「オーキー」は1974年4月30日にリリースされたJ.J.ケイルの3作目のアルバムです。
J.J.ケイルといえば知る人ぞ知るアメリカ音楽界の達人です。
特にプラチナディスクを獲得とか、ヒットチャートの1位になったとか、時代を超えて影響を与え、聞き継がれている、いうことは残念ながらありません。
なので名盤扱いされることも滅多にありません。
ではなぜここで出てくるのかというと、ミュージシャンに対しての影響力が大きいのです。
彼の作る音楽はエリック・クラプトンなどで有名になったレイドバック.サウンドと呼ばれます。
派手ではないけどアメリカのオクラホマ州タルサという土地でしか味わえないような、ブルーズやカントリーを取り入れた味わいのある音楽なのです。
そういうJ.J.ケイルはミュージシャンズミュージシャンであり、同業者から評価が高い、アメリカの音楽が好きならば知っておきたい、押さえておきたいミュージシャンです。
特に本人による大ヒット曲はありませんが、エリック・クラプトンが「アフター・ミッドナイト」や「コカイン」をカバーして有名になりかした。
元ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーにも確実に影響が見られます。
ダイアー・ストレイツの方を先に知っていたのですが、J.J.ケイルを聴いたときに、「ああ、元ネタはこれか」と思いました。
影響を受けたミュージシャンは多く、リスペクトする人も多いのです。カバーもたくさんあります。
J.J.ケイルは一言でいうと無敵の人です。
無敵の人と言ってもネット界隈で言われるあの、“失うものが何もないので、犯罪を起こすことに躊躇しない” といったマイナスイメージの人のことではありません。
常に自分の時間とスタンスを持ち、私利私欲がないのでブレることもなく、なんとなく人当たりも良さそうなのです。
結果として周りに敵を作らない、敵ができない人に感じるのです。(個人の感想です)
1938年12月5日生まれ、2013年7月26日に74歳でご逝去されました。
オリジナルスタジオアルバムは14枚リリースされています。
気が付けば私も一応一通り揃えておりました。
エリック・クラプトンを中心にしたプロジェクトでJ.J.ケイルへの素晴らしいトリビュート・アルバムも作成されています。
J.J.ケイルはオクラホマ州タルサという街に住んでいました。
「タルサ・サウンド」とか「タルサ・タイム」という言葉がありますが、それを見事に体現していると思います。
よくいう「レイドバック」です。脱力系です。
この人もヴァン・モリソンと一緒で、音楽的な変化がほとんどなく、1972年のデビュー当時から2009年の最終アルバムまでさほど音楽的に変わりません。
そういうとヴァン・モリソンと同じく頑固者だと思いますが、音楽形態からしてヴァン・モリソンよりは人当たりが良いのではないかと感じています。なにせタルサですから。(またまた、個人の感想です)
私がJ.J,ケイルを知ったのは30歳を過ぎてからでした。
10代の頃、アルバム「Shades」がリリースされて、音楽雑誌によく紹介されていたので名前くらいは知っていたのですが、日本ではなんとなくAOR路線で売ろうとしていたように記憶しています。
フランスのタバコ、ジタンのパッケージをイメージしたようなジャケットが、その頃流行っていた庄野真代(好きでしたけど)の「飛んでイスタンブール」の歌詞と重なってJ.J.ケイルはオッシャレーな音楽と勝手に思い込んでいたのです。
そして俺のロックにチャラさは必要ないと勝手に敬遠していました。
紆余曲折を経て本当の(?)J.J.ケイルに辿り着いたのは30歳を過ぎてからです。以後、定期的に聴いています。休日に本を読んだりしながら聴くのにも最適です。
まず紹介するのに「Grasshopper」、「Guitar Man」、後期の「Roll On」のどれにしようかと思いましたが、土臭くて、サウンドに統一感のある1974年リリースの3枚目「Okie – オーキー」にしました。
Okieと言えば クラレンス・“ゲイトマウス”・ブラウン、コーネル・デュプリー、最近ではスー・フォーリーでお馴染みの「Okie Dokie Stomp 」というR&Bのスタンダードがあります。
これはOKという意味だそうです。それと「オクラホマ人」「オクラホマ野郎」の意味があると聞いたことがあります。
2013年、リディア・ハッチンソンの「J.J.ケイルを偲んで」という記事を紹介します。インタビューでJ.J.ケイルらしさが伺えます。
「私のアルバムはどれも前のアルバムと同じように聞こえると言われます」
「変わろうと努力してきたけど、何かをやり終えるといつも自分らしくなってしまう。」
「あまりにも有名になり過ぎれば、私の人生は大きく変わって染むだろうということはわかっていた。一方でお金をもらっても、仕事に行かなくても済むことを除けば、状況はあまり変わらない」
なぜあなたの音楽がアメリカよりもイギリスのアーティストに大きな影響を与えたと思いますか?
「たぶん、私は多かれ少なかれカントリーブルースタイプの男で、イギリス人はアメリカのブルースが好きなようです。イギリス人、そして地球上の誰もが、アメリカのブルース歌手を真似しようとします。そこからロックンロールが生まれたのです。イギリスのミュージシャンが聴いているアーティストのことはすでに知っていました。彼らのレコードを聴いて、「ああ、彼らはアメリカのあのブルース・アーティストの真似をしているんだな」と思いました」。
引用元をリンクさせていただきます。
アルバム「オーキー」のご紹介です。
演奏(スタジオ使用日やトラックごとに違うので、抜粋します)
ヴォーカル、ギター J.J.ケイル
ギター
レジー・ヤング、ハロルド・ブラッドリー、グラディ・マーチン、ポール・ディヴィス
ベース
マイク・リーチ、トミー・コグビル、ティム・ドラモンド、ジョエル・グリーン
キーボード
ビージー・クルーザー、ジェリー ・スミス、ジェリー ・ホワイトバースト、ハーガス・“ピッグ”・ロビンス、
ドラムス
ケニー・マローン、カール・ハイメル、テリー・パーキンス、
パーカッション、ヴィブラフォン ファレル・モリス
トランペット ジョージ・ティドウェル
トロンボーン デニス・グッド
サキソフォーン ビリー・プレっト
スチールギター ウェルドン・マイリック
曲目
*参考として最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Crying クライング
ゆったりした間のあるリズムの曲で始まります。裏リズムのギターカッティングがいいです。
2, I’ll Be There アイル・ビー・ゼア
軽快な曲です。なんか聴いたことがあるような・・・と思ったら古い曲のカバーでした。
原曲を知っているかといえば知らないんですけど、レイ・プライスのカバーだそうです。
同じような感じでカントリーっぽいアルバム「ギター・マン」に「オールド・ブルー」という曲があります。それもとってもいい感じの曲です。
ボーカルに絡むギターの音色が気持ち良いのですが、あれれ、もう?という感じで終わってしまいます。
3, Starbound スターバウンド
如何にも夜の草原に寝転んで、星を見ている感じです。
4, Rock And Roll Records ロックンロール・レコード
あまりエイトビートのロックンロールを感じさせないのです。レイドバックしてて良い感じです。
5, The Old Man And Me ザ・オールド・マン・アンド・ミー
ゆったりとしたリズムですが、テンションは保っていて、だるくなったりはしません。この辺がキモです。
6, Everlovin’ Woman エバーラヴィン・ウーマン
軽快に歌い上げます。この曲はジョージィ・フェイムもカバーしています。
7, Cajun Moon ケイジャン・ムーン
タルサ・サウンドらしい曲です。ケイジャンと聞くと独特の雰囲気があります。
ケイジャンを思いっきり雑に言うとルイジアナのフランス系移民の文化です。そのルイジアナにたどり着くまでにアメリカ北東部に最初に入植したそうです。ザ・バンドの「アケイディアン・ドリフトウッド」にも通じています。
8, I’d Like To Love You Baby アイド・ライク・トゥ・ラヴ・ユー・ベイビー
良い感じのスライドギターが入り、気持ちよく進行します。ホーンアレンジもレトロな感じでいいですね。
9, Anyway The Wind Blows エニウェイ・ザ・ウインド・ブロウズ
のちにクラプトンとコラボした「The Road To Escondido」で再演もしています。同じようなアレンジですが、クラプトンと一緒の方がちょっとよそ行きの雰囲気かな。
10, Precious Memories プレシャス・メモリーズ
ゴスペル曲のカバーですが、カントリーバラードっぽいです。
J.J.ケイルはこの曲もそうですが、ギターソロに入って勝手にフェイドアウトというのが多いです。
11, Okie オーキー
インスト曲です。アルバムジャケットの雰囲気にぴったりの雰囲気です。オクラホマを鉄道で旅しているイメージです。
12, I Got The Same Old Blues アイ・ガット・ザ・セイム・オールド・ブルーズ
キャプテン ・ビーフハート、ブライアン・フェリー、レーナード・スキナード、エリック・クラプトン、ボビー・ブランドがカバーしています。
この曲はJ.J.ケイルらしいミディアムテンポで気持ちよく終わります。
全部で29分8秒という長さです。J.J.ケイルはほとんどが2、3分の曲なので、収録時間もCDに慣れている世代には短いです。よくギターソロに入ったらそのまま終わっちゃったということがあり、ドラマチックに起承転結する感が全く無いのです。そのなんともな執着のなさがJ.J.ケイルらしいのかもしれません。
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