「過小評価されすぎの2ndアルバム、しかしクリムゾンの進化に絶対必要な名盤です」In the Wake of Poseidon : King Crimson / ポセイドンのめざめ : キング・クリムゾン

 「ポセイドンのめざめ」は1970年リリースのキング・クリムゾンのセカンド・アルバムです。

今では「wake」を「wake up」と同義に捉えた名誤訳(?)として有名です。
そしてことあるごとに「これって ポセイドンの“目覚め” ではなく ”航跡” だろう」とツッコミを入れられています。

ただ、個人的には「ポセイドンの目覚め」でもそれなりに含蓄があっていいのではないかとも思えてきております。

方向性としてはデビューアルバム「宮殿」と同じベクトルを向いていると言われます。
そしてそこが評価の分かれるところになっています。
はい、評価が分かれるということは当然、平均点も下がるということです。

速い話がこのセカンドアルバムは全体的に評価が低いのです。

タイトルからして「In the・・・」と始まり、曲順も同じような流れという人もいます。

「冷たい街の情景」は「21世紀の精神異常者」、「ケーデンス・アンド・カスケード」は「風に語りて」、「ポセイドンのめざめ」は「エピタフ」、などと言って1stアルバムと関連づけて語られることも多いのです。

ありがた迷惑なことに、それは本当の魅力から離れたマイナス要因にしかなっていません。

そういうふうに比較され不遇な立場に追いやられているのです。

さらに不幸なことにリリース当時はとっても評価が高く、尚且つ売り上げイギリスで最高4位とこの後のクリムゾンのアルバム群と比べてもチャート的には最も伸びました。

そしてこのアルバムは時間が経つほどに評価を落としていってしまいます。

曰く

・ロバート・フリップが空回りしている。

・契約に縛られたやっつけ仕事

・イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズの不在は致命的

・ヴォーカルが弱い曲がある

・「クリムゾン・キングの宮殿」の下位互換、というより劣化コピー

などとさんざんな言われようでございます。
キング・クリムゾンのカタログの中でも名盤とか代表作と言われるものではありません。

しかし本当にそうでしょうか。
クリムゾンはファーストのあまりにもの重厚さから「これはいかん、イメージの固定につながる」と早々に次のステージへ向かっているように感じます。

尚且つトータル・コンセプト・アルバムとしても「宮殿」より成功しているように思えるのです。

ここにはファーストの力の入りすぎた完全無欠の孤高のアルバムから、ちょっと肩の力を抜いた、作り込みの弱さと言われるものが返って想像力を掻き立てる、そういう叙情派クリムゾンがいるのです。
(個人の勝手な感想です)

完璧なものになれなかった理由とはこういうことです。

クリムゾンはファースト・アルバムのリリース後、初のアメリカツアーを行いました。
そこでイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズが脱退してしまいます。

そしてメイン・ヴォーカルのグレッグ・レイクもレコーディングが終わるとキース・エマーソンとカール・パーマーの待つELPに参加するため、そうそうと離れることを決意したのでした。

ヴォーカルが弱いと言われるのはトラック3の「ケイデンス・アンド・カスケード」についてです。

この曲のみヴォーカルはロバート・フリップの旧友と言われるゴードン・ハスケルが歌っています。

私はテクニックのなさも含めてロバート・フリップはこの曲にはこのヴォーカルと狙っていたように思うのですが、かわいそうなことにグレッグ・レイクと比べられて “下手くそ” の烙印を押されてしまいました。

きっとこの時期のみんなの望むクリムゾンには荘厳でどっしりとした重さ、他を寄せ付けない孤高、孤独を感じるヴォーカルでないといけなかったのです

一説によるとグレッグ・レイクがELPとともにツアーに出てしまったのでしょうがなくゴードンに歌ってもらった、とも言われました。

でもゴードン・ハスケルは次作の「Lizard」にも参加していますし、CDの時代になってからはボーナストラックでグレッグ・レイクがサポートしているバージョンなども出てきました。

ということでその “残念なゴードン・ハスケル” 説はあんまりではないかと。

そしてこの「ケーデンス・アンド・カスケード」の世界は数年後にピンク・フロイドが「原子心母」のアルバムB面や「おせっかい」のA面などで挑戦したけど到達できなかった世界を表現しているようにさえ感じるのです。
(はい、言わせてもらうと「原子心母」も「おせっかい」もロックの名盤で大好きですが、中には駄曲で引き立て役にしかなっていないと思われる曲もあります。)

さらに面白いことに、このアルバムのヴォーカルについては当初、まだ無名だったエルトン・ジョンがヴォーカリストとして加入し歌う予定だったようです。

しかしロバート・フリップにはある考えがあったと思われ、エルトン・ジョンをキャンセルしてグレッグ・レイクを引き留めます。

そしてアルバムの大部分を歌ってもらうことにしたのでした。

確かにエルトン・ジョンは声も素晴らしく、歌もうまいのですが、ロバート・フリップの考えるプログレの世界にあっているとは思えません。

その後のエルトンの活躍を見れば結果は大正解だったと思います。
もしクリムゾンに加入愛していたら繊細で複雑な感性を持つエルトンは精神崩壊がもっと早く訪れていたことでしょう。

何よりもキング・クリムゾンにはエルトン・ジョンのカントリー・フレイバーのロックンロール、それでいて内省的な声は合いません。

とあれロバート・フリップは頑張って他のメンバーを補充し、アルバムを完成させました。
リリース時は「宮殿」の余波で売上は良かったものの、時間と共に評価が落ちていってしまいました。

世間はあの完璧と言われるファースト・アルバムと逐一比較します。
悲しいかなファーストアルバムで自らのハードルを上げ切ってしまったのです。

アルバムのアートワークに関してはジャケットに人類を総括する十二の顔が描いてあります。(Wikipediaより引用です)

  1. 愚者(火と水):薄いあごひげを生やした笑う男。
  2. 女優(水と火):長い真珠のイヤリングと首にたくさんの真珠のネックレスをしたエジプトの少女。彼女の目には涙が浮かぶ。
  3. 観測者(空気と地球):丸い眼鏡を額の上に押し上げ、頭の大部分は禿げており、両脇に白い髪がある科学者タイプの人物。左手を顎に当て、考え込んでいるように見えます。
  4. 老婆(大地と空気):寒さから身を守るため、顔にしわを寄せた女性。
  5. 戦士(火と土):黒と赤で彩られた、暗く力強い戦士の顔。鋼鉄の兜をかぶり、幅広の四角い顔、四角い歯が映える開いた口、そして豊かな黒髭を蓄えている。
  6. 奴隷(土と火):大きな金のイヤリングと鼻に輪っかを付けた黒人のアフリカ人。唇は厚くピンク色、目は半分閉じられ、官能的で官能的。表情は暖かくて友好的。
  7. 子(水と空気):無垢の象徴。優しく愛らしい微笑みを浮かべ、長い金色の髪の両脇に蝶の形をしたリボンをつけた少女。大きく潤んだ瞳と、口元には優しく愛らしい微笑みを浮かべる。金の鎖を身に着け、その先には小さな金色の鍵が取り付けられている。
  8. 族長(空気と水):長い顔と長い白い髪、長い白いあごひげと口ひげ、白いふさふさした眉毛を持つ老哲学者。周囲は花や雪の結晶のような形をしており、眉は鼻から上向きに扇状に溝が刻まれている。
  9. 論理学者(風と火):長い顔、黒髪、長い黒ひげを持つ科学者または魔法使いタイプの男性。右手に長い棒または杖を持ち、左手は高く掲げられ、星々に囲まれている。
  10. ジョーカー (火と空気): 明るい赤と黄色の絵には、典型的な金色のスタッコ仕上げの三角形の帽子をかぶった、きらきらした目をした笑顔のハーレクインが描かれています。
  11. 魔女(水と土):涙目の女の子。長い黒髪が顔と額を右から左に横になびいている。
  12. 母なる自然(土と水):長い草の中に横たわって眠っています。左側からシルエットの顔が見え、周囲には花と蝶が咲いています。

ただこれを知ったからといって、それほどアルバムに浸る時の糧になるものでもありません。
ただしロバート・フリップの狙いがわかります。

そういう内容のことは一切考えなくても、このアルバムなしに次の「リザード」や「太陽と戦慄」に向かうキング・クリムゾンという世界は考えられません。

孤高の存在となっている「クリムゾン・キングの宮殿」にも劣らない傑作だと思っています。
(個人の感想です)

アルバム「ポセイドンのめざめ」のご紹介です。

演奏

ロバート・フリップ
エレクトリック・ギター(Tr.2,6,7)、アコースティック・ギター(Tr.1,3,4,5,6,8)、メロトロンMK2(Tr.2,4,7)、チェレスタ(Tr.3)、ピアノ(Tr.4)、エフェクト、プロダクション

グレッグ・レイク  ヴォーカル(Tr.1,2,4,6,8)
マイケル・ジャイルス  ドラムス(Tr.2,3,4,6,7)
ピーター・ジャイルズ  ベースギター(Tr.2,3,4,6,7)
メル・コリンズ  アルト&バリトンサックス(Tr.2)、フルート(Tr.3)
ゴードン・ハスケル  ヴォーカル(Tr.3)
ピーター・シンフィールド  詩、スリーブデザインとインサイド・ペインティング、プロダクション
イアン・マクドナルド  作曲(Tr.6,7Ⅰ)

ゲスト・ミュージシャン
キース・ティペット  ピアノ(Tr.3,6,7)、ハープシコード(Tr.7)

プロダクション
ロビン・トンプソン  レコーディング・エンジニア
ジェフ・ワークマン、トニー・ペイジ  アシスタント・エンジニア
ダンモ・デ・ヨング  表紙絵
バージニア  タイポグラフィ

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Peace – A Beginning 平和 / 序章

I am the ocean, lit by the flame
I am the mountain, Peace is my name
I am the river touched by the wind
I am the story, I never end

私は炎に照らされた海。
私は山。平和が私の名前。
私は風に吹かれた川。
私は物語。決して終わらない。

という内容ですが、かなり小さく録音されています。このアルバムは極端に曲ごとのレベルが違っていることも特徴です。
そういう小技に頼っているところも問題・・・じゃなかった・・魅力です。
正直なところ「そこがちょっと聴きづらい」と思って手を出しづらくなっている方もいるかもしれません。

2,   Pictures of a City (including 42nd at Treadmill) 冷たい街の情景(インクルーディング:トレッドミル42番街)

作詞者のピート・シンフィールドは歌詞について「田舎で幸せに暮らす自然体で平和な人物がとしび誘われ、奪われ、そしてついには堕落していく様子が描かれている」そうです。

3,   Cadence and Cascade ケイデンス・アンド・カスケード

タイトルは何やらとっても哲学的なものを感じさせますが、人の名前だそうです。
この二人はグルーピーで最後は自分は何者でもないということを思い知るのでした。

4,   In the Wake of Poseidon (including Libra’s Theme) ポセイドンのめざめ(インクルーディング:リブラのテーマ)

わたくし的にはおお、これぞプログレ、これぞクリムゾンといった感じのメロディです。
歌詞は難解で、終末、政治的腐敗、破壊というテーマを扱っています。
ちなみにポセイドンとは神話に登場する気性が荒く恐れられている海の神です。

5,   Peace – A Theme (Instrumental) 平和 / テーマ

クラシックギターによる小曲です。「平和」インタルード3部作の2番目です。

6,   Cat Food キャットフード

キース・ティペットによるピアノの不協和音とグレッグ・レイクのパンキッシュというかラップというか、な歌い方というアヴァンギャルドな世界ですがそれでもクリムゾンらしく感じます。
ベースラインにビートルズの「カム・トゥゲザー」を意識しまうのは私だけなのだろうか。

7,   The Devil’s Triangle デヴィルズ・トライアングル

     Ⅰ  Merday Morn マーディ・モーン
     Ⅱ  Hand of Sceiron ハンド・オブ・セイロン
     Ⅲ  Garden of Worm ガーデン・オブ・ワーム

グスタフ・ホルストの「火星」がモチーフとなっており、初期のライブでは定番となっていました。
最後のところで「クリムゾン・キングの宮殿」のメロディが現れます。
この曲だけでもナミのロックバンドではないと思わされます。

8,   Peace – An End 平和 / 終章

最後の3節目
Peace is a stream from the heart of a man
Peace is a man whose breadth is the dawn
Peace is a dawn on a day without end
Peace is a end, like death of the war

平和とは人の心から湧き出る流れであり、
平和とは夜明けのような広がりを持つ人であり、
平和とは終わりのない日の夜明けであり、
平和とは戦争の終焉のような終わりである。

で終わります。

あ、そこのあなた。「暗黒と不協和音のクリムゾンの世界に『平和』は似合わねえなあ」なんて思ってますね。

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