


「カントリーギターの神様」チェット・アトキンスも尊敬する トラヴィス・ピッキン のマール・トラヴィスのご紹介です。
カントリーギターの第一人者、マール ・トラヴィスのオール・インストルメンタル・アコースティック・ソロ・アルバムです。
長らくCD化されず、アナログレコードを探すしかなかったのですが、晴れて配信で聞くことができるようになりました。(CDは出ていないようです)
マール・トラヴィスはカントリーミュージックにおいては「シックスティーン・トンズ」や「ダーク・アズ ・ア ・ダンジョン」、「アイ・アム・ア ・ピルグリム」など数々の労働歌や伝承歌のスタンダードで有名な重鎮です。
さらにトラヴィス・ピッキングという奏法でチェット ・アトキンスと並ぶギター・レジェンドでもあります。
トレードマークのトラヴィス・ピッキングとはケンタッキー州西部のフィンガーピッキング奏法から発展したものです。
元は黒人のカントリーブルーズマン、ギタリスト兼フィドラーで合ったアーノルド・シュルツが形を作り、ケネディ・ジョーンズらに教えて広がっていったと言われています。
サムピック(親指に付けたピック)でリズミカルなベースラインを作りながら他の指でリードラインを弾いていくスタイルです。
と書くとチェット ・アトキンスと一緒ではないかとなりますが、マールさんの場合はよりシンコペイトしたブラインド・ブレイクなどのラグタイムブルーズと同じような弾き方です。
低音弦を2弦弾いたギャロッピングみたいなこともします。
チェット さんはそれにインスパイアされてもっと洗練して独自の世界を作りました。
チェット・アトキンスはマール・トラヴィスを師と仰ぎ、ずっと敬意を表しています。
最初にサムピックをギターで使用していたと答えています。
さらに自分の娘にマール・アトキンスと名付けました。
マール・トラヴィスは1917年11月29日、ケンタッキー州ローズウッドで生まれました。炭鉱の多いところでマールの曲にも影響を与えています。
18歳の時にアマチェア・ラジオショーで演奏し、仕事を得ます。
ジョージア・ワイルドキャッツというバンドやシカゴのゴスペルグループなどでも演奏して、ナッシュビル のカントリーミュージック・ステイションで仕事をする20歳の頃にはみんなびっくりするような演奏力になっていました。
その後も音楽活動を続けて、小さなレーベルでレコーディングしていましたが1946年には大手キャピトル・レコードと契約しより大きなヒット曲をリリースするようになります。
アルコールと薬物乱用により60年代は停滞しますが1970年代には復帰して活動を再開します。
1972年にはニッティ・グリッティ・ダート・バンドの「永遠の絆」のも参加してロックファン、ルーツミュージック・ファンを喜ばせます。
グランド・オール・オープリーなどのイヴェントやテレビ出演、1974年にはチェット・アトキンスとのデュエットアルバムでグラミー賞を受賞、さらに「トラヴィス・ピッキン」もノミネートしています。
1970年代は精力的に活動して多くのアルバムも録音していましたが、1983年10月20日、オクラホマ州タレクア で心臓発作で亡くなりました。65歳でした。



アルバム「トラヴィス・ピッキン」のご紹介
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Rose Time ローズ・タイム
軽快で、綺麗で、丁寧な演奏です。
この曲に限らずこのアルバムは押しなべてこういう感じです。
まさに一人オーケストラとい感じです。
2, There’s Be Some Changes Made ゼアズ・ビー・サム・チェンジズ・メイド
ベースラインがとてもいいです。
途中のストラミングがこの人の場合、とっても優しい感じです。
3, Born To Lose ボーン・トゥ・ロス
レイ・チャールズでもお馴染みです。レイ・チャールズ風にソウルっぽくに始まってカントリーになります。
演奏にブラインド・ブレイクも感じられます。
最後にまたレイ・チャールズに戻ります。
4, Too Tight Rag トゥー・タイト・ラグ
いかにもラグタイムギターという感じのギターです。
すごい演奏です。
5, You’re Nobody till Somebody Loves You ユア・ノーバディ・ティル・サムバディ・ラヴズ・ユー
なんとなく聞いたことのあるような美しいメロディですが、古い1940年代ポップスで1960年にディーン・マーチンという人がリバイバルヒットさせた曲だそうです。
6, Night Sounds ナイトサウンズ
なんというかメランコリックな雰囲気の小曲です。
なんとマール・トラヴィス作です。
見た目と違った性格が見受けられます。
7, Sugar Moon シュガー・ムーン
ボブ・ウィルスとシンディ・ウォーカーという人が作曲したウエスタン ・スウィングの曲です。
安定した演奏です。
8, White Heat ホワイト・ヒート
このアルバムで一番早いパッセージの曲です。
余裕で弾き倒しています。
9, Midnight Special ミッドナイト・スペシャル
刑務所の中で生まれた列車に例えた希望の歌です。
ロックではクリーデンス ・クリアウォーター ・リバイバルで有名です。
10, The World Is Waiting for the Sunrise 世界は日の出を待っている
カナダのアーネスト・サイツというクラシックのピアニストが12歳の時に作った曲だそうです。
良いタイトルです。でも今の時代となっては口にするにはちょっと恥ずかしいのです。
途中、超絶技巧が見られます。
11, Sleep スリープ
ちょっとゆったり、ほのぼのとした感じですが、小技が結構入ってます。
12, Love Letters in the Sand 砂に書いたラヴレター
これも1930年代のポップスです。
1959年にパッと・ブーンがヒットさせました。
13, Drifting And Dreaming ドリフティング・アンド・ドリーミング
ゆったりしたテンポでブラインド・ブレイクとかブラインド・ボーイ・フラーみたいなラグタイムブルーズ を思い切り洗練させた感じです。
14, Sing Baby Sing シング・ベイビー・シング
いろんなギター奏法のバリエーションが出てきます。
丁寧に弾いています。
アメリカン・ミュージックの中ではギターテクニックの一つの到達点です。
この流れは現代のトミー・エマニュエルさんなどに引き継がれています。
「トラヴィス・ピッキン」と同じものではありませんが、マール・トラヴィスのCDを紹介します。



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