「ある意味クラシック・ロックの基本だったブルーズ、その極北とも言えるオペラの手法でオリジナル・ロックを開花させたワン・アンド・オンリーのバンド、クイーン初期の集大成」A Night at The Opera : Queen / オペラ座の夜 : クイーン

 一応わたくしはブルーズが好きで、その目線でいろんな音楽を聴いてきました。
私のようにクラシックロックと言われるアルバムをリアルタイムで聴いてきた世代には良くある話でもあります。

その頃のロックにはかなりのパーセンテージでブルーズの影響が見られました。

そういう人にとってはブルーズから見ると極北にあるクラシック、さらにその中でも独自の位置にあるのがオペラです。

オペラという音楽は軽音楽が好きな人、例えばロックやポップス、ソウルミュージックが好きな人にとって一番とっつきづらい音楽であると断言できます。
リズムがなくて構成も定型がなく聴きやすい音楽ではありません。
しかも内容もリアルではない、というか生活感のないという音楽なんんです。
特に日本人からしてみれば「オペラってなんで死んだ人がいきなり起き上がって歌い始めたりするのだ、わけがわからん」(タモリが言ってました)となるのです。
かなり特殊な、マニアックな音楽に感じてしまいます。

わたくしはその昔、オペラの好きな人から「とりあえずマリア・カラスを一度聴いてみ」と言われてアルバムを買ったことがあります。
カルメンなど有名な曲が入っているのですが、すみません2度くらいしか聞けませんでした。

そのロックンロールとは対峙する音楽をロックに取り込んだバンドがロックの成熟期になると現れました。

最初はまずザ・フーです。
1966年に「クイック・ワン」というオペラの手法を取り入れた9分のミニ・オペラなるものが入ったセカンドアルバムをリリースしました。
これは音楽歴にはスリーコード主体で展開する物語という感じでした。

そのオペラを取り入れた手法はロックの名作とされる1969年リリースの「トミー」で結実します。
芸術性も高いロックと評価されました。
ザ・フーはアルバムは知性的で芸術性が高く、ライブはめちゃくちゃワイルドというバンドでした。

そこから4年後、同じくイギリスでついにクイーンがデビューします。

彼らは最初から通常の軽音楽とは違うオペラの形式を意識した曲を書いていました。
4人バンドですがよりクラシックの、オペラのスタイルに近づけ、オペラなんてほとんど知らない少年少女でもオペラを感じるような曲調でした。

でも流石にその時代のロック界において突然変異で生まれたようなバンドは当然の如く即世界に受け入れられるようなことにはなりません。
クイーンはジャンルとしてもロックンロールでもいなく、プログレでもなく、フォークロックやハードロックでもないジャンル不明の音楽でした。
ビジュアル的にはグラムロックが近い感じです。

クイーンというバンド名は大英帝国を感じさせるとともに一般的にホモ・セクシャルな意味もあったようです。

しかし不思議なことになぜか日本で人気に火がついてブームとなりました。
それというのは特に今までロックに興味を示さなかった女子に気に入られ人気が出たのです。
当時の日本はミュージックライフなどの音楽専門情報誌が充実してきてビジュアル的にも確認できるようになったことがかなり貢献していると思います。
そういえばチープ・トリックも日本で最初に人気が出たバンドです。
そういうインパクトのあるミュージシャンがよくミュージック・ライフなどで取り上げられていました。

で、その頃のクイーンのイメージをまとめると

野蛮で汗臭くうるさいだけのロックミュージシャンとは違って全員大学出の知性溢れるインテリだし、クラシックの素養が当然ありそうだし、見た目もおしゃれで少女漫画チックだし、演奏技術もしっかりしていてるし、後発の可愛いだけのベイ・シティ・ローラーズみたいなお子ちゃまバンドではないのよ。という感じです。

男から見ても「キラー・クイーン」は普通にカッコイイ曲だよね。「ブライトン・ロック」は結構すごいよ。と言った感じでした。

そしてついに1975年イギリスのレコードセールスを書き換えるようなクイーンにとっての4枚目のアルバム「オペラ座の夜」が1975年にリリースされました。
ポピュラーミュージック史上最高の制作費がかかったとされ、ヴォーカルパートは180界のオーバーダビングをした箇所もあるとのことです。イギリスでは9週間首位を独走しました。
これはのちに18年間オアシス登場まで破られることはありませんでした。

シングルカットされた「ボヘミアン・ラプソディ」は5分を超える長さのためラジオでオンエアされにくいだろうと業界では言われていたようですが、反して全世界でヒットしました。

この曲は時間が経っても評価が落ちることはなく2002年のギネス・ワールド・レコーズによる「英国史上最高のシングル曲は?」というアンケートで堂々1位に輝いています。
ちなみに2位はジョン・レノンの「イマジン」、3位はビートルズの「ヘイ・ジュード」です。

2018年には1991年45歳で亡くなったフレディー・マーキュリーの物語として映画「ボヘミアン・ラプソディー」が公開されこれも全世界でヒットしてクイーンのリバイバル・ブームとなりました。
わたくし的にはチラッと予告を見て勝手に「フレディ以外のメンバーがクイーンらしくない」と感じて映画は未だ見ておりません。(だってなんか劣化コピーだし、映画だったら本物以上にかっこ良くてもいいと思うんですけど)

で、リアルタイムで「ボヘミアン・ラプソディ」を聴いた時の感想としては「うわあ、すごい複雑な曲だけど割と聴きやすいよね」でした。
でも流石にそんなに売れて歴史に残る曲とは思っていませんでした。
こういう感じだとカルト的なバンドになるんだろうなと勝手に思っていたくらいうです。
そういう全く新しいロックでした。

今改めて聴いてみると、今更ながらにやっぱりすごいバンドだと思います。
2011年のリマスターを聴くと名盤だけあって丁寧なリマスターがされています。
低域から高域まで伸びた音で厚みも感じます。
アナログ時代のテープレコーダーはオーバーダビングを繰り返すと高域成分が失われ、高温がなくなり低音も輪郭のない音になりがちですがそういうことは一切感じられません。さすがです。
ちなみにクイーンはオリジナリティが高すぎたためか同じ路線の後継者は未だに出てきません。

同じようなことをやっても二番煎じのちょっとイタイバンドかパロディになってしまうという稀有な存在です。



演奏
フレディ・マーキュリー  リードヴォーカル、ピアノ
ブライアン・メイ  ギター、バッキングヴォーカル
ジョン・デイーコン  ベース、キーボード、バッキングヴォーカル
ロジャー・テイラー  ドラムス、バッキングヴォーカル

プロダクション
プロデューサー  ロイ・トーマス・ベイカー、クイーン
マイク・ストーン  レコーディング・エンジニア
ゲイリー・ライオンズ  アシステント・エンジニア
ジョン・ハリス  音響スーパーバイザー
デヴィッド・コスタ  アートディレクター
ジョン・リード  マネージメント

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曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Death on Two Legs デス・オン・トゥー・レッグス

普通のバンド形態でこういう表現ができるのはすごいことです。

2,   Lazing On A Sunday Afternoon うつろな日曜日

イギリスっぽいタイトルです。ザ・キンクスを思い出します。(サニー・アフタヌーンですけど)。独特のヴォーカル、というかラジオヴォイスはスタジオでバケツの中にヘッドフォンをおいて録音したとのことです。

3,   I’m In Love With My Car アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー

ビッグヒットとなった「ボヘミアン・ラプソディ」のB面としてもリリースされました。ドラムのロジャー・テイラーの作品です。この人の声はハスキーで曲調と合わせてハードロック向きです。ギターで作曲して本編ではエレキギターも弾いています。

4,   You’re My Best Friend ユア・マイ・ベスト・フレンド

ベースのジョン・ディーコンの作品です。当時は珍しくフレディがエレクトリック・ピアノを引くのを嫌がったのでジョンが自分で演奏したなどと話題になっていました。曲は普通にポップな感じで軽い感じがいいアクセントになっています。

5,   ’39

シングル「マイ・ベスト・フレンド」のB面としてもリリースされました。シンプルな編成でアコースティック・ギター中心のポップな曲ですがコーラスは流石に凝っています。ジョンはエレクトリック・ベースではなくコントラバスで演奏しました。
内容はSFで、宇宙旅行に出かけて1年後に戻ってみると地球では100年経過していたという物語です。アインシュタインの「動くものの時間は遅れる」という相対性理論として語られることもあるそうな。

6,   Sweet Lady スウィート・レディ

こうやって聞くと割と普通のハードロック調の曲です。最後はギターソロで終わりますが思いっきりロックなソロではありません。

7,   Seaside Rendezvous シーサイド・ランデブー

そういえば今となっては全く聞きませんが昔は歌の世界では「ランデブー」とか「ラプソディ」とかよく使われていました。あえて古き良き時代の雰囲気を狙った曲調です。

8,   The Prophet’s Song 預言者の歌

今までの雰囲気を受け継いで、というか初期のクイーンらしい曲です。8分を超えるクイーン史上最も長い曲となっています。

9,   Love of My Life ラヴ・オブ・マイ・ライフ

これもシンプルな演奏ながら初期のクイーンらしい曲調です。ここあたりから「ボヘミアン・ラプソディ」に向かっての助走が始まります。

10,  Good Company グッド・カンパニー

シンプルで綺麗な曲です。ヴォーカル含めドラムス以外は全てブライアン・メイによる演奏です。ここでリズムを入れてポップな雰囲気に変えて次の曲に繋げるのです。落差を狙っています。

11,  Bohemian Rhapsody ボヘミアン・ラプソディ

記録を塗り替えて時代を超えた名曲となっています。BBCのトップ・オブ・座・ポップスという音楽番組では出演して演奏する代わりにこの曲のプロモーション・ヴィデオが放映されました。確かにテレビで演奏してもあまりに嘘くさくなってしまいますので、初めから映像世界で表現した方がイメージが損なわれませんね。

12,  God Save The Queen ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン

ここで潔くイギリス国家で終わるところがクイーンなのです。英国を全面アピールするとアメリカでは売れないものですが、このアルバムはビルボードでも4位まで上昇しました。英国のチャートでは当然1位獲得しています。

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