ジャズの巨人であり、今なおジャズの精神的支柱とも言われているサックス奏者ジョン・コルトレーンです。
ハードバップ以降のジャズにおいてのコルトレーンの存在はとてつもなく巨大で、今でも語り継がれるレジェンドとなっております。
そのコルトレーンの後期代表作、というより全キャリアにおける代表作とされるののが、この「至上の愛」です。
コルトレーンはマイルス・デイヴィスによって見出され、成長したミュージシャンの一人でもあります。1955年から1958年あたりまでマイルスにしてはかなり長い間、メンバーにしていました。
そこでコルトレーンも腕を上げていきます。
また1957年にはプレステッジでデビューして、ブルーノートにも代表作の一つである「ブルー・トレイン」を残します。
マイルスは自分勝手、というより自己目的がはっきりしているので、義理や人情でミュージシャンと付き合ったり、友達として大切にしたりは絶対しません。
ましてや時間をかけて成長するのを待つなんて到底考えられません。
呼んでみて思ったより利用価値がないと思ったミュージシャンは即、切り捨てます。(個人の感想です)
第1期黄金のクインテット時代と言われる時期の初期においては、コルトレーンは新人でさほど評判は良いとは言えませんでした。
演奏が荒いなどと評されていたようです。その時点では同じ年齢のソニー・ロリンズとは大きく差をつけられていました。
でもマイルスはこの時期ずっとコルトレーンを使い続けました。
きっとマイルスもサムシング・エルスを感じていたのだと思います。
コルトレーンはマイルスの元でモードを知りました。
そこでマイルスから独立して「シーツ・オブ・サウンド」を追求します。
レコード会社としてはアトランティック時代です。
ここでも「ジャイアント・ステップス」や「マイ・フェイヴァリット・シングス」などの歴史的名作を残します。
それからインパルスに移籍してフリージャズまで取り入れ、大飛翔をしますが惜しむらくは1967年、7月17日に肝臓がんで亡くなられました。(これっておクスリの取りすぎではないでしょうか)
その最後の大飛翔期の代表作が「至上の愛」です。
「至上の愛=A Love Supreme 」は1964年12月9日にヴァン・ゲルダー・スタジオでレコ^ディングされ、翌1965年1月にリリースされました。以来、コルトレーンのアルバムでも屈指のレコードセールスを誇っています。
全4曲、収録時間32分47秒です。もちろん長ければいいってものではありませんが、ジャズのアルバムの中でも屈指の短さです。
そういったことも内容、音楽の質には関係なく、例えそれがマイナス要因だろうがそれを補ってあまりある名盤です。
今やこのアルバムはジョン・コルトレーンの精神性まで表現した究極のアルバムと評されます。
インパルス時代の彼は精神世界まで表現しようとしている求道者といった感じで語られているのです。
私は20代で最初に聴いた時、素直な感想として「これよりブルー・トレインの方が音楽的に芳醇でいんじゃね。カッコよくね。」でした。
しかもタイトルがいかにも説教くさい、なんか上から目線に感じる(被害妄想です)などと勝手に思って頻繁に聞くアルバムではありませんでした。
私の場合は往々にしてこうなります。このアルバムもアフリカの民族音楽とかゴスペルとかエレクトリック・マイルスを聴いた後、聴いてみると景色がまた違ってきます。
そういう意味で良さを認識するまで10年くらいかかりました。今となってはなかなか味のあるいいアルバム、すごいアルバムです。
聴いていると、人間はやはり崇高さを求め続けることを否定できないもんだ、などとわかったような気になってきています。
でもコルトレーンは、ブルーノートの名アルバム「ブルートレイン」のジャケットで口に手を当て、神妙に考え事をしている風ですが実際は飴玉を舐めています。
だいたいアルバム作成の経緯からしておクスリ代欲しさにブルーノートのアルフレッド・ライオンに会いに行ったという話であります。
マイルスのマラソンセッションの1枚「リラクシン」のリリカルな「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」では演奏が終わるやいなや「ビールの栓抜きはどこ?」などとしゃべっています。
来日した時のインタビューで「私は聖人になりたい」と言ったようですが、その時は奥さんから女癖の悪さを指摘されて怒られた直後だったそうです。
このアルバムにも騙されているのかもしれません。でもいいか。そういうもんさ。
アルバム「至上の愛」のご紹介です。
演奏
ジョン・コルトレーン テナーサックス、ヴォーカル(Tr.1)
ジミー・ギャリソン ベース
エルヴィン・ジョーンズ ドラムス
マッコイ・タイナー ピアノ
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。(スーパーデラックス・エディションです)
曲目
1, Part one : Acknowledgement 承認
反論を気にせず素直にいうと2曲目からが最高です。この曲は実はそんなにいいとは思いません。
テナーサックスの音はさすがだと思います。ただ好きな人にはすみませんが下手なヴォーカルは要りませんと思う次第です。(あくまで今の感覚ではというところです)
そういう私こそまだ何かが足りていないだけかもしれません。という気にさせる、相当に深い音なのです。
2, Part Two : Resolution 決意
すごく深いメロディです。サックスの音がすごくいいと思います。この凛とした世界は他では味わえません。
3, Part Three : Pursuance 追求
ジミー・ギャリソン大活躍です。全体的に言えますがこのアルバムはドラムの音がすごく良く録ってあります。そしてイントロのドラムソロに続いて出てくるコルトレーンのメロディががなんとも言えず素晴らしいのです。
4, Part Four : Psalm 賛美
ドラマチックなリズムで始まりますが、ずっと続くのでなんとなく落ち着いた感じになります。
コルトレーンのサックスに深いものを感じます。
アルバムを通して意思のある音色です。
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