08.ブルーノート(音階)音楽を楽しむための小噺

 ブルーズというジャンルに魅かれて、ブルーズを基準にロック、ジャズ、カントリー、ワールドミュージックなどいろんな音楽を聴いてきました。
そのブルーズ には共通項があります。それがブルーノート音階です。

その理論を話していきたいのですが、ここではあまり詳細には触れません(実力不足もあります)あくまで音楽を聴く上で知っておくとより楽しめるという程度にとどめます。
それ以上の深淵な世界に入りたければ各自でよろしく。

ブルーズとは感覚的なことであり、それを数値化するなどして理論的に解明しようと今までいろんな専門知識を持つ人が取り組んできました。
私はそういう人たちには遠く及びませんんし、聞きかじった程度のことをさもわかったかのように話すのも失礼な話です。
こういう話があります、という紹介でいきます。では。

まず、音楽の3要素というものがあります。リズム、メロディ、ハーモニーです。
ブルーズという音楽はどういうものかというと、で、ググります。「孤独や悲しみなどを表現する音楽」、とあります。
リズムでは孤独、悲しみはちょっと難しそうです。そこでメロディとハーモニーでの表現になります。旋律と和音です。
それを構成するのが専門用語で音階と調ということになります。

音階、調などが紛らわしいので、わかりやすくまとめておきます。
音階=スケール=音の並び、配列、音それ自体
調=キー=その音階に従って作られている状態にあるということ、です。

学校で音楽の時間に「和音には短調と長調があります」「ピアノで弾くと短調はこんな響きです、ジョーン はい、寂しい、悲しい感じがしますね。長調はこんな感じです。ジャーン はい皆さん、明るく、楽しい感じになりましたね」というやつです。
アマノジャッキーな私はここからすでについていけてませんでした。

それを踏まえて 西洋の音楽理論では
長調=メジャーコード=基音がドならド、ミ、ソ=CならC、 E,、G
短調=マイナーコード=基音がドならド、半音下げたミ、ソ=C,、E♭、G

というものです。

ブルーズは基本的にブルーノート音階という音階で作られます。これはアフリカからアメリカに奴隷として連れてこられた人たちが生活する中で自然発生したものと考えられています。
通常音階、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドの音階で、3度、5度、7度の音が半音階下がるというものです。(正確に半音ではありません。)

ここで問題発生です。昔から西洋の音楽理論ではディスコードしてしまう、つまり違和感を感じるはずのものがブルーノート音階 にはあるのです。でも実際は問題なく耳に入ってしまいます。つまり今までの理論上ではやってはいけないことをやっているのに、おかしいとは感じないのです。

それはなぜなのかということを洋の東西を問わず議論され、研究されてきました。
そういうことになりますので、ろくに音楽理論の知識を持たない私が正確に説明できるはずもありませんが、とりあえずやってみるとこうです。

ここで周波数という数字の話を入れてきます。数字と音階で一番有名なのは、音の中心=Aの音階=440Hz(ヘルツ)というやつです。これは1秒間に440回上がって下がってを繰り返す変動のことです。
例えば
日本の電源周波数は西日本で60 Hz、東日本で50Hzと決められています。最初に発電機を輸入した国が西日本はアメリカ、東日本はドイツだったからだそうです。今の時代はほぼ関係ありませんが昭和の時代の家電製品には注意が必要でした。

人間は生まれたとき、最初の泣き声はAの音。ということを聞いたことがあります。

などと生活に関わり深いものです。

波形のはじまって元の位置に戻るまで(10の位置)を1周期と言います。この図では10msecで1周期なので100Hzの図となります。

音階に当てると基本の音に対して周波数が2倍、3倍、4倍・・・と整数倍の音は上手く絡みます。音楽的にも同じことが言えて気持ちよく調がまとまります。整数倍のことを基音に対する上方倍音列と言います。
そしてこの周波数という数字でブルーノートスケールを説明できれば理論上もコンプリートです。

(この図では下の波の波形に対して上の波の波形は2つですので倍音を表しています)

で、この理論ではメジャーコードは理論的に収まります。
基音ド  261.626Hz
長3度のミ 1,308.13Hz 5倍音の1,318.51Hzで近似
5度のソ 1,569.756Hz    6倍音の1,567.982Hzで近似

ということです。
でも、マイナーコードの短3度の音はいくら上方倍音列で数字を追っても出てこないのです。

そこで日本人の濱瀬元彦氏はラング・メソッドという音楽理論で新たに下方倍音列という概念でマイナーコードやブルーノートの調性を解読しました。
これを正確に説明するにははフロイトの心理学からの無意識の感覚的領域云々も関わってくるのでここでは無理です。
結論だけ言うとこれでマイナーコードやブルーノートスケールの周波数からの調性の理由が説明できるそうです。

興味のある方は是非、本格的に調べてみてください。

考え方は基音のドを3倍音と考えると基音がF(ファ)となり、5倍音として考えると基音はA♭になります。
そういうふうに展開していくとブルーノート音階が説明できるというものです。(我ながら雑なまとめです)


濱瀬元彦氏以前の音楽理論のことも紹介します。
1940年代になるとジャズもある意味成熟してきて、アドリブでどういう音階を使えるか、使ったらいけないのかを考える人が出てきました。
1953年にジョージ・ラッセルが「リディアン・クロマチックコンセプト=LLC」を発表します。
この発想の元は若き日のマイルス・ディヴィスもからんでいるようです。モードも関係してきます。
「すべての楽曲、演奏はこの理論で説明できる」というものでした。
これもまた説明するのが難しいので、深入りしたい方はぜひ各自、研究してください。
濱瀬氏はこれに異論を唱えて「ラング・メソッド」を発表します。

というのがブルーズの不思議、奥深さと思っていただければ幸いです。

で、まとめです。

アメリカ南部のプランテーションで発生したブルーズは幅広く音楽に影響を与えていきます。
それにつれてブルーズという音楽を論理的に解明しようとする人たちも現れました。
しかし、戦前のデルタブルーズの第一人者、ロバート・ジョンソンは今晩の泊まるところをなんとか安く確保しようと、毎夜あえて一番モテそうもない女性を選んで口説いていたそうです。
そういう人たちが「下方倍音列で考えれば人間の無意識の調性でこの音を出しても違和感はないはずだ」なんて思いながらブルーズを演奏していたことは100%無いと断言できます。

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