「彼のインパクトがその後のロックのノリを作りました。ロックンロールの設計士と呼ばれたリトル・リチャードです。」Here’s Little Richard : Little Richard / ヒアズ・リトル・リチャード : リトル・リチャード

 いやもうこの人って、見た目とっても個性的です。目つきからして普通と違います。なんかちょっとヤバそうな雰囲気です。どう贔屓目に見ても髭を生やした飲み屋のおかまさんのマスターにしか見えません。

いやいや・・・そういうことを言いたいのではありません、話を戻します。

(コホン)
えー、偉大なるロックのレジェンドであるビートルズのジョン・レノンやポール・マッカートニー、およびローリング・ストーンズのミック・ジャガー、さらにはボブ・ディランからエリック・クラプトンに至るまで大絶賛する1950年代を賑わしたロックンローラーがいます。

「トゥッティ、フルッティ」を聴いた時はかなりの衝撃的体験だったとみんな口を揃えます。

ビートルズがデビューした時、最初のツアーは彼の前座でした。

ジョン・レノンをして「初めて会った時、異形のあまり硬直した」といっています。

ポール・マッカートニーは彼の歌い方を真似て「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」を作りました。
「アイム・ダウン」に至ってはモロパクリです。

それがキング・オブ・ロックンロールとかアーキテクト・オブ・ロックンロール=ロックンロールの設計士と呼ばれたリトル・リチャードです。

「いやいやビートルズやストーンズはわかるけどクラプトンとかディランって音楽性が全然違うんじゃね」と思いたいところですが、ちゃんと本人がインタビュー等で言及していますので、1960年代のロックレジェンドたちはこぞって何らかの影響を受けたと思われます。

クラプトンはプリンスの凄さによく言及していますが、褒める時に「リトル・リチャード以来のロックンロールの改革者・・・」と答えています。
ジミ・ヘンドリクスは「リトル・リチャードが声でやっていることをギターでやりたいと思った」と答えています。
さらにはエルトン・ジョンからデヴィッド・ボウイ、フレディ・マーキュリーはもとよりAC/DC、モーターヘッドなどのハードロック勢も影響を認めています。

アメリカでは長らく社会構造上から人種を分けて音楽市場を構成していたので、エルヴィス・プレスリーやジェリー・リー・ルイスなどを経由してリトル・リチャードの音楽が広がったともいえますが、イギリスではチャック・ベリーやマディ・ウォーターズ同様、いきなり人種を超えて原液摂取をしていました。

ロックにおいての1960年代のイギリス勢の大躍進にはそういう原液摂取が多分に貢献してそうです。

それにひきかえ日本においてはリトル・リチャードの存在感、と言ってもかなりマイナーなイメージです。
なぜかというと、もう言ってしまいますが見た目にアイドル性がないからだと思います。
エルヴィス・プレスリーやエディ・コクラン、サム・クックなどのイケメンではなく、マディ・ウォーターズやハウリン.ウルフみたいな硬派でもなく、チャック・ベリーやボ・ディドリー、ジェームス・ブラウンみたいなショーマンシップもなさそうです。

というよりはそれらを全部飛び越えてしまった存在にも思えます。

それほ元から文化の違う日本人には理解できない、ついていけないものだったのです。

リトル・リチャード自身も自分より他の人が歌った方が売れることに悩んでいたそうですが、うん、そこはしょうがないよね、と思ってしまいます。
ショービズの世界は女性を味方にした方が勝ちなんです。

クラプトンの発言などを考えながら聴いていると、真の意味での後継者はやっぱりプリンスだったのか、と思う今日この頃です。(プリンスはモテそうですけど)

リトル・リチャードは1932年12月5日にジョージア州メイコンで12人の子供の3番目として生まれました。本名はリチャード・ウエイン・ペニマンと言います。
父親は教会の執事であり、レンガ職人であり、副業で密造酒を販売し、ナイトクラブを経営していました。(なんかもうメチャクチャです)
リチャードは生まれた時から左右の足の長さが違うという軽度の身体障害があり、歩き方や話し方を女々しいとからかわれて、ずっとコンプレックスを持っていました。
小さい時からゲイ(たぶんバイセクシャル)だっとそうです。

そういう人は大体において異能の人であり、芸術家タイプが多いのも事実です。

全く新しいものを創造する、表現することに長けているものですがリトル・リチャードはまさにそういう人でした。

で、今改めてリトル・リチャードを聴いてみるとやはり並のミュージシャンとは違います。

デビューアルバムは1957年の「ヒアズ・リトル・リチャード」です。
レーベルは「スペシャリティ」、個人的にはドゥーワップ、R&B、ゴスペルのイメージがあるレーベルです。

プロデューサーはロバート・アレクサンダー・「パンプス」・ブラックウェルという人物でバンドリーダーなども演っておりました。

初期のリトル・リチャードほかレイ・チャールズ、クインシー・ジョーンズ、サム・クック、ロイド・プライス、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンなども手がけることになります。

このファーストアルバムのオープニングの「トゥッティ・フルッティ」はもちろん、「レディ・テディ」「スリッピン・アンド・スライディン」「ロング・トール・サリー」「ジェニ・ジェニ」などのスタンダードがいっぱい入っています。

私が持っているのは廉価版の初期のアルバム3枚分プラスアルファが収録されたCD2枚組のものと50曲入り2枚組ベストアルバムです。
その昔レコードでデビューアルバム「ヒアズ・リトル・リチャード」は持っていましたが当時はオーディオ環境が悲惨な状態で1950年代の音楽は耳にきつくて聞けたもんじゃないと思っていました。

しかし最近に至っては納得できる音質のシステムで、この最近の再発音源を聴くとまた新たな感動が味わえます。
昔の音源はリマスターとうたっていなくても最近のオーディオ環境に合わせてアップデートしている感があります。
昔聴いていた音質とは違ってそれなりに良質になっています。

もっともジャズの現場での1950年代の音を考えると、なるほど当時から録音技術は素晴らしいもので確かに侮れません。

その当時ポップスはラジオでオンエアーされることを意識した音質だったので、また違ったイコライジングではありました。

で、今聴いてもやっぱりすごいです。
チャック・ベリーとはまた違う、ギター中心ではないピアノによるロックンロールのグルーヴが味わえます。
音楽的にもロックンロール、R&B、ソウル調の曲が交互に出てきて、うまくブレンドしてあります。
今更ながら何者にも変え難い存在感です。
本当にこの人はロックの基礎だと改めて思わされます。

映画「リトル・リチャード: アイ・アム・エヴリシング」が来月、やっと横浜にやってきます。見た後に追記するかも知れません。

アルバム「ヒアズ・リトル・リチャード」のご紹介です。

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演奏

リトル・リチャード  ヴォーカル、ピアノ(ex Tr.5,9)
リー・アレン  テナー・サックス(ex Tr2,12)
アルヴィン・レッド・タイラー  ヴァリトン・サックス(ex Tr.2,12)
フランク・フィールズ  ベース(ex Tr.2,12)
アール・パーマー  ドラムス(ex Tr.2,12)
エドガー・ブランチャード  ギター(ex Tr.1,2,5,9,12)

追加ミュージシャン
ジャスティン・アダムス  ギター(TR.1,5)
ヒューイ・スミス  ピアノ(TR.5)
レナルド・リチャード  トランペット(TR.2)
クラレンス・フォード  テナーサックス、バリトンサックス(TR.2)
ジョー・ティルマン  テナーサックス(TR.2)
ウィリアム・“フロスティ”・バイルズ  ギター(TR.2)
ロイド・ランバート  ベース(TR.2)
オスカー・ムーア  ドラムス(TR.2)
ロイ・モントレル  ギター(TR.9)
ウィルバート・スミス  テナーサックス(TR.12)
グレイディ・ゲインズ  テナーサックス(TR.12)
クリフォード・バークス  テナーサックス(TR.12)
ジュエル・グラント  バリトンサックス(TR.12)
ナサニエル・ダグラス  ギター(TR.12)
オルシー・リチャード・ロビンソン  ベース(TR.12)
チャールズ  コナー  ドラムス(TR.12)

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Tutti Frutti トゥッティ・フルッティ
 (リチャード・ペニマン、ドロシー・ラボストリー)

のっけからの「ワッパパ・ルバッパ・ラッパッパ」で世のミュージシャンの意識を変えた曲と言ってもいいかもしれません。リトル・リチャードの代名詞的曲なのでカバーは割と少なめです。エルヴィス・プレスリーとハンブルグ時代のビートルズがカバーしました。途中のいきなり出てくる「フー」という声も影響力がありました。スペシャリティ・レコードのカタログでは一番売れたシングルだそうです。

2,   True, Fine Mama トゥルー・ファイン・ママ
 (リチャード・ペニマン)

典型的なロックンロールですがピアニストならではのグルーヴが感じられます。

3,   Can’t Believe You Wannna Leave キャント・ビリーヴ・ユー・ワナ・リーヴ
 (レオ・プライス)

ソウルフルに歌います。素直にいい曲です。

4,   Ready Teddy レディ・テディ
 (ロバート・ブラックウェル、ジョン・マラスカルコ)

ノリのいい曲です。ロカビリー風味満載です。バディ・ホリー、ザ・トルネードス、エルヴィス・プレスリーなどがカバーしてスタンダードとなりました。

5,   Baby ベイビー
 (リチャード・ペニマン)

どストレートなタイトルのR&Bです。この人の絡みつくような歌い方は他にはない味わいがあります。

6,   Slippin’ and Slidin’ スリッピン・アンド・スライディン
 (リチャード・ペニマン、エディ・ポカージュ、アル・コリンズ、ジェームス・スミス)

これもスタンダードです。有名なところではジョン・レノンがアルバム「ロックンロール」でカバーしました。

7,   Long Tall Sally のっぽのサリー
 (リチャード・ペニマン、エノトリス・ジョンソン、ロバート・ブラックウェル)

ビートルズとキンクスがカバーしています。知らない人はいないくらいの有名曲です。
これを真似た「ロング・トール・ショーティ」というトミー・タッカーの歌もあり、英国にはロング・トール・ショーティというバンドもいます。

8,   Miss Ann ミス・アン
 (リチャード・ペニマン、エノトリス・ジョンソン)

ソウル、R&B調です。

9,   Oh Why? オー・ホワイ
 (ウインフィールド・スコット)

エルヴィス・プレスリーに合いそうな曲です。

10,  Rip It Up リップ・イット・アップ
 (ロバート・ブラックウェル、ジョン・マラスカルコ)

これも有名なスタンダードです。ジョン・レノンで有名です。アイヴァン・ネヴィルやロス・ロボスバージョンもあります。

11,  Jenny Jenny ジェニ・ジェニ
 (リチャード・ペニマン、エノトリス・ジョンソン)

ポール・アンカの「ダイアナ」などと同じように日本語バージョンでも流行りました。鈴木やすしさんが謳っておられました。グループサウンズのカバーも聞いた記憶があります。断言できませんがかまやつひろしさんのいたスパイダースだったと思います。
本家のバージョンは「フー」という声のインパクトがすごいです。

12,  She’s Got It シーズ・ガット・イット
 (リチャード・ペニマン、ジョン・マラスカルコ)

最後はノリのいい曲で終わります。「監獄ロック」調です。というかこれにインスパイアされたのかもしれません。

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