「ゴッドファーザー・オブ・ソウル、ミスターJB」Funk Power 1970 : A Brand New Thang / James Brown / ソウル・パワー:ジェームス・ブラウン

 “ソウルのゴッドファーザー”  ジェームス ・ブラウン 1970年リリースのスタジオアルバム「ファンク・パワー」です。そのものズバリ、ファンキーサウンドの塊です。

ジェームス・ブラウンは多作で最終的にはスタジオ録音だけで59作品、ライブ盤、コンピ物も多いので、合計するとすごい数のレコードをリリースしました。
しかも死ぬ間際までライブ活動をしていました。まさに「ハーディスト・ワーキングマン・イン・ショービジネス」と呼ばれる男です。
バラードやブルーズも演奏し、ヒット曲も生まれていますが、なんと言ってもジェームス・ブラウンといえば「ファンク」なのです。

ちなみに20世紀に生まれた人にはジェイビーで通ります。JBの前ではもう何も言えず、逆らえません。その圧倒的な存在感は人間を超えたような存在にも感じます。(高尚とは言いません)

JBはその超個性から「暑苦しい」「押し付けがましい」「コテコテ」と言われる向きもありますが、なんのなんのブラックミュージック、ソウル、ファンクが好きな人にとっては裏返しの愛情表現です。
ホントは大好きなのにわざと「お~い、ブス」とか言ってわざと女子にウザ絡みしている小学生男子と同じようなものです。(その節はすいませんでした)

彼の影響力はそれはすごいもので、初期のミック・ジャガーは完全に意識して真似していました。ザ・フーからエアロスミスまでJ.Bのカバーはあります。マイケル・ジャクソンのアクションの基本はほぼJ.Bです。
人種、世代、国籍を問わず影響力はものすごいのですが、そこまでの超個性となると孤高の存在となり、正統な後継者は現れません。というか同じ路線を演っても “劣化コピー” としか見られないような気がします。

しかしながらこの時代、頂点はJBといえますが他にもオリジナリティを極めたファンクバンドがありました。
気になる貴兄にはタワー・オブ・パワー、アベレージ ・ホワイト・バンド、スライ・アンド・ファミリー・ストーン、それとちょっと(いやかなり)危ないジョージ・クリントン関連などの70年代アナログファンクにハマってみるのも一興ですよ。

またJBと一緒に演ったミュージシャンでも “JBの下位互換” とは言わせないくらい素晴らしいアルバムをリリースしている人たちもいます。
JB’sを筆頭にメイシオ・パーカーやフレッド・ウエズリー、ブッツィー・コリンズなどです。

このあたりの人らの演奏において今更ながらにすごいと思えるのが、もう今では考えられないようなテクノ以前のすべてが人力ファンクの世界です。
JBの開発したファンクの時代はまだ音楽はアナログですべてが手作りの時代でした。
オートメーション機能は何もありません。そういう中で何時間にもわたってビートとグルーヴを紡いでいくのはホントすごい世界だと思います。

「俺らはMIDI無し打ち込み無しシンセ無しの体力勝負、とことん行くぜ、トランス上等」といういかにも男らしいオール・マニュアル・ファンクの世界も一度、体験していただきたいものです。

来歴

J.Bは1933年5月3日、ノースキャロライナに生まれました。両親は早くに離婚して生活はかなりどん底だったようです。16歳の時、窃盗で捕まり少年院に入ります。そこでゴスペルグループに入って音楽活動を始めます。詳しくは映画「ジェームス ・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」で描かれています。
最高の魂と言っても精神的に崇高で気高い心と言うことでは全くありません。お間違えなく。というより性格的にはかなり問題のある人です。
映画を見ていると目的達成のためなら平気で人を裏切り、切り捨てます。自分の才能を見出してくれて、人が次々と愛想を尽かして離れていっても、唯一理解してくれたボビー ・バードにもチャンスを与えず辛く当たります。成功してから訪ねてきた母親に対する態度なんぞはいろいろ思うところはありますが、ただただ言葉になりません。

音楽家としてよりまず人として・・・なんてつい思ってしまいますが、音楽的な成果においてのみいえばJ.Bは間違ってはいませんでした。周りには自分を捨ててJ.Bの音楽の可能性に賭けた人がいました。そういう犠牲の上に素晴らしい音楽遺産を残しました。

それが結果です。70年前の人の行動や価値観を単純に今の視点で論じてもダメだと思います。1950年代のアメリカで黒人が登り詰めるには相当な意志の強さと犠牲が必要だったのでしょう。

当時は普通だったかもしれないけど今では絶対に受け入れられないということもたくさんありますよね。

(でも言わせてください、J.Bはけっこうヒドイやつです)

そして彼しかなし得なかった素晴らしい音楽が残っています。

J.Bの数あるアルバムの中でもファンキーで統一感のあるアルバムです。これができる人はやっぱり選ばれた人です。

アルバム「ファンク・パワー 1970」のご紹介です。

演奏

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Get Up I Feel Like Being a Sex Machine

ファンクの古典です。煽りから入ります。ブッツィー・コリンズの普通ではないベースが曲に奥行きを与えています。

2,   Super Bud

「うわっちみー、うわっちみー、あいがりっ」で始まる言わずと知れた「Super Bad=最高」という曲です。ギターカッティングがカッコいい。最後は雄叫びと共にストッと終わります。最高にクールです。


3,   Since You Been Gone

軽い感じで始まりますが、この曲もベースのノリがすごい。


4,   Give It Up or Turn It a Loose

徐々に盛り上がっていきます。やたらファンキーです。途中ブレイクしてコンガとJBだけになります。そこからドラムが入ってベースが出てくるところがカタルシスです。


5,   There Was a Time (I Got to Move)

一息ついて、若干メローな曲です。


6,   Talkin’ Loud and Sayin’  Nothing

目眩く(めくるめく)続くファンキーサウンドです。身を任せるしかありません。途中、ストップ!と言ってブレイクします。


7,   Get Up, Get into It, Get Involved

ドラマチックに始まります。セックス・マシーンの変形バージョンです。途中のリズムのキメもカッコよく、あえて違うメロディを持ってきたりと面白い曲です。


8,   Soul Power

うん、確かにこういう曲なら何曲でも作れて、いつまでも演っていられるんじゃないかと思えてきます。JBだけの世界です。


9,   Get Up I Feel Like Being a Sex Machine

オープニングに続いて再度の登場ですが、曲の表情が違います。


10,  Fight Against Drug Abuse (Public Service Announcement)

最後は悪ガキに向けてのメッセージです。

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