1966年12月9日にリリースされた英国人エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーによるクリームのデビュー・アルバムです。
ロックの歴史においてはこの時初めて「スーパーグループ」という言葉が使用されました。
というのもこの時点で3人ともすでに新人ではありません。
この時点でクラプトンはヤードバーズやジョン・メイオール・アンド・ブルースブレイカーズで実績のある、というよりすでにイギリスの卓越したブルーズ・ギタリストとして有名でした。
ロンドンの街ではいたるところに「Clapton is God」と落書きされていたのは有名な話です。
*上記の写真はWikipediaより引用
ドラムのジンジャー・ベイカーはグラハム・ボンド・オーガニゼーションというバンドで活動していましたし、ベースのジャック・ブルースもグラハム・ボンド・オーガニゼーションやマンフレッド・マンといったバンドで活動していました。
新規グループながら3人ともすでに有名となミュージシャンでしたが、この時点で一番年長者のジンジャー・ベイカーが26歳、ジャック・ブルースが23歳、クラプトンもまだ21歳という年齢でした。
グラハム・ボンド・オーガニゼーションはマニアックな、というか今ではあまり語られない存在となっていますが、ジャズ・ロックに分類されるバンドです。
クリームのメンバーとなる2人以外にも1970年代にマイルスに取り上げられたり、マハビシュヌ・オーケストラで大活躍するジャズ・ギタリストのジョン・マクラフリンも在籍していました。
マンフレッド・マンというバンドも今ではあまり話題に上がることもありませんが、1960年代前半にはスウィングング・ロンドンで重要な位置を占めていました。
ヒットも飛ばしており、有名なところではブリティッシュ・ロックを語る上で欠かせないテレビ番組「レディ・ステディ・ゴー」のテーマソングもマンフレッド・マンの「5-4-3-2-1」という曲でした。
*これです。
この3人がバンドを組んだということで、ここからスーパーグループという言葉が誕生します。
ブルーズを追求したい、演奏したいというクラプトンでしたが、この時代にはもうビートルズも「リヴォルバー」をリリースしロックの表現範囲も急速に広がりを見せていた時期です。
加えてジンジャー・バイカーもジャック・ブルースも(クラプトンもですが)音楽的にはかなり柔軟でした。
そんなこんなでクリームのアルバムは時代の最先端を行くべく、ブルーズをベースにしつつパワフルにロックするということになります。
これがレッド・ツェッペリンやジェフ・ベック・グループに繋がっていきます。
面白いのはクリームのデビュー・シングルの「ラッピング・ペーパー=包装紙」という曲です。
今では大ヒットした「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」や「ホワイトルーム」みたいにガッツリとロックしているナンバーでないため、なかなか表に出てきません。
ジャック・ブルースによるこの曲はブルーズでもなく、ハードロックでもR&Bでもありません。
ポップでノスタルジックな雰囲気の曲です。
なんと言いますか、20代のミュージシャンにしては老成している感じがします。
このように「フレッシュ・クリーム」ではジャック・ブルースがヴォーカリストとしても大活躍しています。
クリームの代表曲がいっぱい収められているアルバムではありませんが、(当時の)新しい感覚の音楽がいっぱい詰まった味わい深いアルバムとなっています。
ブルーズのカバーも多く、後半にかけて登場してきます。
A面にシカゴ・ブルーズからハウリン・ウルフで有名な「スプーンフル」で締めくくります。
B面に入ると1930年代頃のカントリー・ブルーズをエレクトリック化したカバーが続きます。
まずブルーズの中でも特異な存在であるドクター・ロスの「キャッツ・アンド・スクアレル」が出てきます。
ドクター・ロスはミシシッピ・ブルーズに分類されるカントリー・ブルーズマンですが、ギター、ハーモニカ、ドラムを演奏しながら歌うちょっと毛色の違うブルーズマンでした。
続いてロバート・ジョンソンの「フォー・アンティル・レイト」、ウィリアム・「ハムボーン・ウィリー」・ニューバーン作でブルーズ・スタンダードの「ローリン・アンド・タンブリン」、スキップ・ジェイムスの「アイム・ソー・グラッド」とたたみかけてきます。
最後はジンジャー・ベイカー作のインスト「いやな奴」で終わります。
アルバムはロンドンのレイリック・スタジオで8月から11月にかけてレコーディングされました。
と言いつつも今の大物アーティストのように数ヶ月貸切り状態だったわけでもなく、4トラックのテープレコーダーで各曲を満足いくまで数回取り直して、オーバーダビングも極力少なくした状況でした。
この時代のステレオ録音というのはまだ黎明期です。
クリームの1stアルバム「フレッシュ・クリーム」は今ではあり得ない、ドラムとベースが右チャンネル、ギターが左チャンネルという定位です。
2ndの「カラフル・クリーム」でベースがセンターに定位するようになり、3rd「クリームの素晴らしき世界」でようやくベースとドラムのリズム・セクションがやっとセンターに定位するようになります。
(ライブはまた違いますけどね)
リリース時のアルバムの評価というと、クラプトンらしさが足りないとかすでに時代遅れに感じる、などというものもありました。
しかしイギリスのアルバムチャートでは最高7位を記録しました。
そしてコンパクトに整理された3、4分の楽曲を集めたアルバムと、それらを拡大解釈したようなジャム・セッション中心のハードなライブ演奏といったユニークなスタイルが強烈なイメージを残すことになります。
クリームの出現はレッド・ツェッペリンのアイデアとなり、ザ・フーの進化を決定づけたと言われます。
ジャケットの空軍パイロット姿というデザインはツェッペリンの初期アルバムに引き継がれることになります。
(今思いついただけのかなり勝手な妄想です)
そして何よりも1970年代のロック(ハード・ロック)の方向性を示すことになりました。
アルバム「フレッシュ・クリーム」のご紹介です。
演奏
・クリーム
ジンジャー・ベイカー ドラム、パーカッション、ヴォーカル
ジャック・ブルース ヴォーカル、ベースギター、ハーモニカ、ピアノ
エリック・クラプトン ギター・ヴォーカル
プロダクション
ロバート・スティグウッド プロデューサー
ジョン・ティンバーリー エンジニア
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせて頂いきます。
1, I Feel Free アイ・フィール・フリー
(ジャック・ブルース、ピーター・ブラウン)
オリジナルUK盤はこの曲は入ってなくてN.S.Uから始まります。
このファースト・アルバムではほとんどジャック・ブルースがリードヴォーカルをとっており、ここから4曲、ジャック・ブルースの世界が展開されます。
2, N.S.U
(ジャック・ブルース)
タイトルは「非特異性尿道炎」のことだそうです。ジャック・ブルースはクラプトンのことだとも言ってます。(ジョークかも知れません)
ジャック・ブルースがバンドの音合わせのために書いた曲です。
3, Sleepy Time Time スリーピー・タイム
(ジャック・ブルース、ジャネット・ゴッドフレイ)
作者に名前のあるジャネット・ゴッドフレイは当時はジンジャー・ベイカーの奥さんです。もともとは「グラハム・ボンド・オーガニゼーション」のファンクラブの事務をしていたそうなのでジャック・ブルースとも既知の間柄でした。
4, Dreaming ドリーミング
(ジャック・ブルース)
別にブルーズでもロックでもないような曲ですが、「ラッピング.ペーパー」同様に綺麗なメロディです。
このデビューアルバムではジャック・ブルース、というよりクリームというバンドがブルーズのその次の何かを模索していたのだと思います。
5, Sweet Wine スウィート・ワイン
(ジンジャー・ベイカー、ジャネット・ゴッドフレイ)
ここまでみんなが期待したブルーズっぽい曲が登場しません。でも他のロックバンドにはない、感じられない個性が現れています。
そしてここから怒涛のブルーズ攻勢が始まります。
6, Spoonful スプーンフル
(ウィリー・ディクソン)
ハウリン・ウルフのバージョンでも有名なブルーズ・スタンダードです。LPレコードではA面最後のナンバーですが、ここからブルーズが続きます。
オリジナルです。
7, Cat’s Squirrel 猫とリス
(ドクター・ロス)
あまり高名ではないブルーズマン、ドクター・ロスのカバーです。オリジナルには歌詞がありますが、ここではインストで展開していきます。カバーというよりリフを拝借してアレンジしてみようといった感じです。
オリジナルです。
8, Four Until Late フォー・アンティル.レイト
(ロバート・ジョンソン)
エリック・クラプトンのヴォーカルでポップなアレンジです。ロバート・ジョンソンの作品の中でもミシシッピ・デルタ・ブルーズという雰囲気ではないのでカバーでもあまり多く取り上げられることがない曲とも言えます。
オリジナルです。
9, Rollin’ and Tumblin’ ローリン・アンド・」タンブリン
(ハンボーン・ウィリー・ニューバーン)
マディ・ウォーターズの必殺バージョンで有名なブルーズ・スタンダードです。ロックでもジョニー・ウインター、ヤードバーズ、キャンド・ヒートなどがカバーしています。
オリジナルです。
10, I’m So Glad アイム・ソー・グラッド
(スキップ・ジェイムス)
スキップ・ジェイムスはカントリー・ブルーズマンです。その代表曲なのですが、ブルーズらしくない下降フレーズのアレンジが秀逸です。
オリジナルです。
11, Toad いやな奴
(ジンジャー・ベイカー)
インストでリフ中心のハードロックを予感させるものです。
ジンジャー・ベイカーの作でドラムのソロも聴けます。
長年のファンとしてはタイトルはもしかしたらジャック・ブルースのこと?とツッコミを入れたくなるのです。
バンドとは不思議なもので単に“仲良しクラブ”では名盤が生まれないものなんですねえ。
ギターリフとの組み合わせはハードロックのコンサートでお馴染みとなるドラム・ソロのハシリでもあります。
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