「アメリカ伝承音楽、ブルーグラスの最重要グループです」Appalachian Swing : The Kentucky Colonels / アパラチアン・スウィング : ザ・ケンタッキー・カーネルズ

 ケンタッキー ・カーネルといえばほとんどの人が思い浮かべるのはフライドチキンのおじさんです。

でも今回の話は違います。

1963年にアメリカで結成されたホワイト兄弟によるザ・ケンタッキー・カーネルズです。

当然、地元名物フライドチキンは知っていたと思いますからシャレで付けたのかもしれません。「Colonel」とは軍隊でいえば大佐ですが「Kentucky Colonel」といえば「ケンタッキー州に貢献した人」に贈られる称号となるそうです。これもシャレのつもりかもしれません。

まず来歴から。

1954年にローランド 、クラレンス、エリック Jr のホワイト3人兄弟が「スリー・リトル・カントリーボーイズ」というバンドを結成します。(ローランド 16歳、クラレンス10歳、エリックは不明)

3年ほどでラジオ番組のコンテストで優勝したり、テレビ出演もできるようになりました。
1957年にはバンジョーとドブロ 奏者を入れてブルーグラス を演奏するようになります。

962年にザ ・ケンタッキー ・カーネルズと改名し「ブルーグラス ・アメリカ」というアルバムをリリースします。
長男のローランド は兵役のためこのアルバムには参加していないそうです。

徐々に評判となって1964年に2枚目の代表作「アパラチアン・スウィング」をリリースしました。

前作はヴォーカル、ハーモニーのブルーグラス ・バンドでしたが2枚目は全曲インストゥルメンタルのアルバムです。
しかしながら時代はフォーク・リバイバルとブリティッシュ・インベンションとなっており、評論家からの評価は高かったものの、こういうブルーグラスで生計を立てるのは難しかったらしく1965年10月で解散します。

その後も翌年1976年と、1973年初めにはちょっと変えてホワイト・ブラザーズ(ニュー・ケンタッキー・カーネルズ)として再結成していますが本格的な活動とはなりませんでした。(ギターのクラレンス はかの有名な「ザ・バーズ」で活動していました。)

そして不幸なことに1973年7月15日、メインプレイヤーのクラレンス・ホワイトがニュー・ケンタッキー ・カーネルズのコンサートの後、機材を積み込んでいる時に飲酒運転の車にぶつけられて亡くなってしまいました。

バンドの中心人物だったクラレンス・ホワイトのカントリー、ブルーグラス 界への貢献は高く評価されています。

アコースティックギターでは卓越したフラットピッキング奏法により、ギターを音量で負けてしまうバンジョーと同じくらいの花形楽器に持ち上げました。

そしてザ ・バーズ に加入してからはエレクトリックギターでカントリーロックを発展させます。

ケンタッキー・カーネルズからちょっと離れて、クラレンス・ホワイトの秘密兵器の話をします。

この時期ジーン・パーソンズとともにテレキャスターを改造してストリング・ベンダー(B ベンダー)なる必殺兵器を開発し、演奏に取り入れました。

これはギターの2弦(B弦)とストラップピンをスプリングやレバーを使って連動させます。肩からかけたストラップに力を加えることによりBから C#までスウィープさせることができる機能です。

同じく3弦をスィープさせる「Gベンダー」についてカントリーミュージシャンのブラッド・ペイズリーが解説している動画がyoutubeにありましたので、リンクさせていただきます。

ベンディングやアーミングというギターテクニックや、スティール・ギター とはまた異なる雰囲気の音の揺れで独特の世界を作れますが、使いこなすにはそれなりの技術を必要とします。

ヴェンチャーズのトレモロのように初心者でもそれなりにマネできるものではなく、卓越したテクニックとリズム感を持った上で可能な奏法のためなかなか一般的には普及はしませんでした。

ジーン・パーソンズ(マルチ奏者)とメリディアン・グリーン(フォーク・ミュージシャン)のアプローチでフェンダー も1996年から2000年くらいまでカタログに載せて生産していました。

今でもメインにはならないまでもイーグルスやレッドツェッペリン、メタリカなどの有名なギタリストも隠し味的に使用しています。

アルバム「アパラチアン・スウィング」のご紹介です。

演奏

ローランド・ホワイト  マンドリン

クラレンス・ホワイト  アコースティック・ギター

ビリー・レイ・レイサム  バンジョー

ロジャー・ブッシュ  コントラバス、バンジョー

ボビー・スローン  フィドル

リロイ・マック  ドラムス

曲目  
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,    Clinch Mountain Back-Step  クリンチ・マウンテン・バックステップ

軽快な早い曲で始まります。スタンリー・ブラザーズ・アンド・クリンチ・マウンテンボーイズというブルーグラス 界では有名なバンドのカバーです。

2,    Nine Pound Hammer  ナイン・ポンド・ハンマー

ビル・モンローが作ったブルーグラス のスタンダードです。こういう風に弾き倒す演奏に憧れます。

3,    Listen to the Mocking Bird  リッスン・トゥ・ザ・モッキンバード

トラディショナル・ソングで和むようなメロディです。

4,    Wild Bill Jones  ワイルド・ビル・ジョーンズ

軽快なチューンでマンドリンが素晴らしい演奏です。

5,    Billy in the Low Ground  ビリー・イン・ザ・ロウ・グラウンド

イントロから素晴らしいギターです。この時クラレンス・ホワイトは若干19歳だったそうです。

6,    Lee Highway  リー・ハイウェイ

これぞブルーグラス という勢いの速いフレーズです。フィドルもいいです。

7,    I Am a Pilgrim  アイ・アム・ピルグリム

マール・トラヴィスのヒット曲のカバーです。スローテンポで味のある演奏です。

8,    Prisoner’s Song  プリズナーズ・ソング

またまた陽気なバンジョー 炸裂です。タイトルのイメージと違ってひたすら明るいのです。

9,    Sally Goodin  サリー・グッディン

ドク・ワトソンを彷彿させるギターメインの曲です。トラディショナル曲です。

10,   Faded Love  フェイデッド・ラブ

若干ワルツ 風のリズムですが、テンポ共に如何にもいなたいカントリーソングで癒されます。

11,   John Henry  ジョン・ヘンリー

カントリー・スタンダードといえそうな有名曲です。クラレンスのギターがとにかく気持ちいいです。

12,   Flat Fork  フラット・フォーク

最後はみんなの高速インスト・バトルで締めます。

ブルーグラス ・インストアルバムでした。

今でもこういうバンドはアメリカにはたくさんあると思いますが、さすがにこの時代にそうそう大ヒットすることはありません。

ケンタッキー ・カーネルズもクラレンス・ホワイトがバーズで活躍したので、その流れで語られることが多いのです。

でも歴史的なバンドです。

こういうアメリカ伝統音楽もいいものだと思います。

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