「これぞ人類、原始、心の咆哮、後継なき唯一の表現者の記録」Spiritual Unity : Albert Ayler Trio / スピリチュアル・ユニティ : アルバート・アイラー・トリオ

 ジャズの歴史の中で、今なお誰も追従し得ないようなオリジナリティを持ったサックス奏者がいます。
それはベタな言い方をすると彗星の如く現れて1960年代を駆け抜けた鬼才アルバート・アイラーです。

アルバート・アイラーはフリージャズのジャンルで語られます。
でもそれはただ彼の現れた時代のジャンルではフリージャズが近いというだけで、フリージャズでイメージされる楽器を効果音のように使用したりとか、あえて今までの音楽理論になかったことをやってみるようなフリージャズとは違うと感じます。

そういうことではなくて、アイラーの音楽からはブルーズやゴスペル、トラディショナルのエッセンスというか、自然に湧き上がるもっとも根源的なものを表現しているように感じるのです。

しかし時代に共振して、思い切りブレイクすることはありませんでした。さらに今後も見直されてブームとなり、リバイバル大ヒットするとかいうこともあまりも無さそうです。

でも音楽の流行や時代の変化にも関係なく、一定数の共感する人が現れて支持され続けると思います。

聴いてみるとわかります。きっとそういう琴線に触れる音楽です。

最近での話題では、というか最近の話でもないのですが、2004年にジャズミュージシャン、文筆家の菊地成孔さんと同じく評論家、音楽家である大谷能生さんによって東京大学で音楽の講義がなされました。
そしてその内容は「東京大学のアルバート・アイラー」という本にもなりました。

アルバート・アイラーは菊池さん、大谷さんの本を知る以前から知っていました。一般的にはアイラーはフリージャズに分類されるジャズミュージシャンなのです。本当は心の奥の深いところを表現しようとした人でもあります。カルト的な人気はあります。

そういう普通の人からしたら得体の知れない、もしかしたら自己満足以外なにものでも無いかもしれない「フリージャズやってるミュージシャン」と、万人が認める日本の最高学府「東京大学」を繋げた秀逸なタイトルだと思います。

内容にも感心しました。続けて「憂鬱と官能を教えた学校」も買ってしまったほどです。

アイラーは1936年7月13日、オハイオ州クリーヴランドに生まれました。父親からアルトサックス を教えられジャズに親しみました。父子で教会で演奏したりもしていたそうです。

高校卒業後には本格的に音楽活動に入り、ヨーロッパに渡って演奏活動は徐々に評価を高めていきました。

そして1963年にアメリカに帰国し、1964年に代表作「スピリチュアル・ユニティ」をリリースします。

その後、1970年まで批判と賛辞の両方を得ながら活動しますが、1970年11月5日にニューヨークで行方不明となり、11月25日にイーストリバーで水死体で発見されます。

自殺ともマフィアがらみの殺人とも言われています。

まだ34歳だったことを考えるとすごい才能をなくしてしまったものだと悔やまれます。

アルバート・アイラーを聴いているとこう思います。

アイラーは子供でもあり、聖者でもあり、苦悩する人でもあり、大地でもありました。

ということで、なぜかアイラーについてはフリージャズが割と苦手な私でもなぜか最初からすごく相性がいいと思う次第です。

アルバム「スピリチュアル・ユニティ」のご紹介です。

演奏
テナーサックス アルバート ・アイラー
ドラム サニー・マレイ
ベース ゲイリー・ピーコック

和音楽器のない3人構成です。音楽を知っている人ほど、「そんな前衛的なものは生理的にいやです」となるかもしれませんが、音の厚さとかハーモニーとかの次元を超えた演奏となっています。

曲目(オリジナル)

*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,    Ghosts : First Variation

最初に聴いたときからメロディが綺麗だと感じました。牧歌的とも言える美しいメロディが、どんなに激しいソロインプロビゼーションに入っていっても裏で聞こえています。(そう感じます)

2,    The Wizard

前の曲をさらにデフォルメした感じです。なんかとっても感情をかきむしられる音楽です。

3,    Spirits

「ゴースト・ファースト・ヴァリエーション」と同じく綺麗なメロディが潜んでいます。

4,    Ghosts : Second Variation

これも基本のメロディは一緒です。

聴いていると原始、咆哮、欲望、無垢、崇高などの単語が思い浮かびます。

本当に「スピリチュアル」な音楽です。

Bitly
Bitly

さて、最後にクッソどうでもいい話になりますが、アルバムジャケットとタイトルにまつわる話を思い出したので書いておきます。

CDやレコードなどで「ジャケ買い」などという言葉をよく耳にします。

ジャケットデザインがとても自分好みで内容に関係なく自分にド・ストライクなデザインなので買ってしまうことです。

なぜか私はこの「スピリチュアル・ユニティ」のジャケットとタイトルに最初からすごく惹かれました。
なので「ジャケ買い」でもあり「タイトル買い」でもあります。

そこで余談ですが、その昔のブルーズ、ソウル、ジャズの特にブラックマーケット(闇のマーケットということではありません、黒人向けという意味です)では、いかつい怖いおっさんが歌っているのにも関わらずジャケットに綺麗な女性を置いた「美女ジャケ」が流行った?ことがありました。

また、その絡みでロック界でも本人や内容に関係ない美女ジャケと言うと、アメリカはザ・カーズの80年代のアルバム、イギリスはロキシーミュージックのアルバムなどがあります。

そして究極はスコーピオンズの「ヴァージン・キラー」にとどめを刺します。もうこの先絶対にオリジナルジャケットでは発売されることはないと思います。(画像も載せられません)

で、私の場合は当然ジャケ買い、タイトル買いがいっぱいあります。

中でも「タイトル買い」した本は話に出てきた菊池成孔さんと大谷能生さんの「東京大学のアルバート・アイラー」(名著です)(おすすめです)

CDはというと、フランク・ザッパ関連で、元タートルズというアメリカのロックバンドにいた、変な太ったおっさん二人(本人達)が抱き合って大写しになっている、フロ・アンド・エディ という二人組(ボーカルデュオ)の1975年リリースのアルバムです。

そのタイトルは「悪い、汚い、その上デブ 原題 Illegal, Immoral and Fattening」です。
なぜでしょう、どうしても買わずにはいられませんでした。
(・・・名作です) (・・・おすすめはしません)

(追記 : 最近、久しぶりに聴いたら結構いいと思ってしまった自分がいました)

ただし、タートルズの1967年リリース「Happy Together」という曲は名曲です。
これです。

ええい、ついでにこれも!

以上

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