

2026年の5月1日にイーグルスの「呪われた夜」の最新リマスターがリリースされました。
オリジナルは1975年のリリースで、イーグルスにとって初のナンバーワンヒットとなったアルバムです。
それが50周年記念として、今の最新の技術を駆使してリマスターされたのです。
リイシュー元はRhino(ライノ)です。
内容はオリジナル・アルバムのリミックス、リマスターに加え1975年9月28日のLA、アナハイム・スタジアムで行われたフルライヴの未発表音源が追加となっています。
このライヴでは数ヶ月後に正式加入するジョー・ウォルシュがゲストで参加し、全員でウォルシュの持ち歌「ロッキー・マウンテン・ウェイ」を演奏しています。
通常の音源に加え、3CD+1Blu-ray版というのもあってBlu-rayには、オリジナル・アルバムとライヴ・アルバムのドルビーアトモスおよびハイレゾ・ステレオ・ミックスを収録されてています。
(そこまでは手を出せません)
オリジナルは私としては高校生の頃からの付き合いとなり、かなり聴き込んだアルバムです。
なので最新の感覚によるアナログ時代のロック名盤の音がどういう音にリマスターされているのかという興味で手に入れてみました。
このアルバムについてはLPレコード、CD、10年ほど前に出たハイレゾ音源と変遷してきました。
今回の音源は配信では24bitとCDよりはビット数は上がっているもののサンプリング周波数は44.1kHzとCDと同じというところに惹かれました。
やっぱりそういうふうになってきたのかと思うところもあります。
20年ほど前のハイレゾが普及し始めた頃はありがたがって192kHzサンプリングに手を出していましたが、あるときにふと思ったことがあります。
「サンプリングは96kHzもあれば十分じゃね。逆にあんまり高くても逆にパワー感がなくなるような気がする。(個人の感想です)
そうです、ロックやジャズを楽しむにはそんなにハイ・サンプリングは私には必要ありません。
しかも今現在リリースされているマスター音源が最初からデジタル・レコーディングされたものは44.1kHz、16bitのCD規格であってもそれ以上望むべくもないくらい素晴らしい音になっていると感じている私なのです。
そういえばここ数年のビートルズのリマスター、リミックスシリーズも96kHzでやっています。
ビートルズみたいな音楽遺産的なものでも全ての情報は入れておきたいが、音楽的には192kHzサンプリングは必要ないと判断されたのだと勝手に思っています。
そしていよいよこのイーグルスに至っては、1970年代を象徴するようなバンドでもリマスターが44.1kHzでリリースされる時代となりました。
単純にデータ量が少なくてもいい音が楽しめるならそれに越した事はありません。

はい、そしてこの「呪われた夜」です。
この有名なジャケットは高校生の頃「首なし死体のジャケット」と言って友達に冷たい目で見られたことを思い出します。(なぜか遠目にはそう見えてしまったのです)
実際のところは翼と羽をつけた牛の頭蓋骨で、ボイド・エルダーというロサンゼルスの芸術家の作品です。
この人はエル・チンガデロという別名でも活動しており、イーグルスの1976年の「グレイテスト・ヒッツ」や2003年の「ザ・ベリー・ベスト・オブ」のジャケットもこの人の作品です。
そのボイド・エルダーさんによると
「このカバーイメージはバンドの過去と未来を表している。牛の頭蓋骨は純粋なカウボーイ、フォークであり、装飾はアメリカ先住民にインスパイアされ、未来は頭蓋骨を覆うより磨き上げられた反射ガラスビーズの表面によって表現されている。それらはすべて、神秘的な力を物語る暗い鷲の羽の翼と対比されている。」
と答えています。
オリジナルLPレコード盤には各面のランアウトグルーブにこう刻印されていたようです。
A面 Don’t worry –
B面 Nothing will be O.K.!
「心配しないで」と「きっと何も大丈夫じゃない」とはまた意味深です。
実際この時期バンド内はゴタゴタでうまくいっていませんでした。
一番浮いていたのはバーニー・リードンでした。
カントリー志向の強かったバーニーはロック色を強めていくイーグルスを快く思ってはいませんでした。しかもそのほうが明らかにヒットしてきているという状況です。
次第にに納得が行かなくなり、このアルバムを最後に脱退します。
代わりに参加したのは昔からイーグルスと親交があり、ロックなサウンドを得意とするジョー・ウォルシュでした。
そして幸か不幸か(普通に考えれば「幸」ですが)イーグルスはすでにビッグヒットを持つバンドではあったものの、次作の「ホテル・カリフォルニア」でさらなる大ブレイクすることになります。
「呪われた夜」は初期の、オリジナルメンバーの最後のアルバムとなりました。
このアルバムを最後に小ぶりでポップなウエストコーストのカントリーロックバンドではなく、超大作を持つ大物ロックバンドとなったのです。
確かにカントリーにこだわっていては「ホテル・カリフォルニア」には行き着けません。

今回のリマスターのサウンドについて、感じたことを語ります。
まず今までの音源と比較して聴いてみた印象が変わりました。
音は厚みを増しながらも楽器の分離が良くなっています。
オープニング曲「呪われた夜」の入ってくるギターの音が今までは渾然一体となっていたのがくっきり分けて聞こえます。
ヴォーカルも中域の聞き疲れする部分がだいぶ抑えられてどっしりとした音になっています。
バスドラムの音も今まではボン、とかドンという感じの1970年代らしい音だったのがズドッと座った音になりました。
昔の、1970年代のバスドラムの音もアナログ・レコードで聴くとなかなかいい感じを出してくれたものです。
しかしいかんせんデジタル時代になってからというもの、味わいが薄くなったものだと勝手に思っておりました。
アナログのドラムの音はニール・ヤングの「ハーベスト」に象徴されるような、締まってはいないけれど、重低音ではないけれど、柔らかくも深い、暖かい音がしたものです。
あの雰囲気はアナログでないと難しいかも、と今更ながら感じる今日この頃でもあります。
アナログの物理的に回転する故の不安定な、それでいて生理的に安心するような音の魅力というのも確かにあります。
多分オーディオに凝っている人は「それこそが至高のアナログの音である」と思ってらっしゃる方も多いと思われます。
しかし最近、ここ数年のアナログ時代の名盤のリマスターはまた面白い方向に向いてきました。
なんと言いますか44.1kHz、16ビットのデジタル時代の音に合わせてきているようです。
今後もこの傾向は、特にロックアルバムのリミックス、リマスターにおいては続いていきそうな気配です。
おもしろい時代でございまする。

アルバム「呪われた夜」のご紹介です。

演奏
イーグルス
- グレン・フライ
ボーカル、アコースティックおよびエレクトリックリズムギター、キーボード、 「ハリウッド・ワルツ」のハーモニウム、「トゥー・メニー・ハンズ」のリードギター - ドン・ヘンリー
「Too Many Hands」でボーカル、ドラム、パーカッション、タブラ - バーニー・リードン
ボーカル、ギター、バンジョー、マンドリン、ペダルスティールギター - ランディ・マイズナー
ボーカル、ベースギター - ドン・フェルダー
ボーカル、ギター、スライドギター
ゲスト・ミュージシャン
- デヴィッド・プロムバーグ
フィドル(「魔法使いの旅」) - ロイヤル・マーシャン・オーケストラ
ストリングス (「魔術師の旅」) - アルビー・ガルテン
シンセサイザー (「ハリウッド・ワルツ」) - ジム・エド・ノーマン
ピアノ(「Lyin’ Eyes」、「Take It to the Limit」)、オーケストレーション、指揮、ストリングスアレンジ - シド・シャープ
コンサートマスター - イーグルス
ストリングスアレンジ
プロダクション
- ビル・シムジク
プロデューサー、エンジニア - アラン・ブラゼック
エンジニア - マイケル・ブラウンシュタイン
エンジニア - エド・マシャル
エンジニア - マイケル・ヴァーディック
エンジニア - ドン・ウッド
エンジニア - ゲイリー・バーデン
アートディレクション、デザイン - ノーマン・シーフ
写真 - トム・ケリー
表紙写真 - テッド・ジェンセン
リマスタリング


曲目(オリジナル・アルバムに準じています)
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。(オフィシャル音源でリミックスではありません)
- One of These Nights 呪われた夜
(ドン・ヘンリー、グレン・フライ)
アルバムタイトル曲でもありますが、B面を「ヴィジョンズ」にしてシングルカットもされ、アルバムともにチャートのトップになりました。
リードヴォーカルはドン・ヘンリーです。
今までにないリズムを強調したナンバーで、その癖なんかおどろおどろしい雰囲気も感じます。
印象的なギターソロはドン・フェルダー、作者のドン・ヘンリーは「このアルバムではバラード症候群から抜け出したかった」と答えています。 - Too Many Hands トゥー・メニ・ハンズ
(ランディ・マイズナー、ドン・フェルダー)
これも今までになくロックに舵を切ったような曲調です。
ランディ・マイズナーのリードヴォーカルでサウンドはヘビーに突き進みます。 - Hollywood Waitz ハリウッド・ワルツ
(ドン・ヘンリー、グレン・フライ、バーニー・リードン)
初期のイーグルスらしいカントリーワルツのナンバーでドン・ヘンリーがリードヴォーカルです。 - Journey of the Sorcerer 魔術師の旅
(バーニー・リードン)
バーニー・リードンによるインストゥルメンタルでブルーグラス・サイケデリアとも表現されます。
聴き慣れている身としては今更違和感は感じませんが、冷静に見るとやっぱりアルバムの中で浮いてます。
こういうバーニーさんのブルーグラス・スタイルは次のアルバムからは無くなります。 - Lyin’ Eyes いつわりの瞳
(ドン・ヘンリー、グレン・フライ)
アルバムからセカンドシングルとしても、B面を「トゥー・メニ・ハンズ」でリリースされビルボードホット100で2位まで上昇しました。
グレン・フライのヴォーカルです。
直訳すれば「ウソついてる目」ですが流石に邦題は格調高く「いつわりの瞳」となっています。
ウエスト・コーストらしいサウンドです。 - Take It to the Limit テイク・イット・トゥ・ザ・リミット
(ランディ・マイズナー、ドン・ヘンリー、グレン・フライ)
アルバムから3枚目のシングルカット曲です。
B面は「アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン」でこのシングルもビルボードホット100で4位になるヒットとなりました。
ランディ・マイズナーのヴォーカルです。この人の哀愁を帯びた声はなかなかのものです。
名曲度が高くライブでも非常にウケが良かったのですが、なぜかランディ・マイズナーはこの曲を演りたがらなかったそうで、後の脱退の一因ともなったそうです。
アレンジが大袈裟に感じて嫌だったのか、というかアナハイム・スタジアムでのライブではしっかり演っていますが、この時の同じバラードである「デスペラード」のアレンジを聞いて「あっ、こういうのダサい」と思ったのかもしれません。(他意はございません) - Visions ヴィジョンズ
(ドン・ヘンリー、ドン・フェルダー)
これもロックに寄った曲調です。ヴォーカルは全員参加となっています。 - After the Thrill Is Gone アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン
(ドン・ヘンリー、グレン・フライ)
レイド・バックした雰囲気でB.B.キングのブルーズ・スタンダード「スリル・イズ・ゴーン」をモチーフにしているようです。
ドン・ヘンリーとグレン・フライがリードヴォーカルを分け合ってじっくり聞かせます。 - I Wish You Peace 安らぎによせて
(バーニー・リードン、パティ・デイヴィス)
バーニー・リードンのヴォーカルです。イーグルスでは聞き納めになります。
バーニーのヴォーカルは他のメンバー(ドン・ヘンリー、、グレン・フライ、ランディ・マイズナー)に比べれば弱いですが、それなりに味があると思います。

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