズ、フュージョンのギタリストとは違います。

基本、ギター奏法としては単音弾きで複雑なコードカッティングとかオクターブ奏法とかやりません。そう言えば他の人のバックで律儀にバックでコードを弾くことも滅多にありません。

ジャズコンボの中でのギターとはピアノと同じように、和音を得意とする楽器のはずですが、グラント・グリーンはホーン的なものとして捉えているようです。そりゃあ運動量としてはホーンに比べると相当に楽だと思いますけど。

そういえばわりとマイルスやロリンズ、コルトレーン ホーン奏者の作った曲もカバーしています。

よって1日練習を休んだら取り戻すのに3日はかかると感じているような、クラシックとかメタルとかフュージョンとかの卓越した技術を必要とするアスリート系ギタリストから見ると、なんとまぁ・・・シンプルですね。と感じるかもしれません。

でもグラント・グリーンはそこそこ売上もあり、時代を超えて愛され、聴かれ続けています。ひとえに感性と歌心でのみ評価される人です。

1980年代にブルース・ギタリストとして名声を極めた、スティービー ・レイ・ヴォーンが生前のインタビューで、影響を受けたギタリストとしてグラント・グリーンを挙げていました。
この二人は今でもなかなか結びつけにくいものです。(両方とも好きですけど)

グラント・グリーンは1935年ミズーリ州セントルイス生まれました。10代の頃からほとんど独学でギターを始め、13歳でゴスペルグループの1員としてステージに立ちます。

ブギウギなども演奏していましたが、チャーリー・クリスチャンやチャーリー・パーカーの影響を受けてジャズに入りました。
1959年くらいまではセントルイスで後にジョン・コルトレーンカルテットでも有名になるドラマー、エルヴィン・ジョーンズなどと活動していましたが、1960年にアルトサックス奏者、ルー・ドナルドソンに声をかけられてニューヨークに向かいます。

そこでブルーノートのアルフレッド・ライオンを紹介してもらいました。

早速レコーディングをしますが、この時はなぜかグリーンは自信がないという理由でお蔵入りとなりました。(2001年に改めてリリースされました)

しかしアルフレッド・ライオンに気に入られてブルーノートでの活動は続き、ハンク・モブレーやアイク・ケベック、スタンリー・タレンタイン、ラリー・ヤングなどのサイドメンとしてもレコーディングします。

そして「グリーン・ストリート」や「サンデイ・モーニング」、「ラテン・ビット」、「フィーリン・ザ・スピリット」、などのリーダーアルバムの好成績によって1962年の最優秀新人にも選出されました。

そうして一躍看板スタートなり1972年までブルーノートで活動します。

その後、ブルーノートを離れてからはクドゥーというCTI系レーベルやヴァーサタイル・レーベルで一枚づつアルバムを残しますが、1979年1月31日に43歳で亡くなられました。

他のブルース系ジャズギタリストと違う感性で人気者でした。

で、紹介するアルバムはグラント・グリーンがブルー・ノートに残した名盤です。内容は黒人霊歌と言われる曲をカバーしているものです。
同様にゴスペル風味の「サンデー・モーニング」カントリー風味の「ゴーイン・ウエスト」、ラテンに接近した「ザ ・ラテン・ビット」などもおすすめです。

このアルバムの1番のおすすめは「ディープ・リバー」、と言いたいところですが、オリジナルアルバムには入っておりません。
ブルーノートのアルフレッド・ライオンはなぜかこのトラックを当時採用しませんでした。
アルバムの中ではスローな曲なので、当時は「ノーバディ・ノウズ・トラブル・アイヴ・シーン」だけでいいとの判断だったのかもしれません。

しかしCDになってから「ディープ・リバー」はボーナストラックとして最後に追加収録され、始めて陽の目を見ました。

でも残念なことにルディ・ヴァン・ゲルダー・リマスターにはオリジナルに忠実にしたため入れてないのですね。

「ディープ・リバー」がなくても「フィーリン・ザ・スピリット」は名盤です。
でもレコードは持っていなかったので「ディープ・リバー」が入ってこそアルバムは完結するような気になっています。

ルディ・ヴァン・ゲルダー・リマスターの方が音に迫力があっていいんですけどね。

アルバム「フィーリン・ザ・スピリット」のご紹介です。

演奏

ギター グラント・グリーン

ベース ブッチ・ウォーレン

ドラムス ビリー・ヒギンス

ピアノ ハービー・ハンコック

パーカッション ガーヴィン・マッソー

Bitly
Bitly

曲目

*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,    Just A Closer Walk With Thee ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・シー

イントロなくいきなり“せーの”で始まります。ギターが気持ちよく歌っています。得意のしつこいしつこい繰り返しフレーズも登場。


2,    Battle Of Jerico ジェリコの戦い

このアルバムの全体のトーンにも言えるのですが、清楚でクールです。ドラムがそんなに煽りません。でもギターソロでは徐々に盛り上がります。ピアノのソロも長めにとっていい感じです。


3,    Nobody Knows Trouble I’ve Seen ノーバディ・ノウズ・トラブル・アイヴ・シーン

綺麗なメロディのイントロに始まり、丁寧にギターが歌い上げます。得意のしつこい繰り返しフレーズ登場でなんだかニンマリします。


4,    Go Down Moses ゴー・ダウン・モーゼズ

このアルバムのグラント・グリーンにしては珍しく饒舌で音数多めのソロです。テーマとソロの違いが楽しめます。


5,    Sometimes I Feel Like Motherless Child 時には母のない子のように

丁寧に歌い上げる曲ですが、ギターソロはアルバム中一番の熱さかな。


6,    Deep River ディープ・リバー(ボーナストラック)

この雰囲気は他では得難いものがあります。音を真似るのは簡単ですが、同じようにはなりません。若き日のハービー・ハンコックもいい味だしてます。
この曲で終わるのが私にとっての「Feelin’ The Spirit」です。

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