「フィジカル・グラフィティ」は今やクラシックハードロックの王者となったレッド・ツェッペリンが1975年にリリースした、LPレコードにして2枚組の大作です。
前作「聖なる館」まではバラエティに富みながらも、サウンド、音色に統一感が感じられました。
しかし今回はとにかくいろんなアイデアをどっさりと詰め込んでみました、という感じです。
言うなればビートルズの「ホワイト・アルバム」的なアルバムとなっています。
そしてこれまたホワイトアルバム同様、じわじわと効いてくる魅力があります。
リリース後50年近く経過した今ではツェッペリンのカタログの中でも評価が高く、ロック史に残る名盤となっています。
個人的にも一番聴いたアルバムとなりました。
ただしこのアルバムには「天国への階段」とか「胸いっぱいの愛を」とか「移民の歌」みたいなキラーチューンはありません。ツェッペリンの他のアルバムと比べたら割と地味な曲が並んでいます。
しかしながらツェッペリンらしく、いつもの古典ブルーズからの引用に始まり、フォーク調からハードロック調、さらには中東、アジア、ヨーロッパ風味といろんな要素を押さえたサウンドが散りばめられ、他のハードロックバンドにはないスケールが感じられます。
ハードロックの重くヘヴィーなサウンドと、歴史や人間の根源的な畏怖とか憤怒などの感情をうまく繋げていると思うのです。(そ、そこまでいうか)
このアルバムを象徴している曲は何かと言ったら、もちろん大多数が中央アジア風味の「カシミール」と答えると思います。素晴らしくいい曲なんですがロックスタンダードとはなりません。
そういう一見地味な内容に関わらず世界的にヒットしました。
当時も英米ともにヒットチャートで1位を獲得しました。
シングルカットされたのは「トランプルド・アンダー・フット/ブラック・カントリー・ウーマン」というなんともなアピールの弱さです。予想通り大ヒットとはなっていません。
まあポップスと違ってアルバム重視のバンドですから、こんなところでしょう。本人たちもシングルヒットを狙っているとは思えません。なんと言うか大人の事情です。
バンドとしてはまとまっている時期で、リリースの翌年にはバンドのピークを収めたコンサート映画「永遠のうた」が公開されています。
アルバムジャケットのデザインはピーター・コリストンというデザイナーのニューヨークのアパートを写したものです。
窓がくり抜いてあり、内ジャケットのデザインが窓枠越しに見えるようになっていました。
このジャケットが原因で製造が遅れ、1974年の年末発売の予定が翌年に延期になりました。
そしてレッド・ツェッペリンは音にこだわることでも有名です。
LPレコードをリリースする際は各国ごとにマスター盤を渡してプレスさせました。
コントロールできないところで迫力がなくなるなどの劣化が嫌だったのでしょう。
特にギタリスト兼リーダーのジミー・ペイジは最近でもレッド・ツェッペリンのリマスターなどを自分で手がけています。
2015年にもオリジナルアルバムにボーナストラックがいっぱい付いたデラックス・エディションをリマスターリリースしました。
確かに今の時代、今の機材に対応したリアルな音になっています。
ミュージシャンサイドからそういうこだわりが見えるということは素晴らしいことだと思います。
その昔はブリテッシュ・ロックの3大ギタリストと言われたエリック・クラプトン、ジェフ・ベックとジミー・ペイジです。
ジミー・ペイジはすでに演奏をやめていますが、1番プロデュース力があります。今でもレッド・ツェッペリンが風化しないように頑張っています。
でも今となっては流石にビンテージ・サウンド感は拭えず、リマスターされても低音のキレとか音の立ち上がりの鋭さ、スピード感は最近のロックバンドの録音の方が優れています。
でも確実に一時代を築いた音です、今聴いてもこの雰囲気は他では味わえません。
思い出すのは学生時代にレコードプレイヤーからカセットテープに録音する際のことです。「カスタード・パイ」の終盤、アクセントでドラム音レベルが非常にでかくなるところがあります。VUメーターが振り切れてしまいます。
そこを基準に録音レベルを合わせると全体が妙に小さくなってしまうので悩んでいたことがあります。(アナログ機材はそういうものです)
そのころはなぜか録音時にオーバーレベルでピークがつくのは絶対にあってはならない思っていました。可愛いものです。今だったら聴感上歪んでなきゃいいやと思ってしまいますけどね。
おまけにカセットのA面にアルバムの3、4面、カセットのB面にアルバムの1、2面を録音して友達に渡してしまい、「イン.ザ・ライト」から始まるようになっていました。
「今までと違って、何かものすごく地味に始まるアルバムだなあ」と言われて気づいたことを覚えています。アナログオーディオあるあるです。
アルバム「フィジカル・グラフィティ」のご紹介です。
演奏
ロバート・プラント ヴォーカル、ハーモニカ
ジミー・ペイジ エレクトリック、アコースティック、ラップスティール、スライドギター
ジョン・ポール・ジョーンズ ベースギター、アコースティックギター、マンドリン、キーボード、メロトロン
ジョンボーナム ドラムス、パーカッション
イアン・ステュアート ピアノ
曲目
*参考としてyoutube音源とライブ動画(最後部)をリンクさせていただきます。
01, Custard Pie カスタード・パイ
へヴィーなリフの曲です。ツェッペリンらしと思います。ブルーズの曲を展開させたバージョンです。
元ネタはブラウニー・マギーの「カスタード・パイ・ブルーズ」です。
昔のレコードで聴いたVUメーターが振り切れる感じはなぜかありません。流石にドラムの音に時代を感じます。
02, The Rover ザ・ローヴァー
あまり評判にはなりませんが個人的にはシンプルながら最高にかっこいいい曲と思ってました。中央アジアを観じます。
03, In My Time of Dying イン・マイ・タイム・オブ・ダイング
これも元ネタはゴスペル・ブルーズで、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Jesus Make Up My Dying Bed」です。ボブ・ディランもカバーしています。
04, Houses of the Holly 聖なる館
5枚目のアルバム「聖なる館」に収められるはずだったのが、イメージが合わないとのことでボツになりました。アルバムのタイトル曲を外すというかなりのことをしています。いい曲なんですが。
05, Trampled Under Foot トランプルド・アンダー・フット
悪い曲ではないのですが、シングルカットに向いている曲には思えません。これも元ネタはロバート・ジョンソンの「テラプレイン・ブルーズ」です。もちろんこちらの方がカントリーブルーズと違ってヘヴィーで開放感があります。
06, Kashimir カシミール
タイトルそのままのイメージの曲です。音だけでも “中央アジア”、“高地山岳地帯”、“Nomad”、など思い描いてしまいます。
ツェッペリンの中でも特に評価の高い曲です。
ギターリフ主体ではなく、キーボードのジョン・ポール・ジョーンズ大活躍です。
07, I n the Light イン・ザ・ライト
この曲もサウンドは中東とかインドあたりのイメージです。
ここでもジョン・ポール・ジョーンズが大貢献です。最初聞いた時は導入部が長すぎると思ってましたが、それがあるから後の開放感に大きくつながるわけですね。
間奏のキーボードのアレンジが英国人としての歴史を感じさせます。
08, Bron-Yr-Aur ブロウン・イ・アー
ウェールズにある18世紀に建造され、今は別荘となっている建物のことだそうです。
オープンチューニングによるギターソロ曲です。
独特の浮遊感のあるサウンドは映画「永遠のうた」でも飛行機から降りてマジソン・スクエアー・ガーデンに移動する場面で印象的に使われていました。
09, Down by the Seaside ダウン・バイ・ザ・シーサイド
メロディアスでいい曲です。ツェッペリンらしくない軽くてポップな感じのフォークロックです。途中でコーラスを入れて面白く展開します。
10, Ten Years Gone テン・イヤーズ・ゴーン
アコースティックな感じもありますが、時々印象的なハードロックリフが登場します。好きな曲です。
11, Night Flight 夜間飛行
リズミカルでポップな曲です。シングルカットするなら「トランプルド」よりこっちがいいのでは、と思いますがツェッペリンにしたら息抜きの曲なのです。
12, The Wanton Song ザ・ワントン・ソング
タイトルのイメージとは違ってヘヴィーなリフの曲です。
13, Boogie with Stu ブギー・ウィズ・ステュ
ローリング・ストーンズの隠れメンバー、イアン・ステュアートとジャムセッションした曲です。
曲調はロックロールそのものといった感じです。
ストーンズの中で複雑な立ち位置のイアン・スチュアートへの愛情が感じられます。というか私は勝手にそう思います。
14, Black Country Woman ブラック・カントリー・ウーマン
アコースティックな曲です。ミック・ジャガーの家の庭で作った曲だそうです。
15, Sick Again シック・アゲイン
最後はツェッペリンらしくこれでもかというくらいヘヴィーで畳み掛けるギターリフの曲で終わります。
やっぱり個性的な曲が多く、レッド・ツェッペリンならではです。そこが魅力なのです。
コメント
はじめまして!
こんにちは。
レッドツェッペリンのアルバム『フィジカルグラフティ』の詳しい解説読みました。
次から
一曲毎の解説なんでこのアルバム聞きながら読んでいきます。
レッドツェッペリン初体験のアルバムは、このアルバムからでした。
ボーカリストは、甲高く男性が歌ってる?
凄い。
ドラムは、けたたましく迫力のあるサウンド
ながら奥深い。
2枚組アルバムながら一気に聴けて、飽きずに何回も聴けるアルバムでした。
アルバムジャケットは、個性があり、ロックアルバムのジャケットでも好きな部類に入ります。
※他のロックアルバムも興味津々なので読んでいきます。
違うアルバムでもコメントさせてもらいますね。
Kami さま
ご感想ありがとうございます。アルバムを楽しむための一助となれば幸いです。
今後ともご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いします。
誤字・誤入力が多くて読みづらい。
曲の解釈が浅い。
本当にLed Zeppelinのファンですか?
渡邊伊知郎様
ご指摘ありがとうございます。
駄文ですが、改めて誤字と変な文節のダブり部分は修正しました。
こんにちは
アラ還ジジイです
このアルバムと
YESの CLOSE TO THE EDGEが恐らく生涯最多で聴いています
自分の葬式で流して欲しい
fujihari様
ご感想ありがとうございます。読んでいただいて光栄です。
還暦近くとのことですので、まだ葬式は遠いことと思います。ぜひあと3000回くらい聴いていただきたいです。