「モンクの真髄に迫れるピアノトリオ盤」Thelonious Monk Trio : Thelonious Monk / セロニアス・モンク・トリオ : セロニアス・モンク

 ジャズ 界でセロニアス・モンクは変わった存在です。トレードマークはスーツに帽子にサングラス。ある意味不気味ではありますが、なんとなく愛嬌もあって笑顔が素敵です。フィジカルで暴力的な怖さはありません。
ビ・バップの時代から活躍し、ピアニスト としてもコンポーザーとしても超一流です。
ジャズにおけるスタンダードもいっぱい残しています。

しかしながら他のピアニスト と全く違った音楽へのアプローチを生涯続けました。
モンクのピアノはビル・エヴァンスとかキース・ジャレットのように一聴して綺麗でリリカルで、心の繊細さを音にしたような・・・みたいな音ではありません。
ガツッ、ゴツッ、ガチャッ、ピョエッ、ゴキョッ、みたいなゴツゴツしたリズムに不協和音がのるみたいなピアノなのです。

それでもミュージシャンからは尊敬を受け、いつの時代でも繰り返しカバーされます。ある意味時代を超越した音楽といえます。
聴いている方も慣れてしまえば飽きない、奥深い音に聞こえるから不思議です。そのうち綺麗で、繊細で、リリカルな音楽に聴こえてきます。(個人の見解です)

モンクは独学で6歳の頃からピアノを演奏していましたが、死後1980年代に入ってから、モンクはある時期、ジュリアード音楽院で正式にハーモニーとアレンジを学んだとの説が出ます。
葬式の時の弔辞でその話が出たそうです。ただまだその話は証拠となるものがなく、確定していないらしいのです。

そのモンクのアルバムもソロ、トリオ、カルテット、クインテット、オーケストラと呼ばれる形態で多数残っていますがソロを除き一番シンプルな3人のピアノ トリオでの演奏が独特の旋律、独特のリズム感、独特の調性という個性を感じられて好きです。

紹介するのは「セロニアス ・モンク・トリオ」。音源は1954年に10インチLPでリリースされていますが、今現在入手できるアルバム形態は1956年にプレステッジというレーベルからリリースされました。

プロデューサーはボブ・ワインストック、レコーディングエンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダー、ミュージシャンはセロニアス ・モンク。
全てがジャズにおいては超一流です。これで悪かろうはずがありません。しかし私的には一つだけ何年経っても残る不満があります。

ジャケットデザインがダサいです。

ギル・メレという芸術家であり、音楽家であり、プロデューサーもできる人が描いたイラストですが、これが酷い。
見た目、何かわからないデザインが書いてありますが、さっぱりわかりません。
なのでなんて奥深いのだろうという気持ちにはなれず、安っぽい時代がかったSFチックな絵みたい、としか感じられません。
色合いも白地に水色というのが絶対的にと言いたくなるほセロニアス・モンク的、ジャズ的ではありません。
これならビートルズの「ホワイトアルバム」みたいな方向で真っ白、もしくは真っ黒なジャケットに「Thelonious Monk Trio」とだけ浮き出るように印刷してあったほうがまだモンクの奥深さ、高貴さを感じさせます。

同じようにモンクの「ミステリオーソ」という抽象画っぽいジャケットはあります。
何かわかりませんがこちらの方はなんかアートでいいんですよ。許せます。

来歴
セロニアス ・モンクは1917年10月10日、ノースカロライナ州ロッキーマウントで生まれました。6歳の頃からピアノを弾き始めます。先生の影響もあるのでしょうが12歳の頃のお気に入りの音楽はショパンとモーツァルトだったそうです。17歳の時に教会のオルガンを弾くようになり、10代後半でジャズ演奏の仕事を開始しました。かの有名なミントンズ・プレイハウスのハウスピアニストとなります。
それからはビバップ、ハードバップ、60年代、70年代の中頃までジャズの世界で活躍します。ブルーノート、プレスティッジ、リバーサイド、コロンビアなどのレーベルで40枚以上のリーダー作をリリースしています。また、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキー など50年代、60年代の主要なジャズミュージシャンとはもれなく一緒に演奏しています。

70年代から体調が悪化して、最後は1982年2月17日ニュージャージー州ウィーホーケンで亡くなり、ニューヨーク州ハーツデールに埋葬されました。

モンクは多分若い頃から精神的に不安定な面があったようです。初期の治療法がよくなかったとも言われており、脳に悪影響のある薬を投与されて損傷し悪化したとも言われています。
今なら躁鬱病や統合失調症などでもだいぶ解明され、社会的にも認知され、治療法もだいぶ進んできているようですので、最良の治療を受けられていればもっともっと素晴らしい音楽を記録できたのかもしれません。当時に関する記事を読む限りでは残念です。

モンクの生きていた時代の、特にアフリカン・アメリカンのジャズミュージシャンにとっては勝手に麻薬所持を疑われて警察から暴力を受けたり、社会的に偏見の目で見られたりと不当に大変な時期でした。過酷な人生だったのだろうと思います。

モンクの音楽は何かを訴えているように思えます。

アルバム「セロニアス・モンク・トリオ」のご紹介です。

演奏
セロニアス・モンク  ピアノ
アート・ブレイキー  ドラムス  Tr. 1-4, 7
マックス・ローチ ドラムス  Tr. 5,6,9,10
ゲイリー・マップ  ベース Tr. 1-6, 9,10 
パーシー・ヒース  ベース Tr. 7


曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。


1,   Blue Monk  ブルー・モンク

メランコリックなメロディで始まります。1分を超えたあたりから崩しにかかります。ここら辺がユニークな所です。


2,    Just A Gigolo  ジャスト・ア・ジゴロ

1924年に作られた名曲です。ノスタルジックな曲ですが独特の間で演奏します。


3,    Bemsha Swing  ベムシャ・スウィング

これもまた有名曲です。リズミカルに演奏しています。というか独特なリズムです。


4,    Reflections  リフレクションズ

比較的、崩しにかからなく普通そうに弾いています。


5,    Little Rootie Tootie  リトル・ルーティ・トゥーティ

リズミカルで牧歌的な感じもする曲です。


6,    Sweet And Lovery  スウィート・アンド・ラブリー

タイトルに反してベタベタに甘くならずに突き放そうとしているようにも感じます。


7,    Bye- Ya  バイ・ヤ

比較的ハードバップ・マナーで演奏します。


8,   Monks’ Dream  モンクス・ドリーム

モンク を代表する曲です。よく練られた演奏です。


9,    Trinkle Trinkle  トリンクル、トリンクル

タイトル通り、可愛らしい曲です。


10,   These Foolish Things  ジーズ・フーリッシュ・シングス

古い曲のカバーです。乗ってます。唸り声も聞こえます。


モンクのブルーズ系の曲はほとんどキーがBフラットで作曲されているようです。名前を冠した「セロニアス 」という曲もBフラットが多用されています。

Bitly
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