「マイケル・ジャクソン『スリラー』やAC/DC『バック・イン・ブラック』などに並び世界中で一番売れたアルバムと言われる初期イーグルスの傑作ベストアルバムです。」Their Greatest Hits (1971-1975) : Eagles / グレイテスト・ヒッツ 1971-1975 : イーグルス

 はい、今回はアメリカを代表するバンド、イーグルスのベストアルバムです。
ほうか、またベストアルバムなんだねえ。なんだかんだと御託並べてもらっても、所詮あんたはなんか薄っぺらいよねえ.なんて思っていらっしゃる貴姉、貴兄もいらっしゃるかと思います。

しかしなんと言ってもこのアルバムは特別なんです。
私はイーグルスは特に初期が好きで、「ホテル・カリフォルニア」までのオリジナル・アルバムは昔から全て持っていて、高校生の頃はリアルタイムで聞いていました。
友達に私よりイーグルスが好きな奴がいて「ホテル・カリフォルニア」がリリースされた時、「もうイーグルは終わった」、といったことを数年遅れで納得したものでもあります。
そう言えばやつもこのベストアルバムは絶賛していました。

このアルバムにはビートルズの「赤盤」「青盤」やボブ・ディランの「グレーテスト・ヒッツ Vol.1」に匹敵するほどのオリジナルアルバムとは違ったクオリティが感じられます。

内容はシングルカットした楽曲中心ですが、これがまた素晴らしい流れを作っております。

評論家の中にはこのアルバムの出現によって以前のアルバムはこのアルバムを薄めたものにしか感じなくなった、という暴論まで湧きあがったものでした。

さらに決定的にすごいことがあるのです。
資料によって順位が変わったりしますが、世界で一番売れたアルバムとしてマイケル・ジャクソンの「スリラー」やAC/DCの「バック・イン・ブラック」、ピンク・フロイドの「狂気」などと長年デッドヒートを繰り返してきました。
少なめにみても4,000万枚以上は売れているそうです。(この辺は曖昧で「スリラー」に至っては1億枚売れたという説もあります)

日本では「ホテル・カリフォルニア」ほど有名ではない感じですが、世界では破格のモンスターアルバムです。
これについてはビートルズもディランもビーチ・ボーイズも敵いません。

内容としてはロサンゼルスでスタジオやツアーのミュージシャン活動をしていた連中が集まっていい音楽を作ろう、演奏しようとイーグルスというバンドを結成しました。
そのイーグルスのデビューから4作目までのシングル曲を中心に集めたベスト盤です。

シングルカットされた曲ということですが曲自体はアルバムバージョンからとっています。
シングルカットされたバージョンはラジオでオンエアしやすいように若干短くしたものもありますが、ベストアルバムとしてはフルバージョンを入れたかったものと思われます。

リリース当時、すでに本国アメリカではイーグルスはもうヒットチャートの常連で、大物ミュージシャンの仲間入りをしており、人気、実力ともに上り調子の状態でした。

彼らの音楽性や演奏能力というと、すでに今までにスタジオミュージシャンとしての長い活動歴があり、まずコーラスや演奏が安定していました。

ロサンゼルスのスタジオミュージシャンということは当然最新の音楽動向も知っており、対応できるということです。
要求に合わせた新しい感覚を取り入れた演奏もできるということになります。
そこにカントリーやトラディショナルからインスパイアされた味付けのオリジナル・ロックンロールを演奏するバンドといった感じです。

見た目は荒くれ者風ながらも音楽は緻密で整っており、見た目とは違ってガサツな感じはしません。
よく言われる不良のロックとは一つ違って、作曲や演奏に職人気質を感じるストイックなバンドという感じです。

このベストアルバムリリースした同じ年に(10ヶ月後)さらなるモンスターアルバム「ホテル・カリフォルニア」がリリースされることになります。

そこからイーグルスは変わりました。なんと言いますかロックバンドになりました。
原因はバーニー・リードンが抜けてジョー・ウォルシュが加入したからと思われます。

実はわたくし、ジョー・ウォルシュが嫌いなわけではありません。
あの人時代によってルックスが変化し、いかつい髭面の南部人から華奢で繊細な文学者になれる柔軟なところもいいと思います。
どちらかといえばバーニー・リードンより好きかもしれません。

バーニー・リードンの参加した最後のアルバム「呪われた夜」でのLPレコードでいうA面最後のインスト曲なんて今では慣れきったアルバムの流れとして違和感は感じませんが、冷静に考えると「ナニコレ?」ものです。
でもイーグルスはバーニーの脱退でカントリーの風味が薄れてしまいました。
彼の演奏するバンジョー、スティール・ギター、マンドリンなどが初期イーグルスのサウンドを決定づけていました。

バーニー・リードンの脱退、ジョー・ウォルシュの加入によりイーグルスは趣味人の集まりからアリーナロック・バンドになったのです。

当然長い目で見ればより成功したことなので文句のつけようもありません。

1979年リリースの「ロング・ラン」を聞いた時は本当に変わってしまったと思いました。
初期のイーグルスとは別物です。

それから28年後、2007年に久しぶりのオリジナルアルバム「ロング・ロード・アウト・オブ・エデン」がリリースされますが、面白いことにまた初期に戻ったような曲調となりました。

考えてみればやはり「魔の1980年代」の音楽状況が悪かったのかもしれません。

でもね、「ホテル・カリフォルニア」以降の分厚いドラマチックなロックより初期の地味でこぢんまりした作品集(そうでもないけど)の方が売れているのです。
今でも初期4枚のアルバムこそがイーグルスの本質だと思ってます。(個人の感想です)

イーグルスのベストアルバム、コンピレーションアルバムは何種類もありますがこの初期のベストを超えるものはありません。

ジャケットデザインはボイド・エルダーという芸術家の作品です。鷲の頭蓋骨のオブジェという感じです。
「呪われた夜」のジャケットもこの人の作品で、こちらはバッファローと鷲を使ったデザインで、両方ともなんとなくウエストコースト、ネイティヴ・アメリカンの伝統や儀式などを彷彿させるデザインです。

想い起こせば学生の頃、バイト先(現場仕事です)の先輩たちと雑談している時のことです。
音楽の話になってこう聞いてみました。
「日本でもだいぶロック世代が社会人となって活躍する時代になったと思います。でもベテランの方、というか結構な年配の人でももみんなイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やサンタナの『哀愁のヨーロッパ』とかは知っているんですよね。日本人にはああいう曲が受けるんですかね」

なんて話してると

「なんで『ホテル・カリフォルニア』や『哀愁のヨーロッパ』をみんな知ってるのかって?、教えてやるよ。それはストリップ劇場でポール・モーリアと一緒によく使われてるからなんだよ。今度連れて行ったろか、でも兄ちゃんにはまだちょっと早えか。はっはっは!」

はい、いたいけな夢見るロック少年の心はとっても複雑でした。

アルバム「グレイテスト・ヒッツ 1971-1975」のご紹介です。

Amazon.co.jp: THEIR GREATEST HITS VOLUMES 1 & 2 [CD]: ミュージック
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演奏
グレン・フライ  ギター、ヴォーカル、ピアノ
バーニー・リードン  ギター、バンジョー、スティールギター、マンドリン、バックヴォーカル
ランディ・マイズナー  ベース、ヴォーカル
ドン・ヘンリー  ドラム、ヴォーカル
ドン・フェルダー  ギター(Tr.3,4,6,8)、オルガン

プロダクション
グリン・ジョーンズ  プロデューサー
ビル・シムチック  プロデューサー
ジム・エド・ノーマン  ストリング・アレンジ
アラン・ブレイゼック  エンジニア
マイケル・ブラウンシュタイン  エンジニア
ハワード・キルガー  エンジニア
エド・マーシャル  エンジニア
マイケル・ヴァーディック  エンジニア
ドン・ウッド  エンジニア
ヘンリー・ディルツ  アートディレクション、デザイン
グレン・クリステンセン  アートディレクション、デザイン
ボイド・エルダー  アートディレクション、デザイン
アーヴィング・アゾフ  ディレクター
スティーヴ・ホフマン  デジタルリマスター
テッド・ジェンセン  デジタルリマスター

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Take It Easy テイク・イット・イージー
 (グレン・フライ、ジャクソン・ブラウン)

1980年代に大ブレイクするジャクソン・ブラウンの作った曲です。
デビューアルバムのオープニング・トラックです。
いかにもテレキャスターらしい音のギターがいい感じです。
イーグルスのイメージを決定した曲でもあるのですが、実は個人的にこの曲のギターソロがコピーしてみると本当によくできていると感心します。というか弾いていてとっても楽しいギターソロです。


2,   Witchy Woman 魔女の女
 (ドン・ヘンリー、バーニー・リードン)

これも1stアルバムからですが、イーグルスらしくなく、というかカラッとしてなくてちょっと重苦しい、おどろおどろしい雰囲気で始まります。
サウンドは立っているので暗い雰囲気にはなりません。物語を感じさせます。
ファーストアルバムから2枚目のシングルとしてリリースされ、9位まで上昇しています。
チャートアクション的には「テイク・イット・イージー」の13位を上回りました。


3,   Lyin’ Eyes ライン・アイズ
 (ドン・ヘンリー・グレン・フライ)

「呪われた夜」からの2枚目のシングルでグレン・フライのヴォーカルです。
カントリータッチの明るい感じで始まり、爽やかに歌い上げていきます。
ビルボードホット100で2位、カントリーチャートでも8位まで上昇しました。
「嘘つきの目」というタイトルからして物語が目に浮かびます。


4,   Already Gone オールレディ・ゴーン
 (ロブ・ストライザンド、ジャック・テンプチン)

グレン・フライのヴォーカルで軽快なロックンロールです。
「オン・ザ・ボーダー」からの1stシングルでビルボードホット100で32位まで上がりました。
ドン・フェルダーのレスポール・スペシャルによるギターサウンドが最高です。ソロの絡みもイカしてます。


5,   Desperado デスペラード
 (ドン・ヘンリー、グレン・フライ)

シングルカットはされていませんがアルバムタイトル曲でもあり、今やロック・スタンダードとなっている名曲です。
情感豊かなナンバーでカバーも多く、ヴォーカリストとしては挑戦してみたい曲だと思われます。
イントロはレイ・チャールズの「ジョージア・オン・マイ・マインド」からきてるそうです。


6,   One of These Night 呪われた夜
 (ドン・ヘンリー、グレン・フライ)

スピナーズとアル・グリーンなどのR&Bからインスパイアされたとのことです。
最初に聞いた時はドゥービー・ブラザーズの「ロング・トレイン・ランニング」と同じようなイメージでしたが聞き込むほどに違ってきました。
ドン・ヘンリーがヴォーカルをとっています。
ドン・ヘンリーとグレン・フライはカントリーロックとかバラードとかと違ったものを演りたかったそうです。
ギターサウンドが活きています。
  

7,   Tequila Sunrise テキーラ・サンライズ
 (ドン・ヘンリー、グレン・フライ)

アルバム「デスペラード」からの最初のシングルでカントリータッチのナンバーです。
ビルボード・ホット100で64位とチャートアクションは振るわなかったのですが、いかにもウエストコーストな感じで人気のある曲です。
タイトルは当時人気のあったカクテルに由来しているようです。


8,   Take It to the Limit テイク・イット・トゥ・ザ・リミット
 (ランディ・マイズナー、ドン・ヘンリー、グレン・フライ)

ヴォーカルはランディ・マイズナーです。
「呪われた夜」に収録されており、シングルカットされビルボード・ホット100で4位とヒットしました。
なぜかランディ・マイズナーはライブでこの曲を演りたがらず、それがイーグルスを抜ける一因となったそうです。
「限界に挑戦する」といったタイトルはなかなかの人生讃歌ですので、行き詰まると「Take it to the Limit, One more Time」と思わず口ずさんでしまう人も多いのではないかと。(私です)


9,   Peaceful Easy Feeling ピースフル・イージー・フィーリング
 (ジャック・テンプチン、グレン・フライ)

ファーストアルバムからのナンバーで、明るい感じでカリフォルニア感満載のトラックです。初期イーグルスらしい人気曲となっています。
バーニー・リードンとランディ・マイズナーのハモリがまたええ感じでございます。


10,  Best of My Love ベスト・オブ・マイ・ラブ
 (ドン・ヘンリー、グレン・フライ、JD サウザー)

アルバム「オン・ザ・ボーダー」からドン・ヘンリーのヴォーカルが生きた名曲です。

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