1969年10月22日にリリースされたブリティッシュ・ハードロックを代表するバンド、レッド・ツェッペリンのセカンドアルバムです。
レーベルは大手のアトランティック・レコード。ファーストアルバムに続いて制作を急かされたためツェッペリンサイドはツアーの合間を縫っての忙しいレコーディングでした。
しかし結果はサウンドに統一感のあるアルバムに仕上がっています。
これはプロデューサーのジミー・ペイジとエディ・クレイマーによるところが大きそうです。
そしてこのアルバムのすごいところは、この後何十年にもわたってハードロックの古典となり、重量感あふれるジャケットデザインとともにハードロック、ヘヴィメタルの指標という扱いとなっています。
レッド・ツェッペリンの作り上げたハードロックとは古典ブルーズを元に歌詞とか歌のフレーズを抜き出して一部を拡大してハードに再構築したような作りです。
ブルーズのエッセンスを大音量でヘヴィーに展開します。聴いていると歴史、伝統、民族音楽的なことまで盛り込まれていますので、イメージが広がり他のバンドでは得られないスケールの大きさを感じさせます。
1970年代までのいわゆるクラシックハードロックと言われるものはこうしたブルーズをベースにしたものか、ヨーロッパのクラシック音楽をベースにヘヴィーに展開したものかに大別できます。
1980年代になるとスラッシュメタルなど別の要素が入ってきてまた新たなジャンルが確立しました。
ということでこのツェッペリンのセカンドアルバムも、というかセカンドに限ったことでもありませんが、古典ブルーズやシカゴブルーズの影響が見られます。
それが似ている、いや似過ぎているということで完全にオリジナルとはならない曲もかなりありまして、訴えられて共作とした曲も多いようです。
この辺についてはボブ・ディランとかローリング・ストーンズとかも考えようによってはみんな一緒です。
この「レッド・ツェッペリンⅡ」のサウンドはファーストアルバムより全体に統一感があります。要因はこのアルバムでギターサウンドが確立されたことにあると思われます。
ジミー・ペイジはこのアルバムからギブソン、レスポールというハムバッキング・マイクを使ったエレクトリックギターをメインで使用するようになり、実際にはアンプはいろんな種類のものを使用しているようですが、レスポールとマーシャルの組み合わせがハードロックのマストアイテムとなりました。
余談
経験がある貴兄も多いと思いますが、スタジオに入って、ギターをフルボリュームにして同じくマックス・ボリュームのマーシャルにつなぎパワーコードで「ズドーン」という爆音を出すと、ほとんどの人が「怖いくらいの快感」を感じます。
これがロックの音なんだなあと妙に納得できる瞬間です。(個人の感想です)
リードヴォーカルのロバート・プラントは同じく英国のバンド、スモール・フェイセズにいたスティーヴ・マリオットに憧れていたそうです。
スティーヴ・マリオットも例に漏れずブラックミュージックが好きでレイ・チャールズやウィルソン・ピケットのような歌手を目指していました。モッズ小僧が気合い入りまくりでシャウトする姿はなかなかのカリスマ性がありました。
そして後もハードロックに目覚め、モッズアイコンだったスモール・フェイセズをやめてハードロックバンド、「ハンブル・パイ」を結成し、突貫小僧となった人です。
スティーヴ・マリオットについては改めて紹介させていただきます。
ジャケットのデザインからして第一次世界大戦を模したようなデザインです。
第一次世界大戦時のドイツ空軍第11師団、レッド・バロン率いるフライング・サーカスと言われる先頭航空師団の写真をアレンジしたものとなっています。
By Bundesarchiv, Bild 183-2004-0430-501 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5348354
(出典元です)
勝手な感想を言わせてもらいますと、テクノロジーの進化により重火器を使用した恐ろしいほどのパワー競争と化した近代の戦争なんていうことを暗にイメージさせてくれました。
とてつもないパワーと重量感。これぞハードロック、なんてことまで想起させるなかなか秀逸なデザインです。
アルバム「レッド・ツェッペリンⅡ」のご紹介です。
演奏
ロバート・プラント リードヴォーカル、ハーモニカ
ジミー・ペイジ ギター、テルミン、バッキングヴォーカル
ジョン・ポール・ジョーンズ ベースギター、オルガン、バッキングヴォーカル
ジョンボーナム ドラムス、バッキングヴォーカル
プロデューサー ジミー・ペイジ
レコーディング・エンジニア
ジョージ・キアンツ(ロンドン オリンピックスタジオ Tr. 1,2)
クリス・ヒューストン(ロサンゼルス ミラーサウンド Tr. 3,8)
アンディ・ジョーンズ(ロンドン モーガンスタジオ Tr. 4,6)
エディ・クレイマー(A&Rスタジオ、ジャギーサウンドスタジオ、アトランティックスタジオ Tr. 5,7,9)
LPマスタリング ロバート・ルートヴィヒ
アートワーク デヴィット・ジュニパー
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
01, Whole Lotta Love 胸いっぱいの愛を
初めて聞いた高校生の頃時を思い出します。ツェッペリンを初めて聞いたのはこのセカンドアルバムでした。
いいとか悪いとか好きとか嫌いとかではなく、ただただ「なんか、すごいものを聴いたなあ」という強烈な体験でした。
シカゴブルーズ代表、マディ・ウォーターズ・バンドのベーシストでも有名なウィリー・ディクソンの作った「You Need Love]」から引用されています。
02, What is and What Should Never Me ホワット・イズ・アンド・ホワット・シュッド・ネヴァー・ミー
ヴォーカルにエフェクトがかかっていて、不思議な感じの曲です。思いっきりステレオパンしたギターの音が高校生の時はかっこいいと思ってました。
03, The Lemon Song ザ・レモン・ソング
これもシカゴブルーズの重鎮ハウリン・ウルフの「キリング・フロアー」を引用した曲です。といっても普通に聞けばあまり関係性はなさそうにも感じます。
04, Thank You サンキュー
このアルバムでは珍しく、アコースティックな曲です。といってもドラマチックに盛り上がります。
ヴォーカルのロバート・プラントが作ったと言われるのは2曲目とこの曲です。なんとなく人柄が伺えます。
05, Heartbreaker ハートブレイカー
いかにもなハードロックです。昔からジミー・ペイジはギターがヘタ説がありました。
そういう人は大体この曲のソロがなっとらんという論調でしたけど、上手いだけでつまらない音楽より「ええっ」と驚くインパクトの方がロックキッズは好きなんです。
06, Living Loving Maid (She just a Woman) リヴィング・ラヴィング・メイド
強引な力技でこのポップな曲に繋ぐところが最高にロックな展開と思っていました。
07, Ramble On ランブル・オン
ほのぼのと始まって目一杯強弱をつけてサビに入ります。
08, Moby Dick モビー・ディック
今の時代はあまり流行らないのかもしれませんが、昔は必ずロックのコンサートでは長尺ドラムソロがありました。
そういえばヴェンチャーズとかもやっていましたし。
09, Bring It On Home ブリング・イット・オン・ホーム
ブルーズで始まりますが途中でギアチェンジしてハードになります。ブルーズベースのハードロックの典型です。
ビートルズのラストアルバム「アビーロード」をチャートの1位から引き摺り下ろしたのはキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」という説もありますが正真正銘、記録からも確認できるのは「Led Zeppelin Ⅱ」になります。
クリムゾンの宮殿もそれはそれはすごいものですけどね。
ストーンズの「Let It Bleed」もこの年です、今思うと1969年はすごい時代だったのですね。
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