「Mr.ブルーグラス・ギターマスター、伝説のフラットピッキング」Doc Watson : ドク・ワトソン

 カントリーミュージックの基本、 Mr.ブルーグラス・ギターマスターによる名盤「Doc Watson / ドク・ワトソン」のご紹介となります。

ドク・ワトソンは「アメリカン・トレジャー」と呼ばれ、驚異的なギターテクニックと哀愁の歌で有名です。
1923年3月3日にノースキャロライナ州ノーズギャップに生まれました。2歳の頃から盲目だったそうです。
本名はアーセル・レーン・ワトソンですが、呼びにくいので、シャーロック・ホームズに引っ掛けてドク・ワトソン(ワトソン医師)にしたそうです。
ラジオのアナウンサーが本番中にそう付けたとのことです。という雑な経緯しかわかりません。詳細は不明です。

彼のキャリアは1953年にテネシー州のカントリー&ウエスタン ・スゥイング・バンドにエレキギタリストとして参加しました。
そのバンドにフィドル奏者がいなかったのですが、ダンスチューンでフィドルの曲が必要なため、ドクはギブソン・レスポールで独学でフィドルの曲をマスターしました。
そのテクニックをアコースティック ・ギターに移して奏法を確立したそうです。

1963年ニューポート・フォーク・フェスティバルに出演して絶賛され、ブレイクします。そして1964年にこの紹介する「Doc Watson」をリリースします。すでにその道の大ベテランとして活躍していたのにデビューが40歳とは遅すぎて驚きます。2年後には息子のマール ・ワトソンがデビューします。

ドク・ワトソンの奏法は基本的にはアコースティック ・ギターのフラットピッキング奏法です。器用なのでフィンガーピッキングも難なく、というより超人的なテクニックでこなします。
フラットピッキングは速弾きに適しているのですが、彼の看板曲、「ブラック・マウンテン・ラグ」という高速チューンのインストをYou Tubeで見たときは驚きました。ほとんど元曲の倍のテンポかと思えるほどなのですが完璧に引きこなしていました。
公式ではないので紹介できませんが、気になる方はyoutubeで探してみてください。
Doc Watson Black Mountain Ragというタイトルのeddymon1という方がアップしている動画です。

彼の歌はカントリーやブルーグラスというよりフォークに近い感じがします。それは彼の故郷のノースキャロライナ、アパラチア山脈のアイルランドからの移民の文化を受け継いでいるからだと思います。

というのは次の理由からです。

「歌追い人(原題 Songcatcher)」という映画があります。内容はアメリカのアパラチア地方でアイルランドの失われた伝承歌を発見し魅了される学者を描いた映画です。
映画は2000年の公開ですが、時代設定はまだ録音機材が蝋管といわれる円筒形の筒(シリンダー)しかなかった1900年頃の話です。
小道具とかも含めて、細かなところまで時代考証がしっかりなされている映画だと感じました。
そのアイルランド系フォーク・ミュージックからナッシュビル、ブルーグラス、カントリーと発展していきます。
いつもドク・ワトソンを聴いているとその映画の世界を想像してしまいます。

(映画を調べましたが紹介できる公式の動画はなく、DVDも高額になっています)

アルバム「ドク・ワトソン」のご紹介です。


曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,    Nashville Blues ナッシュビル・ブルーズ

ブルーズの曲ですがあまり暗い感じにはなりません。カントリーでいうブルーズ はブラック・アメリカンのブルーズのように重くなりませんが、そこはかとなく哀愁を感じられます。カントリーミュージックのパイオニア、デルモア・ブラザーズの曲です。



2,    Sitting On The Top Of The World シッティング・オン・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド

これもブルーズスタンダードですがアルバート・キングやハウリン・ウルフのバージョンとはだいぶ趣が違います。もともとはフィドルなんかも取り入れていた黒人カントリーブルーズの始祖、ミシシッピ ・シークスにいたウォルター・ヴィンソンとロニー・チャットモンによってかかれました。その後はカントリー、ブルーグラス界でも取り上げられるようになります。


3,    Intoxirated Rat  酔ったネズミ

Dorsey DixonとWade Mainerによって1936年にリリースされた曲です。
途中でやめてやり直すところなど、リラックスしているのか本当に酔っ払っているのわかりませんが良い雰囲気です。


4,    Country Blues カントリー・ブルーズ

オリジナルはDock Boggsというアーティストが1927年に発表した曲です。バンジョーも入っていますがその割にちょっと陰鬱な雰囲気です。トーキング ブルーズ 的です。


5,    Talk About Suffering トーク・アバウト・サファリング

ゴスペルです。無伴奏で歌いますのでフィールドハラー的です。


6,    Born About Six Thousand Years Ago ボーン・アバウト・シックス・サウザンド・イヤーズ・アゴー

フォーク調の明るい曲になりました。この曲もノアの箱舟とかアダムとイヴとかの宗教的な内容です。


7, Black Mountain Rag ブラック・マウンテン・ラグ

ドク・ワトソンを代表する曲です。トラディショナルです。


8,   Omie Wise オーミー・ワイズ

ナオミ・ワイズ(なぜかオーミー・ワイズとなっています)という女性が殺害されたことを歌ったバラードです。


9,    Georgie Buck ジョージー・バック

ジョージー・バックが死んだということを歌っていますが、歌詞の本当の内容がわかりません。
フォーク調ですがブラック・サザーン・バンジョー・ソングという括りだそうです。


10,    Doc’s Guitar  ドクス・ギター

ギターの音を一番綺麗に出せるのはこういうメロディなのかと感じます。


11,    Deep River Blues  ディープ・リバー・ブルーズ

いろんなギタリストにカバーされている名曲です。


12,    St. James Hospital  セント・ジェームス・ホスピタル

トラディショナルですが元は「The Bard Of Armagh(アーマーの吟遊詩人)」というものだそうです。


13,    Tom Dooley  トム・ドーリー

これもトム・ドゥーリーがローリー ・フォスターを殺したという内容です。


この1枚だけでも「アメリカの宝石」といわれるドク・ワトソンは時代を超えて素晴らしさを伝えてくれます。他のアルバムはまたの機会に。

Bitly

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