ジーニアス : 天才と言われる人は数多くいます。
ブラック・ミュージックの世界で誰もが認める天才といえばこの人、レイ・チャールズです。
神の声を持つ男、その1 サム・クック、その3オーティス・レディングと言ってっきましたが遅ればせながらもその2はジーニアス・ソウル・ミュージック、レイ・チャールズに決まりです。
1940年代から亡くなる2000年代初めまで長きにわたり音楽活動を続けました。
というか急激な時代の変化にも負けない強い、本物の音楽で常に第1線で続けられただけでも驚異的です。
いろんな方面からもリスペクトされていました。
レイ・チャールズはピアノやキーボードを演奏しながら歌うスタイルです。
盲目で幼少期に緑内障で失明したと言われています。
歌い方はブルージーとは言えますが、そうそう綺麗な歌い方とは言えません。
なんというかゴツゴツした歌いまたです。リズム感が独特でバックビートで演奏しながらこれ以上引っ張り切れないくらい遅れて声を出したり、あえて声を出さずに焦らしたりして、その加減がまさに天才的です。
声の音域が広くないように感じますが、あえてそういう風にして、聞き手にもどかしさを感じさせ、気持ちを掻きむしるのも天性のテクニックかもしれない。とまで思ってしまいます。
音楽史的にはゴスペルとR&Bを融合してソウル・ミュージックを編み出したというのが定説です。
その最初の曲が「What’d I Say」です。ゴスペル形式のコール・アンド・レスポンスをしながら、世俗的な歌を歌います。
当然これには批判もありましたが、ブラックミュージックのアグレッシブさと独特のノリで世界中を熱狂させました。
個人的な話になりますとまず最初に動くレイ・チャールズを見たのは映画「ブルース・ブラザーズ」でした。
この映画はジェームス・ブラウンやアレサ・フランクリン、キャブ・キャロウェイ、ブッカーT & MGズなど錚々たるメンバーが集結した映画です。
これがあのレイ・チャールズかと感心しながら映画を見て、ちゃんと聴いてみたいと思ってABCレーベルのベスト盤を買って驚きました。
最初に聴いた感じは普通のヴォーカリストの歌い方とはかなり違っていました。例えば「好きにならずにいられない」ではメインヴォーカリストにも関わらずバック・コーラス・グループのレイレッツに出だしの “I can’t stop loving you・・” とメロディを歌わせて “I’ve made up my mind ” と始めたり、「旅立てジャック」では “Hit the road Jack, Don’t you you come back no more, no more, no more, no more” とサビを歌わせて、 “What you Say” と合いの手を入れて歌い始めたり、かなりフリーキーです。これがたまらなくかっこいいいのです。
そして「Georgia on My Mind」の2分45秒 “ウォウォウォウォーウォ” というスキャットというかアドリブで涙腺は崩壊しました。
それ以降、天上天下唯彼独尊、とても敵わない人になっています。
この世でこの人の代わりはいない、同じ味わいは出せないように思えました。
本名はレイ・チャールズ・ロビンソン・シニアといい1930年9月30日にジョージア州アルバニーで生まれました。
出生の経緯は複雑で手短に言えばある夫婦の元に養子に入ったレイの母親はその義理の父親の子供を妊娠してしまい、それがレイ・チャールズとなります。
レイ・チャールズ出生後に母親の故郷、フロリダ州グリーンヴィルに戻ります。
3歳くらいからすでにピアノで演奏するブギウギに興味を持ちました。
レッド・ウイング・カフェというところで母親とほぼ住み込み状態で暮らしながらオーナーのワイリー・ピットマンにピアノを教えてもらいます。
レイは4歳か5歳くらいから視力をなくしていきましたが、盲学校に通いながらクラシック音楽などにも興味を持って熱心に勉強します。
14歳の時に母親をなくしてしまい、母親の友達に引き取られれてフロリダ州ジャクソンビルに映ります。
ピアノ演奏や編曲など音楽的な才能はこの頃から評判でしたが音楽で生計を立てるのは難しかったようです。
しかし徐々に音楽活動は身を結び、1952年にアトランティック・レコードと契約をしました。
1953年の「Mess Around」が最初のヒットとなり1954年に「I’ve gotta Waman」がヒットチャートの2位まで上昇して軌道に乗ります。
その後は半世紀近くにわたって音楽活動を続け、2004年6月10日に肝不全による合併症で亡くなりました。73歳でした。
レイ・チャールズの功績はブルーズ、ゴスペル、R&Bの融合に始まり、カントリーやジャズなどいろんなジャンルにクロスオーバーして音楽界に多大なる功績をしました。
ジャンルを超えていろんなミュージシャンから尊敬される存在となっています。
また人種差別を理由にコンサートをドタキャンして訴えられるなど公民権運動にも熱心な側面がありました。
レイ・チャールズの残した音楽遺産は膨大です。折に触れて彼の偉大さを感じさせていただいています。
ご紹介するのは1949年から1962年までリリースされたシングルを集めたものです。初期のベスト盤といってもいいかと思いますが、125曲という破格の量となります。
レイ・チャールズの重要な時代は押さえてありますので、これを機会にリズム・アンド・ブルーズ、ソウルの泥沼にハマってみるのもいかがでしょうか。
125曲,、曲目のみのご紹介となります。CDの盤ごとにコメントを入れてみました。
このアルバムはリリース順に追っているので、一枚目はわりと、というかあまりに渋いブルーズとなっていますので、レイ・チャールズ・ミュージックの上級者になってからでないと手を出しても理解しにくいものです。
今の視点でレイ・チャールズの音楽を堪能するには、CDでしたら、3、4、5、2、1の順で楽しむことをお勧めします。
アルバム「レイ・チャールズ・シングル・コレクション」のご紹介です。
曲目
- Confession Blues
- I Love You, I Love You
- Blues Before Sunrose
- How Long Blues
- A Sentimental Blues
- You’ll Never Miss the Water
- Alone in This City
- Can Anyone Ask for More
- Let’s Have A Ball (Here Am u)
- Rockin’ Chair Blues
- If I Gave You My Love
- The Honey Bee
- I’ve Had My Fun
- Sittin’ on Top of the World
- Ain’t That Fine
- Don’t Put All Your Dreams In One Basket
- See See Rider
- What Have I Done (Tell Me Baby)
- She’s on the Ball
- Honey Honey
- Late in the Evening Blues
- The Ego Song
- I’ll Do Anything But Work
- Someday Blues (Blues Is My Middle Name)
- All to Myself
- I Wonder Who’s Kissing Her Now
- Lonely Boy
- I’m Glad for Your Sake
ここまでがCD1枚目です。トラック12「ザ・ハニービー」まではレイ・チャールズの居たマキシン・トリオというグループのものになります。トラック13以降がレイ・チャールズの個性が花開く時期です。それまでと歌い方がだいぶ違います。
ブルーズスタンダードの「Sitting On Top of the World」もいい感じです。 - Baby Let Me Hold Your Hand
- Kiss Me Baby
- Hey Now
- Baby Won’t You Please Come Home
- Guitar Blues
- Baby Let Me Hear You Call My Name
- Misery in My Heart
- The Snow is Falling
- Why Did You Go
- Back Home
- Walkin’ and Talkin’ to Myself
- I’m Wonderin’ and Wonderin’
- Roll with Me Baby
- The Midnight Hour
- The Sun’s Gonna Shine Again
- Junpin’ in the Morning
- Mess Around
- Funny (But I Still Love You)
- Feelin’ Sad
- Heartbreaker
- It Should I’ve Been Me
- Sinner’s Prayer
- Don’t You Know
- Losing Hand
- I’ve Got a Woman
ここまでがCD2枚目です。R&B色が大きくなってきます。「Kiss Me Baby」最後の「I`ve Got a Woman」あたりは有名でレイ特有のノリを感じます。
「Hey Now」はニューオリンズにも同じ曲名がありますがこれは「ハートブレイク・ホテル」調です。「Guitar Blues」というエグい音色のインストも面白い感じです。 - Come Back
- This Little Girl of Mine
- A Fool for You
- Blackjack
- Greenbacks
- Drown in My Own Tears
- Mary Ann
- Hallelujah, I Love Her So
- What Would I Do Without You
- Lonely Avenue
- Leave My Woman Alone
- I Want to Know
- Ain’t That Love
- It’s All Right
- Get on the Right Track Baby
- Swanee River Rock (Talkin’ ‘Bout That River)
- I Want a Little Girl
- Talkin’ ‘Bout You
- What Kind of a Man Are You
- Yes Indeed
- I Had a Dream
- My Bonnie
- You Be My Baby
- Rockhouse PT1 & 2
- Tell All the World About You
- What’d I Say – Part1
ここまでがCD3枚目です。「Greenback」のトーキングブルーズがかっこいいのです。トラック59「自分の涙で溺れ死ぬ」という超絶バラードもあります。
「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソウ」「マイ・ボニー」は初期ハンブルグ時代のビートルズもカバーしたスタンダードです。
そして極め付けは最後の「ホワッド・アイ・セイ」です。1分30秒過ぎまでインストが続き、そして待ってましたとばかりにヴォーカルが始まります。盛り上げて終わったとおもったらブレイクして、コールアンドレスポンスが始まります。トランス状態まで持っていかれそうな瞬間です。 - (Night Time Is) the Right Time
- Tell Me How You Feel
- That’s Enough
- I’m Movin’ On
- I Believe to My Soul
- Let the Good Times Roll
- Don’t Let the Sun Catch You Cryin’
- Just for a Thrill
- Tell the Truth
- Sweet Sixteen Bars
- Come Rain or Come Shine
- Tell Me You’ll Wait for Me
- Early in the Morning
- A Bit of Soul
- Am I Blue
- I Wonder Who
- Hard Times (No One Knows Better Than I)
- My Baby (I Love Her, Yes I Do)
- Who You Gonna Love
- Sticks and Stones
- Worried Life Blues
- Georgia on My Mind
- Carry Me Back to Old Virginny
ここまでがCD4枚目です。
ここからステレオ音源となります。B.B.キングで有名な「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」やポップス寄りの「ドント・レット・ザ・サン・キャッチ・ユー・クライン」など幅が出てきます。「スウィート・シックスティーン・バーズ」はジャズ寄りのピアノ曲です。
「Hard Times (No One Knows Better Than I」というすごいタイトルの曲もあります。いい曲です。
そして、そしてレイ・チャールズといえばこの曲「我が心のジョージア」もあります。 - Them That Got
- I Wonder
- Hard Hearted Hannah
- Ruby
- Hit the Road Jack
- The Danger Zone
- Unchain My Heart
- But on the Other Hand, Baby
- One Mint Julep
- Let’s Go
- I’ve Got News for You
- I’m Gonna Move to the Outskirts of Town
- Baby It’s Cold Outside
- We’ll Be Together Again
- Hide ’Nor Hair
- At the Club
- I Can’t Stop Loving You
- Born to Loose
- You Don’t Know Me
- Careless Love
- You Are My Sunshine
- Your Cheating Heart
- Take These Chains from My Heart
以上、ここまでがCD5枚目です。
5枚目はカントリーに接近している感じですが黒っぽさは隠せません。「ユー・アー・マイ・サッンシャイン」もだいぶイメージが違います。
「旅立てジャック」「アンチェイン・マイ・ハート」などの素晴らしい曲やジャズっぽい「ワン・ミント・ジュリプ」もいい感じです。
オーケストラバックで歌うのが多くなっていますがそんなにはアマアマアレンジにはなっていません。
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