よもやま話から入ります、LPレコードが1948年に開発されて以降、再生可能な時間が長くなるということが音楽の発展に大きな影響を与えました。3分間程度の時間制限から解放されたことで、表現の幅は飛躍的に広がりました。
またコンサート会場かラジオでしか楽しめなかったクラシック音楽も録音して自宅のオーディオで好きな時間に楽しめるようになりました。
大衆音楽と呼ばれるものも時間の自由が持てたため、モダンジャズや、ロックポップスのコンセプトアルバム、プログレッシブ・ロックへと発展していくことになります。
そういう中で驚異的な売上枚数を誇るLPレコードも出てきました。ポップスは瞬間的な売り上げは多いのですが、時代の反映という面から時間経過とともに飽きられるということも関連して、そうそうヒット期間は長続きはしません。
大衆音楽の中でもジャズやロックは時代を反映した新しい表現であるものの、個人の嗜好が締める部分が多いため時代に左右されない強さも持ち合わせています。
マイルス・ディヴィスやジョン・コルトレーン、ビートルズやボブ・ディラン、そしてピンク・フロイドのような時代が変わってもある程度は需要が見込める音楽、アルバムが出現しました。現在でも定期的に再発売され続けています。
また、リマスター、リミックスなどの最新技術で現在の音楽鑑賞の環境に合わせて音質もアップデートされ、メディアもヴァイナル・レコードからCD、デジタル配信などと変化に柔軟に対応してきました。
はい、ここでピンク・フロイド1973年リリースの「Dark Side of the Moon 邦題 : 狂気」の話になります。
このモンスターアルバムは発売時から15年間、アメリカのビルボードチャート200に君臨し、カタログチャートでも30年以上ランクインしてギネス記録となっています。
また、今までの総売上は5,000万枚以上とされています。
これでピンク・フロイドは1969年リリース「宮殿」のキング・クリムゾンとともにプログレ・セールスの2大巨頭となります。
音楽性、芸術性云々はおいといての話になりますが、ジャズよりもロックの方がコマーシャルである分、売り上げ枚数は多くなります。
それで当然、リマスター、リミックス時の責任も大きくなります。
その記録は今後も長い間残り、売り上げに影響することにもなるからです。
ですから最近のリミックス・ビートルズなども細心の注意を払って、しかも愛情深く、丁寧な仕事がされています。
ピンク ・フロイドの「狂気」に至っては発売時から高音質で通っており、オーディオ評価のリファレンス音源として定着していました。
このアルバムがどういう風な音で再生できるかでオーディオ機器、特にスピーカーの価値が決まるのです。
「狂気」のリマスター CDは今までリリースされていますが、CD化という意味合いの強いものでした。
最近のリマスター状況はまたまた進化してきています。2020年代へとアップデートすることはかなり勇気のいることと思います。
購入した半分以上のリスナーにやっぱりアナログレコードの音の方が良かったと言われるようでは決定的なデジタル、ハイレゾ音源の敗北となりかねません。
ということを踏まえて、2022年に永らくされなかった「狂気」のハイレゾ音源がリリースされました。2023年3月には50周年記念リマスター 盤もリリースとなります。
というわけでこのモンスターアルバムをご紹介いたします。
演奏
ロジャー・ウォータース ヴォーカル、ベース
デイヴィッド ・ギルモア ギター、ヴォーカル
ニック・メイスン ドラムス
リチャード・ライト キーボード、ヴォーカル
アラン・パーソンズ エンジニア
クリス・トーマス エンジニア
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Speak To Me スピーク ・トゥ・ミー
心臓の鼓動とともにレジ、ヘリコプターの音と不穏な叫び声で始まりますが、ピンク・フロイドに場合は心に語りかけてくる音楽なので、不安な気持ちにはなりません。
2, Breathe (In The Air) 生命の息吹
なんとなくまたリラックスできる歌が出てきます。
3, On The Run 走り回って
この時代、最先端であったシンセサイザー を使って立体的な音の空間を作っています。
4, Time タイム
いろんな時計の時報が重なります。この曲は低音域も使っており、よくオーディオ機器チェックで使われていました。
曲としてはドラマチックでヴォーカル、ギターソロ共に最高です。
5, The Great Gig in The Sky 虚空のスキャット
ピアノに導かれてクレア・トーリーのスキャットが大活躍です。
6, Money マネー
レジスターのリズムでこのアルバムで唯一リズミカルな曲です。当時はシングルヒットもしました。
7, Ua and Them アス・アンド・ゼム
ディック・バリーの柔らかいテナーサックスで始まります。サビとの強弱を強くして、ドラマチックに進みます。
8, Any Color You Like 望みの色を
タイトル通り、聞き手に想像させる曲です。いろいろと凝っています。
9, Brain Damage 狂人は心に
名曲です。歌詞にダークサイド・オブ・ザ ・ムーンと出てきます。狂気日食へのプロローグです。
10, Eclipse 狂気日食
ひたすらリフレインして畳み掛けて訴えてきます。エコーズから続く、如何にもピンク・フロイドな展開です。そして心臓の鼓動で終わります。
個人的に「狂気」を聴くと高校生時代の期末テスト期間を思い出します。「おせっかい」とともに勉強しながらずっとかけていました。
最近、ネット記事で「狂気」のジャケットはLGBT賛歌みたいなことが書かれていましたが、流石にこれは筋違いというか、光のプリズムをデザイナー集団、ヒプノシスによりデザインされています。
当時から当然存在はしていただろうけど、そういう論争はなかったと思いますし、同性愛などが表立って出てきたのは1970年代後半のトム・ロビンソン・バンドとかカルチャー・クラブあたりでした。
コメント