「ここでベックは後世に残るハードロックのフォーマットを作り上げました。」Truth : Jeff Beck Group / トゥルース : ジェフ・ベック・グループ

 ハードロックの起源という話になるとキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」が最初とかビートルズの「ヘルター・スケルター」とかクリームとかレッド・ツェッペリンの登場とか色々と言われております。
そこで私見ですが、バンドとしてハードでヘビィーなサウンドを提示し、その後につながる形態を示したのはレッド・ツェッペリンより5ヶ月前にハードロックアルバムをリリースした「ジェフ・ベック・グループ」のような気がしています。

ここでハードロックのフォーマットが出来上がりました。
それはヘビーなリズムにドライブするベース、強烈なシャウトとそれに対抗するような大音量のギターやキーボードというバンドです。
そしてアルバム1枚まるまる同じヘビィーサウンドで通すのではなく、どこかに1曲、超絶スローバラードや美しいインスト曲を入れて緩急をつけるやり方です。

1966年、ジェフ・ベックは在籍していたヤードバーズのアメリカツアー中に突如いなくなってしまいます。
多分もうやる気がなくなってしまったためだと思いますが、ヤードバーズはジミーペイジをメインギタリストとしてツアーを続け、11月30日に正式にジェフ・ベックの脱退表明をしています。
やはり原因はジェフ・ベックの理想主義と完璧主義によるフラストレーションだったようです。

この時、ローリング・ストーンズへの加入も真剣に考えていたそうですが、実現はしませんでした。
確かにキースのダルでルーズなロックンロールギターにジェフ・ベックがうまく馴染むとは考えにくいです。
参加しても長続きしないのは目に見えています。

そこでプロデューサー兼マネージャーのミッキー・モストは次の手としてジェフ・ベックをポップスターとして売り出そうとします。
「ハイ・ホー・シルバーライニング」とか「タリーマン」などベックがヴォーカルをとったシングルを何枚かリリースします。(評価はお差し控えください)

このシングルはA面はポップですが、B面が「ベックス・ボレロ」とか「ロック・マイ・プリムソウル」です。“これ、いくらなんでも指向が違い過ぎね!”とツッコミを入れたくなるほどの振幅を見せています。
そしてしまいには「恋は水色」のインストカバーまで演ってしまいました。

これはジェフ・ベックにとってフラストレーションの溜まるものだったらしく、「やばい、ビジネスの世界に潰されそうだ。このままではせっかくの俺の才能は世に出ることなくこのまま廃れてしまう」とばかりに真剣に悩みました。
そして一念発起して自分を中心にした、自分の才能を完璧に活かせるバンド編成を画策します。
(私感です)

そうして出来上がったのはヴォーカルにロッド・ステュアート、ギターはジェフ・ベック、ベースがロン・ウッド、ゲスト扱いですがピアノにニッキー・ホプキンス、ドラムスはエイズリー・ダンパー(ミッキー・ウォーラーに変わります)という今考えてもヨダレが出そうな完璧な布陣でした。

のちに第1期ジェフ・ベック・グループと呼ばれるスーパーバンドの誕生です。

ロン・ウッドは元々ギタリストとして参加する予定でしたがベックに頼まれてベースを担当することになりました。
私感ですがこれが偶然にもサウンドに良い結果を与えました。
ギタリスト感覚での動きまくって緊張感あるベースサウンドはどっしりとした大音量のハードなサウンドに幅の広いドライブが加えられることになります。

そして1968年7月29日、アルバム「トゥルース」がリリースされました。名義はジェフ・ベックとなっています。売上的に大成功とまではいかなくとも(全米チャート15位までは上がりました)歴史的にも重要なアルバムでその後も徐々に評価されることになります。
何はともあれこのアルバムによってジミー・ペイジも相当刺激されたと思われ、レッド・ツェッペリンのデビューアルバムにつながることになります。

翌年、ジェフ・ベック・グループは「ベック・オラ」というセカンドアルバムをリリースします。このアルバムは商業的にはあまり芳しくなかったようですが、ファーストアルバムよりもバンド的には馴染んでこなれた感があります。
ただ、当のジェフ・ベックはこの路線にもう少しファンキーさ、ソウルっぽさを入れたかったのか解散して第2期ジェフ・ベック・グループへと駒を進めます。

最近手に入るCDはボーナストラックでベックのシングルリリースした音源が入っていますが、「トゥルース」としては「シェイプス・オブ・シングス」に始まって「アイ・エイント・スーパースティシャス」までです。
ここはしっかりと分けて聞いていただきたいところです。
一気に全部通して聞くと「トゥルース」の本来の味が(価値が)薄まってしまうだけのような気がしてなりません。

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Bitly

演奏
ジェフ・ベック  エレクトリックギター、アコースティックギター、ペダル・スティール・ギター(Tr.1)、ベースギター(Tr.5)

ロッド・ステゥアート  ヴォーカル

ロニー・ウッド  ベースギター

ミッキー・ウォーラー  ドラムス

ゲスト・ミュージシャン
ジョン・ポール・ジョーンズ  ハモンドオルガン(Tr.4,5)
ニッキー・ホプキンス  ピアノ(T r .3,4,8,9)
キース・ムーン  ドラムス(Tr.8)  ティンパニ(Tr.5)
ジミー・ペイジ  12弦エレクトリックギター(Tr.8)

制作
ミッキー・モスト  プロデューサー
ケン・スコット  エンジニア
スティーヴン・ゴールドブラッド  フォト

曲目
参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

Side 1
1,   Shapes of Things シェイプス・オブ・シングス

オリジナルはジェフ・ベックとジミー・ペイジも在籍していたヤードバーズです。比較すると別曲と言ってもいいくらいハードにヘビーにアレンジされています。うねるようなスライドギターと暴れるベースが印象的です。
ブレイクしてからのギターソロでためて裏から入っているのにアタマの音も出しているところが謎です。最後はエンジンが止まるが如く終わります。

2,   Let Me Love You レット・ミー・ラヴ・ユー

いかにもハードロック的な曲です。ただロッド・ステュアートは基本ハードロックの人ではないので、歌が入るとちょっとイメージが違ってきます。ベックのギターがロッドとガチンコで張り合います。

3,   Morning Dew モーニング・デュー

カナダのSSW、ボニー・ドブソンの作です。ちょっと変わった曲調ですがベックは気に入っているみたいで後のBBAのライブでも取り上げています。

4,   You Shook Me  ユー・シュック・ミー

シカゴブルーズの重鎮、ウィリー・ディクソンによるブルーズスタンダードです。
レッド・ツェッペリンも1stアルバムで取り上げています。

5,   Ol’ Man River4:00 オール・マン・リバー

今やジャズスタンダードともなっていますが、元々は1927年の「ショーボート」というミュージカルからの曲です。ゴスペル的な雰囲気もあり、サム・クックが好きなロッドが嬉しいんだろうなあと思ってしまいます。

Side 2
6,   Greensleeves グリーンスリーブス

ジェフ・ベックによるアコースティックギターのインスト曲です。ハード一辺倒ではなく幅を見せることでアルバムがよりダイナミックになります。

7,   Rock My Plimsoul ロック・マイ・プリムソウル

まんまB.B.キングの「ロック・ミー・ベイビー」です。

8   Beck’s Bolero ベックス・ボレロ

今までにない何か新しいことをやろうという気概が伺えます。ボレロに始まって徐々にハードになっていきます。

9,   Blues De Luxe ブルーズ・デラックス

擬似ライブです。スローブルーズなんですがベックのギターからはいかにもなブルーズのフレーズは出てきません。2分35秒あたりからニッキー・ホプキンスの熱いピアノソロが始まり4分30秒あたりまで続きます。5分を過ぎるとギターソロに入ります。ニッキー・ホプキンスに引っ張られ、思わず感情が昂ってブルーズフレーズを弾いてしまうベックなのでした。

10,  I Ain’t Superstitious アイ・エイント・スーパースティシャス

ウィリー・ディクソン作、ハウリン・ウルフで有名なブルーズスタンダードです。ベックはワウペダルでヴォーカルに絡んでいきます。最後はハードロックらしくドラムソロで終わります。

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