「ブルーノートの秘蔵っ子ピアノトリオの人気盤」Moods : The Three Sounds / ムーズ : ザ・スリー・サウンズ

 ジャズピアニストというと今や音楽界では一躍ステータスな存在です。なぜか他の楽器より繊細で知的な雰囲気すら感じさせます。
例えばドラムはリズムキープと曲の流れの強弱をつけるなどにおいて相当の基礎体力が必要です。トランペットやサックスなどのホーン楽器は楽器を鳴らし切るには豊富な肺活量が必要であり、これまた体力勝負的な面が感じられます。(もちろんそれだけではありませんが)
ギターもクラシックギターなどは繊細で知的な部分を感じますが、エレキギター、エレキベースになってくるとただの思い込みが激しいだけのナルシストにしか見えないような人も出てきます。(偏見です、私です)

というわけでジャズにおいては女性が一番個性を発揮できて勝負できるのがピアノという気がします。実際他の楽器に比べてピアノは女性率が高いようです。

( 上原ひろみさんとかを見るとピアノもものすごく体力が必要だとは感じますけどね)

さて、本題はブルーノートの男性ピアニストです。ブルーノートの看板ピアノトリオ「ザ ・スリー・サウンズ」についてです。
まず思うのが、あまりに地味で素っ気なくないですかと言いたくなるようなグループ名です。もっと刺激的で印象に残るようなバンド名にすれば、とも感じますがジャズグループなのでここはいたしかたありません。

アルバムは「ムーズ」です。4000番台でまだアルフレッド・ライオンの息のかかった硬派ブルーノート時代らしからぬ女性ジャケットです。モデルはそのプロデューサー、アルフレッド・ライオンの奥方出そうです。
ここはブルーノートですからブルーズやソウルのいかがわしいアルバムみたいにあからさまにエロさで間違った購買意欲の上昇を狙っているとは考えられません。

このアルバムはそれなりにファンは多いのですが、評論家の間では歴史的名盤として語られることはあまり、というかほとんどありません。どちらかというと私的愛聴盤として登場します。なんとなくマイルス とかコルトレーンとかモンクの評価が高いジャズ界においては日陰の存在でした。

でも最近に至ってはほぼほぼ音楽のジャンル分けも意味をなさなくなり、昔よりは多角的に音楽を捉えている人も多くなってきたようです。その昔はジャズの世界では二流、駄盤と言われていたのも別の視点から評価されるようになってきています。

その証拠に私みたいな何でも聴く派がジャズ道一筋のハードコアなジャズファンとは別の角度からジャズを語っても許される時代になっています。(と勝手に思いたい)

ザ ・スリー・サウンズはジャズにおいては珍しく、グループ名を名乗っています。そしてさらに珍しいことにピアノのジーン・ハリスはソロや客演もありますが、調べる限りベースのアンドリュー・シンプキンスとドラムのビル・ダウディはスリー・サウンズ以外での演奏記録はありません。(ここは断言はできませんが、)
もしベース、ドラムス の演奏技術などの話なら当然、至高を目指すアルフレッド・ライオンが許すはずもありません。また奥様の写真をジャケットに使用するほどの思いを込めたアルバムにするはずもなく、この辺は別の物語があるような気がします。

例えばジーン・ハリスの最高の演奏を引き出すには二人の存在がどうしても不可欠だったとか、ジーン・ハリスがアンドリューとビルの存在を高く評価していて、なんとか記録として残したかったとか、もっと現実的に友達として経済的に援助したかったとかですね。でもドラムス のビルさんは本職は教師ということですので、経済的援助とかいう線は薄いようです。しかもそんなことなら完璧主義のアルフレッド・ライオンが許可するはずもありません。

アルバム「ムーズ」のご紹介です。

演奏

ジーン・ハリス  ピアノ

アンソリュー・シンプキンス  ベース

ビル・ダウディ  ドラムス

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,  Love For Sale  ラヴ・フォー・セール
(作 コール・ポーター)

抑えたピアノとドラムに合わせてベースがメロディを弾き始めます。曲はジャズスタンダードなので、安心して聞いていられます。いきなりスリーサウンズの世界です。


2,  Things Ain’t What They Used to Be  シングス・エイント・ホワッツ・ゼイ・ユーズド・トゥ・ビー
(作 マーサー、エリントン)

ゆったりで溜めのあるゴスペルチックなブルーズピアノです。この3人以外は何もいらない世界が繰り広げられるのです。


3,   On Green Dolphine Street  グリーン・ドルフィン・ストリート
(作 Bronistaw Paper, Ne Washington)

これもジャズスタンダードでいろんなアーティストが取り上げていますが、この演奏もなかなかいいと思います。


4,   Loose Walk  ルーズ・ウォーク
(作 ソニー・スティット)

サックス 奏者、 ”一匹狼” と言われたソニー・スティットの作曲です。タイトルに反して早いテンポで演奏しています。

5,    Li’l Darlin’  リル・ダーリン
(作 ニール・ヘフティ)

趙スローブルーズです。どっぷりと浸る時間です。焦らされます。

6,    I’m Beginning to See the Light  アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
(作 エリントン、ジョージ、ホッジズ、ジェームズ)

ハンドクラップで始まります。いかにもゴスペルを感じるタイトルです。短い曲ですがいい感じです。


7,    Tammy’s Breeze  タミーズ・ブリーズ
(作 ジーン・ハリス)

ジーン・ハリス作曲の割とさっぱりした、なぜか古臭さを感じさせない曲です。

8,     Sandau  サンドゥ
(作 クリフォード・ブラウン)

ラストは明るくファンキーな感じで終わります。

https://amzn.to/4b25dQz
Bitly

コメント

タイトルとURLをコピーしました