ここでロックとニューオリンズの解悟が極まりました」Dixie Chicken : Little Feat / ディキシー・チキン : リトル・フィート

 ロサンゼルスで結成され、各方面から絶賛されたリトル・フィートの代表作です。バンドにとっては3rdアルバムで1973年にリリースされました。
どちらかといえばサザン・ロック、もしくはスワンプ・ロック的な立ち位置に分けられるリトル・フィートです。

ただし一般的なサザン・ロックのイメージの長髪、髭、サングラスの南部男たちの豪快なブルーズロック・・・というのとは違います。
彼らが取り入れたのは緩いニューオリンズ風味のセカンドラインでした。テキサス、メンフィス、アトランタ風味ではありません。

そして彼らはかなり深いところまでニューオリンズのリズムとロックを結びつけました。
よって一般的なヒットよりまず業界内で評価され、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして他のアーティストから慕われます。
それによって一時的な流行などではない歴史に残るバンドとなった次第です。

結成の経緯はフランク・ザッパのバンドにいたローウェル・ジョージがザッパに「ウィリン」を作って聞かせたところから始まります。

ザッパはいい曲だと思いましたが、歌詞が長距離トラック運転手とお薬についてだったので自分のバンドの趣旨に合わないから自分でバンドを作って演りな、と言ったそうです。
そこでローウェルはザッパのバンドのベーシスト、ロイ・エストラーダと一緒に抜けてリトル・フィートを結成しました。

と一般的に言われている説です。細かくは他にもいろんな説がありますがもう当事者お二人はこの世に居ませんので、解釈は善きに計らえでいいかと思います。

フランク・ザッパのバンドを離れてプログレ、メタル、ジャズなど他のバンドで活動する人は多いのですが、ザッパについての批難、悪口みたいなことはほとんど聞かれません。
しかもかなりの実力をつけて、引くてあまたの状態で辞めていきます。
喧嘩別れみたいなことにはならないようです。そういう意味ではマネージメントがしっかりしているのでしょう。

なぜバンド名が「リトル・フィート」かというと
ローウェル・ジョージの足を見てみんなが
「おっ、おめえ、なんか図体の割にアシ小さくね」とイジったので
「ふん、チクショウ、じゃあそれをバンド名にしてやる」
ということだそうです。
ちなみに「ウィリン」は1stの「リトル・フィート」と2ndの「セイリン・シューズ」にも入っています。

1stアルバム制作時にローウェル.ジョージは手を怪我してしまい、「ウィリン」はライ・クーダーがスライド・ギターを入れました。
それにイメージを膨らませたローウェルが2ndアルバムで再度自身の演奏で収録したと言われています。
曲自体は短いのですがゾクゾクするような名曲です。正直言ってフランク・ザッパの音楽とはさほど共通点がないように思えます。

またリトル・フィートはロサンゼルス出身にも関わらず最近、映画にもなったウェスト・コースト・ロックの聖地ローレル・キャニオン風味もあまり感じません。
そういう意味でもオリジナリティ溢れるバンドでした。

アルバムジャケットはほとんどネオン・パークというイラストレーターによって描かれた絵が使われています。
「ディキシー・チキン」はアルバム3曲目の「ロール・エム・イージー」からイメージしたイラストだそうです。どことなく南部を感じられるイラストですが、ここでも当然サザン・ロック感はありません。

リトル・フィートはこの3rdアルバムでバンドがこなれてきて思う存分に好きに演ってみました、という感じです。ニューオリンズ色満載のアルバムとなっています。

アメリカ国内でもボニー・レイットなどファンは多いのですが、特にブリティッシュ・ロックに多大なる影響を与えました。

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジも「アメリカで一番好きなバンド」と答えています。
日本の音楽界でも関わりがあり、はっぴいえんどや矢野顕子さんのアルバムにも参加しています。
矢野顕子さんの「Japanese Girl」に参加した時にはローウェル・ジョージが彼女の才能に驚嘆して「俺たち、彼女の期待に応えられていないかもだからノーギャラでいいよ」みたいなことを言ったと言われています。

このあと、1979年にローウェル・ジョージがなくなるまで第1期リトル・フィートは快進撃を続けます。と言っても最高位はラストアルバムの「ダウン・オン・ザ・ファーム」の29位が最高です。
トップ10ヒットには恵まれませんでしたがどのアルバムも名盤とされ、長く評価されるバンドとなっています。

アルバム「ディキシー・チキン」のご紹介です。

演奏

ポール・バレアー  ギター、ヴォーカル
サム・クレイトン  コンガ
ローウェル・ジョージ  ヴォーカル、ギター、カウベル、フルート
ケニー・グラッドニー  ベース
リッチー・ヘイワード  ドラムス、ヴォーカル
ビル・ペイン  キーボード、シンセサイザー、ヴォーカル

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Dixie Chicken
(作曲 ローウェル・ジョージ、フレッド・マーチン)

普通、ロックにはないリズムです。ニューオリンズ調でバックビートに痺れます。

2,   Two Trains
(作曲 ローウェル・ジョージ)

同じくどっしりとしたリズムでいい感じです。

3,   Roll Um Easy
(作曲 ローウェル・ジョージ)


アコースティックギターで始まり、切々と歌い上げます。

4,   On Your Way Down
(作曲 アラン・トゥーサン)

スローテンポの曲です。この魔のあるリズムがなかなかいいんですね。割とハードボイルドです。

5,   Kiss It Off
(作曲 ローウェル・ジョージ)


引き続き、ゆったりしたリズムで歌い上げます。

6,   Fool Yourself
(作曲 フレッド・タケット)


ちょっとアラン・トゥーサンを思い出すような曲の始まり方です。

7,   Walkin’ All Night
(作曲、ヴォーカル ポール・バレアー、ビル・ペイン)

なんとなくプロフェッサー・ロングヘアーを思い出させるロックンロールです。

8,   Fat Man In the Bathtub
(作曲 ローウェル・ジョージ)


タイトルの意味は分かりませんが、リトル・フィートの有名曲です。このノリは他のバンドでは味わえません。

9,   Juliette
(作曲 ローウェル・ジョージ)


エレクトリックピアノで始まるラヴソングです。フルートも聞こえます。

10,  Lafayette Railroad
(作曲 ローウェル・ジョージ、ビル・ペイン)

タイトルは1869年に設立されたラファイエット・マンシー・アンド・ブルーミントン鉄道のことだそうです。インストルメンタルでリズムで聴かせる曲ですが、思いっきり間のあるリズムです。そこがいいのです。

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