「これが“ウエストコースト・ジャズの粋”というものです」My Fair Lady : Shelly Manne / マイ・フェア・レディ : シェリー・マン

 シェリー・マンは1950年代から80年代にかけて活躍したウエスト・コーストのジャズドラマーです。生涯、特定のグループに加わらずいろんな人とセッションをしました。

特にアメリカ西海岸のジャズへの貢献は特に大きいものです。
リーダーアルバムもざっと数えて40枚以上あるのですが、サイドマンとして加わったアルバムも120枚以上あります。

映画やテレビ番組の音楽なども演っており、相当に仕事好きで器用な人だと思われます。
この人はこの時代のジャズミュージシャンに多く見られる薬物依存の話などはあまり聞きません。
いつもこざっぱりした清潔感のある格好をしています。性格的にも几帳面で真面目だったのではないでしょうか。(知らんけど)

でも音楽スタイルはすごく自由でアイデアに溢れ、尚且つ歌心も感じる素晴らしいものです。
そしてアイデア溢れるドラミングはいつも一緒に演奏するメンバーの良さを最大限に引き出すために使われます。

私が最初にシェリー・マンを知ったのはソニー・ロリンズのアルバムを通してです。
フットワークの軽い、遊び心のある、けど押し付けがましくない絶妙なリズムに惹かれたのです。
そこからウエスト・コーストジャズも聞くようになりました。

シェリー・マンは1920年6月11日にアメリカ、ニューヨークで生まれました。
父も叔父もドラマーだったそうです。

ということはそうです、最初から彼は “持って” いました。

ニューヨークで音楽活動を始め、ビッグバンドジャズやビバップなどにも柔軟に適応します。

1950年代初めにロサンゼルスへ移ってウエスト・コースト・サウンドを牽引します。
ハードバップからモダンジャズまで何でも対応できる、期待以上のことができるドラマーでした。

1984年9月26日にロサンゼルスで心臓発作でなくなりました。64歳でした。

紹介するのはシェリー・マン名義のピアノトリオのアルバムです。
ピアニストで、持って生まれた才能で後にクラシック音楽界でも称賛されるアンドレ ・プレヴィンと、ウォーキング・ベースとは彼を見て名付けられたと言われるリロイ・ヴィネガーを加えたトリオの「マイ・フェア・レディ」1956年リリースです。

マイ・フェア・レディの原作は1910年代のブロードウェイミュージカルですが、1964年にオードリー・ヘップバーン主演で映画化され、
大ヒットしました。映画化はこのアルバムのリリースより後です。
ここは個人的には重要なところで、大ヒット映画にあやかったとかではないのですね。

とっても優秀な3人が、とっても有名なスタジオで、とっても腕の立つ録音技師と、とってもメロディの綺麗な曲を演奏します。
よってここには激しく情熱的とか、汗臭くファンキーとか、思わず拳を振り上げるなどの直情型の音楽はありません。

洒落て小粋で余裕のある大人の音楽です。

でも演奏は奥深いのでこれからジャズを聴いてみようと思われる人にも安心して薦められます。

レーベルはコンテンポラリー で録音はロイ・デュナンとくれば1956年とは思えない音質なのです。

最初聴いた時にはロイ・デュナンの録音で、3人編成なのでそうそう音は厚くならないのですが、3人ということを逆手にとったようなお互いの絶妙な間の使い方にびっくりしました。

何よりも主役であるはずのドラマー、シェリー・マンがここでは如何にピアノが気持ちよく弾けるかということに専念しています。
なのでピアニストのアンドレ・プレヴィンは気持ちよくのびのびと演奏できました。
当然、名作名演です。

夜な夜なジェームス ・ブラウンやボブ・マーリー、ファンカデリックやロバート・ジョンソン とか、デスメタルやオルタナ・グランジばっかり聴いている人にもこういう世界があることを教えてあげたいものです。(オマエが言うか!)

演奏
シェリー・マン  ドラムス
アンドレ ・プレヴィン  ピアノ
リロイ・ヴィネガー  ベース

レスター・コーエン  プロデューサー
ロイ・デュナン  エンジニア

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Get Me to the Church on Time  教会に間に合う様に行ってくれ

絶妙なメロディと間です。ホロリとさせる名曲です。

2,    On the Street Where You Live  君住む街角

こういう音数の少ない演奏にこそ実力が出ます。というかアンドレさんは独特の間を持っています。


3,    I’ve Grown Accustomed to Her Face  彼女の顔に馴れてきた

耽美的で綺麗な曲です。余裕が感じられます。


4,    Wouldn’t It Be Lovery  そうなったら素敵

タイトル通りのウキウキ気分が感じられます。


5,    Ascot Gavotte  アスコット・ガヴォット

速いパッセージですがすごい安定感があります。


6,    Show Me  ショー・ミー

強弱をつけたピアノの歌心が素晴らしく感じます。


7,    With a Little Bit of Luck  ちょっぴり幸せ

落ち着いたムードで、ピアノが素晴らしく、表情の付け方、クレシェンドなどですごく引き立たせます。


8,    I Could Have Danced All Night  一晩中踊れたら

速いパッセージでいろいろと曲調が変わりますが安定のトリオです。

うーん、このアルバムはブルーズという視点ではほとんど関連がありませんけどね。

Bitly
Bitly

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