ロックファンの間ではライブの名盤として1977年リリースのリトル・フィートの「ウェイティング・フォー・コロンブス」は定番でした。しかしここに来て新たな展開です。
2021年にライノより新しく初期の1974年のライブアルバムがリリースされました。
ニューヨークのFMラジオ局が放送用に録音したスタジオライブです。
私はそれほどディープなファンではないので知りませんでしたが、1970年代から高評価の海賊版として有名だったようです。
その名も「Electrif Lycanthrope」タイトルは意味不明です。
まさか「ちょっと帯電した狼男」なのでしょうか。きっとスラングで全然違う意味なのでしょう。
私の持っているものは2021年にRHINOのハイレゾダウンロードしたバージョンです。
2022年にRHINO版のCDも発売されました。
RHINO(ライノ)は1978年に設立されたワーナー・ミュージック・グループのカタログ部門です。最発CDなどのリマスター技術は定評があり、一般にはRHINO印=高音質リマスターと認識されています。
聞いてみると当然ながら期待通りのクォリティの高い音質と演奏内容となっています。さすがのリトル・フィートです。
ギターは言うに及ばず、個性的なキーボードのうねりも病みつきになります。
中でも特筆すべきはやはりリズム隊の良さです。どっしりしているドラムスとベースのグルーヴはいつもほれぼれしちゃいます。
この時期は4枚目のアルバム「アメイジング 原題 : Feats Don’t Fail Me Now」をリリースした直後です。
リトル・フィートの歴史の中でもピークのひとつとして最高に良い状態でした。
実際に聞くとわかりますがとんでもなく上手いバンドです。
4年後に同じメンバー+タワー・オブ・パワーのホーンセクション付きという豪華メンバーでリリースされたライブ盤「ウェイティング・フォー・コロンブス」もロックライブの名盤として必聴です。
リトル・フィートはギタリスト、ヴォーカリストのリーダー、ローウェル・ジョージのいた時代とその後の時代に大きく分かれます。ローウェル・ジョージはギタリスト、ヴォーリスト、作詞作曲家として活躍、貢献しましたが1979年に薬物が原因で34歳で亡くなりました。
残りのメンバーで再結成し、最近までライブを中心に活動していたみたいですが、ついに2019年に中心人物のポール・バレアーが亡くなりました。
サイドギタリスト、リズムギタリストとしてバンドのサウンドには欠かせない人でした。
そのほかのメンバーの年齢的なこともあり、もうさすがにこれ以上の活動は難しいかもしれません。
でも彼らの音楽遺産は結構残されています。いつまでも評価され続けることを願います。
リトル・フィートは永遠です。
余談として、一般的な評価はローウェル・ジョージ期に集中していますが、以降のアルバムもいくつか持っています。それもなかなか良くて、というかリズム隊がしっかりしているバンドはやっぱりいいものです。
時代とともに録音技術が発達して、楽器の分離がよくなるとベースとドラムがまた深く聴けて良いのです。特に2000年リリース「Chinese Work Songs」はおすすめです。
ただしタイトルに反して中国風味はほとんど感じられませんけど。
アルバム「エレクトリフ・ライキャンスロープ」のご紹介です。
演奏
ローウェル・ジョージ ヴォーカル、ギター
ポール・バレアー ギター、ヴォーカル
ケニー・グラッドニー ベース
ビル・ペイン キーボード
リッチー・ヘイワード ドラムス
サム・クレイトン パーカッション、ヴォーカル
*参考として最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。
曲目
1, The Fan ザ・ファン (George, Payne) 06:32
のっけから難しい曲を持ってきたなあ。と思います。
このライブ時点での最新アルバム4作目の「Feats Don’t Fail Me Now」からのナンバーです。
2, On Your Way Down オン・ユア・ウェイ・ダウン (Allen Toussaint) 06:33
スローな曲です。気怠い感じですが普通は2曲目にこういうのは持ってこないよなあ。と思いましたが音がまとまってきました。
1973年リリース、3作目の「Dixie chicken」からです。
3, Medley : Spanish Moon (George) / Skin It Back (Paul Barrère) Fatman In The Bathtub (George) メドレー : スパニッシュ・ムーン / スキン・イット・バック / ファットマン・イン・ザ・バスタブ– 14:38
スパニッシュ・ムーンはミディアムテンポでリズムが気持ちいい曲です。「ファットマン・イン・ザ ・バスタブ」に向かって徐々にテンポを上げていきます。
最新作から2曲と前作の「Dixie chicken」からです。
4, Rock And Roll Doctor ロックンロール・ドクター (Lowell George, Martin Kibbee) -03:57
タイトルに反してシンプルなロックンロールではありません。このリズムでノリを出すドラムがすごい。
4作目の「Feats Don’t Fail Me Now」のオープニングナンバーです。
5, Oh Atlanta オー・アトランタ (Bill Payne) -03:57
彼らにしては直球な曲です。いい曲です。もしバンドでリトル・フィートをカバーするならここらあたりから、という曲です。
4作目の「Feats Don’t Fail Me Now」に収録されたナンバーです。
6, Two Trains トゥー・トレインズ (George) -04:51
アルバム「ディキシー ・チキン」バージョンをロック寄りにした感じです。
7, Willin’ ウィリン (George) -03:50
名曲です。惜しむらくはローウェル・ジョージがライブではアコースティックギターを弾いているので、「セイリン・シューズ」スタジオ版にあるあの必殺のスライドギターがありません。その分あの個性的なピアノが味わえます。
8, Oh Atlanta (Version 2) オー・アトランタ(バージョン2) (Bill Payne) -04:33
5曲目よりバンドとしてはまとまっていませんが、スライドギター大活躍でこれはこれでちょっと不安定気味なところが面白いです。
9, Rock And Roll Doctor (Version 2) ロックンロール・ドクター(バージョン2)(Lowell George, Martin Kibbee) -03:58
これもリハーサルテイクでしょうか。テンポを落として粘っこく演ります。バンドとしてはまとまってます。
10, Saillin’ Shoes セイリン・シューズ (Lowell George) -05:10
こういう曲はライブでは非常に難しいのですが、何なくこなすところが流石です。
2作目のアルバムのタイトルナンバーです。
11, Medley : Cold, Cold, Cold (Lowell George) /Dixie Chicken (Lowell George, Martin Kibbee) /Tripe Face Boogie (Hayward, Payne)メドレー : コールド、コールド、コールド / ディキシー・チキン / トリップ・フェイス・ブギ– 15:42
大団円です。重心を低くしてコールド 、コールド、コールドが始まり、ディキシー ・チキンの後半から徐々に浮かしていきます。最後のトリップ・フェイス・ブギはビル・ペインのキーボードで一旦ブレイクして最後に全員で大盛り上がりとなります。
ごちそうさまでした。
この重心深くグルーヴするリズムと超個性的なキーボードがリトル・フィートならではです。ロックのグルーヴとして最上級です。
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