昔からロックの第一線で活躍してきたロックのカリスマ、エリック・クラプトンと、結局のところ生涯において知る人ぞ知る渋いミュージシャンで終わってしまった感もあるJ.J.ケイルの共作アルバムです。
実は「スローハンド」以降のクラプトンはちゃんと聴いていない状態でしたがこのアルバムとJ.J.ケイルのトリビュートアルバムだけは聴いていました。
なので超ビッグネームということも相まってわたくしにとっては今更ファンというには恥ずかしいエリック・クラプトン、と今更ファンと言ってもこの先、忘れられずに残るのだろうか、いや、残って欲しいっす、と切に願うタイプのJ.J.ケイルのコラボレーションです。
常に他の人には興味がなく我が道を進むJ.J.ケイルです。
かたや大スターで超有名大物ミュージシャン、だけど生まれつきの依存体質で常にブルーズとかアメリカン・トラディショナルなど何かに頼っているとなぜかいいものができて売れてしまうというクラプトンです。
このコラボレーションはありそうでなかったものが実現した瞬間でした。
ここでJ.J.ケイルからクラプトンに共作の声をかけたということは100%考えられません。
クラプトンがせめてものご恩返しとばかりに密かに企画したものです。クラプトンがアルバム制作を手伝ってくれとお願いした形で実現したことも有名な話です。
なのでわたくし的にもJ.J.ケイルのアルバムと考えています。クラプトンもそう思っていると思います。
何気にジャケットにJ.J.Cale and Eric Claptonとアルファベット順でもなく、売れてる順でもなく書いてあるのはきっとクラプトンの意向です。
多分ですが、ゲスト扱いでいいんだけどジャケットに一応名前出しておいた方が売上に貢献できるよきっと、という感じだったのかと。
実はJ.J.ケイルについてはこのアルバムよりも「グラスホッパー」とか「ギターマン」などのおすすめアルバムは他にいっぱいあるのですが、クラプトンや若手、売れっ子実力派ミュージシャンを交えてアップデートしたJ.J.ケイルもおすすめです。
そして最近のクラプトンについて語りたかったことがあるのでこのアルバムをご紹介します。
実は最近びっくりしたことがあります。(といってもすでに去年の話ですけど)
ローリングストーン誌が選出する最も偉大なギタリスト100人において2011年にジミ・ヘンドリクスに次いで2位だったエリック・クラプトンは同2023年版では35位まで落ちてしまいました。
1位のジミヘンは変わっていません。クラプトンも今まで不動の2位でした。
ちなみに31位はジョージ・ハリソン、15位がキース・リチャーズ、上位では2位がチャック・ベリーで3位がジミー・ペイジってなんかおかしくありません?。
基本的な物差しは変わっていないのにクラプトンだけハブられました。
なんか作為的なものが感じられます。
しかも納得できないのはギタリストとしての評価がジョージ・ハリソンより低いってそりゃあ歴史的にあり得んだろうと突っ込みたくなります。「あんたは『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』の経緯を知っとるんかい」とクラプトン・ファンから胸ぐらを掴まれて詰め寄られますよ。きっと
で、なぜこうなってしまったかと思ってネットを見ると一説では“クラプトンはコロナのワクチン反対派だったから”という説がありました。
確かにそういう政治的な理由で見ない限り答えのしようがありません。
まあ芸術家は何かと変人が多いのです。
私はミュージシャンを政治的な発言では評価しようとは考えません。だってあの人らはそこはかなり変わっていますから。(だから続けていられるのです)
そしてこういうことを平気でするから大手メディアといえども最近は信用されないんだろうなっと。
(怖いなあ、昔は違ったんだけどね。変に信用しないようにしとこ、結局は金とヒマを持て余した年寄り向けか、はいそこまで!)
そしてこのアルバム「ザ・ロード・トゥ・エスコンディード」です。2006年11月7日にリリースされました。
再録もありますが14曲中11曲がJ.J.ケイルの作となっています。
また歌い方、声質がクラプトンとケイルはとっても似ていますのでどっちが歌っても一緒のようです。クラプトンの方がちょっとこもっているか、というくらいです。
(二人とも朗々と歌い上げるという意味での歌唱力というか、上手さはいくつになってもありません。そんなことみんなわかってるって!)
クラプトンがジャマという過激な意見もございましょうが、ここは全てJ.J.ケイルのためです。お察しください。
そしてゲストミュージシャンがまたすごい人ばかりでJ.J.ケイルの人柄が偲ばれます。
しかもゲストのみなさんもゲストの割に控えめでJ.J.ケイルを引き立てることだけ考えているようです
通常、ゲストで声がかかるとなんとか自分らしい音を出してツメ跡を残そうとするものですが、ここではそういう人は見当たりません。
J.J.ケイルをわかっている人ばかりです。
2008年にはグラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ブルーズ・アルバムを獲得しました。
全世界のJ.J.ケイルファンは私も含めて素直に「J.J.ケイル、よかったね。ボーナスステージ到来だよ」と思って思わぬ檜舞台に喝采を送って、どうやら一安心と胸を撫で下ろしたことだと思います。(個人の感想です)
タイトルの「エスコンディード」とはカリフォルニア州サンディエゴのバレーセンターにある小さな古い街でそこに当時、J.J.ケイルは住んでいました。
このアルバムは歴史を変えたとか歴史に残るといった名盤ではありませんが、こういう二人の友情を感じる大人のロックもよろしいのではないでしょうか。
そしてJ.J.ケイルは2013年7月26日にサンディエゴで亡くなりました。
享年74歳でした。
翌年、エリック・クラプトンを中心としてJ.J.ケイルのトリビュートアルバム「The Breeze : An Appeciation of J.J.Cale」がリリースされます。
こちらもまた有名なゲストが出演して追悼しています。本当にミュージシャンズ・ミュージシャンだったJ.J.ケイルです。
そして今のこういう時代だからこそアメリカ南部の「ビッグ・イージー」と言われたおおらかな雰囲気、適当であることの良さがことさら懐かしく感じられるのです。
アルバム「ザ・ロード・トゥ・エスコンディード」のご紹介です。
演奏
J.J.ケイル ヴォーカル、キーボード、ギター
エリック・クラプトン ヴォーカル、ギター
ビリー・プレストン フェンダー・ローズ、ウーリッツァー・エレクトリック・ピアノ、ハモンドオルガン
ウォルト・リッチモンド アコースティックピアノ、フェンダー・ローズ、ウーリッツァー・エレクトリック・ピアノ
ドイル・ブラムホールⅡ ギター
クリスティン・レイクランド アコースティックギター、バックヴォーカル
アルバート・リー ギター
ジョン・メイヤー ギター
デレク・トラックス ギター
ネイサン・イースト ベース
ゲイリー・ギルモア ベース
ピノ・パラディーノ ベース
ウィリー・ウィークス ベース
ジェームス・クルース ドラムス、パーカッション
スティーヴ・ジョーダン ドラムス
ジム・カースタイン ドラムス、パーカッション
エイヴ・ラボリエル・ジュニア ドラムス
サイモン・クライミー パーカッション、プログラミング
デイヴィッド・ティーガーデン パーカッション
タージ・マハル ハーモニカ
デニス・キャプリンガー フィドル
マーティ・グレブ ホーンズ
ジェリー・ピーターソン ホーンズ
ブルース・ファウラー ホーンズ
スティーヴ・マダイオ ホーンズ
プロダクション
エリック・クラプトン プロデューサー、アルバムコンセプト
J.J.ケイル プロデューサー、ミキシング
サイモン・クライミー プロデューサー、Pro Toolsエンジニア
アラン・ダグラス レコーディング、ミキシング
ジミー・ホイソン アシスタント・エンジニア
フィリップ・ローズ アシスタント・エンジニア
ブライアン・ヴィバーツ アシスタント・エンジニア
ミック・グザウスキー ミキシング
トム・ベンダー ミックスアシステント
ジョエル・エヴェンデン Pro Toolsアシスタント
ボブ・ラドウィッグ Gateway Masteriring マスタリング
ブッシュブランチ エリック・クラプトン・マネージメント
マイク・カップス J.J.ケイル・マネージメント
リー・ディクソン ギターエンジニア
デビー・ジョンソン スタジオ・コーディネイト(ロサンゼルス)
キャサリン・ロイランス アートディレクション、デザイン
デヴィッド・マクリスター ロケーション・フォトグラフ
ネイザン・イースト アディショナル・スタジオ・フォトグラフ
クリスティン・レイクランド アディショナル・スタジオ・フォトグラフ
ジム・カーステイン アディショナル・スタジオ・フォトグラフ
ナイジェル.キャロル エリック・クラプトン個人アシステント、スタジオ撮影補助
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Danger デンジャー
(J.J.ケイル)
さらっといつものように始まります。クラプトンのヴォーカルです。夜に出かけていく女性に危険だよと思う内容です。中間部のソロもクラプトンですね。後半はケイルのギターが登場し、クラプトンに変わって最後のバースに入ります。
2, Heads in Georgia ヘッズ・イン・ジョージア
(J.J.ケイル)
二人で歌います。彼女が田舎を出たいと思っているようです。頭はジョージアにあって足はカリフォルニアに向かうという内容です。
3, Missing Person 行方不明者
(J.J.ケイル)
物騒なタイトルながら彼女がいなくなってしまったという内容です。J.J.ケイルがメインのヴォーカルでギターソロがいいです。
4, When This War Is Over フェン・ディス・ウォー・イズ・オーバー
(J.J.ケイル)
有名な「コール・ミー・ブリーズ」とほぼ一緒ですな。歌詞もそのまんまの反戦歌です。
5, Sporting Life Blues スポーティング・ライフ・ブルーズ
(ブラウニー・マギー)
作者のブラウニー・マギーはブラインド・ボーイ・フラーと友達だったというテネシー出身のギター奏者です。ブルーズ・ハープのサニー・テリーとのデュエットでも有名です。ここでカバーするのはいなたいスローブルーズの曲です。このシンプルで木訥とした感じがいいのです。
6, Dead End Road デッド・エンド・ロード
(J.J.ケイル)
カントリー、ブルーグラス直径のサウンドです。毎日がデッド・エンド・ロード(行き止まり)という歌です。この曲のソロもケイルだと思います。
7, It’s Easy イッツ・イージー
(J.J.ケイル),
人生なんか気安く考えろ、うまくいくさ簡単だよ。といういかにもJ.J.ケイルらしい内容です。
7, Hard to Thrill ハード・トゥ・スリル
(エリック・クラプトン、ジョン・メイヤー)
時間を持て余しているけど、スリルを味わうのも難しいもんだという内容です。クラプトンのヴォーカルです。サウンドがかっちり決まっているところがクラプトンらしいですね。
9, Anyway the Wind Blows とにかく風が吹く
(J.J.ケイル)
なんか前のクラプトンの曲に対するケイルのアンサーソングみたいな感じです。
締めの詩は「Easy come, easy go, Anyway the wind blow」です。
10, Three Little Girls スリー・リトル・ガールズ
(エリック・クラプトン)
クラプトンの曲です。聴いたことのあるようなメロディで自然に流れる小曲ですがいい感じの曲です。
11, Don’t Cry Sister ドント・クライ・シスター
(J.J.ケイル)
二人で歌います。リズムもケイルらしい曲です。
12, Last Will and Testament 遺言
(J.J.ケイル)
人間関係に恵まれなかった人の遺言の歌でしょうか。クラプトンらしい歌うようなギターソロが出てきます。
13, Who Am I Telling You? 誰に伝えているの
(J.J.ケイル)
自分に話しかけている歌です。デレク・トラックスのチキン・スキン・スライドギターが堪能できます。
14, Ride the River ライド・ザ・リバー
(J.J.ケイル)
最後はカントリータッチの軽快なリズムで終わります。
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