「イーストコーストの顔役、ウェストコーストでのコラボレーション」Way Out West : Sonny Rollins / ウェイ・アウト・ウエスト : ソニー・ロリンズ

 時は1957年3月、アメリカ東海岸(ニューヨーク)のソニー・ロリンズが西海岸(ロサンゼルス)に赴いて録音した大大大名盤「ウェイ・アウト・ウェスト」です。

この時期のソニー・ロリンズは彼のジャズ人生で挙げられるいくつかのピークの中でも、最も高いところにいたのではないかと思います。前年に「サクソフォーン・コロッサス」をリリースし、この年の暮れにはブルーノートから「ア・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」というこれまた気絶しそうなライブアルバムを出しました。

ロリンズはこの時期、ピアノレス・トリオを極めようとしていました。サックス、ベース、ドラムスと和音楽器を含まないフォーマットです。それをスタジオアルバムやライブで満足できる、充実した内容の音楽とするのはものすごい挑戦です。
その姿勢にもロリンズの偉大さが表れています

同じピアノレス・トリオでも「ウェイ・アウト・ウエスト」と「ヴィレッジ・ヴァンガード」は全く質感が違います。
軽やかでおしゃれで遊び心満載「ウエスト」と火花散らかし、ガチンコのストロングスタイル「ヴィレッジ・ヴァンガード」という両極端な振幅の差がロリンズの「コロッサス」ぶりを表しています。

そしてどちらも究極の “ジャズ” が感じられ、言ってしまえばその辺のロックンローラーよりも “ロック”です。

「ウェイ・アウト・ウエスト」のレーベルはコンテンポラリー ・レコードです。
ここにはジャズ録音においてルディ・ヴァン・ゲルダーと並び称される、ロイ・デュナンという名うての録音エンジニアがいました。(というかこっちの方が好きという人も結構います)
よって名録音盤としても有名です。


一般的にはジャズの録音に迫力、熱気を求めたヴァン・ゲルダーと楽器のナチュラルでリアルな音を求めたロイ・デュナンと言われています。

そして主役は天下のソニー・ロリンズです。
こういうアウェイ状態でも圧倒的です。余裕で笑い飛ばすところは何にも変わっていません。周りを軽くいなします。
こういう明るさ、脱力系も天才ロリンズの一面です。ベースのレイ・ブラウンもドラムスのシェリー・マンも最高にいい仕事をしています。

なのでロリンズに限っては出張先のカリフォルニアで旅行気分に浸り演奏がダレるとか、荒れるとか、集中力を欠くなんてことはありません。またしても期待を大きく超えるプロの仕事をしました。(当たり前です)

そういうことで “ニューヨーク のジャズミュージシャン”が “西海岸カリフォルニア”で “西部劇の曲を演る” というテキトーな企画からは得難いほどの名盤が誕生しました。(本当にテキトーな企画だったかどうかは知りません)

現在、出回っている音源はステレオと言いつつ音像の立体感は無視で、楽器ごとに思いっきり左と右にセパレートしています。

この時代はまだステレオミックスという概念が無かった時代なので致し方ないかもしれません。
というかまだ2chのレコーダーしか存在しない時代です。同時に分けて録るしか無かったのです。

ならばモノラルの方が音が太くていいのでは、と思いますよね。音数少ないし。

でも、もう慣れました。これはそんなことで良さがマイナスなるようなヤワな音楽じゃありません。
それなりに時代背景を感じながら楽しめます。

アルバム「ウェイ・アウト・ウエスト」のご紹介です。

演奏

ソニー・ロリンズ  テナーサックス

シェリー ・マン  ドラムス

レイ・ブラウン  ベース

曲目

*参考までに最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,   I’m An Old Cowhand   俺は老カウボーイ
(Johnny Mercer)

このジャズ的でないリズムの始まり方と、訥々と語るような入り方のサックスがたまりません。


2,    Solitude  ソリチュード
(Duke Ellington, Eddie Delange, Irving Mills)


雰囲気を変えてソニー・ロリンズらしくサックスで歌い上げます。


3,    Come Gone  カム・ゴーン
(Sonny Rollins)


一見フリーに見えても、フリージャズにはなりません。


4,    Wagon Wheels  ワゴン・ホィール
(Peter De Rose, Billy Hill)


シンプルな編成なので、各自の押し引きがとても面白く、焦らすようなサックスのメロディが印象的です。


5,    No Greater Love  ノー・グレーター・ラヴ
(Isham Jones, Marty Symes)

スタンダードを丁寧に演奏しています。こうして聞くと本当にいい曲です。


6,    Way Out West  ウェイ・アウト・ウエスト
(Sonny Rollins)


ソニー・ロリンズ作のこのアルバムを象徴するような演奏です。軽く吹いているようで、深いのです。

硬派ピアノレス・トリオのライブもご一緒に紹介します。

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