「ジャズの化学反応 : コルトレーン by ブルーノートの傑作アルバム」Blue Train : John Coltrane / ブルー・トレイン : ジョンコルトレーン

 ジャズの名盤と言われるアルバムに1950年代後半にリリースされたブルーノート・レーベルの「ブルー・トレイン」と「サムシン・エルス」があります。
この2枚を聞くたびに感じることがあります。ブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンとジョン・コルトレーン、そしてマイルス・ディヴィスの関係です。

まず、コルトレーンとライオンのお話から。

ジョン・コルトレーンといえば言わずと知れたジャズの大物テナーサックス奏者です。
そしてアルフレッド・ライオンといえば、彼のプロデュースによるブルーノート・レコードが超優秀ジャズレーベルとして今日まで語り継がれています。

コルトレーンは1950年代中期、マイルス・デイヴィスの黄金のクインテットで伝説の2日間で4枚分のアルバム録音というマラソンセッションをやりぬき、1958年の「カインド・オブ・ブルー」もこなして何かを掴んでいました。
そして「ブルー・トレイン」の時期はセロニアス・モンクに師事して、翌年の「ジャイアント・ステップス」に至る助走期間でした。
そしてこの時期のアルフレッド・ライオンはその後の歴史に残るジャズ名盤の集合体、ブルーノート1500番台の制作真っ最中です。

飛ぶ鳥を落とす勢いで上昇中のコルトレーンと、ハードバップとは何かを確信した時期のライオンが同じ目的で手を組みました。
これでいいアルバムができないわけがありません。

これが史実でも確認できる「ブルー・トレイン」の背景です。

もう一つの話として、コルトレーンはその昔にソプラノサックスを追求したいと思い、ライオンのところへシドニー・べシェのレコードを借りに行きました。
一説によるとお金がなかったのでおクスリ代も欲しかったようです。
ライオンはコルトレーンにブルーノートで契約して欲しいとレコードと前金を置いて、他の用事でちょっと席を外しました。
で、戻るとコルトレーンはもう居ませんでした。
そしてコルトレーンはなんとプレスティッジという他のレーベルと契約してしまいました。
ただし、ここで終わりません。
コルトレーンはブルーノートのライオンのことを忘れてなく、しばらくして正式にブルーノートでリーダーアルバムを作ることを申し出ます。

これが関係者によるインタビューなどでの「ブルー・トレイン」の背景です。

アルバムは1958年1月にリリースされました。録音は1957年9月15日です。前日9月14日にマンハッタンでリハーサルをして、ハッケンサックのヴァン・ゲルダースタジオで1日で録音を終了しました。

カーティス・フラーとリー・モーガンは当時、アート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズで活動していました。ケニー・ドリューとは既知の中でした。ポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズはマイルス・デイヴィス・クインテッドの時からの付き合いです。
カーティス・フラーとは地下鉄の駅で偶然であって話をしていたら「俺も参加させてよ」ということで加わったということです。

アルバムを聴いているといつも感じることがあります。コルトレーンは自分のリーダーアルバムということだけではなく、ライオンの意を汲み、どうしたらアルフレッド・ライオンが最高に満足してくれるか、喜んでくれるかということに重点を置いて演奏しているような気がします。
他のコルトレーンのアルバムでは感じないものです。(根拠のない個人の感想です)

ということで完璧なハードバップ・ジャズアルバムが出来上がり、60年以上経った今でも廃盤になることなく、ジャズの代名詞のごとく聴き継がれて愛聴されています。
同じようなアルバムにマイルス主役のキャノンボール・アダレイ名義の「サムシン・エルス」があります。これもご紹介いたします。


アルバム「ブルー・トレイン」のご紹介です。


演奏

ジョン・コルトレーン  テナーサックス

リー・モーガン  トランペット
カーティス・フラー  トロンボーン
ケニー・ドリュー  ピアノ

ポール・チェンバース  ベース

フィリー・ジョー・ジョーンズ  ドラムス



曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,   Blue Train ブルー・トレイン

世界一有名な、と言いたくなるほどのテーマが流れて徐々にブラスが加わって厚くなっていきます。ブルーズのメロディです。振り解くようにコルトレーンがソロに入っていくのもかっこいいです。
後半に入るとフィリー・ジョーが遊びを入れてきます。ベースソロの後にテーマが流れる頃には本当にブルートレインが走っていく光景が見えるようです。


2,   Moment Notice モーメント・ノーティス

これも名曲です。他では見せない明るくポジティヴなジョン・コルトレーンがいます。最初から全速力で始まります。


3,   Locomotion ロコモーション

最初、ドラムのフィルで始まるせいかフィリー・ジョーのしなるドラムビートに耳が奪われます。トロンボーンのソロの時バックがいなくなり、そこからのドラムが入るときにジャズを感じます。


4,   I’m Old Fashioned アイム・オールド・ファッションド

美しいスタンダード曲です。コルトレーンのスタンダードカバーは文句のつけようがないくらい歌います。


5,   Lazy Bird レイジー・バード

いかにもこの時代の音、メロディです。ブルーノートらしいです。

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