「モダン・ジャズの金字塔」Saxophone Colossus : Sonny Rollins / サキソフォーン コロッサス : ソニー ロリンズ

「サキソフォーン・コロッサス」通称「サキコロ」はモダン・ジャズを代表する1枚と言われています。ジャズを紹介する本などでは、必ずと言っていいほど名盤上位5枚には入ります。

1956年リリースです。当時のソニー・ロリンズ はまだ20代半ばでした。
ついでにいうと私もまだ生まれていません。
タイトルのColossus (巨人、偉大な)を自分から名乗っていたのなら自信過剰でヤな奴ですが、見ると謙虚そうな顔つきです。きっと本人が決めたタイトルではないのでしょう。(知らんけど)

でもアルバムを聴けば納得です。雄大なスケールで、遊び心もあって、それでいてセンチメンタルでナイーヴな面も垣間見えます。
テナーサックス の歌うメロディは驚くほど饒舌でスケールのデカさを感じます。25、6歳でここまで出来上がっているのは脅威としか言いようがありません。

前にラズウェル細木さんの漫画で見ましたが、ハードコアなジャズファンはこのアルバムとかマイルスの「カインド ・オブ・ブルー」とか「サムシング・エルス」などの超名盤はあまりに定番すぎて「ジャズ初心者、入門用」とされ、「今更、恥ずかしくてレジに持っていけないもの」のだそうです。
どうしても買いたかったら「もう4枚目なんだよなぁ、これ買うの」とか言いながら買わないといけないとのこと。微笑ましい限りです。
でもそういう定番のアルバムがだからこそ、二流ジャズ通の私も含め「これからいろんなジャズを聴いていこう」思っている人の入口としては最高のサンプルです。

わかりやすいのに奥が深い、“ 釣りの本質は鮒に始まり、鮒に終わる” とか“ 料理の極意は卵に始まり卵で終わる” という言葉を思い出します。
ジャズにおけるソニー・ロリンズこそ鮒であり、卵なのかもしれません。

このアルバムではバンドはカルテットです。
ピアノのトミー・フラナガンはソニー・ロリンズを立てて、盛り上げようとしています。あまり前に出ません。心なしか音量も小さめです。
全体を通してベースとドラムのリズム隊は個性的でいろんなアイデア満載です。
かくして完全無欠のモダン・ジャズのワンホーンアルバムが出来上がりました。

アルバムを最初に聞いた時、1曲目のセント・トーマスが始まった時点で「あっ、ジャズのビートじゃない」とまず思いました。そしてテナーサックス が入ってきます。ブルージーなのに小洒落た感じもします。
「なんかカリプソっぽい、ロリンズは1950年代にもうワールド・ミュージックを見ていたのか、時代はハードバップなのに」などと思いつつ聴いていきます。
「やたらと音が綺麗でリアルだ」そう、録音エンジニアはかの有名なルディ・ヴァン・ゲルダーです。

この1曲目の最初の40秒だけでソニー・ロリンズの性格、人柄が伝わる感じがします。

このアルバムがリリースされた時代はロック、ポップス界はまだビートルズ登場以前です。
というより1956年はチャック・ベリーがデビューしたばかりで、まだ「ジョニー・B・グッド」もありません。
ロックやブルーズ を聴いていた私が驚いたのはこの「サキソフォーン・コロッサス」もそうですが、同じ年にチャールズ・ミンガスの「Pithecanthropus Erectus – 直立猿人」もデューク・エリントンの「アット・ニューポート 1956」も発表されていたことです。
ジャズではロックが生まれる前からコンセプトアルバムも、プログレも、ワールド・ミュージックとのコラボレーションもあったのですね。

アルバム「サキソフォン・コロッサス」のご紹介です。

演奏

テナー.サキソフォーン ソニー・ロリンズ
ピアノ トミー・フラナガン
ベース ダグ・ワトキンス
ドラムス マックス・ローチ


曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,    St Thomas セント・トーマス

カリビアンリズムです。ロリンズの母親の出身地だそうです。この後何十年にも渡ってロリンズ のテーマ曲となっていきます。いつ聴いても軽やかな気持ちにさせてくれる名演です。


2,    You Don’t Know What Love Is 恋とは何かご存知ない

1940年代のポピュラーソングです。ジャズのスタンダードになっています。個人的にこのアルバムで唯一時代を感じさせる曲です。悪くはありませんけど。

3,    Strode Road ストロード・ロード

いかにもハードバップという演奏です。ロリンズ のソロがむちゃくちゃ暑く、クールなピアノとのコントラストが印象的です。ドラムも後半熱いノリになってきます。ロリンズ作曲でシカゴのクラブの名前だそうです。


4,    Moritat  モリタート

これも定評あるトラックです。「3文オペラ」というオペラの中で使われる曲です。全員の演奏がいいのですが、特にロリンズのテナーサックスの歌心が素晴らしい。


5,    Blue Seven ブルー・セヴン

シンプルですがロリンズ らしいなあと思える味のあるブルーズ演奏です。

ソニー・ロリンズは大好きなので、取り上げたいアルバムがいっぱいあります。

Bitly

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