「ブリティッシュ・ハードロックの教典」Machine Head : Deep Purple / マシン・ヘッド : ディープ・パープル

 ハードロックの元祖、ディープ・パープルの1972年にリリースされた6枚目のアルバム「マシン・ヘッド」です。今やその道の経典となっています。
世界中でヒットしましたが特に日本での人気は凄まじいものがありました。
前作の「ファイアーボール」、前前作の「イン・ロック」と順調にファンを獲得し、ディープ・パープルは日本のロック界でも別格の存在として認知されるようになります。
そのピークとして君臨するのがこのアルバムです。

日本で1970年代にエレキギターを買って「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフを弾いたことがない人は存在しないのでは、と思われるほどその影響力たるや絶大でした。
強いて言えば1960年代のヴェンチャーズ並みです。
そしてみんな「ハイウェイ・スター」を速弾きの教科書としていました。

最初は深読みしていましたがアルバムタイトルは単にギターのヘッドの糸巻き部分のことだそうです。ジャケットは秀逸でパープルはこの「マシン・ヘッド」と「イン・ロック」と「紫の炎」は、ハードロックらしくていいデザインだと思います。

なぜこんなに日本人の心に響くのだろうかと考えてみました。

日本では様式美を追求することに道を見い出す伝統、文化、習慣があります。言ってしまえば音楽もほとんどは様式美の中で表現するものでもあり、クラシックやハードロック、ブルーズ、カントリーなども基本は「様式美」の世界です。
今の小中学校での音楽の授業内容は分かりませんが、私の頃の1960、70年代は音楽の時間は定期的にベートーベンやモーツァルトなど有名なクラシック音楽を聴いていました。
お陰様で有名どころのクラシック曲は一応知ってるくらいにはなっています。
楽譜もほとんどの人がたどたどしくであれば読める、という程度にはなっていると思います。
私の世代はきっとみんなそうです。世界的にみてもこれは非常に素晴らしい教育だったと思います。

そしてそういうクラシックの様式美を刷り込まれた一部の人たちは、それをよりハードにアレンジしたようなハードロックに妙に親和性を感じました。
私らの世代の一部の洋楽付きは、違和感なくハードロックが受け入れられたような気がしています。
彼らにはバッハもベートーベンもハードロックもメタルも一緒なんです。
(ちょっとブルーズなどのアメリカン・トラディショナルからは離れてしまうのですが)
そうして社会に出て、スーツを着て、仕事も社会生活もきちんと成立させ、犯罪とは無縁な一見普通のサラリーマンのくせにハードロック、メタルマニアというのがいっぱいいるのです。

20代になるとディープ・パープルを聴くことは少なくなりましたが、「マシン・ヘッド」の収録曲は練習スタジオでみんなで余興で演奏するととっても楽しい曲がいっぱいです。高校時代に戻れます。
しまいには聴くより演る方が楽しいバンドというイメージになってきました。
みんな潜在的に好きなんですね。ギターで「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロを弾くとドラムが嬉しそうに入ってきます。そして当然のようにベースも追っかけてきたものです。

ディープ・パープルのメンバーはビートルズやローリング・ストーンズなどとスタート時点で違いました。
昔からの幼馴染で結成されていったものと違い、最初からいろんなバンドから引き抜いて優秀な人材を集めたのです。
利点としては質の高い演奏技術を確保できているので、それなりにクオリティの高いアルバムを制作しやすいことです。欠点としてはどうしてもビジネスライクでドライな関係になってしまい、関係に粘りがなくなります。

でも付き合いが短いと深い情が絡んでこないために、過去の因縁なんぞはさっさと水に流し、再結成がしやすいなどの利点もあります。
今ではお祭り感覚で普通にビッグネームの再結成が行われていますが、1984年にディープ・パープル再結成と聞いたときは、こういう大物ロックバンドの再結成ってほんとにあるんだとびっくりしたものです。
そしてまた来日もしてくれました。

ディープ・パープルは海外での評価は、特にアメリカでは高くないようです。2021年の「2011年度改訂版ローリング・ストーン誌の選ぶ最も偉大な100組のアーティスト」にも探してみましたが登場しません。
ちなみにツェッペリンは14位です。
確かにサウンドが革新的でないとか歌詞が深くないとか言われれば、はいそうですとしか言えません。後輩への影響力は、特にヨーロッパではありそうですけど。

このてのバンドはヨーロッパや日本ではウケるけど、アメリカではだめなんですね。ちなみにパープルのアルバムセールスは全世界で1億枚を突破しているそうです。

アルバム「マシーン・ヘッド」のご紹介です。

演奏

イアン・ギラン  ヴォーカル、ハーモニカ
リッチー・ブラックモア  ギター
ロジャー・グローバー  ベース
イアン・ペイス  ドラムス、パーカッション
ジョン・ロード  キーボード、ハモンドオルガン



曲目
*参考までにyoutube音源と、最後部に曲は初期のMandrake Rootですが、この時代のはっちゃけたライヴ映像をリンクさせていただきます。


1,   Highway Star  ハイウェイ・スター

このようなリフでこのようなメロディをつけて歌うのは流石です。キーボードソロもギターソロもこれ以上ないくらい決まっています。ベースも楽しそうです。


2,   Maybe I’m a Leo  メイビー・アイム・ア・レオ

ミディアムテンポの曲です。最初の曲でヴォルテージを上げてしまったので、クールダウンという感じです。


3,   Picture of Home  ピクチャー・オブ・ホーム

個人的には好きな曲です。あまりハードではありませんがメロディアスでスケールの大きさを感じます。ベースソロも出てきます。最後の方で若干違和感のある途切れ方をするのもご愛嬌。


4,   Never Before  ネヴァー・ビフォー

シングルカットされた曲ですがアメリカ向けでしょうか。ファンキーに始まりポップな曲です。


5,   Smoke on the Water  スモーク・オン・ザ・ウォーター

今や代名詞とも言える名曲です。


6,   Lazy   レイジー

スモーク・オン・ザ・ウォーターではキーボードソロはありませんでしたがこの曲はジョン・ロード大活躍です。イアン・ギランのハーモニカも聞かれます。最後はお遊びロックンロールで締めます。


7,Space Truckin’  スペース・トラッキン

ライヴで盛り上がりそうな曲です。最初に聴いた高校生くらいの時はスローで重い曲と感じていましたが、実際は全然そうではありません。
シンプルで重いリフがこれ以上無いくらいかっこいい曲です。

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