「今や古典となった思い出の「ディープ・パープル・ライブ・イン・ジャパン」、最新のスティーヴン・ウィルソン・リミックスでいかが?」Made in Japan : Deep Purple / ライブ・イン・ジャパン / ディープ・パープル

 もう今から50年以上も前になりますが、このアルバムがリリースされた1970年代前半、ハード・ロックが日本でも話題になっていました。
中でも筆頭はディープ・パープルとレッド・ツェッペリンです。

私も1970年代半ばあたりからハードロックを聴くようになりました。
周りを見回すと、パープルと比較すればツェッペリン・ファンというものはマイナーな存在に感じられたものです。

私の肌感覚では7割強ほどディープ・パープルが勝っていた印象です。

特に私よりちょっと上の年代は、筋金入りのパープル・ファンが多く、そういう先輩方に絡んで話を聞いたりするのが好きでした。
(なんだかんだ言ってもみなさん両方とも好きなんですが)

私の世代になるとツェッペリンとパープルの人気は均等になったように感じます。
(とっても個人的感想です)

で、その頃になると、もうこの1972年の日本武道館でのライブはすでに伝説といなっていました。

ロックを聴いている人でパープルの「ライブ・イン・ジャパン」を知らない人は皆無と言っていいいくらいの存在となっていたように思います。

わたくし事になりますが、「ライブ・イン・ジャパン」リリース時にはまだ中学1年性くらいだったのでリアルタイムでは聴いていません。
初体験はアルバムのリリースから3、4年経った頃のことです。
高校生になって初めてパープルを起点にハードロックを体験したのでした。
(中学生の頃はビートルズやローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、サイモン・アンド・ガーファンクルあたりがメインの少年でした)

ギターを買って文化祭に向けてのバンド練習をしていた時に、同級生のドラマー君にハードロックや8ビートの基本の叩き方を教えてもらったことを思い出します。

その頃初めてディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、ジェフ・ベック・グループなどのハードロックの世界に触れたのでした。

で、そのドラマー君がいうには
「ツェッペリンのドラムはブルースとかR&Bみたいな黒人の音楽がモトなんだよ。パープルのドラムはヴェンチャーズから発展、進化してきたような基本を押さえた正統派なんだよ」
と言っていました。

今から考えると「オヌシのいう正統派とはなんぞや」などと突っ込みたくもなりますが、当時は同じ年とはいえロックの大先生。
「へえー、そういうもんなんですか」と素直にうなづいて聞いていたものです。

ちなみにスモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロ、ハイハットを開け閉めする叩き方を教えてもらって「うわっ、ドラムってめっちゃ楽しい」と感動したもことを思い出します。

今の若い人は想像できないかもしれませんが、私よりちょっと上の世代でいうと、1960年代はザ・ヴェンチャーズはある意味ビートルズより知名度がありました。

ロックなんか知らない、演歌が最高、と言ってスナックでプロ野球談義をしているいる中年おじさんでもヴェンチャーズは知っていました。
(実際、「二人の銀座」、「京都慕情」など歌謡曲までヴェンチャーズは作っていましたしね) 

そしてディープ・パープルのクラシック音楽みたいなスタイリッシュな曲の展開、激しく思いリズムに時々出てくる「スモーク・オン・ザ・ウォーター」に代表されるような日本を感じるメロディ。

それらを合わせればなるほど日本人、日本の若者に人気が出るわけです。

世界を見回してもザ・ヴェンチャーズとディープ・パープルがロックの2大巨頭として神格化されていた国は日本くらいしかなかったのではなかろうか、なんて思ってしまいます。

そういうところがまた個性があって素晴らしいところです。

そんなこんなで高校生の頃LPレコードをカセットにダビングして聴き狂った「ライブ・イン・ジャパン」です。

今では世界的に歴史的名盤となっているこのアルバム、当初の予定では日本のみでのリリースだったらしいです。

しかし出来、評判とも非常に良かったことから正式なリリース盤「メイド・イン・ジャパン」としてパープルのカタログに加えられることになります。
アメリカでもビルボードで6位になる大ヒットとなりました。

その後もディープ・パープルはハードロックの先駆者として歴史に残り、一連のアルバムはハードロックの基本として語り継がれていきます。

そして今年2025年の8月、すでに50年以上も経ってからこの時のジャパン・ツアーを詰め込んだCD2枚組デラックス・エディションがリリースされまました。

5CD+Blu-Rayという「デラックス・ボックス」もありますが、なかなか高価な逸品なのでかなりの思い入れがある人しか入手しないと思われます。

でもその中の「スティーヴン・ウィルソン・リミックス」だけは音楽配信サイトで単体販売(配信)されています。

しかもロック名盤として名高いLP二枚組アルバムの最新リミックスというのに、とってもリーズナブルな価格設定となっているのです。(私はハイレゾ音源を12,57円で購入しました)

最近のスティーヴン・ウィルソンの仕事は定着してロックの歴史的な名盤のリミックスは増えてきており、それなりに評価されています。
世界中にたくさんのスティーヴン・ウィルソン・リミックスのコレクターが発生してそうです。

というわけでスティーブン・ウィルソン・リミックスの音の傾向はイエスなどをみても大体察しがつきます。
オリジナルの良さを殺すようなことはしない人です。

そしてナカミの話にはいります。
聴いてみました「メイド・イン・ジャパン・スティーヴン・ウィルソン・リミックス」。

改めてやっぱりライブの名盤だと感じます。

このライブの素晴らしさは何かと言われれば、オリジナル曲の良さを凝縮して抽出したような演奏になっていることです。

メンバーは黄金の第二期と言われた
ヴォーカル=イアン・ギラン、
ギター=リッチー・ブラックモア、
キーボード=ジョン・ロード、
ベース=ロジャー・グローバー、
ドラム=イアン・ペイス、という布陣です。

ディープ・パープルにおいて、このメンツのいる「イン・ロック」「ファイヤーボール」「マシン・ヘッド」は、今やハードロックの古典です。

当然、ライブのため全曲サウンド、音質の統一感があります。

しかも日本では「ブラック・ナイト」の大ヒットで前評判は上々、チケットの売れ行きも良く、全員ノリノリ、イケイケの状態だったようです。

日本公演は1972年8月15、16日は大阪フェスティバルホール、17日は日本武道館で行われました。

アルバムジャケットが武道館公演のショットと言われていたので、全部が武道館のライブと思っていましたが、16日の大阪フェスティバルホールがほとんどです。

「レイジー」のみ武道館公演の音源で、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は初日の大阪公演のものとなっているようです。

後日、ロジャー・グローバーがこのツアーについて
「初日の大阪公演はレコーディングを気にするあまり、固くなっていた、武道館公演は雑になってしまった」
と答えています。

ということで大阪の2日目が一番いい状態だったそうです。

しかし「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だけは大阪の2日目はリッチーがリフで間違えたため、初日のテイクが入りました。

あの超シンプルなリフでミスるなんてリッチー、遊びすぎ・・・と思って完全版を確認してみたら納得しました。
初日は「えーっ、イントロでこれ?」というくらい崩しているし、3日目の武道館では多分ソロの起承転結がうまくいってなかったからなのでしょう。

まずはそういう些末なことを差し引いても楽しいアルバムです。

なんと言ってもイアン・ペイスとロジャー・グローバーのリズム隊のスピーディーで力強い推進力が見事に捉えられています。
それに引っ張られてイアン・ギランのヴォーカルも、リッチーのギターもジョン・ロードのハモンド・オルガンもいつもより5割り増しの熱量で繰り広げられるのです。

でもなあ、スピーディーと言っても最近のやたらと速くて重いメタルとかに比べればブルーズ・ロックなんだろうなあ。

アルバム「メイド・イン・ジャパン」のご紹介です。

Amazon.co.jp: ライヴ・イン・ジャパン DELUXE EDITION - ディープ・パープル: ミュージック
Amazon.co.jp: ライヴ・イン・ジャパン DELUXE EDITION - ディープ・パープル: ミュージック

演奏

*ディープ・パープル
イアン・ギラン  ヴォーカル、ハーモニカ、パーカッション
リッチー・ブラックモア  ギター
ロジャー・グローバー  ベースギター
ジョン・ロード  オルガン、ピアノ
イアン・ペイス  ドラム

*レコーディング・ユニット
コーディネーション  ワーナー・パイオニア
エンジニアリング  マーティン・バーチ
機材  
イアン・ハンスフォード、ロブ・クックシー、コリン・ハート、ロン・クイントン

マーシャルエンジニア  K・フレッグ
プロモーター  ユニヴァーサル・オリエント・プロモーションズ
プロデュース  ディープ・パープル
ミックス  ロジャー・グローバー、イアン・ペイス
カバー・デザイン  ロジャー・グローバー
フォト  フィン・コステロ

1998リマスター  ピーター・ミュー

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Highway Star ハイウェイ・スター

はい、ツカミはOK、歴史に残るロック・スタンダードです。
何度聞いても胸が高鳴ります。

2,   Child in Time チャイルド・イン・タイム

最初に聞いた時、ハードロック調のオペラなのか、などと思っていました。
1970年リリースの「イン・ロック」に収録されています。
ライブの定番曲で、これもパープルを代表するナンバーです。

3,   Smoke on the Water スモーク・オン・ザ・ウォーター

パープルで1、2位を争う有名曲です。1972年の「マシン・ヘッド」からです。
3分22秒あたりのフレーズにに思いっきりギターのミストーンが出てきます。
しかし続いて繰り広げられるギターソロの素晴らしさでそんなんは小さなこと、となってしまうのです。

4,   The Mule ミュール

アルバム「ファイヤーボール」からで、ドラム・ソロがフューチャーされるライブの定番です。ちょっとだけ入るヴォーカルのメロディも含めてブリティッシュ・バンドらしく、ちょっとプログレ寄りだと思っていました。

5,   Strange Kind of Woman ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン

これも「ファイヤーボール」に収められているナンバーでオリジナルはシングルカットされてヒットしました。このライブバージョンはギターとヴォーカルのかけ合いが聞きどころの一つで、これ以降、こういうギターとヴォーカルのアドリブかけ合いがやたらと流行りました。

6,   Lazy レイジー

ジョン・ロードも大活躍のプログレッシブなナンバーです。「マシン・ヘッド」に収録されていました。歌の部分はブルーズっぽい曲調でハーモニカも登場します。
1970年代後半、日本に同名のアイドル風ロックバンドがいました。ここからギターの高崎晃さんとドラムの樋口宗孝さんはラウドネスを結成して1980年代の日本のハードロックの中心バンドとして活躍しました。

7,   Space Truckin’ スペース・トラッキン

これも「マシン・ヘッド」からです。ジョン・ロードとリッチー・ブラックモアの応酬です。
原曲は4分30秒くらいの長さですが、コンサートではいつもラスト曲であり、延々30分くらい続けられたりします。
リッチー・ブラックモアがギターを壊すならこの曲です。
メインの低音フレーズが好きで個人的に一番かっこいいリフと思っていました。

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